5.《ネタバレ》 これは猛烈に殺意の沸く映画だ。『隣の家の少女』と同じく実際にアメリカで起きた事件を元にしているが、描き方がかなり違う。
本作の主犯ガートルードは、エキセントリックでヒステリックな女でははく、一見普通のおばさんに見える。ところが、自分に都合のよい独善的な解釈と正当化で、酷い虐待を主導していても悪びれた様子もない。息を吐くように嘘をつき、自己弁護のために最後は自分の子供さえ裏切るところが恐ろしい。
実際の事件はもっと残酷で陰湿だったようだが、かなり控えめな描写になっており、暴力的なシーンもあまりない。裁判と回想を交錯させて比較的淡々と話が進行するが、それにも関わらず加害者には強い憤りを覚えるようになっている。
裁判で子供たちがなぜ虐待したか質問されて「わからない」と異口同音に答えている。これは自己弁護の一種で、本当ははっきりとわかっているはず、おもしろくてやったということを。子供の頃、昆虫を無邪気にイジメて楽しんだ覚えのある人も多いだろうが、その延長線上にあるのだから。健全な社会なら、成長とともにそうした行為がくだらないこととして、他者の痛みを感じることを覚えていく。ところが、ここではそれを導くべき大人が、弱い人間を虫けら扱いして鬱憤の捌け口として利用しているので救いようがない。
事件を助長した傍観者や共犯者にも怒りが募るが、主犯の女にはキャサリン・キーナーの好演もあって同じ目に遭わせてやりたい衝動に駆られる。それにしても刑が軽すぎて、被害者や遺族が浮かばれないのは日本と同じだ。