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君たちはどう生きるか(2023) - はあさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 君たちはどう生きるか(2023)
レビュワー はあさん
点数 8点
投稿日時 2023-07-19 16:57:07
変更日時 2023-08-18 11:59:23
レビュー内容
時は戦時中。東京に父と住んでいた主人公の少年・眞人は、家から離れた病院に入院中の母を火災で亡くし、父子ともども田舎に移り住むこととなる。彼らが到着した駅には、人力車に乗った身なりの良い女性が待っていた。眞人にとっては新しい母親だという。その場でいったん父と別れ、緊張の面持ちで女性と新しい家に向かう眞人。やがて大きな屋敷に到着、眞人はその中を案内される。すると…。

本作は広告宣伝一切なしのまま上映を開始した。ネットを見ていると物語のネタバレこそないものの、参加キャストやスタッフの名前をあちこちで目にするようになった。「そのうち物語のネタバレも不意に見てしまうかも」。そうなる前に観てしまおうと決意したのであった。ちなみに宮崎監督の長編作品は『風立ちぬ』以外視聴済み。

本作については、宮崎監督のエンターテインメント観と人生観の総決算を見せられたという印象を強く持った。

物語の構成は『千と千尋の神隠し』そのものだ。主人公は新しい環境にどちらかといえば後ろ向きで、ひねくれたところもある。やがて巻き込まれる非日常の困難に能動的に立ち向かい人間的に成長、最終的に日常に戻っていく。監督の過去作『ルパン三世カリオストロの城』『天空の城ラピュタ』『崖の上のポニョ』などを彷彿とさせる場面や演出が頻出し、まるで過去の宮崎作品の名場面集、もっと言ってしまえばセルフパロディのようにも見える。

物語の最終目的は「さらわれたお姫様を救い出す」、これも宮崎作品の典型だ。今回はお姫様ではなく新しい母親であるために動機がやや弱く感じられたし、異世界でも唐突かつ理解しきれない展開があったが、それを各々の世界観のアクの強さと丹念な演出、そして圧倒的な作画の力で観客に半ば強引に見せきってしまう作りは宮崎にしかできない芸当だ。前述の名場面も含め、これまで宮崎の後継者と目される他の作り手たちが表層的模倣にとどまっていた宮崎的描写を自らの手でやってのけて「どうだ! これが俺だ!」と高らかに宣言しているように僕には思える。

世界をコントロールする大叔父様の姿からは、未来永劫新たな世界を描き続けたい宮崎自身の願望が感じられた。世界をコントロールするツールであった積み木が最後に他者の手によってあっさり壊されてしまうところからは、「やっぱり人間は有限であり、永遠の世界作りはできない」と外部からの情報によって現実的な考えに軌道修正したのではないだろうかと想像した。

ここからはスタッフやキャストについて思うことを少し書きたい。

まずは絵作りの中心を担うアニメーターについて触れなければならない。超絶作画で作品を支えた作画監督や原画マンたちの何と豪華なこと! 作画マニアが見たら鼻血が出そうな豪華メンバーだ。現在のアニメ、特にテレビアニメはとにかく大勢の作画マンの人海戦術によって何とか形になっている印象があるが――厖大な制作本数に対してアニメーターが不足している、作画作業の分業化によって仕事がスムーズに回らなくなりそれが悪循環を引き起こしている、制作期間が短いなど原因はいろいろあると思われる――本作は極めて密度の高い画面が比較的少数精鋭で作り上げられている。制作環境が整えられていたのだろう。

特に中盤までのピアノ独奏が印象的だった音楽は宮崎作品の常連・久石譲らしくなく、今回は誰が音楽担当だったんだろうと思っていたらエンドロールに久石の名があり驚いた。かつてミニマルミュージックを得意としていた久石の面目躍如だろうし、同時に新境地ともなったのではないだろうか。

キャストは相変わらずの非声優陣。キムタクが声をあてる情報は前もって入ってしまっていたが、どのキャラクターを演じているかがわかったのは中盤以降であり、それ以降も特に違和感を感じなかった。他のキャストも熱演していたと思う。

最後にちょっと尾籠な余談を一つ。本作の上映が始まって一時間くらいからは尿意(と便意)との戦いだった。列中央の席に座っていたし通路が暗くて一度出たら二度と戻ってこられそうになかったのでどうしようと思いながら観ていた。思い切って出ようと腰を浮かせたら尿意が少し治まったので、両肘で体を支えながら背もたれを使わない姿勢で観続け何とか最後まで持たせた(両隣は空いていた)。余韻なしではぁはぁ言いながら館内から出たのは初めてで、前を歩いていた女性を小走りで追い抜き痛い視線を感じながらトイレにスッと駆け込んだのだった。

帰り道の車のアクセルをいつもより少々強く踏みがちだったのはその余韻か、他の車が走っていなかったためか、はたまた作品に心動かされた余韻か、今となってはわからない。
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