1.《ネタバレ》 映画がラストで裏方の功労者を賞賛するのなら、
その彼らの労働を前段で何らかの形で描写すべきだろう。
同様に、ラストで名残を惜しむ部下とベン・スティラーの対話を出すのなら、
その裏付けとなる二人の信頼と協働の関係もせめて描写しておくべきだろう。
そして肝心なカメラマンのショーン・ペンとの信頼関係が語られるのなら、
それは口先ではなくそれこそプロフェッショナルとしての
具体的なネガ現像処理の仕事の確かさによってであるべきだろう。
それらが見事なほどに端折られている。単に説明で済まそうとは虫がよすぎだ。
そこに、裏方仕事など描写に値しないとの作り手の考え方が露呈しているわけだが。
本作が冒頭から描くのは、主人公の同僚の女性に対する懸想だけであり、
会社のモットーやら、仕事への矜持やらは主人公の自己申告による
単なる説明台詞があるだけだ。
一見地味で、単調で、脚光の当たらぬnegative asset manager としての業務。
それを具体のアクションとして見せておいてこそ、
それを切り取った一瞬間の表紙写真がラストで
感動をもたらすのではないのか。
(そもそもマクガフィンを見せてしまう事自体、とてつもない野暮だが。)
その抑えたタメがあってこそ、主人公の乗り出すpositiveな冒険の開放感が
引き立つのではないのか。
前半の派手な妄想の視覚化もインフレ状態で、逆に主人公の飛び出すロケーションの
インパクトを相対的に弱めている。
彼が翻意してヘリに飛び乗る瞬間のエモーションも活きてこない。
映画的センスとやらを疑うしかない。
次第に魅力を増していくクリステン・ウィグが救いだ。