5.こういう「何となく面白そうだけど、見たら期待外れに違いない」と思わせる映画には、どういう訳か大抵、ニコラス・ケイジが出演している。とまで言うのは言い過ぎですが、体感的にはそんな感じがあって。
「ニコラスケイジ映画にハズレ無し」と言い切る信念も無ければ義理もなくなった昨今ですが、彼が製作者としても名を連ねたこの作品は、一味違います。面白い! ほらやっぱり「ハズレ無し」だったね、と、何度騙されてもそう思わされてしまう、それがニコラスケイジ映画。
無口で小汚いオッサン役のニコラス・ケイジが、ひょんなことから、閉鎖された娯楽施設の宿直&清掃を任される。で、そこに展示されている機械仕掛けのゆるキャラどもが、なぜか襲い掛かってくる、というオハナシ。なぜ襲い掛かってくるのかもよくわからんし(これは一応、途中で理由が明かされるけれど、正直、どうでもよい内容)、さらにはなぜこのオッサンがこんなに強いのかもよくわからん(これは本当によくわからん)、そのよくわからなさが、間違いなくこの作品のスピード感に貢献しています。まずもって、この勢いが、いい。
展示されているキャラどもが部屋の奥に佇んでいて、動いているような動いていないような、いつ動き出すかわからんような、そういう不気味さを出しているのも、いい感じ。こいつら、主に動物のキャラなので、とにかくキャラ立ちしており、いざ動いて襲ってくるとそれぞれが個性的。これも素晴らしい。襲う側・襲われる側、斃す側・斃される側、どっちも応援したくなっちゃいます。
その中で、妙に強く、妙に律儀な主人公。この人が一番、規格外。
強いばかりでなく、汚れ切った施設をしっかり清掃する彼。映画の舞台となる施設が、彼の手によって掃き清められ、その光景は映画を通じて徐々に変化していく。こういう「変化」がまた、映画の魅力。ゆるキャラどもが斃されると何だか汚い油のようなものをまき散らすのだけど、それも含めてジャンジャン清掃し片づけていくこの主人公、まさに最強です。
満足度が高い作品で、すでに高評価のようですが、まだ現時点ではどなたも9点をつけておられないようなので、不肖、私めが、9点を。