2.物語は終始人情を無視した血と血の交わいだ。台詞がダイレクトだし、宇崎・梶の表情が登場時点から血走っている。これは、増村さん独特ですね。他の監督は仕草や動作、表情などをも使って演出をするのだが、増村さんの場合はとにかく「身体」を直接使って表現させる。甘ったるさは微塵もなく力強く痛々しい。二人が心中に至る細かい描写はお構いなしに、互いに信じ愛するという男として女としての「意地」や「誇り」が観るものさえもグイグイと押していく。完全に「曽根崎心中」の増村流解釈がここにあります。二人の心中も「悲劇」ではなく「前向き」にみせてしまうほどの力強さが特長ではないでしょうか。この解釈はとても面白いと思います。一つ残念なのはテンポ。初期作品のような流れをあれば私は文句ありません。(シネマアートン下北沢)