1.《ネタバレ》 この映画が嫌いだ。逆光を使った小奇麗な風景、幸せそうに流れるオルゴール、登場人物たちのポエム、言い換えると独り言。それらは虚構の幸せを映す鏡なのだろう。私にはかったるかった。クシャミが出た。こんな「クシャミ」なんていらないのだ。『自殺サークル』の飛び降り自殺の場面もうんざりした。意図は解る、けど何度も映されるとウンザリだ。
でもとっても感動した。何故だかはハッキリと分からない。"家族の血"というモチーフに固執し続ける園子温監督の意識が一番強く感じられたからかも。始まりの家族はどこか変だ。イビツで嘘だ。だから紀子は逃げ出した。紀子は自殺サークルでレンタル家族になった。みんな自分の役割を演じるのだ。みんな幸せそうだ。とっても。でもこんなに幸せそうなのもやっぱり変だ。まるで判を押したような幸福な光景の気味の悪さ。家族は痛みを伴って存在するものなのだ。
「一からやり直そう――」徹三の言葉が心を打った。とっても平凡な言葉。クミコの母親も同じことを言っていた。でもその言葉の重みには数万光年もの差があるのだ。紀子は紀子として生きていく。ユカは真っ新な、白いキャンパスみたいに新たな家族を求めて生きていく。どっちが良いのかは分からない。分かるのは本当の家族であるには痛みを伴うということだけだ。クシャミが出た。この映画は大好きだけど、こんな文章は大嫌いだ。