道(1954)のシネマレビュー、評価、クチコミ、感想です。

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道(1954)

[ミチ]
The Road
(La Strada)
1954年上映時間:104分
平均点:7.92 / 10(Review 209人) (点数分布表示)
ドラマモノクロ映画ロードムービー
新規登録(不明)【シネマレビュー管理人】さん
タイトル情報更新(2016-12-29)【イニシャルK】さん
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監督フェデリコ・フェリーニ
キャストジュリエッタ・マシーナ(女優)ジェルソミーナ
アンソニー・クイン(男優)ザンパノ
リチャード・ベースハート(男優)キ印
アーノルド・フォアザンパノ(ノンクレジット)
市原悦子ジェルソミーナ(日本語吹き替え版【NHK】)
小松方正ザンパノ(日本語吹き替え版【NHK】)
愛川欽也キ印(日本語吹き替え版【NHK】)
原作フェデリコ・フェリーニ(脚本原案)
トゥリオ・ピネッリ(脚本原案)
脚本フェデリコ・フェリーニ
トゥリオ・ピネッリ(脚本/ダイアローグ)
エンニオ・フライアーノ
音楽ニーノ・ロータ
撮影オテッロ・マルテッリ
カルロ・カルリーニ(ノンクレジット)
ロベルト・ジェラルディ(カメラ・オペレーター)
製作ディノ・デ・ラウレンティス
カルロ・ポンティ
配給ニッポンシネマコーポレーション
美術ブルネッロ・ロンディ
ハーマン・G・ウェインバーグ(タイトル・デザイン:英題)(英語版にクレジット)
あらすじ
子沢山の貧しい家に生まれた頭の弱い娘ジェルソミーナは、剛力の鎖切り芸人ザンパノに1万リラで売られてしまう。粗野で乱暴なザンパノは彼女をロバのようにこき使い、夜は力ずくで我がものにし、他の女と遊ぶ時には平気で放り出す。ある日、2人はローマでサーカスの一団に身を寄せるが、そこにはザンパノと昔馴染みで、犬猿の仲の綱渡り芸人、キ印がいた。彼はジェルソミーナと気が合い、ザンパノから逃げられず、生きる意味も見出せずにいる彼女を励まし、去って行く。その後、ジェルソミーナは自分の意志でザンパノについて行くが…。
ネタバレは禁止していませんので
未見の方は注意願います!
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【クチコミ・感想】

