19.《ネタバレ》 これは反日映画ではない。誰の心にも棲んでいる"鬼"を描いた普遍的なテーマだろう。もし自分が旧日本軍の兵士だったら、軍艦マーチで否応無しに気分が高揚するし、上層部の同調圧力に耐え切れず、同じことを絶対にしている。現代に移し替えてもその本質はこの先も全然変わることがない。共存しようと尽力するが、どこか馴れ馴れしい中国の村人もそうだろう。チアン・ウェン監督は日中のメンタリズムを非常に理解している。どこかとぼけて牧歌的ながら狂気とユーモアが一体になったハイテンションな展開が戦慄のパートカラーまで続く。主人公マーは殺された同胞の復讐をしたのに、国民党主導の処刑を同じ中国人に喜ばれるなんて皮肉すぎる。ちょっと黒澤映画に似たような熱量と空気を思い出してしまったが、一番の"鬼"は一度スイッチが入ったら暴走する権力そのもの(=中国共産党)かもしれない。カンヌ初公開のみにしか見れなかった文化大革命のエピソードは今後世に出ることはあるだろうか? |
《改行表示》18.《ネタバレ》 映画が好きになったきっかけの映画 香川照之が忘れられない |
《改行表示》17.《ネタバレ》 難しい作品。とりあえず単純な「日本人として恥ずかしい」型の感想は論外ではあるが、評価はさまざまな情報を加味しないと行けなくて難しい。 ■とりあえず単純な反日映画ではないだろう。確かに全体としてのバイアス(特に「中国人の善良性」についてはなかなか怪しい)はあるが、それはそもそもあの国で戦争映画を作ろうと思ったら中国政府に肩入れするようにしか出来ない状況にある(本作でさえ「日本人に優しすぎる」と上映禁止らしいし)ことを加味すれば、まあ仕方がない側面は多分にあると思う。 ■他国の人が見てどう思うかだが、戦争映画でそんなに「何人か」って見てて気にするのかはわからないところ。似たような映画だと例えば「コーカサスの虜」を見てロシアが嫌いになるかとか、そういう感じの問題じゃないのかな。 ■ちなみに敵前逃亡ってどこの国の軍でも厳しく罰しているものだから、あれは日本だけではないと思う。 ■個人的には、マーのラスト直前での行動があまりに突発的なので、そこをもう少し自然な感じでつなぎ合わせた方がいいと思った。あれだと本当にただ気がふれただけだし。 ■あと、あまり注目されていない気がするが、トンの処刑は意外と重要だと思う。マーは曲がりなりにも殺人者なわけで殺されてしかるべきともいえるのに、その処刑には自らの手を汚したがらない。他方でトンはあの状況下ではどうしようもない展開をたどり、最後には処刑されるのだが、それは躊躇せず中国軍で処刑する。そして二人とも笑顔で死ぬ。。。 ■何人かの方が触れているように、本作では「権力」「上下構造」が虐殺・殺人を招くというのがメッセージに含まれているだろう。だがその上で言うと、それだけでは実際にはなかなか殺人というものは起きず(人間は罪を犯したくないもの)、引き金になるのは「透明性(誰が殺したかわからない、死んでも自分のせいではない)」である。その意味で、虐殺の引き金となる花屋の刺殺もマーの殺人も「顔の見える状態での殺人」であり、現実の戦場とは違うなぁと思ったり思わなかったり。 【θ】さん [DVD(字幕)] 10点(2012-03-10 00:21:43) |
《改行表示》16.《ネタバレ》 凄い映画に出会ってしまいました。脚本は完璧と言っていいほど良く練られていますし、リズミカルでテンポ良くしかもユーモラスな場面が散りばめられて進行していくこともあり2時間20分の間ずっと心を握られっぱなしでした。何といっても、まったく展開の予想がつかないので本当に衝撃の連続という感じでした。 キャストも非常にすばらしく、特に香川照之の窮地に追い込まれた兵士の狂気が入り混じったような演技は凄まじかったですね。音楽も、「軍艦マーチ」が非常に効果的に使われていたと思います。反日感情の強い中国の作品ではありますが、日本軍(兵)の描き方についても変に偏ったものではなかったので、あまり違和感を感じることなく受け入れられましたね。日本が悪いとかそういうレベルを超えた、中国という国が本来持っている戦争観が出ているような気がします。 後味は決して良くはない(というか非常に悪い)ストーリーではありますが、多くの人に観てもらいたい作品です。 【TM】さん [DVD(字幕)] 10点(2007-11-23 20:01:41) (良:1票) |
15.《ネタバレ》 白黒のはずなのだが違和感が全くない。最後カラーになって「白黒だった」と思い出した。 【ネネ】さん [DVD(字幕)] 10点(2007-07-24 12:37:28) |
