28.邦題では「ヒトラー」を前面に打ち出してますが、内容は「第三帝国最期の12日間」。敗色濃厚な軍事政権がどういう末路を辿るのかを、淡々としたドキュメンタリー・タッチで見せてくれます。私が感銘を受けたのは映画本編よりも、ラストに登場するトラウドゥル・ユンゲ本人のインタヴュー。とかく我が国では戦時下を描く場合、「大空襲の悲惨さ」「被爆の悲劇」「横暴な憲兵や軍人」等を取り上げ、「一般国民は戦争の被害者である」ことを強調する場合が多いと思う。本作を観れば被爆を除いて、ナチス・ドイツも同じだったことが良く解る。しかしユンゲは語る、「私にも責任がある」と。その通り。ヒトラー一人では決して戦争は起こせません。国民一人々々の支持があってヒトラーも戦争が起こせたのであり、それは我が国も同じこと。もちろん多くの日本人が戦争被害者であったことに変わりありませんが、同時に加害者でもあったという視点も忘れるべきではありません、7点献上。 【sayzin】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-08-26 00:10:10) (良:3票) |
《改行表示》27.ハリウッドにとって戦争映画は娯楽の範疇に入るジャンルですが、一方敗戦国である日本やドイツにとって直近の戦争はナーバスな題材であり、これを扱うことには相当なプレッシャーがかかります。とりわけ本作の題材は国際的な物議を醸すことが分かり切っていたものだけに、ドイツ映画界は相当な覚悟を決めてこれに臨んでおり、ファーストカットから「これは並みの映画ではない」という張りつめた空気感が漂っています。それは、見ている私までが緊張させられたほどであり、他の映画ではちょっと味わえない感覚に満ちています。 物語は、一義的にはナチス崩壊の過程を知ることができる歴史作品なのですが、普遍的なリーダーシップ論や組織論として見ることもできるという、一粒で二度おいしい仕上がりとなっています。圧倒的なカリスマ社長のワンマン経営で引っ張られてきた会社が、いよいよ倒産という事態に陥った。社長のコバンザメに徹するという処世術で出世してきた幹部達は何の打開策も打ち出せず、根性のある一部の外様部長達が現実路線で粘って何とか現場が持ち堪えているという状況です。経営者は「お前らが言うことを聞かなかったからこんなことになったんだ」と部下を怒鳴ったり、現実的にありえない新規事業や大口融資を根拠とした起死回生案を側近のイエスマン達に向かって得意気に披露したりと、そこはまさに修羅場なのですが、職業柄、私が見てきたベンチャー企業の末路は本当にこんな感じです。何らかの組織のリーダーをやっている方は、本作を見ると少なからず身につまされる発見があるのではないでしょうか。 問題点は、登場人物が多すぎてドラマがやや散漫となっていることでしょうか。ドイツ人にとっては名前を聞いただけでピンとくるナチス幹部であっても、我々日本人にとっては名前こそ知っているが何をした人なのかは分からないという人物が多いため、ドラマへの没入感がどうしても薄くなってしまいます。 ドイツでの公開時には論争を巻き起こしたとされるヒトラー関連の描写については、ナチスをタブーとしない日本人にとっては大してセンセーショナルなものでもなく、こちらでもやや拍子抜けさせられました。ヒトラーは充分すぎるほど否定的に描かれているし、映画全体の内容もナチズムを賛美するものではなく、なぜこの程度の描写に怒る人がいたのか不思議に感じたほどです。ヒトラーは『イングロリアス・バスターズ』に出てきたような癇癪持ちの小男でなければならないとするのであれば、それこそ歴史を矮小化する行為ではないでしょうか。現実離れしたモンスターと、普段は紳士であるが敵と見なした相手にはいくらでも残酷になれる指導者、どちらに警戒せねばならないかと問われれば絶対に後者の方でしょう。 もうひとつ残念だったのは、冒頭とラストに主人公・ユンゲ(及び本作製作者達)の逃げ口上ともとれるナレーションを入れてしまったこと。「ヒトラーに仕えた私は愚かでした」という現在の価値観に基づく発言が入ってしまったために、歴史映画としての価値が少し下がりました。そこは徹底的に戦時中の描写に徹し、製作者は良いも悪いも判断しないという姿勢を貫徹して欲しいところでした。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 7点(2016-02-23 14:03:59) (良:2票) |
26.エバ・ブラウンはなぜあんなにオバサンなのか?すごく若いのではなかったか?調査不足ではあり得ない意図的な設定と思われるのでこの点が興味深い。ゲッベルス役の人の顔が人間離れしていて怖い。腹話術の人形のようだ。ゲッベルス夫人役の女優さんがすばらしい。アカデミー賞をあげたいと思う。首相夫人としての威厳を最後まで保った彼女を演じきった。以下ヒトラーとナチス時代のドイツ「人」について思ったこと。ヒトラー、ブルーノ・ガンツの演じる彼を見ていて、「ああ、この人ってもしかして、子供の頃におもちゃをあんまり買ってもらえなかったのではないかなあ」と、ごく自然に感じた。私にはヒトラーが、「欲求不満のまま大きくなった男の子」に見えた。それだけならよかったけれど、たまたま彼には人並みはずれたIQと、弁舌の才と、小心者ゆえの人の裏切りにするどい嗅覚があったためにこんなことになったのではないかなあ。