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ソラリス - 高橋幸二さんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 ソラリス
レビュワー 高橋幸二さん
点数 10点
投稿日時 2009-05-25 21:45:54
変更日時 2009-05-26 22:36:15
レビュー内容
 本作品は、1972年制作「惑星ソラリス」のリメイクである。旧作ではラストにどんでん返しがあるが、ソダーバーグ版では、旧作がネタばらしになっていることからこれを採用せず、旧作にはなかった、クリスが地球への帰還を断念するシーンを挿入した。私はこれを評価したい。

 精神を病んだレイアは、夫に愛されていないのではないかと疑い、堕胎した。クリスはこれに憤り家を出るが、レイアは自殺してしまった。レイアには堕胎した罪の意識があり、クリスには妻を自殺させた罪の意識がある。
 あの日に戻りたい、もう一度やり直したいという思いは、誰にでもあるのだろう。だがソラリスは、そんな悲痛な願いをかなえてくれた。死んだレイアを再び登場させてくれたのである。
 しかしそれは、クリスの過去の記憶をソラリスが物質化したレプリカである。彼女が反応するのは、クリスの予想を反映しているに過ぎない。二人にとって未来はない。それは永遠に続く過去でしかない。レイアは自分の存在に疑問を抱き、二度目の自殺を遂げる。

 地球への帰還船が離脱すると、宇宙ステーションはソラリスの大気圏へと落ちて行く。ここで宇宙ステーションが燃焼するシーンがなかったのは、残念である。クリスが叫ぶ。
「レイア! レイア!」
 サミュエル・スマイルズは、「一個の人間は地球より重い」と言った。壊れてしまった愛を取り戻すためなら、生まれた星を棄て、未来を棄て、肉体さえも棄てられるのか。
 ここでソラリスによって作られた少年が、クリスに手を差し伸べる。それはミケランジェロの絵画「アダムの創造」で、神がアダムに命を注ごうとするシーンに酷似している。

 クリスは、ソラリスの意志により新しい命を注がれたのか。新しい世界では、指を切ってもすぐに傷が癒えてしまう。もはや以前の肉体ではない。
 レイアの再生を待つクリスの前に、再びレイアが現れる。彼女はどれだけ本物のレイアなのか。クリスは生きているのか、死んでいるのか。だがもう、そんなことはどうだっていい。生まれた星を棄て、未来を棄て、肉体さえも棄てて、ただ執念だけの存在となって、それでもお互いを求めずにはいられない。壊れてしまった愛の日々をやり直すために。


たとえ狂おうとも正気になり
たとえ海に沈みゆこうとまた浮上し
たとえ愛する人亡くとも愛は死なず
かくて死はその支配をやめる
(ディラン・トーマス)
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投稿日付邦題コメント平均点
2023-10-10アイ・アム・マザー97.00点
2023-04-08パッセンジャーズ65.93点
2022-09-29容疑者Xの献身96.67点
2021-02-04暗黒女子75.13点
2020-05-11白い肌の異常な夜75.98点
2020-05-04ルドルフとイッパイアッテナ97.00点
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2019-11-15三度目の殺人76.29点
2019-03-31リップヴァンウィンクルの花嫁97.07点
2018-03-31追憶(2017)86.69点
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