6.《ネタバレ》 F1を題材にしたレース映画、ひいてはロン・ハワード最高の映画がまた生まれたと俺は断言しておきたい。
野性的で豪快なジェームズ・ハントと論理的でコンピューターのようなニキ・ラウダ。性格のまったく違う二人の男。
あるレースをキッカケに互いを意識しはじめ、やがて強敵(ライバル)となっていく伝記映画。
実在したレーサーが如何にスピードに狂い、敵として意識し、憎み、誇りをかけて闘い、硬い友情を結んでいったのか。
レースシーンの迫力は地面を削ったり、目の前に弾丸が放たれるような臨場感!
レースの一瞬一瞬を積み重ねていく感覚、イメージトレーニング、一般車でブッ飛ばすところからレース場の場面に繋げる演出、クラッシュの死の臭い。
負傷なんかお構いなしに美女を見つけたら速攻S●Xに励むほどエネルギーに満ちた野生児ハント。
下半身(エンジン)のピストン運動やマフラー(マラ)の方がビンビンで強そうだ。何事にも激しい戦いを好む反面、嘔吐や疲労といった“反動”もデカい。ハントにとって事故は“早漏”か“寸止め”に等しいだろうね。エンジンがトラブれば女関係もトラブる。ハントが余りにご盛んすぎてこりゃ女にも嫌われるわな。スーツまで“S●X”まみれでもう勝手にヤッてろ。
ニキは論理的に考えず勘に頼るハントが気に入らない、ハントは機械的に物事を捉えようとするニキが気に入らない。
どっちもたまにブッ壊れて、どうしようもなく負けず嫌い。
ニキの「凸」による宣戦布告から二人の壮絶な魂のぶつけ合いがスタートする。それぞれの焔に包まれて。
レースの途中で散っていく仲間は同時にライバル同士でもある。
ニキが掛け替えの無い大切な物を得ていくのに対し、ハントは次々に離れ孤独になっていく。
恋人も、マネージャーも、“強敵(ライバル)”まで。
ニキが得た怪我の痛みよりも試合でハントと闘えない悔しさの大きさ、恐怖を乗り越えて闘いの場に戻るという意地、プライド。
ハントも強敵(ライバル)として己の誇りと意地にかけて迎え撃つ。
ニキの復活試合と“生か死か”を選ぶ瞬間は劇中屈指の熱さ!
ラストの雨の中のラストバトル。ハントにとっても、ニキにとっても“悪夢”が蘇る雨でもある。
ニキが得て失ったもの、ハントが得て失ったもの。本当に大切なものはどっちなのだろうか。そんな事を考えさせられる締めくくりだった。