3.《ネタバレ》 ちょっと豪華な2時間TVサスペンスといった趣です。ツッコミどころはありますし、全体的な軽さは否めません。でもそんなに悪くないと思いました。自分がそう感じたのは、“壁から流れる黒い液体”に意味を感じたからです。宮沢との最初の出会いで佐藤が見た幻。最初はB級ホラーにありがちな“雰囲気の演出”だと思いました。特別な意味は無いと。しかし、そうではないようなのです。本作のオチは、「佐藤の妻殺しは夢だったけど、宮沢夫婦の計画は本物だった」というもの。となれば、黒い液体シーンを含む、宮沢と佐藤の出会いは現実の出来事のはずです。しかし“この時点で”、佐藤が幻を見るのはおかしい。この時、彼はまだ情緒不安定ではありません。幻を見る理由がない。なら、このシーンは“佐藤の夢”と解釈出来ないでしょうか。幻の説明がつく。ではどの時点でみた夢なのか。黒い液体から連想されるもの。自分は直感的に血だと思いました。佐藤が妻に殴られた時に目にした、自身の血なのではないか。さらに夫婦の楽しい想い出“イカ墨パスタの色”。夫婦間の不審を黒色とイメージしたとも取れます。つまり黒い液体は夢におけるイメージの集合体。そしてこのことは、【死に際の主人公が、薄れゆく意識の中でみた夢から本作は始まっている】という事実を導きます。物語がループしているのです。(※このプロットは某有名難解作品を彷彿とさせます。ネタバレになるのでタイトルは伏せます。)ちょっと凝っているのでは。少なくともTVサスペンスのレベルではありません。もちろんこれは自分の勝手な解釈です。それに仮にそうだとしても「だから何なの?」と言われると困ってしまいます。凝ったつくりが、作品の魅力に繋がっていないのです。某作品との大きな違い。もっと幻想的に、もっとテクニカルに観客を惑わせて欲しかったと思います。