1.《ネタバレ》 とにもかくにも、男と女の横をヘッドライトが幾対も通過していく一連が美し過ぎるというこの映画である。この男女の出会いのシーンは徹頭徹尾美しいわけで、煙草の火をつけるだけとか、電車で鉄橋を渡ったりとかするだけでもそれはどこか儚く感じてしまうのだった。
そんな男女間は映画後半で一気に男の視点から女の視点にスライドするがこれがとてもいい。そして男の時にやった360度以上パンが女のときにも出てくるわけだ。2回目でやっと気付いたのだが、背景に鏡みたいのを建てているようだ。あるタイミングでどこか一部を外すと信号機が出てくるという単純な仕掛けだ。
そしてカメラ前のシャッターとか物の動かし方と配置が上手過ぎる。路面電車の整備工場などでの様々な物の配置がもう堪らなく良くて、映像美を極めている気がしたのだ。それに伴って凄いのがズームであった。この時代のスコリモフスキのスタイルとして長回しとズームが多様されているのだが、その路面電車の整備工場でも、フルサイズくらいで撮っていた人物の手前を電車がシャッターしている間にズームバックされていて、電車が通り過ぎると人物が豆粒くらいの凄い引き画になっていたりするのだけど、それが映像美を極めている気がするくらい、はまっていて、単純にかっこいいのだ。
ま、あとはジャンプ台とかも滅茶苦茶やっているわけで、スコリモフスキ20代というのは正に彼の青春と情熱が炸裂している時期であり、「バリエラ」はそんな才気迸る映画であった。
そして音(音響/音楽)、凄し!