2.アンソニー・ホプキンス主演(オセロ役)BBC制作のバージョンと比べると黒人俳優をオセロに起用し、貴公子(例えばハムレット)の役もこなすブラナーのイアゴー(BBC版ではチビハゲの中年男)は斬新だと思います。でも、本作品のオセロの演技はともかく、スキンヘッドとイヤリングはいただけませんでした。これではまるでヴードゥー信者かイスラム教徒みたいです。黒人エリートを主人公とするこの物語が生まれるのにはやはり、実力があるものが尊敬され成功する自由都市に対する信頼が主人公にしっかり身についていることが前提で、だからスキンヘッドの主人公がいけないとは言いませんが(ハゲになりそうだからわざとスキンヘッドにする人もいるし・・・)、ヴードゥー信者やイスラム教徒を彷彿とさせる主人公はいただけないですね。かと言って、顔を黒塗りにした青い目のアンソニー・ホプキンスが演じるオセロもクールすぎてしっくりこないですし・・・。黒人を劣等人種に勝手に仕立て上げたのはアメリカ南部に入植してアフリカから奴隷を輸入した白人連中で本来は能力・気質などに人種間で差異はないはず(文化間ではありかも・・・)なので、その点を人種の区別はあったかもしれないけれど差別はなかった自由都市ヴェニスを舞台にして人間の本質に迫って演じてくれる黒人俳優はいてくれれば・・・というのが私の願いです。「フィラデルフィア」やシェークスピア原作の「空騒ぎ」で威厳あふれる数々の演技を見せてくれたデンゼル・ワシントンに期待しています。マイナーなことですが、ナポレオンに支配されるまでヴェニスは選挙制の総督(Dodge)によって統治され、したがって総督は他の顔役とあまり変らない服装で出てくるべきだと思うのですが、まるで王様みたいな格好だったので、時代考証はこれでいいのかと思いました。映像がきれいで、その点では十分楽しめました。