1.非常に見応えのあるドキュメンタリー。
水俣病について、どんな歴史教科書を読むよりも、水俣病を学ぶことができるだろう。
映像資料としての価値は存分にある。
何より、水俣病に苦しむ人たちの姿を、映像を通して観ることによって、その実態を知ることができるのが貴重である。
17歳の少女にインタビューする。
この少女は胎児性水俣病と認定された患者さんである。
将来が見えないどころか、現在すら何をしていいかも分からないと、涙ながらに語るシーン。
水俣病におかされた少女が、こういった心境に陥るのは至極当然で、実にこの水俣病というものが、罪深きものなのかを雄弁に語っている。
また、認定すらされず、人知れず苦痛に耐えている人たちもいる。
僻地に住んでいるが故に、水俣病の申請すらできず、日々の苦痛に耐える毎日。
やがて死が待つのみ。
そんな人生の末期に、どんな希望があろうか。
実に悲惨極まりない話である。
行政の怠慢さが原因だとも思われるが、そう単純な話でもなく、監督のやるせない思いが伝わってくる。
水俣病は、過去の事件として忘れ去られるやもしれない。
歴史の教科書をただ暗記するのみでは伝わってこない、悲惨な日本の歴史。
だからこそ、この様な貴重なドキュメンタリー作品を、映像資料として、学校教育の中でどんどん見せていってもらいたい。
2時間半の作品だが、よくぞこれだけの時間で、これだけメッセージ性のある作品を撮りあげたものだ。
土本典昭監督の努力と執念に、拍手を送りたい。