1.この映画に登場する人達は皆心に傷を負っている。
震災によって帰る場所がなくなり、未来の見えない日々を過ごす人達。
家族がバラバラになった人達。
監督は福島出身ということで、被災者のありのままの生活を丁寧に取材して描いていて、見ていてとても複雑な気持ちになった。
中でもこの映画のヒロインであるみゆきの生き方は興味深い。
毎日ちゃんと自分と父親の食事を作り、母親の遺影に手を合わせ、市役所で仕事をしている。
一見しっかりとした女性に見えるが、英会話を習っていると偽って週に何度か東京にデリヘルの仕事をしに行く。
東京へ向かうバスの中の彼女は全てをあきらめてしまったかのような空虚な表情だ。
R-15指定という事で性的なシーンもそれなりにあるが、前述のような背景なものだから全然エロスとかは感じられず、なんだかもの悲しさや、空虚感ばかりが胸を突いた。震災の傷はまだまだ癒えていないんだという事をあらためて実感させられた。