1.シルヴィア・プラスは20世紀を代表する女流詩人である。作風は椎名林檎や鬼塚ちひろに似ており(かなり語弊があるか?)、また人生は金子みすゞや高村光太郎と千恵子の関係を髣髴とさせる。本作では彼女の主な詩を適度にちりばめつつも、あくまで主眼は彼女自身の人生に向けられ、テッド・ヒューズとの出会いから結婚、出産、破綻、死までをどちらかといえば淡々と客観的に描いている。演出は細部まで気が利いている。新婚時に彼女が山のように焼くパイは、彼女が自殺に使用したガスオーブンを連想させる。ボートで遭難しかけるシーンの海のうねりは印象的だ。その後の波乱の人生を象徴するように観る者の不安感を煽る。テッドの強力な才能によって彼女は、詩人と女性との間で引き裂かれた。人並みの幸福と創作は両立しないのだろうか。しかしそのおかげで我々は現在彼女の素晴らしい作品群に触れることができる。結局幼い頃に父親を亡くして父性愛に餓えていただけなのだ。それが死後にフェミニズムのイコンとして祀り上げられたのは皮肉な話ではある。同じくイギリス映画の「アイリス」と見比べるのも一興かもしれない。興味のある方はどうぞ。