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209.エロス的関係(=取替えのきかない人間関係)は相互に依存しあうもの、という基本を、見事に描いてあります。個人的な話で恐縮ですが、私の祖父は寝たきりでした。排泄から食事まで祖母に委ねきっている様を横目で見ていた少年時代、彼の無力さに対する同情プラス若干の軽蔑、彼女の尽力に対する感嘆プラス半ば呆れた感情、それら複雑な思いを抱いていました。が、彼の死後、彼女が語ったのは――「私は、あの人の世話をすることで、あの人に頼っていたんだよね」。祖父は祖母に生かされていたのではない、祖母もまた祖父によって生かされていたのでした。ザンパノに言われるがまま、どこまでも健気についていこうとしたジェルソミーナ。しかし、それは、彼女が一方的に依存していたわけではない。ザンパノもまた、彼女に依存していたのである。ラストシーン、そのことを思い知らされたザンパノ…。
アイアン・バタフライさん 9点(2004-02-11 10:00:28)(良:8票)
208.《ネタバレ》 人の作品に抱く印象は”十人十色”、様々なコメントや賛否両論があるのも或る意味当然でしょう。私は本作を「ジェルソミーナを巡るザンパノとキ印の恋の鞘当て」もしくは「インフェリオリティ・コンプレックスを抱えた者達による悲しい三角関係」と捉えてフェリーニの妙技を堪能致しました。徹底的に捻くれた御仁であるフェリーニ氏は巷に溢れた美男美女による恋愛劇を巧みに換骨奪胎し、「野獣の如き無教養で粗暴な大男」と「オツムの弱いちんちくりんの女」と「お調子者で学もあるが根無し草な綱渡り芸人」が織り成すネオ・リアリスモ風味のラブストーリーに仕上げた、という訳です。案外、フェリーニ監督って凄く照れ屋だったのかもしれませんね。素直じゃないって言うか…(笑)。しかし、本作が凡百の恋愛モノと一線を画する最大のポイントは各キャラクターの人物造形が実に見事な点にあると思います。ポエティックでいて、しかも普遍性を有しており、且つリアリズムにも付かず離れずという絶妙極まる三人の人物設定ポジションは正に神業と評する以外に言葉を持ちません。とどめにニーノ・ロータの哀切なメロディとくれば‥ちょっとズル過ぎ!反則ってもんでしょう、ラストシーンでの泣かせに入る上手さときたら!勿論、フェリーニの真意は全く違うかもしれませんが、かくも万華鏡の如くに人によって解釈可能な「懐の深さ」を持った作品を私は余り知りません。よって10点。お若い方は年齢を重ねた後に再見をオススメします。本作が名作と謳われるのは伊達じゃないことを再認識なさるやも。尤も、これは本作に限らず往年の名作すべてに言えることですが…(笑)。
へちょちょさん 10点(2004-02-10 01:32:34)(良:4票)
207.《ネタバレ》 BSで放映したので久しぶりに見たら、昔見た時よりザンパノに感情移入してしまった。ザンパノは果たしてそんなに酷い男か?財産も家もなく天涯孤独なザンパノは、教養もなく自らの身体を痛めつけることによってしか生活の術を持たない。そんなバックグラウンドを持つザンパノの一連の行動を批判できる程、自分は慈愛溢れる人間だろうか?精神を病んだジェルソミーナに途方に暮れ、面と向かって別れもいえず、寝ている間に置き去りにするザンパノの混乱が手にとるように分かる。大事なものを凝りもせずに失い続け、後悔にまみれながら人生を送っているダメな人間の私には、ラストのザンパノの悲痛な叫びに胸が張り裂けそうだった。
黒猫クロマティさん 9点(2004-02-09 14:14:59)(良:4票)
206.私は何故、このような素晴らしい映画を今まで観なかったのでしょうか。本当に、本当に素晴らしい映画でした。これぞイタリア映画です!失ってから初めて気付く愛…残酷だけれど、美しいです。ニーノ・ロータの曲が、いつまでも耳に残っていて、思い出すたびに涙がにじんでしまいます。でも、きっと私はもう一度は観られません。ラストを知ってしまった今、あまりにも切なすぎて、最初から最後まで観られる自信が無いのです。きっと大人になってから観てみると、感じ方も違ってくるのでしょうが…。未見の方は、とにかく観てみてください。そうすれば、私が机に突っ伏してわんわん泣いてしまった理由が分かりますから…。
Ronnyさん 10点(2003-12-26 03:22:24)(良:3票)
205.終わりの方、シーツを干してる奥さんと、ザンパノ、二人の間にあるのは有刺鉄線の柵。何だか、健康的な普通の生活とは隔絶されて、もう決して立ち返ることができなくなったザンパノを象徴しているようで、妙に印象に残っているシーンです。
鱗歌さん 8点(2003-08-13 20:49:22)(良:3票)
204.《ネタバレ》 古い記憶だけでレビューを書いている人、特に女性は、ぜひ見直してみられることをお勧めします。私も、なぜか急に思い立って見直したりせずに10代のときに見た記憶だけで点数をつけたとしたら、10点をつけたでしょう。見直して、びっくり仰天。この二人の関係は一言でいえばドメスティック・バイオレンスです。同じ頃、やっぱり映画好きの友だちが同じく見直していたそうで、その偶然にもびっくりしたのですが、彼女の感想も全く同じでした。今では、自分も若い頃は、ここまで男の身勝手な視点で作られたものに感動していたのかー、となさけない気持です。
