1.話の大枠は「他人の顔」みたいなところもあるんだけど、フランスはあんまりアイデンティティの問題とか自由の問題とかに突っ込まず、倦怠期ものの恋愛喜劇に収めていく。なんかもったいないと思うんだけど、こういう態度がエスプリってんだろう。最初は旦那が妻への関心を失ってるように見せて(テレビのシーン)、オレンジの手紙の効果をあげようとしている。部屋を分けて床のきしみで駆け引きしたり、しかし焦れば焦るほど、幸福な時の流れは早まっていく。男は「大人の愛」という安定を拒否する情熱の信者、幸福な時が過ぎ去っていくことに敏感なの。これ『髪結いの亭主』のすぐあとに来た映画で、邦題もなんか意識してたな、でもそのために印象が弱まってしまった。