56.ヒッチコックには珍しい舞台劇のような作品です。フィルム一巻10分をフルに利用した長回しを採用、つなぎ目を不自然に感じさせないよう、箱の影や人物の背中で画面を覆うシーンが挿入されているわけですが、これによって定期的に画面が暗転し、陰鬱な緊張感を持続することに成功しています。さて、そんな『ロープ』は傑作なのでしょうか。私はこの作品の持っている空気や緊張感、ユーモアがとても好きなのですけれど、冷静に考えて、10点をあげることは出来ません。というのは、舞台演劇を意識しすぎた作りだからです。監督のイメージにはまず舞台演劇があって、それを再現するために、映画としてどうするか、という考え方をしている。本作の映画としての可能性は、すべて舞台演劇に近づける方に開いています。実際に自分が惹かれた部分は、舞台で再現可能な箇所ばかりです。「じゃあ最初から舞台でやればいいんじゃない?」という問いをどう返すでしょう。予定調和に終わるラストはその象徴です。本作は舞台を意識するあまり、舞台の制約から逃れることも出来てないのです。従って『ロープ』は、「映画で舞台をやってみました」という実験作であり、映画としての新しい飛躍を内に秘めていません。この部分があったら文句なしの10点です。私はそのくらいこの『ロープ』が大好きです。 【円盤人】さん 8点(2004-08-28 01:50:56) (良:2票) |
55.全編を通してワンロールをノーカットで回し続けるという、様式がまず最初にありきの作品ですが、「試み」として非常に面白く、とても好きな作品です。二人組の青年が友人を殺害するという事件は実話からヒントを得ており、結末はかなり早い段階で解るような設定で、ドラマとしては彼等が立てた計画が崩れていく過程のみを追うシンプルなもの。片面空きのセットが一つで、まさに舞台劇の様相を呈していますが、ワンロールをワンカットで撮るなら、この設定しかないでしょう。映画を映画たらしめるモンタージュも放棄して、唯一、キャメラのフレームワークのみで観客の視点を誘導して行き、嘘をついたり隠し事をしている時の「あの気持ち」をいっしょに体験させようとします。カットを割ればもう少しさり気ない視点の誘導が出来たと思いますが、ここ観て!あそこ観て!という、ちょっと押し付けがましい感じがするのはやむを得ません。そもそも、この映画では最初からカットを入れないという決まりで創っているのですから、自ずと限界があるのは明らかでしょう。この場合の「試み」は、すなわち「実験」というよりも、ちょっとした「遊び」ととらえても差し支えないような気がします。大胆な「試み」がもたらした制約は、他にもいろいろな歪みを生んでいるのですが、そうした犠牲云々よりも、いつの間にか、このワンロールワンカットという「遊び」を一緒になって楽しんでしまっている自分に気付きました。 【スロウボート】さん 9点(2004-01-25 22:10:46) (良:2票) |
54.名作を知らずに死ぬのは勿体無いということで、ヒッチコックを見ることにしました。手始めに有名だけど見ていなかった作品から。 「ロープ」ヒッチコック作品では珍しい倒叙式、なおかつ舞台劇(シーンは室内のみ)という、会話が中心のお芝居型の作品です。殺しの動機とその後の行動心理がかなり強引なので違和感を覚える方も多いようですが、この強引な部分さえスルーできれば会話劇としてはかなり高い完成度で物語が成立しています。ヒッチコック本人は駄作だと思っているようですが、とにかくこの密室シチュエーションが非常によく出来ていて抜群に面白いのです。 ネタバレになるので詳細は省きますが、ミセス・ウィルソンさん(イディス・エヴァンソン)が手際よく後片付けしているシーンのハラハラドキドキ具合ったら!! 見つかりそうになるこのハラハラドキドキ感が夕食を食べながら小さなTVで見るには最高の塩梅で、人物表現もバランスが良く誰一人として無駄な人物が出ていません。会話にも無理がなく、見つかるかもしれないというギリギリの攻防が小さな部屋で繰り広げられる様はもう最高(笑)としか表現のしようがありません。 このドキドキ感は死体がどこにあるか知っている観客だけに与えられた特権で、同時に死体を隠した犯人たちの顔が徐々に青ざめていく流れも楽しむことができます。まさに倒叙式とワンカット風味の様式美が最大限に生かされた素晴らしい演出の賜物で、観客はもう居ても立ってもいられなくなります。ルーパート教授(ジェームズ・スチュワート)の推理をセリフで見せ切る流れも素晴らしいし、演奏家=ピアノで心情を表現できていて音楽も申し分ありません。ロープの使われ方も最高。ラストが少し説教臭いですが、今の時代の価値観で考えてはいけません。60~70年前の作品なので当時の時代背景を考えるとまあこんなもんでしょう。ほぼ文句なしの素晴らしい作品でした!これは最高! 【アラジン2014】さん [インターネット(吹替)] 9点(2023-10-05 13:21:16) (良:1票) |