おばちゃんさん [CS・衛星(字幕)] 4点(2003-03-21 12:00:52)(良:2票)(笑:1票)
203.《ネタバレ》 何十年も昔に見た映画、それを今回レビューを書くためにDVDで再鑑賞した。不思議なことに、ほとんど忘れていたと思っていたシーンが、次々と蘇ってきた。それだけ最初に見た印象が強かったのだろうと思う。
この映画は本当に切ない。頭は弱いが純真無垢なジェルソミーナと粗野で欲望のまま生きるザンパノは全くの好対照。前半は彼女が大変粗末に扱われ、もう見るのを止めてしまおうかと思うほどである。それが中盤サーカスの一行と出会ったあたりから少しずつ変わってくる。とくに綱渡り職人の「どんなものでも役に立たないものはない、たとえこの石ころでも・・・」という言葉は心に響く。
ジェルソミーナはザンパノから何度離れようと思ったことだろう。しかし彼女は「私がいなくなると、ザンパノは一人になってしまう」と言ってどこまでもついて行く。
このあたりになると、私は涙が出てくる。それに追い打ちをかけるのが、あの悲しげなメロディー。これがイタリア映画、これがフェデリコ・フェリーニという思いを痛烈に感じる。
このジェルソミーナを演じたジュリエッタ・マシーナが、フェリーニの奥さんであることを知ったのは、最初に見たときからずいぶん経ってからだった。
ESPERANZAさん [映画館(字幕)] 9点(2011-04-30 23:12:58)(良:2票)
202.私にはなぜかこの二人の道行きがそれほど酷いものに見えなかった。砂浜で語り合う二人は素朴でくすぐったくて、少し幸せそうに見えた。社会の底辺で揺られながら暮らす二人の姿を思い出すにつけ、優しいテーマ曲も一緒に頭の中に流れてきて胸に堪える。くるくると目で喋るジュリエッタ・マシーナも愛らしかったけれど、粗暴で自分勝手で、心の在処が分からずに回り道をし、ラストに慟哭するザンパノという男を演じたアンソニー・クインの姿が瞳に焼き付いている。また、彼の行動を一歩離れて見つめ、突き放すことのできない感情を観るものに与える監督の手腕も素晴らしい。
のはらさん [DVD(字幕)] 8点(2007-09-17 02:01:42)(良:2票)
201.この映画を観ると、ヒトも動物の一種であるんだなあという事と、男が女をお金で買うという行為の事と、ヒトが白痴であるという状態の事と、ヒトのあたたかさとやさしさという事と、ヒトの旅路という事と、自分の母親の事を、何度も思います。さようなら、たいせつなひと。 それから、忘れてた!映画で大脱走のマックーンバイクの次にカッコイーのがこの映画の側車バイク、”ザンパノ号”です! 昨日、ひさしぶりに観直す。とまとのタネを植えるジェルソミーナを観て、言葉を失う、、、、、、、、、、、、、。あんなシーン忘れてたよ、、、、やりきれないなあ。うまいよフェリーニ、、、、、追加!わたしはこれのアンソニークインはもちろん大好きなのだが、天下の”スティーブマックイーン”にも、この役をやって欲しかった。”パピヨン”みたいな風体でね。また、トライアンフ改造してね!こりゃ、ドエライかっちょいいぜ!
男ザンパノさん [映画館(字幕)] 9点(2006-05-15 21:50:01)(良:2票)
200.この映画好きか嫌いかで言えば、嫌いやねん。白黒で古いっていうのもあって、救いのない展開がよりいっそう悲惨に感じてまうから。後、ザンパノっていう男が自分勝手すぎてむかつく。でもある種の感覚は呼び覚まされたで。それは一緒に長く過ごした人、自分の一部となってる人を亡くす恐怖感?そして失くした時感じる「もっと優しくすればよかった」っていう後悔かな。でも、まー、この映画で泣くことはできひんかった。悲惨すぎてひいてたんかもしれん。好き嫌いはともかく、これは文学や哲学をテンポよく観てるものあきさせずにうまく映画という表現であらわした感じやった。まさに名画やと思う。馬鹿な俺でもそれを感じさせる映画はめずらしいな。後、ジェルソミーナは普通の人とは違う雰囲気があるように思えた。舞台俳優っぽい動きや仕草っていうんかな、その雰囲気に引きずられて、悲惨でも最後まで観れたけど、二回は観たくないっていうのが正直な感想。んで結論は嫌いやけどすごい映画。あかんうまく表現できひん。とにかく俺は観といてよかったとは思う。
なにわ君さん 10点(2004-04-17 15:49:58)(良:2票)
199.《ネタバレ》 ラスト20分は観ていて辛かった。ザンパノとジェルソミーナの旅道中は一体何年に及んだのだろう?“~年後”と簡単に出さず、時間経過に言及されていないため、2人の表情や言葉などから観る側が想像するしかない。これも監督は十分承知の上での演出であろう。そして、折角2人が夫婦としてやっていけそうになって来た矢先の悲劇。心を病んだジェルソミーナを見捨てたザンパノの苦悩にも同情の余地はあるが、何とも心苦しいばかりである。目覚めると一人ぼっちだった時のジェルソミーナの表情や気持ちまで観る側に委ねられているのは残酷なのか救いなのか。その後も一人で芸をして過ごしていた姿を想うと、胸が締めつけられる。ジェルソミーナの純真無垢そのものと言えるどんぐり眼(まなこ)が忘れられない。
やすたろさん 8点(2004-04-09 00:51:49)(良:2票)
