432.《ネタバレ》 これまで、この映画については「プリンセスの逃避行物語」「王女と記者の身分違いロマンス」あるいは「アン王女の成長ストーリー」だと思っていました。でも、昨日あらためて見て、驚愕!この映画はそんな軽いものではなく、全世界の人々が抱いている人生観そのものに訴えかけるものだと気づいたから。
アン王女は、それまでの窮屈な生活に耐え切れず、自由と夢を叶えるべくローマ市外へ飛び出した。ジェラード食べ歩き、カフェで飲食、美容院でお好みのヘアスタイルに、そして船上パーティーでダンス・・・。彼女がやってみたかったことは、ことごとく叶えることができて、彼女はそれで満足したはずだった。
彼女がやりたかったことが、それだけなのであれば、心おきなく王女生活に戻れるはずだった。
だが、思いがけずジョーを愛してしまう。
そう、彼女がやってみたかったことは、食べ歩きや船上パーティー・・・のようなことだと思っていたのに、実は自分が恋した相手とずっと幸せに暮らすことだったのだと、ジョーと川辺でキスをして彼の部屋に戻ってから気づくのですね。
私は今までそこまで深く考えずに見ていて、ジョーとの恋はジェラードや船上パーティーと同じカテゴリーの”彼女が体験した非日常”の1つとしてカウントしていたのですが、それはとんでもないミスでした。
ジェラードや船上パーティーなどの自由行動は、これからの未来、王女として戻って彼女の人生の中になくてもそれはそれであきらめはつけられるレベル。
でもジョーとの恋は、あきらめつけられない・・・。
”自由気ままに楽しいことをする”じゃなく”たった一人の愛する人と共に過ごす”ことこそが、彼女にとって本物の夢だったのです。
そしてようやくつかみかけたその本物の夢こそ、彼女が手離さなきゃいけないもの。それ以上に苦しいことはない。
彼の部屋に戻っての会話。アン王女「何か食事作りましょうか?」ジョー「台所ないんだ。食材もない。いつも外食さ」 アン王女「それでいいの?」・・・その後にジョーが言うセリフに、全てが集約されていて、心がしめつけられました。
「Well, life isn't always what one likes・・・is it?
(人生っていうのはいつも、望みどおりにならないもの・・・そうだろう?)
その言葉を受けてアン王女も「そうね・・・」と答える。
人生が望みどおりにならないだろう?というこのセリフは、彼の部屋に台所がなく外食せざるを得ないことを言うだけでなく、アン王女の身の上、そして二人の関係・・・いやそれ以上に、この映画を見ている人達、いやいや全世界の人達が常に心に抱く思いを表す言葉ではないでしょうか。
だからこそ、この映画がたくさんの心をつかんでやまないのだと気づきました。
何十回も見てきたこの映画。実はこのセリフがナンバーワンの名ゼリフなのではないでしょうか。
あなたもきっとこの映画を見たら、人生思い通りにいかない自分の姿をアン&ジョーに重ねて、共感することマチガイナシです。