53.くそ長い(疑似)ワンショット撮影で有名なこの作品。まるで子供が「何秒間マバタキをガマンできるか」意地になって競っているような作品ですが、ここで行われているのはそんな遊びとはまるで比較にならない大がかりな実験。スタジオ撮影の極限を目指したような、ほとんど曲芸のような作品で、その執念にはただただ恐れ入るばかりです。しかし、そりゃ映画の裏側の事情でしょ、という気もして、映画を観る立場としては、制約の多い不自然な映画、という気もしてきて、要するにこれは映画作家の自己満足じゃないのかい、という気がしてくる。もっとも、「この作品に関する限り、それは言わない約束でしょ」と言われそうですけれど。確かにこの作品、徹底した長廻しにより、独特の時間の流れがここには表現されているし、その中で繰り広げられる人間模様のモザイクの中から犯罪の痕跡が徐々に浮かび上がり、やがて「探偵役」と「犯人役」の対決へと結びついていく、という脚本の巧みさも、見事。しかしその一方で、限られた舞台という制約が、やや人間関係の描き方を肉薄にしてしまったのも否定できないかな、と。作品の創作にあたって、制約はあくまで「可能性」を示すためのものであって欲しい訳で、制約がそのまま制約と感じられてはマズいですよね・・・? という点では本作、やや制約に引きずられた面のある作品に思われます。しかし、「どーだ、これで、一般の作品でアタリマエのように用いられている“切り返し”の意義がよーくわかっただろ」と言われれば、「すみません、まだ全然わかりません、勉強します」としか答えられませんけれど。映画は本当に難しい。 【鱗歌】さん [DVD(字幕)] 6点(2010-04-19 02:45:02) (良:1票) |
52. 殺人シーンで始まる倒叙的展開がいいね。舞台劇の映画化で場面転換に乏しいが、会話劇として観れば面白い。ワンシーン演出はあまり意識せず鑑賞。 死者の上に料理を並べる行動が二人の異常性を表わしサスペンスを生む。優生思想批判を織り込んで心理的な駆け引きもあるが、社会派心理劇と言えるほどの深みはない。フィリップ(F・グレンジャー)の終始不安そうな表情が印象的。 【風小僧】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-06-06 21:16:24) |
51.優生思想批判なのだろうが、ヒッチコックにしては説教クサイかな |
50.良くできた脚本にワンカットの映像もお見事。だけどどう見ても舞台劇を映画で見せられてる感がぬぐえない。靴の上から足の裏を掻くようなもどかしさが残念。 【ブッキングパパ】さん [インターネット(字幕)] 5点(2020-08-30 20:07:08) |
49.ワンカットに見せるための工夫が素晴らしいし、リアルタイム感も出ていますが、なぜこの題材で実験しなければならなかったのかが疑問です 【カニばさみ】さん [DVD(字幕)] 5点(2016-11-05 03:14:26) |
【ケンジ】さん [ブルーレイ(字幕)] 4点(2016-07-26 17:11:25) |
47.昔見たときはハラハラしたような記憶があるが、今見ると動機なき悪趣味殺人という他ない。演劇と見ればフィリップとブランドンの好対照な性格がおもしろいのかも。 【ESPERANZA】さん [DVD(字幕)] 5点(2015-01-20 20:55:32) |
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46.2014.09/04 鑑賞。戯曲(舞台劇)らしいが殺人をゲームにするのは好みではない。それを除外すると、舞台劇らしくこの時代としては楽しくどきどき観れる。現在ではお年寄りむきでは・。 【ご自由さん】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-10-31 11:19:02) |
