6.《ネタバレ》 こういったタイプの映画なのだから、性的倫理観は一時的にオフにしておこう……と覚悟を決めて観賞に挑んだのですが、予想を上回る衝撃を受けてしまいました。
といっても、性的にインモラルという意味での衝撃では無かったのですよね。
予備知識として仕入れておいた原作小説の「人妻との密通」「少年愛」などは、劇中では全く描かれていません。
その代わりのように、主人公の独特の価値観、奔放な生き様が濃密に描かれていたのですが、それがどうにも面食らってしまう代物だったのです。
他人の恋路を叶えてあげる為に、千両も払ってみせる姿は、そこだけ見れば確かに格好良い。
けれども、そのお金は主人公が働いて稼いだ訳ではなく、父親を騙して持ち出した代物だったりするのだから、大いに興醒め。
勘当された後に、何処か他所で一山当てて凱旋し、父親に借金を返してみせるストーリーなのかなと思ったら、それも全然違っていたのですよね。
父親が病気で死に掛けていると知るや「しめた!」と喜び、ちゃっかり実家に戻って遺産だけ受け取り、再び女遊びに耽るような主人公には、流石に肩入れする事は出来ません。
作中で「飯よりも女子が好き」と言いつつ、食欲に負けて愛する女を一人にしてしまい、不幸な結果を招いたりと、どうも一貫性が感じられない辺りも気になりました。
そういった訳で、自分としては、あまり好感が持てないタイプだった主人公の世之助。
それでも作中にて、彼と関わったお蔭で幸せになれた女性もいた事は、喜ぶべきなのでしょうね。
最後の「船出」で終わる場面も、現実逃避というより、ずっと前向きな
「もっと沢山の女子と出会って、彼女らを幸せにしてあげたい」
という主人公の願いが感じ取れる辺りは、好みの結末でした。