5.エドワード・G・ロビンソンという俳優さんのイメージはどうしたってギャングな印象が強く、それはあのオーソン・ウェルズが善玉として撮った時でさえ(46年「The Stranger」)、彼にはどこか相手をささくれ立たせるような雰囲気がありました。しかし本作では、そんな雰囲気が皆無に近く360度見まわしたって紳士であり人の良いオヤジであり見事に観客を迷宮へといざなっているのです。なぜにそういう風に見えたのか分かりませんが、一つにはあの何気なく掛ける眼鏡などで素朴さを演出した事が大きいと思います。本作ではそういった道具の使い方が非常に巧みであり、他にも対象の姿が映る鏡や暗闇でのガラス、女の家にある外に出るまで三重にもなっているドアなどの装置がサスペンスを盛り上げ、質を一層高めています。最たるシーンは飾窓の女が実際に現われる場面であり、それこそまさに非日常か幻想のように窓に映るキラキラした服の美女は迷宮の入り口に相応しいのです。 【ミスター・グレイ】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-02-16 18:17:05) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 フリッツラング監督の安心して観られる映画です。個人的には「緋色の街・スカーレット・ストリート」の方に軍配が上がります。ジワジワくるサスペンスですが、夢オチなのが残念なところです。それ以外は最高。 【クロエ】さん [DVD(字幕)] 8点(2014-08-21 03:27:01) |
3.《ネタバレ》 いやあ、恐いわ!あのガラスに映る謎の女、しかもこれがまた美女で何を考えてるのか解らないから余計、恐い。犯罪学教授のエドワード・ロビンソンの怯える表情にこの女の恐さが見事に表されている。殺人を実行してから死体を捨てるまでの何とも言えない恐ろしさ、異常なほどの緊迫感といい、夜に観るような映画じゃないな!あのショーウィンドウに飾られた肖像がを見ている場面での絵に描かれている女によく似た女に声をかけてからの悪夢のような展開、ジョーン・ベネットの顔が肖像画と重なって浮かび上がってくるシーンも一度、見れば絶対に忘れられなくなるほどの印象を残す。フィリッツ・ラング監督作品、今の所、見た限り全くハズレなし!この監督の作品、まだまだ見足りない。出来るなら全作品見たい。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2010-12-12 22:08:20) |
2.《ネタバレ》 もう不安がいっぱい。唐突な殺人から雨あがりの街へ。死体を運び出そうとすると帰ってくる住人、公園の入り口の料金所、ザザッと降ってくる木の露、信号がストップになって笑いかけてくる警官。しかしホントに怖くなるのは死体が発見されてからで、友人から捜査の進展が逐一報告されてくるの。女を突き止めたそうだと言われたとこで話が中断されたりするジラシ。ラジオのニュースの前に胃薬のCMが入るジラシ。こうやってジラすのがうまい。つい喋りすぎてしまう、というパターンは少し使いすぎたか。現場検証の場が一つのヤマ。「何の缶詰でした?」。尾行がついていたはずだ、とまず会話でユスリ屋を登場させるのもいい。このユスリ屋が部屋の中を探し回るのが次のヤマ。やけにきれいだねえ、とテーブルをなでたり、クネクネした動きが実にいやらしい。最も甘美な夢は、実は悪夢である、ということ。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-11-10 10:08:10) |
1.5000ドルのやりとりがある映画にハズレ無しと個人的には思っていて、これもやっぱり面白い。ただしこの作品は、自分がシャレが通じる人間かどうかのリトマス試験紙のようなストーリーなので、怒ってしまう人もいるかもしれない。1944年といえば、大戦中で、こちらが一億火の玉とかなんとかいっているときに、あちらではこんな映画がつくられていたんだ、と考えると、勝てる理屈はなかったと思う。お産で実家にしばらく引っ込むとか、海外への出張とかで夫を家に一人にしておくときに、この映画を見るようさりげなく目立つところに置いて出かけるのが、現代的な賢夫人のたしなみといえるだろう。 |