61. 新おしゃれ泥棒
《ネタバレ》 チャールズ・グローディンが己の心中を一々語るナレーションが耳障りでダサい演出に辟易。一方でワッツ役のジェームズ・メイソンは言葉にしなくても一つ一つの動作にその胸中が滲み出て、一切登場しなかった妻子との関わりも浮かんでくるもので、生真面目で悲哀に満ちた働き蜂という初めて見る人物も見事に表現する演技力に脱帽。とりわけジョン・ギールグッドとの対決は観直すごとにやるせなさが増してゆき、妻子宛てに遺書を残してきたのだろうと思うと泣きそうに。「ルパン三世」で観たような気がするダイヤモンド強奪シーンはまずまずながら、カーチェイスシーンはイマイチで車を馬で追いかけるトレヴァー・ハワードに「何でやねん?」結末も興ざめ。名優達に対して礼を失する邦題及びDVDパッケージが許し難い。 [DVD(字幕)] 7点(2018-08-28 02:21:04) |
62. 死霊伝説
《ネタバレ》 完全版鑑賞。ジェームズ・メイソンの冷酷非道な狂乱模様を見たい一心で眠気に耐えに耐えての鑑賞でしたが。エレガントで気品に満ち溢れた姿に見惚れるばかりで、スーザンが見入られるように連れていかれるシーンでは、そりゃあ私だって黙ってついていって破滅でも何でもしますわ、と思った彼の出演作中でも屈指の男ぶりでありました。その先がなく、あっけない最期に眠りに落ちてしまい1時間後に続きを完走しました。因縁や謎は何も解き明かされないのもあいまって欲求不満で身悶えしてしまった非常に残念な作品。 [DVD(字幕)] 4点(2018-07-18 16:50:56) |
63. 真説フランケンシュタイン/北極に消えた怪奇人間!<TVM>
《ネタバレ》 2部構成3時間。1部終了時点で泣く泣く就寝。続きが観たくて堪らず仕事帰りの自転車を漕ぐ足に力が入ってしまった。苦手なホラーものでありながらジェームズ・メイソンが引き合わせてくれた本作の素晴らしさに感嘆しきり。この歳になるまでフランケンシュタインがつぎはぎだらけの怪物と思っていましたが、怪物を作り上げた医者だったのにビックリ。生み出されるまで、生まれてからヒトとしての知性を授けられ成長してゆき、ジワジワと醜くなり両者の間に溝が出来て、悲惨な結末まで。実に丹念に描かれており、おどろおどろしさとドラマの塩梅良く、レナード・ホワイティング、マイケル・サラザン、デビット・マッカラム、ジェーン・シーモア(妖美に目が眩む)、アグネス・ムーアヘッド、ラルフ・リチャードソン、ジョン・ギールグッドという超豪華俳優陣と凝ったセットと映像美はTV作品とは思えない出来栄え。いの一番に登場したジェームズ・メイソンは分別あり気で怪しげで実は権力欲の塊のポリドリ博士(実在人物に脚色を加えている)役で要所要所に顔を出し物語に深みを加えている。生首に縋り付いて泣く姿や、天罰を受けてのあまりと言えばあまりの最期は夢に出てきそうな強烈さ。購入した甲斐のある傑作です。 [DVD(字幕)] 9点(2018-06-25 15:41:27) |
64. シーラ号の謎
《ネタバレ》 クリントンが誰がシーラを轢き殺したのかを知る事無く殺されるまでも見応えがありましたが、ここからがお楽しみの始まりだったのです。極上の脚本が、同姓同名の方かと思ったらアンソニー・パーキンスその人によるものだというのに心底仰天。南仏のロケーション、ケン・アダムによるシーラ号内装が実にゴージャスであり、ムービースターが一層輝いて見えため息が出まくり。お目当てジェームズ・メイソンには大満足!登場シーンで伏線の一つになっていた膝に乗せた幼女に向ける「ロリータ」以上に怪しさが漂っていた視線、リチャード・ベンジャミンとのラスト30分近くに亘る謎解きでの優雅な語り口、分が悪そうで手に汗握った決闘模様、アンソニー・パーキンスの皮肉が籠っているような意外な幕引きでの腹黒さが滲み出ている姿。変幻自在な演技に惚れ惚れするばかりでした。ジェームズ・メイソンのファンの方(いらっしゃれば)には勿論の事そうでない方にもお薦めの作品です。 [DVD(字幕)] 8点(2018-06-04 12:34:31) |