198.久しぶりに見たら意外や、ザンパノがそんなにひどい男には見えない。体を張って生きるしかないだけの粗野で自己表現も愛情表現も下手な不器用な人間と言う感じだ。(昔はジェルソミーナがかわいそうという気持ちが強すぎたのかもしれない)綱渡り芸人がザンパノのことを「話しかけたいのに犬のように吠えることしかしらん」とその性質を代弁している。個人的にこの二人の会話のシーンから彼がジェルソミーナをザンパノの出てくる警察まで送っていくというくだりはこの作品で一番好きで印象的なところ。綱渡り芸人の死にショックを受け精神に異常をきたしたジェルソミーナの扱いに困りつつ何日も食事を作って与え、置き去りにするときもマントを着せかけお金やトランペットまで置いていっているし、最後にジェルソミーナの死を聞いて酒に酔い、浜辺で泣くのも置き去りにした彼女のことを気にしていたからだろう。ジェルソミーナ、ザンパノ、綱渡り芸人の3人は見る年代、時によってさまざまな感慨がある。危険な職業柄人生を達観しているような反面、お調子もので自らの死を招く綱渡り芸人、自己肯定感を持てなかったジェルソミーナはザンパノの役に立つことに自分の存在価値を見い出す。それゆえ特に誰がかわいそうとか不幸だったと単純には言い切れない。印象的なセリフの数々といいとても深くて味わい深い名作。J・マシーナはサイレント時代のチャップリンのように豊かな表情と体全体で複雑な心情を表現して圧巻だし、A・クインもザンパノという人物をまざまざと見せて素晴らしい。哀愁を帯びた主題曲もあっていつも涙がこぼれます。
キリコさん 10点(2003-05-23 21:19:57)(良:2票)
197.名作です、泣けます。よく、亭主関白だった男の人が、歳とって奥さんを亡くすと急に弱るって言いますよね。そういう男と女の本質みたいなものを、よく表現していると感じました。ジェルソミーナが目を伏せ、なにかに耐えているような表情をするたび、胸がしめつけられます。最後のザンパノの涙には、もらい泣きして号泣。何かを考させられ、泣け、楽しませてくれるシーンがあり、音楽は美しく、永遠に心にのこるものがある。こういう作品こそが、映画を観るよろこびを感じさせてくれる「名作」と呼ぶに相応しい。
ともともさん 10点(2003-04-22 21:46:50)(良:2票)
196.実に素晴らしい映画です。僕にはなんだかジェルソミーナよりもザンパノがかわいそうで仕方がありませんでした。確かに極悪非道な男かもしれませんが、やっぱり例の綱渡り師が言うように、愛し方を知らなかっただけだと思います。ザンパノには怒りよりも哀れみの感情のほうを強く抱きます。
ひろゆきさん 10点(2002-09-29 15:15:12)(良:2票)
195.《ネタバレ》 「道」は60数年もの時を超えてなお変わらぬ輝きを放っている。この作品の普遍的価値と魅力は枚挙にいとまがないだろうが、自分が引き込まれた理由の一つは人間と人生についての深い洞察にある。理屈では説明しきれない屈折した心理、人生の岐路において先を見とおせないままに誤って不幸に向かう道を選択し、混沌を突き進み、間違いに気付いても後戻りはできない、そんな復路のない人生の非情さ厳しさを俯瞰させてくれる。重苦しい内容だが芸術的な映像と全体を包み込む叙情的トーン、女主人公の心洗われる素朴さに救われる。矛盾や不条理を突き詰めることなく解釈は観客に委ねるが如く淡々とストーリーは展開する。それゆえ見る側の人生経験によって受け止め方も違ってくる。それがこの映画の奥の深さではないだろうか。主な登場人物それぞれが矛盾を抱えている。ジェルソミーナは自分を虐げるザンパノから逃れ再起可能のチャンスを何度か得たにも拘らず男の元へとどまる。それは無知な従順でも一途な愛でもなくイル・マットとの出会いで自分の存在意義を悟ったからであろう。逆に相手に精神的に依存していたのは女を突き放す言動しか取れない男の方であったかもしれない。ザンパノとは対照的に彼女に理解と思いやりを示しあの珠玉のセリフを語ったイル・マットは英知と善の象徴かと思いきや彼の意味不明の挑発的からかいがザンパノの憎悪を募らせて悲劇的結末を招いてしまう。ザンパノは倫理観の欠落した野蛮人であるがジェルソミーナを捨てる場面では人間性の片りんをみせる。彼なりに苦渋の選択であった。ラストシーンは自分の喪失体験と重なった。当時私は母を亡くして間もなかったので滂沱の涙。砂に突っ伏し慟哭するザンパノの姿は私自身であった。かけがえのない存在を失った時の喪失感、孤独、絶望、後悔、自責(母が大好きだったのに私はわがままだった)一筋の救いの光もない暗黒の海辺に私も置き去りにされた様に感じた。永遠に取り返しがつかないことがあることの認識それが報いだ。うずくまった状態から立ち上がり報いを背負ったまま残りの道を歩き始めるまで数年を要した。そのプロセスにおいてこのラストシーンはカタルシスの役目を担ってくれた。
hitomiさん [DVD(字幕)] 10点(2021-03-09 18:34:16)(良:1票)
194.《ネタバレ》 この映画は何度か見ている。子どもの頃に初めて見たときは、なにやらよくわからなかった。青年期に見たときは、まったくわからないということはなかったけど、理屈で見ていたような気がする。そして、老いというものが近づいてきた今、改めて見直して、胸に迫るものの大きさに激しく心を揺さぶられ、ラストはザンパノとともに嗚咽をこらえられなかった。