案外そんなところじゃないかしら。どんな権力を手にした人間も、それが「男性」であれば、問題の根っこはくだらないところにある、というのが私の長年の研究結果である。ベルリンは、彼が造った最も高価なおもちゃであって、他人に盗られるくらいならその前に壊してしまえ、という幼稚な感情が伝わってくる。本当に幼稚園児の発想だよねえ。IQ高そうだけど。ドイツ「人」について。彼らはなぜヒトラーを選んだのか。「先の大戦」の敗戦により屈辱と苦難を強いられたこと、これは民族のトラウマとなっている。「降伏は二度とごめんだ」という言葉にも現れている。国内事情が良くない時、日本は「国の外」にしわよせすることで切り抜けようとしたが、ドイツでは、「国内の敵」にしわよせしようとしたんだな、きっと。特定の民族や、障害者の地位を下げるということは、「そうでない人」が相対的にグレードアップすることに他ならない。「そうでない人」のドイツ人がこれを「よし」としたのは、損得勘定からいえば自然なことだ。良心をワキに追いやれば。(このごろの日本もこれに近づいているな)「あいつはとんでもない悪魔だから非難していればいい」と、ヒトラーとナチス・ドイツの時代に蓋をするのではなく、その時代を生きた自分と同じような市井の人々の心情に想像力をめぐらすことこそが、「知性」の使い道と思う。私の場合はそのために実話もの映画を見ることが多い。(司馬遼太郎のうけうり) 【パブロン中毒】さん [DVD(字幕)] 7点(2006-03-08 00:01:22) (良:2票) |
《改行表示》25.よくできた戦争映画という感じ。 歴史物の映画をガッツリ見たいという気分の時には良いと思う。 ちょっと、ヒトラーがあまり似てないのが気になるが ナチスドイツの最後をしっかりと描いていて歴史の勉強にもなる。 【シネマファン55号】さん [インターネット(吹替)] 7点(2021-07-19 22:10:55) |
《改行表示》24.追い詰められた人々の悲壮感、ヒットラーの狂気、破滅に向かう中での人々の悲劇的な最期。 それらが強烈に心に来る。 ヒットラーやナチスと言えば今や世界中から忌み嫌われる存在ではあるが、それでも彼らが追い込まれ絶望し、自ら命を断つ姿は、胸を刺すものがある。 また、ヒットラーという人間やその考え方に、人々がいかに陶酔し、信仰と言ってもいいほどにのめり込んでしまっている姿も色々考えさせられるものがあって面白い。 世界中でパロディにされているという、日本でも主にニコニコ動画でよく目にする総統閣下のお怒りシーンもあるので、そこも必見かもしれない。 ただ、この手の史実モノは観る人を選ぶであろう というのもお話それ自体に大した面白みはない。ドラマ性が低い、派手なアクションシーンがあるわけでもない。 それでもこの映画を面白いと思えるのは「実際にあったから」という、これに尽きる。 なので史実モノが好きでないなら、そこまで楽しめないであろう。 あと細かい事を言うと、爆弾が落ちるたびにカメラが揺れるのだが、ちょっと揺らし方が強すぎ。ちょっと不快感があった。 色々書いたけれど面白い映画だった。 【椎名みかん】さん [インターネット(字幕)] 7点(2020-11-15 23:31:39) |
《改行表示》23.映画としての面白さを求めてはいけない、ドキュメンタリー的に見るべき作品かもしれない。 戦争映画として十分な悲惨さを表現できていることと、事実としての忠実さについてドイツ内で一定の評価をされているという点で、信頼できるし教養のために見ておくべき映画だと思います。 【さわき】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-02-12 23:36:52) |
22.長さは気になりません。最後まで、見れたと思います。どれほど、現実に即しているかは定かではありませんが、淡々と終焉を迎える上層部の様子が非常に面白かったです。 【doncdonk】さん [DVD(字幕)] 7点(2011-06-14 12:49:37) |
《改行表示》21.人間というものを鋭く描いている作品だと思いました。 余談ですが、Youtube等の動画サイトに最後の作戦会議のシーンの字幕を変えているものが多数出回っています。 それを見てしまったがために、どうしても本作がコメディに見えてしまう… 【TINTIN】さん [DVD(吹替)] 7点(2010-02-07 00:09:35) |
20.予想に反してヒトラーの映画ではなく、第三帝国の最期を描いた映画だった。邦題に偽りありだ。とはいえ、俳優の熱演や市街戦の描写が色あせることはない。誰が加害者で誰が犠牲者なのかはともかくおいておいて、戦争が引き起こすダイナミズムが広範な個人に与える影響の大きさに、今更ながら驚かされる。 【センブリーヌ】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-10-19 16:33:45) |
19.自分が漬け物石の下敷きになった白菜のようになり、水分がぐいぐいと押し出されるような映画です。もちろんヒトラーは憎まれるべき存在ですが、一種の同情に似た哀しさも感じます。 【Balrog】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-06-21 22:07:32) |
