2.河辺で戯れる少女たちが水面に作る波紋。昆虫たちの気配の充満する草むら。種まきから収穫までの農作業。そして、人間たちと共生する牛、豚、山羊、馬、蜂、鶏の姿。
写真家:本橋成一の撮る『ナージャの村』は、どこか静的で審美的な「映像美」中心に陥りそうな危うさを孕みながらも、その風景の中に生命の動態と時間性を呼び込んで固定化を回避している。
阿賀野川の生活者たちを魅力的に捉えてみせた佐藤真が編集を手がけた貢献にもよるだろう。
汚染の被害や影響といった観念的問題性に縛られることなく、故郷の土地に生きる人間の生活の動きある細部を中心に彼らの尊厳を画面に定着させていくアプローチも『阿賀に生きる』を忠実に踏襲している。
四季を綴る映像と、向けられたカメラを特に意識する風でもない村人たちの姿は、現地に腰を据え、彼らに溶け込んだ長期取材の証しでもある。
スカートの裾を気にしながら自転車を飛ばす娘らの爽快な移動ショットなどは素晴しいものの、ナージャさん一家が引越しするシークエンスを中心に、移動シーンの頻繁なカメラ位置変更は被写体の日常への介入が過ぎないだろうか。