1.《ネタバレ》 都会の平凡なアパートで恋人のイングリットと同棲生活を送る青年ヨーン。だが、とある些細な喧嘩をきっかけに彼は思わず暴力をふるってしまい、当然のようにイングリットは部屋から出て行ってしまうのだった。まだ彼女のことが忘れられない失意のヨーンは、ある日、偶然エレベーターに乗り合わせた怪しげな隣人である若い女性に声をかけられる。「あなた、未だ彼女のことが忘れられないんでしょう?壁が薄いからずっと聞いていたわ…」そう話す彼女に隣室へと招き入れられるヨーン。そこには、かつて3人の男たちに暴行されたという哀しい出来事をきっかけに引きこもりとなった妹も居たのだった。何もかも分かったような怪しい言動を繰り返すそんな姉妹たちに、次第に心を掻き乱されるヨーン。まるで深い迷宮に迷い込むように、彼はどんどんとその淫靡で怪しげな隣室へとのめり込んでゆく…。この後、「チャイルドコール-呼び声-」という、オチはちょっぴり残念賞だったもののその全編に横溢する暗鬱でミステリアスな雰囲気と全く先の読めないストーリーとでなかなか見応えのある作品を撮ることになる監督のデビュー作である今作。こちらも低予算ながら、いかにもこの監督らしい練られた脚本と随処にセンスを感じさせる映像とで不穏な雰囲気が濃厚に漂うダークミステリーの佳品に仕上がっておりました。いやー、良いですね、これ。いったいこのアパートは何LDKやねん!ってくらいあり得ないほど部屋がいっぱいあるこの隣室で繰り広げられる、過去と現在、愛情と性欲、サディズムとマゾヒズムが複雑に交錯するストーリーは今回も見応え充分でした。良い意味で、嫌~な余韻が残る胸糞悪いラストシーンもグッド!ただ…、オチはやっぱり今回も容易に読めてしまう凡庸なものだったのが少々残念でしたけど。この監督さん、風呂敷を拡げるのは物凄く上手いのに、それをたたむのがちょっと下手みたい(笑)。でも、このデビット・リンチを分かりやすくしたような、この監督らしいシュールな世界観は今回もなかなか堪能できたっす!次は、オチをもっと頑張ってね(笑)。