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18.とにかくブルーノ・ガンツをはじめとする俳優陣の演技力を賞賛。こういう重く暗い映画は好きではないのですが、観終わった後、思わず実際の登場人物たちの情報をネット調べてしまうほど、はまりました。 【カロ】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-05-31 18:38:04) |
17.戦争中のものすごい緊迫感と正常を失った独裁者にわかっていながら従わざるを得なかったドイツ将校たちの悲哀が感じられて、いい映画だなあと思った。ヒトラーの描写はものすごくリアリティを感じるが、実際この映画はどのくらい真実を描いているのでしょうか。歴史を描いた映画をどんどん観たくなりました。 【ぽじっこ】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-02-01 17:47:27) |
16.感想をこと細かく書いてしまうと政治思想を書くことになるだけなので、省略させていただきます。興味深い内容であり、考えさせられる映画であることは確かです。第二次世界大戦をテーマにしたたくさんの映画の中でも名作だと思う。最後に事実を1つだけ紹介する。ベルリン陥落後、ソ連兵がベルリン市民の全女性の50%を強姦し、そのうち10%が性病になった。(ソ連兵は戦地で女性を強姦するのが褒美として認められていた)それを理解していると真岡郵便電信局事件による自決の背景もよりわかってくるのではないだろうか。 【あるまーぬ】さん [映画館(字幕)] 7点(2008-12-04 01:36:45) |
15.まるでドキュメンタリーを見ているかのような錯覚すら覚えるほど、リアリティのある映画でした。監督の個人的な主張はほとんど反映されておらず、あくまで歴史の真実を伝えようとしています。多くの人々の視点から語られているため、これといったクライマックスがなくなってしまったのが、唯一残念な点であります。邦題はもう少し考えてつけて欲しかったよね。 【shoukan】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2008-11-22 18:13:17) |
《改行表示》14. この映画がどの程度史実に近いのか、正直よくわかりません。ただ、日本でもドイツでも本質的な部分では同じなのだなと感じました。できるだけ多くの人に見てもらいたい作品です。 【海牛大夫】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2007-12-08 15:38:37) |
《改行表示》13.写真等で知っているヒトラーと見間違うほど似ており、迫真感あり。 でも最後の最後まで独裁者には立ち向かえ無いのか・・・。 現在の北朝鮮の金正日、ロシアのプーチン等、怖い怖い。 【ご自由さん】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2007-12-05 19:38:24) |
12.ナチスドイツの最後が、良く描かれていましたが、国民が死んでも良いなんて考えられません、又毒ガスの虐殺が描かれていなかったのは残念です。 【SAT】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-10-21 22:57:25) |
11.ナチス(上層部)の終焉がうまく描かれています。でもちょっち長かった・・・。考えさせられたのは「国民が死ぬのは、選挙で私を選んだ国民の自業自得だ」的な話がでてきたところ。無茶苦茶に聞こえるが、あながち間違ってもいないような気がした(もちろん一番悪いのはナチス・ヒトラーだが)。そういう意味でも選挙は大事ですよね。 【すたーちゃいるど】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-08-15 23:04:36) |
10.タイトルでも分かるように、この映画ではヒトラーの黎明期・全盛期は取り上げられておらず、既にドイツが敗戦濃厚となったシチュエーションから始まります。したがって未だにカリスマ性を持ち続けている強いヒトラー像は何処にもなく、最早気弱でヒステリックなオヤジでしかなく、このような人間味と悲哀を伴った映画の中のヒトラー像は新鮮でした。 |
《改行表示》9.最後の12日間、もはや崖っぷち。 戦況、兵士たちや将校、そしてヒトラー自身の精神状態に至るまで。 まるで余裕が無い、終始転がり落ちていく様を見せつけられたという感じである。 押し寄せる敵軍の波、対するヒトラーの心の揺らぎ。 丁度良い塩梅で描かれていたと思う。 勝ち目は無い、だが撤退も降伏も拒否しどうすることも出来ない状況。 そこで一人怒りを露わにしわめき散らす姿、その背中は小さく哀れみさえ覚える。 国民は逃げ惑うだけか、単なる被害者なのか。 その辺りも作中で軽く言及していて感慨深い、身につまされる思いである。 見応えはあったが終盤に長さを感じてしまった。 【HIGEニズム】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-11-15 21:44:08) |