1.《ネタバレ》 食事シーンの沢山ある映画はいい。上野樹里、リリー・フランキー、藤竜也の三人がテーブルを囲むフィックスのショットに流れる時間の
何とない気まずさとぎこちない対話、やがてドラマの進行と共にそこには温かみが感じられてくる。
出される料理はシンプルながらも上野の手料理で、柿を剥いたりフライを揚げたりの調理もさりげなく描出されているのが監督のセンスだ。
古屋敷で夜を明かすシーンも、酒を燗することから微妙に変わっていく場の空気がショットの中に捉えられている。
上野が一人で酒やビールを呷る、その飲みっぷりの良さや、リリー・フランキーがウスター派の藤の前で遠慮がちに
中濃ソースをトンカツにかける仕草なども微笑ましい。
食事や、家で寝そべってのくつろぎ、庭いじり、本屋でのアルバイトの描写。それら生活行為の丹念な積み重ねによって
キャラクターが少しずつ肉付けされていく作劇がじんわりと楽しい。(伊藤さんの素性は謎のままだが)
ラスト、藤を追って走る上野はカメラ移動によって前向きのショットで捉えられる。素敵な笑顔と共に。