45.最初に見たときに、あまりスリリングじゃないなと思っていたのを思い出しながら、ひさびさに見ました。 スリリングじゃないと思った理由がなんとなくわかりました。 役者のオーバーアクションが気になったから。ジェイムズ・スチュワートでさえも、そう感じてしまいました。時代性もあるのでしょう。 犯人のふたりがやけに親密なのは実際の事件では二人が同性愛関係だったからなんですね。当時は、その辺は規制でもあって描けなかったのかな。描けていたらどんなものになったか興味がわきます。 【omut】さん [地上波(字幕)] 3点(2014-09-03 14:52:21) |
44.今ではこういったシチュエーション映画やドラマは有りますが、当時としたら面白いでしょうね。ブランドンの最大のミスはフィリップを相棒にした事。 【movie海馬】さん [地上波(字幕)] 6点(2012-06-07 23:30:37) |
43.冒頭に殺されるお兄さんのシーンを巻き戻して、4、5回観たけど、やっぱり右手がお留守。 |
42.コロンボ形式の密室劇なのだが、状況設定が中途半端なうえに、 登場人物達のキャラが明確にされていないので、この手のジャンルの面白さを実感できない。 故に人間関係もわかりづらく、「これが最初の目的だったの?」と首を傾げてしまったほど。 制作者側の狙いはわかるし、決してつまらない題材ではないのだが、 実験的作品ということで、根本的にシナリオの練りが足りなかったようだ。 後半からラストにかけて多少の緊張感は感じたが、ヒッチコックの作品としてはお薦め出来ない。 【MAHITO】さん [DVD(字幕)] 3点(2011-08-11 07:12:50) |
41.他のいくつかのヒッチコック作品に見るような想像を超えるものは無く、ロープがそんなに利いてるわけでもなくそんなにひねりがある話でもなかったです。面白いことは面白いですが。 【さわき】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-07-23 14:23:34) |
40.すごい緊張感でした、ワンカット風リアルタイムドラマ、フィリップのうそピアノがちょっと気になりました以外、見所満載でした!一回で監督を見つけることができませんでしたーorz 【HRM36】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-07-22 17:04:15) |
39.〝カット割りをしない〟という実験的な試みはやはり実験の域を越えていないという印象です。最大10分間のフィルムを回し続け、わざわざ背中で暗転させ長回しを持続させているのは巧みだとは言えますが、それが特別に有効に働いているとは思えませんし(飽くまで舞台劇の映画化という点にこだわっているのならば話は別だが)、例えば〝ニワトリの首を締めた話〟のシーンで興奮し始めたフィリップからジェームズ・スチュワートへと切り返されますが(カット割りされない別バージョンもあるのかな?)、皮肉なことに完全にカット割りされたこのシーンこそが緊張が走る映画的瞬間に見えます。それに何より観客としては意味のある試みだとは言えません。それでも、それなりに楽しめてしまうところがヒッチコックの凄いところであり、お手伝いさんがチェストの食器を片付け本を運んでくるシーンなどはゾクゾクして面白いです。 【ミスター・グレイ】さん [DVD(字幕)] 7点(2011-05-06 18:29:14) |
38.こういう撮り方をすると、セリフ回しが命だと思うが、どうも好きになれなかった。 【みんな嫌い】さん [ビデオ(字幕)] 4点(2011-01-02 17:28:21) |
37.カットの切り替えが不自然過ぎる。時間軸と観客の時間軸が一致する構成はとても面白いが、それは演劇でできるので必然性は無い。むしろ時間軸から自由になることが映画の特製なのかな、とこの映画を観て気付かされた。実験的ではあるが、ウィルソンがだんだんチェストの上を片付けてしまうシーンや、最後の謎解きでカメラがジェームズスチュアートの言うとおりに動いていくシーンなど、ヒッチコックらしさは随所に見られて良かった。ただあの理論についてジェームズスチュアートは同意してもいいんじゃないか。ジェームズスチュアートにもっと説明してほしかった。 【Balrog】さん [DVD(字幕)] 6点(2010-12-08 19:00:38) |