6.《ネタバレ》 まず、冒頭の部屋の中に下がった洗濯物で、だらしない雰囲気が出ています。
ブラジャーの干し方、下着とストッキングを一緒に洗ってるみたいなところ。
そして、それを取り込んでたたみ、コンビニおにぎりを食べる少女。
保護者としての「母」の不在を感じさせる巧い導入だと思います。
母性とは?普通とは?子どもの幸せとは?
ここには、いろいろなタイプの母親が出てきて見ている人に投げかけます。
産んだだけで母親になれるのか。
心が母性に溢れてるのに、トランスジェンダーだからといって母親になれないのか。
子どもをありのまま受け入れ守るリンコの母親と、反対に自分の価値観以外認めず子供を追いつめる同級生の母親。
成長したリンコを見れば、揺るぎない拠り所さえあれば強く生きていけると思われます。
同級生の人生は、この先多難だろうけど、きっとトモやリンコが力になってくれると信じたいです。
生田斗真のリンコは、本当に絶妙な人物像を演じてました。
綺麗だけど、パっと見て女性ではないなとわかる人。
お化粧してワンピース着たら女性にしか見えないような人では、この物語は成立しません。
服装センスも微妙にダサくて上手いと思いました。
優しい心根が伝わってくるような話し方や佇まいが素敵なので、ちょっと作り過ぎで鼻につくところもありますが、余り気にならずに見れました。
編み物が重要なアイテムになってるのも良かったです。
リンコにとっては母からの愛情の象徴であり、トモの母ヒロミにとっては忌まわしい母の呪い。
登場人物一人一人の、環境や背景が想像できるようなセリフや人物造形が見事だなと思いながら見ていました。
演技が上手な役者ばかりで安定感がありましたが、一番良かったのはトモ役の柿原りんかちゃんです。
大人びて見えるけど、諦めてたくさん我慢しているから。
ボキャブラリーが少ないから行動でしか感情を表せないところ。
感情がついていかなくて、ただ相手をじっと見つめるだけの表情等々。
すべてがリアルで演技と思えないほどでした。
とても良かったです。