2.《ネタバレ》 それは本当に世界の終末なのか――。突如として全世界に拡がる謎の疾病。感染した人々は急に狂いだし、自ら死を選ぶ衝動に駆られるようになる。運転していた車のアクセルを限界まで踏み込み、手にしていたハサミを自分の首元へと突き立て、自ら火の中へと飛び込む感染者たち。さらに恐るべきことには、その疾病は感染者の姿を〝見る〟ことによって罹患するのだ。瞬く間に増殖する感染者たちによって、社会は暴力と死に支配された絶望的な世界へと変貌を遂げる。現在妊娠中のマロリーは、そんな破滅の淵に瀕する世界を生き延びるため、ある一軒の豪邸へと逃げ込むのだった。強固なセキュリティに守られたその家の中には、同じく逃げ延びた何人かの人々がすでに籠城していた。外には多くの感染者が徘徊し、しかも食料は残り僅か。果たしてマロリーとお腹の中の赤ちゃんの運命は?恐ろしいディストピアと化した世界で、なんとしても生き延びようともがくそんな母子の姿を描いたサバイバル・スリラー。冒頭からいきなり始まるパンデミックの絶望的な描写に摑みはばっちりでした。死への衝動に駆られた感染者たちが、次々と自ら死を選ぶさまはなかなかに恐ろしい。物語はその後、一軒の豪邸内に籠城する彼女たちと、五年後、大きくなった二人の子供たちとともに河を下って脱出する彼女の姿を交互に描いてゆきます。まあこういう不条理系パニック・スリラーの名作『ミスト』の一亜流と言ってしまえばそれまでですけど、この閉じ込められた人々の極限の心理劇はなかなか見ものでした。感染者の姿を見てはいけないという設定も荒唐無稽ながらけっこう効いています。最近流行りの〇〇してはいけない系のはしりみたいな感じですね。目隠ししたまま、幼い子供たちと貧弱なボートで激しい川を下ってゆくシーンは緊迫感もあってかなり惹き込まれて観ることが出来ました。ただ、脚本に突っ込みどころ満載なのが本作の惜しいところ。感染者たちが全員すぐに死を選ぶのかと言ったらそんなこともなく、何故か非感染者を襲う者も居るというのはおかしい。また姿を見ても感染しない人もいて、その人たちは心に闇を抱えているからという謎の説明だけで済ませちゃってるのも納得いきません。辿り着いた安全地帯は実は盲学校というユートピアだったという最後のオチもいまいち腑に落ちない。目が見えない人たちはそもそも見ることが出来ないから感染しないというのであれば、全員そうじゃないとおかしいのですが、ちゃんと目が見える人もそこに混ざってますし。それに主人公親子も最後は盲目になることで安全な生活を手に入れられたくらいじゃないと説得力がありません。パニック・スリラーとしてはなかなか頑張っていただけに、ここら辺の詰めの甘さがなんとも残念。