いったい、どうしてこんなに激しく心揺さぶられるのか、自分でも精密には分析できないのだけれど、ひとつ言えるのは、自分がたどってきた「道」と知らず知らずのうちに照らし合わせて見ているということだ。ザンパノは私であり、ジェルソミーナは私の周りの人間、とりわけ家人にほかならない。ザンパノとジェルソミーナの道行きは私と妻の道行きであり、ザンパノとジェルソミーナの心模様は私と妻の心の風景なのである。それをこのように見せつけられると、涙なしに見られようか。

それにしても、と思う。ジェルソミーナの人生。こういうものにしたのは映画制作者としてはプロというほかないのだが、他方、ひとつの人生として追うとき、いろんな思いが湧き上がってくる(なればこそ、プロの手腕ということなのだろうが)。彼女は幸せだったのだろうか。常識的表面的には幸せだったはずはないのだが、人間とは深いものなので単純には決めつけられまい。そこを思いつつ考えると「わからない」という答えしかない。

ザンパノに捨てられたのち、どうやらジェルソミーナは誰にも心を開かなかったようである。決して粗末な扱いばかりだったわけではないようなのに、心を閉じたまま一人死んでいったのだ。表面的物質的にはザンパノと暮らしていたときとは比べものにならないくらいの豊かさを享受できる機会もあったはずなのに。