《改行表示》14.見てて常にドキドキさせれたり、笑ったり、忙しい映画でした。腫れ物に触るように、相手のリアクションを伺って見ている感じ。キレるんじゃない?そんなん言うと・・・ぁぁ 大丈夫か・・・あ・・・やっぱキレた、みたいな。みんながみんな浅はかだし、したたかだし、虚勢も張る。大きい人間だ、って思われたいもん。でも、実際思ってるより小さいからややこしくなってくるし、周りも腫れ物みたいに接するんやろうな。しかも、相手が外国人とくれば、もっと複雑。できたばっかりの友達に、冗談どこまで通じるかなぁとか不安に思う経験って誰にでもある。そんなもんやろ。ちょっとおちょくったらエラいキレられたり。そんな人間同士の駆け引きの浅ましさがリアルで、どんな戦争映画よりリアルに映ったかな。日本にも中国にも偏らず描かれていたので、不必要なイライラも全くなく楽しめた。傑作が出たよ。 【ハッシーふりかけ】さん [DVD(字幕)] 10点(2006-04-24 04:29:54) |
13.《ネタバレ》 観る前は、タイトルからして単なる反日映画かと思っていた。だが実際は違った。日本兵も、平素は、みんな人間らしく描かれている。どこからどうみても、日本人を単純に悪人扱いしているようには見えなかった。鬼はもともと人の心の中に潜んでいて、権力を行使した人間、あるいは行使された人間のなかで、突然暴れだす―――――そう言っているとしか思えない。具体的に言うと、映画のポイントは「権力」、あるいは「立場」だろう。アメリカを中心とした連合軍は国民党を利用し、国民党は日本人を収容したあとも、日本軍隊内部にあった主従関係をそのまま利用した。マーの処刑シーンは、国民党の命令を受けた酒塚隊長が、「日本兵はすでに武器を放棄したから、体の一部である刀を使わせて欲しい」と、花屋に刀を渡してその役を押し付ける、という奇妙な構図。こんなややこしい主従関係さえ存在しなければ、花屋は命の恩人を自らの手で葬る必要などなかった。自分は人の上に立っている、あるいは、人の下に立っている、という感覚を持っているからこそ、人は鬼になれるということだ。その象徴である村の焼き討ちシーンは、すごく考えさせられるものがあった。村人たちを命の恩人ととらえていたはずの花屋が、村人が隊長に馴れ馴れしく接したことにカチンと来て、殴りかかる。それが発端となり、日本兵たちはいっせいに村人の虐殺を開始、村はあとかたなく焼き払われる。あれだけ村人に感謝していた花屋がなぜ?というのが当たり前の疑問。しかし、中国で現地人の持つ気質を実際に知ってみると、妙に納得できる。中国人が持つ独特の親しみやすさ(馴れ馴れしさ)と、日本人が持つ独特の礼節(主従関係)。それらが悪いかたちですれ違いを起こせば、たしかにああなる。中国で暮らしている身として、痛いほどそれを実感する。繰り返すが、これは日本を単純に悪者扱いする映画ではない。実際、この映画は中国で上映禁止措置を受けた。日本人の描き方が人間的に過ぎたから、といわれている。でも、現地人たちは多くがこの映画を知っている。「戦争について考えさせられた。いい映画だった」と話す人が多い。つまり逆に、われわれ日本人はこの映画に感謝すべきなのである。罪を憎んで人を憎まず・・・。この映画が全人類に向けて発する強烈なメッセージである。 【九寨溝】さん 10点(2004-11-27 02:23:45) |
12.基本的に評価は甘いけど10点だけはなかなかつけないと自負しているのですが、この作品に10点を付けざるを得ないのは、私の器では評価しきれない作品だと思ったからです。ストーリー性がどうたらとか技術的にどうたらとかそうゆう範疇を凌駕していて、ただただ圧巻。そして面白くて飽きません!衝撃的な場面もコミカルに演出し、不謹慎と思いつつもつい笑いが漏れてしまいます。見終わった後は「すごいものを見てしまったなあ…」の一言。すごく複雑だが決して悪くはない後味。同じ言葉で申し訳ないけど、かわいそうだとか残酷だとかそうゆう感情をも凌駕しているのです。この作品を目にすることが出来て本当によかったです。一度は絶対見るべきです! 【涙姫】さん 10点(2004-07-19 03:57:25) (良:1票) |
11.鬼というのは誰が鬼かではなく全ての人間の持つ鬼の部分を言いたいのではないでしょうか。日本軍が残忍なのではなく、たまたま軍人が日本兵であっただけであり、立場が変われば彼らも同じなのであり、残忍なのは軍隊であり、戦争なのです。花屋自身も武士でもなんでもなく彼らと同じ百姓なのであり、心を通わせつかの間の幸せを味わう。が百姓たちと絶対的に違うのは花屋がすでに軍人として人を殺して鬼になったことがあること。百姓たちが鬼になり花屋を殺していれば、あの村に悲劇は起きなかったかもしれない。首を切る鬼、首を切られる鬼よりも恐ろしいのはその光景をただ眺めている鬼どもである。 【亜流派 十五郎】さん 10点(2004-02-27 21:31:25) |
