1.驚くほど普通のパニックもの。なんの捻りも無い。はじめからその点は覚悟して観たのだが、かなり下げたつもりのハードルを若干下回った印象。理由は以下のとおり。●主役ともいうべきタワーマンションに魅力が無く破壊の美学が今ひとつ感じられない。この建物を象徴する大ホールなり、壮麗な意匠なりが欲しいところ。また、建物全体の構造が説明されないので厨房やレストランや居室やコントロールルームや階段室のつながりがわからず、まとまった構造物として感じられない。●火災中の建物内は無煙ロースターのような状態に終始し、人が煙にまかれる描写が無い。画作りが難しいのはわかるがリアル火事の噴煙の量を思うとこれはいかにも絵空事に見える。肝心の高さの恐怖もおざなりで上手く描けていない。●話の盛り上げ方に「ならでは」の工夫が無く「タワーリング・インフェルノ」から一歩も進化していないのはちょっと寂しい。マンション分譲中の広告宣伝をバーホーベンのテレビ画面的な手法で要所要所に挟み込むとかすれば、いい気になることへの警鐘というテーマも深まるし、破壊のカタルシスもぐっと揚がると思うのだが。……結局CG全盛の昨今の例に漏れず、本作も一見派手という画面に頼ってばかりいて観客の心理誘導の面については無策であると言わざるを得ない。