映画のところどころで「神」という概念が想起されるシーンが出現するが、物語が神や宗教に回収されることはない。そのこともまた心に残った。なぜなら、この映画はキリスト教の大本山ともいうべきイタリアの映画なのだから。

諺に「破れ鍋に綴蓋」というのがあるが、案外深い深い意味があるのかもしれないという気がした。生あるうちに、せいぜい妻を大事にしなければ。
delft-Qさん [CS・衛星(字幕)] 10点(2020-09-17 15:53:39)(良:1票)
193.《ネタバレ》 子供のころ見たときは「石にも役目がある。何かの役に立っている」という言葉だけが印象に残っていました。
今見ると、3人それぞれの心情が丁寧に描かれていて、その気持ちが痛いほど胸に迫ってきます。

ジェルソミーナはちょっと頭が弱いけど、善悪を知り純真。
母親に売られても、自分の役割を理解して恨み言を言ったりしないし、ザンパノに酷い扱いをされても従順に彼を好きになろうとします。
きっと人を憎んだり嫌ったりできないのでしょう。
でも、旅を続けるうちに自分の存在価値に疑問を持つようになります。
彼女の精神的成長でもあるし、頑張っても優しい言葉ひとつかけてくれないザンパノへの歯がゆい思いでもあります。
でも、キジルシの言葉により自分にも価値があると知り、ザンパノには自分が必要なのだと思います。
だから、何度も彼から逃れるチャンスはあったのに離れませんでした。

一見、かき回し役のようなキジルシが、こんなに重要な役とは思いませんでした。
彼がザンパノをしつこくからかうのは、単純にからかうと面白いという他に、ザンパノが羨ましかったのだろうと思います。
同じような境遇なのに、ザンパノは何の不安も悩みも無く刹那的に生きている。
「考えること」すら考えもせず本能で生きているザンパノに、ちょっかいをかけずにいられない心境が伝わってきました。
まして、今はジェルソミーナという伴侶を得ている。
ザンパノは、その存在の有難さすらわかってないけど、ジェルソミーナの気持ちを尊重して彼のもとへ送り届けます。
二人にとって恩人なのに、可哀そうな最期でした。

ザンパノは粗暴で、ちょっとした盗みなら犯罪とも思ってないような倫理観の持ち主。
女性に対しても、人間として尊重するということすら思い浮かばない。
当然、ジェルソミーナの気持ちなどわかろうともせず、最初は金で買った所有物としか思っていません。
ただ、ジェルソミーナと過ごすうちに、自分でも気づかないけど少しづつ細かい心情が芽生え、彼女を置き去りするときに毛布を掛けお金まで握らせる。
そして、後ろめたさを覚えながらも、彼女がどこかで生きていてくれればいいと思っているようでした。

だから、彼女の死を知って初めて、失ったものの大きさを知ります。
打算なしで自分に寄り添ってくれたただ一人の人。
自分を丸ごと愛してくれたただ一人の人。
そんな掛け替えのない存在を失ったことに激しく打ちのめされ、砂浜に倒れこみ身もだえして嗚咽を漏らす。
ザンパノが動物から人間になった瞬間でした。

3人の道にはいくつも分岐点がありました。
それぞれの選択が正しかったかどうかはわからないけど、自分の選んだ道を生きました。
ザンパノの道は、今後険しくなると思われます。

