1.《ネタバレ》 滝田栄演じる飯塚会計士。一昔も二昔も前の社会通念では、“あるべき”成人男性像はこういう感じだったと思います。「弱きを助け強きを挫く」品行方正な立派な人物。自分も不惑を迎える頃には、当然こんな大人になるもんだとばかり思っていました。「なりたい」とかいう希望ではなくて、大人は漏れなくあのレベルに達するものだと考えていました。でも現実は違う。自分でも驚くくらい子供のままです。無駄に年を食ったらダメですね。それでも多少は人生経験を積んだので、飯塚会計士のような生き方が必ずしも正しいとは思わなくなりました。自分を、家族を、生活を守る為の「知恵」や「妥協」も必要かなと。本作で本当に強い大人は飯塚夫人だったと思います。正しい事と成すべき事が一致するとは限らない。もっとも、飯塚氏が尊敬に値する方であることには違いありませんが。それにしても本作は、滝田栄に尽きます。彼ほど「生真面目」が似合う俳優は居ない。本作のようなシリアス路線は勿論、キャラを逆手に取ってコメディとかでも活躍できそう。眉間の皺の深さだけで人間性が伝わってくるイイ顔です。料理バンザイの司会じゃ、もったいない。もっと映画やドラマで滝田が観たいと思いました。実話ベースのためドラマチックさに欠けるのはやや不満。でも江森徹のナレーションも流石の貫禄でしたし、自分はこういう古臭い感じのドラマは嫌いじゃありません。