7.《ネタバレ》 最後がハッピーエンド過ぎて納得いかない映画ってのがありますが、これもそんな一本。
主人公のワトソン達と、ティングル先生。どっちが悪いかといえば「ワトソン達」で、どっちが被害者かといえば「ティングル先生」なのに「前者は無罪放免」「後者は教師をクビになる」って結末を迎えちゃいますからね。
最後は主人公三人で、笑顔の卒業式を迎えて終わる訳だけど
(……それで良いのか?)
とツッコむしか無かったです。
「スクリーム」「ラストサマー」「パラサイト」と同じ脚本家(本作では監督も兼任)という事で、90年代のティーンズ映画らしい魅力が詰まってる事。
舞台の大半が「ティングル邸」に限定されている為、小さな世界の「舞台劇」めいた魅力を味わえる事など、良い点も色々あるんですけどね。
主人公ワトソンの犯行動機というか、ティングル先生と戦う主因が「ママと同じ人生は歩みたくない」っていう想いゆえなのも、非常に残酷で良い。
これ、ママさんが酷い母親って訳じゃなく、娘想いの優しいママさんだし、母娘仲も良いはずなのに、それでも尚そう思ってしまうというのが、何ともやるせないんですよね。
(たとえ夜勤で毎日大変でも、夫に逃げられようとも、娘に愛情注いで育ててる立派な母親じゃないか)
と、自分としてはそう感じる訳ですが、それでも娘側の「こうはなりたくない」って想いに、説得力があるよう描かれてる。
「親のようになりたくない」「自分が思い描く理想の大人になりたい」という感情のままに行動する主人公ってのは、等身大の若者らしくて、リアルだったと思います。
それと、悪役になるティングル先生が魅力的なのも良かったですね。
そりゃあ彼女は日頃から意地悪だし、不倫もしているしで「悪い人」なんだろうけど、作中で描かれている限りでは「監禁されている被害者」な訳で、どっちかというと彼女側を応援したくなりますし。
作中で何度か言及されている「エクソシスト」の悪魔のように、巧妙に話術を駆使して窮地を脱しようとする姿は、文句無しで主人公達より恰好良かったです。
あと、不倫相手のウェンチェルコーチが、彼女との逢引では「従順な奴隷」となっちゃうのは、如何にもって感じで笑っちゃいましたけど……
個人的には、日頃偉そうな態度のティングル先生の方が「奴隷」になっちゃう関係性の方が、ギャップがあって可愛く思えたかも。
脇役&女友達枠のジョー・リンの描写も面白くって、主人公のワトソンより華やかなルックスなのに「私は脇役じゃないわ」って劇中で言わされちゃうのが、実に皮肉が効いてましたね。
「女優の才能が無い」と言われた仕返しのように、ティングル先生を騙すのに成功するのも痛快でしたし……
三角関係の泥沼を乗り越え、主人公ワトソンとの友情を選ぶ展開になったのも、嬉しかったです。
こういう「報われない女友達」枠が好きな自分としては、とても好みのキャラクターでした。
ただ、唯一のメイン男性キャラであるルークについては不満があるというか……正直言って、魅力を感じない存在でしたね。
そもそもの発端というか、諸悪の根源と言えるのは「答案を盗んだルーク」のはずなのに、なんか「優しい王子様」みたいな扱いを受けてて、違和感が拭えなかったです。
成績の書き換えを提案したのも彼だし、作中で一番「悪魔」と呼ぶに相応しいのはワトソンでもティングル先生でもなく、ルークじゃないかと思えました。
……とまぁ、そんなこんなで、劇中では散々な目に遭ったティングル先生だけど、生徒のワトソンに「皮肉」の意味を教える事が出来たって意味では、少しだけ報われたのかも知れませんね。
クビになった後の彼女については一切描かれていないけど、何とか立ち直って欲しいものです。