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10.戦争の残虐性、不条理さを辛口なユーモアも含めここまでうまく表現した作品は数少ないと思う。 【のりまき】さん 10点(2004-02-10 06:29:28) |
《改行表示》9.《ネタバレ》 ラストの色彩で寓話の世界から現実に連れ戻されたような気がした。プロパガンダ等とは縁のない、真に映画的な作品だと思う。不条理・・・フジョウリ・・・まばたき三回・・・にこり。 それでも生き残ったものは生き続ける。オニハダレ? 【それる】さん 10点(2004-01-16 00:04:24) |
8.映画とはこうあるべき。安易な感情移入を許さない。歴史検証、文化論も必要ありません。無用ですね。見終わった後の突き放された感じ・・・ 【草川ひゅー馬】さん 10点(2003-07-11 14:22:49) |
7.最高の映画です。姜文の次の作品も期待しています。 【中神通】さん 10点(2003-07-08 22:43:55) |
6.感動!特にラスト30分は衝撃!香川照之エエわあ。日本軍の描写に賛否があるかもしれんけど、当時の状況を考えるとリアルだと思う。 【なかなか】さん 10点(2003-04-27 02:34:06) |
5.何年かに一度こういう映画に出会って、ああやっぱり映画を観ていてよかったなと思う。私にとってはそういう価値の高い作品でした。面白くも気味悪くも恐ろしくも腹立たしくもありで、観ている間は肉体的直感的に自然にいろんな感情が沸いてでてくる。これは映画の完成度の高さに由来するところが大きいのだと思います。その上で改めて人間の滑稽さだとか醜さだとか戦争の罪深さだとかに思いを馳せずにはいられない奥深さを持っているところが秀逸です。そして何より、それを生み出した冷静で深く鋭い眼力とゆるぎないほどの強い意志と圧倒的なエネルギーをもつ監督の存在は実に貴重だと思います。 |
4.日本人と中国人とか、侵略する側される側とかそういうものを超えて、他人を理解することとは何かってのを考えさせられて、映画を見た後しばらく新宿の人ごみをふらふらしながら、この人たちはいったい何を考えてるのだろう・・・とか人ごみがちょっと怖くなりました。中国人と日本人の言葉の壁、文化の壁、立場の壁といった分かりやすいものだけでなくおそらく最後の惨劇につながるシーンでは心の底から宴を楽しむ日本兵たちと酒塚の間にもギャップはあったはずだし、酒塚にしても降伏した本国との間に納得行かないものを抱えていたはず。そしてそういったギャップから一瞬前まで分かり合えていたつもりの者たちが平気で殺しあえてしまう。実際に世界で起こっている悲劇ってのはそういうことなんだろうなぁとか考えさせてしまうほどの強いインパクトを持った作品でした。 【らんたろ】さん 10点(2003-01-13 04:14:39) |
3.主演の人の演技がすごく迫力があって惹きつけられた。日本と中国ていう構図もあるけどそれ以上に人間としての姿を描いていると思った。村人たちが困惑して人間関係に亀裂が入ったりまた協力し合ったり裏切ったり・・・。花屋たちに対しての態度も花屋の村人に対する態度にも途中変化があって面白かった。そして後半部は非常にドキドキさせられた。殺し合いのシーンではそれまでの人間関係の波乱さが究極化されたイメージだった。それと、開始直後のスピーディな展開も飽きることがなくて良かった。 【kaneko】さん 10点(2002-10-29 00:47:20) |
【GO】さん 10点(2002-09-06 17:39:22) |
1.姿を見せない「私」なる人物から、ある日突然通訳ともども一人の日本軍兵士を捕虜として囲うことになった中国農民たちの戸惑いと困惑。言葉の違いによる珍妙なやりとりなどが面白おかしく描かれていき、やがて心を通わしていくという前半のコミカルなタッチからは想像も出来ないほど、ドラマの後半は一気に緊迫感漂うシリアス・ドラマへと変転していく。ここに終戦間際の両国の対照的な立場の構図が明確に浮き彫りにされていく。日本人も中国人も同じ人間であるにも拘わらず、まさに軍の規律・論理というものに翻弄されていく姿は、実に滑稽で愚かしく、そしてひたすら哀しい。中国側から両国を極めて平等にそして正当に描いた、おそらく初めての作品ではないだろうか。全編白黒スタンダードで貫かれているが、唯一カラーに転ずる幕切れの強烈さは実に効果的で、今年観た作品中、最も衝撃的で価値ある重要な作品として、興味が尽きることはない。 【ドラえもん】さん 10点(2002-07-29 00:17:49) |