2.刑務所や収容所モノによく見られる、囚人同士の喧嘩も無ければ、
刑務所・収容所映画の見せ場の1つである、看守との息詰まるような心理戦も接近戦も見せない。
台詞も音楽の使用も最小限にとどめられ、ナチスの行為への直接的描写も控えられ、徹底的に地味に撮られた作品。
邦題の通り、主人公の男の手記を読んでいるかのようですが、淡々とした描写の中に常に緊張感が張り付いています。
銃殺刑の直接的描写は無いですが、銃の音が遠くから聞こえてくる度にドキッとさせられる。
銃の音、足音、様々な生活音、脱獄の準備や決行の際に出てしまう音・・・。音の使い方が凄い。
まるで主人公の男と行動を共にしているかのごとく、かすかな物音に耳をそばだてながら見ている自分に気付かされる。
ここまでエンターテイメント性を排し地味な作品であっても見る者の目も耳も釘付けにし、
かくも強烈に印象に残る映画になるものかと驚かされます。