映像も綺麗です。白黒なのにというか、白黒だからこそ、明るい空や繁る草木、サーカスの煌びやかな装飾、暗い海や風になびく洗濯物などの色が想像力を刺激して鮮やかに見えました。
そう思わせる力が画面にありました。

短い時間に、様々な人生が凝縮され、見たときの年齢やどの立場で見るかで、何度も発見のある素晴らしい作品だと思います。
nanapinoさん [CS・衛星(字幕)] 9点(2020-07-28 12:39:59)(良:1票)
192.《ネタバレ》 久々に「ハズレ」作品を見た。
粗野な男が、ちょっと頭の弱い女性をひどい扱いをして物語が進んでいく。
これってどうにも気分が良くないし、第一面白くない。
途中のアクロバット芸人との心のやり取りはなかなか良かったが、殺人のあとに救いのない展開が続いて気が滅入るばかり。
雰囲気とか音楽が良いという声が多いが、傑出したものはなかった。
mhiroさん [CS・衛星(字幕)] 3点(2019-12-20 22:28:25)(良:1票)
191.《ネタバレ》 名作、という先入観が無かったら途中で観るのやめていたかもしれない。
でも、後半からずっと胸がしめつけられる感覚が続く。しかも柔らかく苦しい、この感覚は映画を観ていて初めてかもしれない。

人の生きる「道」とはなんだろう、と思う。明らかに良い道がありそちらを歩けるのに、あえて理不尽な選択を「運命的」にしてしまう。
修道院の別れで彼女は自分の「道」に平凡な幸せを求められないことを本能的に分かっている。

ここまで悲しい作品だからいろいろと考えるのだろうか。そして、それもまた悲しい。
simpleさん [CS・衛星(字幕)] 9点(2014-06-08 01:14:35)(良:1票)
190.《ネタバレ》 世間的に生き辛さを抱えている男女の恋愛映画ってのは一つのジャンルとして確立されていますが、本作はそんなジャンルの決定版。私がこの映画を観て一番心を引かれる部分は、最初はジェルソミーナを主人公として進む話が、ザンパノが旅芸人を誤って殺してしまってから唐突に主人公がザンパノに替わってしまう所。正直、序盤から中盤にかけてジェルソミーナから見たザンパノは完全に共感できない人物です。ジェルソミーナを放っておいて女を引っ掛けたり、直ぐに喧嘩をおっぱじめたり、とんでもないジゴロな男に見えます。そんな彼が主人公に替わってみるとザンパノという人が途轍もなく愛おしく思えてくる。
これは別に彼が可愛いとか言っているのではなく、人生における自分の暗部そのもののように思えてくるのです。私は正直今まで生きてきて、好きな相手なんだけれど深く傷つけてしまったり、それに対してちゃんと謝れなかったりしたことがあります。恋人が重い鬱病に罹ってしまって、一緒に頑張ってみたものの辛くて最終的に別れてしまったこともあります。そんな誰にでも多かれ少なかれある人生の情けなさをザンパノは象徴しているのだと感じました。だから彼が最後に死んだジェルソミーナのことを想い海辺で号泣するシーンは非常に観ていて辛かった。自分の最も情けない部分を見せ付けられた気がしましたから。
民朗さん [映画館(字幕)] 8点(2013-01-22 22:33:44)(良:1票)
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【点数情報】

Review人数 209人
平均点数 7.92点
000.00%
110.48%
210.48%
3115.26%
4104.78%
552.39%
6136.22%
73416.27%
83315.79%
93617.22%
106531.10%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 8.93点 Review16人
2 ストーリー評価 8.64点 Review17人
3 鑑賞後の後味 8.58点 Review17人
4 音楽評価 8.84点 Review19人
5 感泣評価 8.61点 Review13人
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【アカデミー賞 情報】

1956年 29回
脚本賞フェデリコ・フェリーニ候補(ノミネート) 
脚本賞トゥリオ・ピネッリ候補(ノミネート) 
外国語映画賞 受賞 

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