65. ジュリアス・シーザー (1953)
本作の主人公はブルータスであり、最初から最後まで思い迷っていた青臭い理想主義者を演ずるジェームズ・メイソンの実直な演技に魅入るものの心揺さぶられる事は無かった。一方で謀反の首謀者にして権力欲の塊カシウスを演ずるジョン・ギールグッドの飢えた狼のような眼差しが絶品。彼が現れる度に画面が不穏な空気に包まれ、ジェームズ・メイソンをも凌ぐ気迫に圧倒されました。もっと長い尺で登場人物の心の内を見せてもらいたかった。 movie legends 同士のツーショットのお宝映像に大感激で購入したDVDは私の大切なたからものになりました。 [DVD(字幕)] 8点(2018-05-24 03:15:16) |
66. 白い家の少女
サスペンス的には何という事もなく嘘寒さだけ感じた物語。堂々としたジョディ・フォスターの演技だけが印象に残る。 [DVD(字幕)] 5点(2018-04-18 16:45:18) |
67. ジキル博士とハイド氏(1941)
1931年版に続いての鑑賞。ストーリーはほぼほぼ同じ。スペンサー・トレイシーのハイド氏は面影を留めており、瞳に宿る狂気に痺れました。イングリッド・バーグマンは自意識過剰と言うか哀れさを感じられなくミスキャストでしょう。 [DVD(字幕)] 6点(2018-04-05 14:58:55) |
68. ジキル博士とハイド氏(1931)
《ネタバレ》 神の領域を侵した科学者の好奇心が生んだ悲劇。ジキル博士のフレデリック・マーチは私的米国男優ナンバーワンのオトコマエでウットリさせられ通し。悪役好きの身にハイド氏への変身過程に身悶えし期待がパンパンに膨れ上がったのですが、変身終了のエテ公ヅラに唖然茫然! スペンサー・トレイシーとは異なり原型を留めておらず、別の俳優が演じていると納得させ鑑賞続行。下流階級の女性に対する残忍な言動(ミリアム・ホプキンスの泣き笑いの表情が何とも憐れ)が赴くままの本能と言うのところの悪役ぶりにも惹かれない。あのエテ公もフレデリック・マーチだという事で何回も観直してみたけれど面影が何一つ見いだせなかった。だからこそのオスカー受賞なのでしょう(怪奇役では60年後の「レクター博士」まで唯一だとか)がションボリです。 [DVD(字幕)] 7点(2018-04-05 14:48:02) |
69. 少年の町
神父の高い理想を実現させた親友モリスに拍手喝采。「ええハナシやなぁ」とは思いますが、スペンサー・トレイシーのオスカー受賞には「これで?」と拍子抜けであります。 [DVD(字幕)] 5点(2018-03-18 18:58:08) |
70. シェイプ・オブ・ウォーター
《ネタバレ》 乳児に負った傷がもとで言葉を発せない女性とアマゾンから連れてこられた言葉を発せない半魚人の恋。互いが自分の事を分かってもらえる事の喜びが滲み出ており、半魚人の得も言われぬ美しい目が語る胸中が切なさをかきたてる。個人的に助演男優賞が相応しいと思ったマイケル・シャノン演ずる力だけが正義と信じているストリックランドが本作のキーパーソン。マイノリティに対するこの男の言動に「便所のような国」発言の大統領が思い浮かぶ。60年代東西冷戦と半魚人の関わりの掘り下げが浅いのが惜しいものの、ラストショットまで目の離せない、余韻の深い、記憶に留まる秀作でした。 [映画館(字幕)] 8点(2018-03-17 00:26:19) |
71. ジャックナイフ
《ネタバレ》 メグス、デイヴ、マーサ。生きる事にくたびれた三人が、帰還して最初にしたい事を語る圧巻のシーンを機に憑き物が落ちたよう表情となる。ベトナム帰還兵を扱った作品では地味ではあってもデ・ニーロ、エド・ハリス、キャシー・ベイカーの人物を表現する力を見せつけられた良作。 [DVD(字幕)] 7点(2018-01-04 00:15:56) |
72. 死の谷
《ネタバレ》 更生して穏やかな暮らしを送るための最後の強盗。無法者の身勝手な夢が叶う筈がないのですが、手を繋いでこと切れた二人と、二人の幸せを確信しながら鐘を鳴らす神父さんの姿に切なさで泣けてしまいました。また、多くの者たちの裏切りを見せつけられて、何時の時代も街中が裏切りに溢れているのを再認識させられます。傑作西部劇。 [DVD(字幕)] 9点(2018-01-01 13:48:20) |
73. 上海の伯爵夫人
思わせぶりなナルシストでヘタレ。私が嫌うレイフ・ファインズの負のオーラが満載。ストーリーまで思わせぶりで何の余韻も残らない愚作。 [DVD(字幕)] 4点(2017-12-09 01:12:58) |
74. ジュリア
《ネタバレ》 初見。度々挿入される回想シーンから二人の絆とそれぞれの人となりが窺える無駄なシーンが一切無い見事な展開。列車内のリリアンから感じる恐怖感が手に汗握るほどではなかったのが残念でしたが、カフェでの再会シーンは圧巻であり二人は愛し合う男女に見えました。今生の別れになるのは想定内でしたが、ジュリア亡き後にその存在までも抹殺されてしまう戦いの陰惨さが堪える。打ちひしがれるリリアンに寄り添うダシール・ハメット、羨ましい光景でした。リリアン・ヘルマン、フレッド・ジンネマン、ジェーン・フォンダ、ヴァネッサ・レッドグレイブ、気骨のある人達の気迫を感じる名作。 [DVD(字幕)] 7点(2017-11-20 12:26:07) |
75. 死霊の盆踊り
本サイトレビュワーとして13年7か月にして念願の初鑑賞。ストリッパーのオーディションの如き裸踊りが披露される。だけ。踊り子以外の出演者のダイコンぶりもあまりにもイタイ。自分の目で確かめた本作は正真正銘掛け値なしの0点であります。「これから話す物語は気を失うほどに恐ろしい」オッサンのお言葉ではありますが、そこそこ綺麗な身体のオネエチャンとは違う醜女老体が踊りまくる姿こそが真の恐怖なんだよなぁ、と風呂上りの鏡の前で思うワタシです。 [DVD(字幕)] 0点(2017-06-23 15:27:04) |
76. 人生はビギナーズ
トラップ大佐を演じた45年後、82歳にしてオスカー初受賞のクリストファー・プラマーが邦題を示しています。息子とその彼女のお話は退屈でした。 [DVD(字幕)] 5点(2017-05-17 14:32:00) |
77. ジャッカー
犯人二人が少年を組織に送り届ける以外事件の背景には一切触れられずストレスが募る。少年が大人二人を観察し仲間割れして共倒れになるように仕向けているのが薄気味悪い。ロイ・シャイダーの魅力が点数の全て。 [DVD(字幕)] 5点(2017-02-01 16:14:07) |
78. シングルマン
監督の自意識過剰な美意識しか感じられない。ストーリーは絵空事で、お洋服のプロモーションビデオを淡々と眺めていた。コリン・ファースは動いて喋るマネキンのようだった。 [DVD(字幕)] 4点(2017-01-09 13:45:30) |
79. 情婦
《ネタバレ》 初見、予備知識ゼロ。澱みのない起承転結。緻密さとユーモアと使命感の強さの按配は余人には真似の出来ないワイルダー監督の名人芸。弁護士と看護師の仲良く喧嘩するさまは絶品で心地良さに浸りました。特筆すべきは情夫に尽くすクリスチーネを演ずるマレーネ・ディートリッヒの美しさでこの世にこのような56歳が存在するのか唖然とさせられます。「殺人ではなく処刑だ」との名台詞に辿る展開であの場所にナイフがポンと置かれていた事に-0.1点、端数切捨てで9点の傑作中の傑作です。 [DVD(字幕)] 9点(2014-11-03 14:30:51)(良:1票) |
80. 周遊する蒸気船
《ネタバレ》 自首するも正当防衛が認められず死刑判決が出てしまう。理不尽であろうとも罪に対する罰を受けねばならないという骨太さと、他者への深い慈愛。監督の価値観がクスクス笑いから大爆笑が止まらないハチャメチャな展開でもって描かれている傑作。結末の爽快感が心地良い。 [DVD(字幕)] 9点(2014-07-05 10:46:55)(良:1票) |