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プロフィール
コメント数 2399
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  バック・トゥ・ザ・フューチャー
タイムトラヴェル映画で、劇中にタイムスリップした未来の同時点に生きているって、なんか初めての経験の様な気がします。30周年おめでとうございます。もうこの映画の内容なんて語り尽くされていますので今さらという感も強いですけど、とても頭の良い脚本だといつも思います。タイムトラベルについてもパラレルワールド理論はあえて採用されてませんが、パラレルワールドじゃこのシリーズの様なドキドキ感はとうてい出せなかったでしょうから大正解です。小ネタも効きすぎるほど盛り込まれているし、何と言っても80年代のワクワクした懐かしい雰囲気がイイですよね。30年前に青春まっただ中だった人、そしてもう青春が終わっていた人やまだ生まれていなかった人たち、全ての世代にこれからも愛される傑作であることは間違いないです。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2015-10-21 21:34:08)
2.  裸のジャングル 《ネタバレ》 
独特のテイストを持った戦争映画『ビーチレッド戦記』を撮ったコーネル・ワイルドが監督の忘れられた逸品、近年はメル・ギブソンの『アポカリプト』のパクリ元として一部では有名になっています。彼は元オリンピックのフェンシング代表選手からハリウッド入りしたB級映画専門のアクション俳優(経歴からするとジェイソン・ステイサムみたいですね)でしたが、それよりも俳優出身監督としてメル・ギブソンやイーストウッドの先がけ的な存在です。本作のプロットやエピソードは『アポカリプト』がそっくり真似しているそうなのでそっちを参考にして下さい、というわけにはいきませんよね(笑)。 コーネル・ワイルド扮するガイドが仕切る像狩りツアーの一行は、メンバーが侮辱したせいで原住民に捕まってしまいます。白人もポーターの黒人もなぶり殺しにされますが、ワイルドだけは素っ裸で草原に放たれ8人の原住民たちの人間狩りゲームの獲物にされてしまいます。厳密にはジャングルじゃなくてサバンナなんですけど、ワイルドはけっこう逃げ足が速くまず反撃で1人殺してとりあえずサンダル、次に殺した奴からパンツと武器を装備して態勢を整えます。 実はワイルドたちが捕まる開幕10分以降、この映画では英語のセリフは皆無になります。あとは現地人たちが喋るスワヒリ語(?)だけになり観客にコミュニケーション疎外感を味あわせるのが監督の狙いでもあるんですが、何とDVD版には現地人の会話に字幕が付くんですよね。彼らのセリフが判らなくても観てればだいたい判りますし、雰囲気を味わうためにも字幕オフをお奨めします。人間たちの追っかけっこのシーンと交互に野生動物たちの狩りの実写フィルムが挿入されるんですが、これがけっこうエグイんです。アナコンダがオオトカゲを絞め殺すところや大ガエルが小ガエルを共食いするなど、でも観てると人間狩りしている連中も同じ野獣なんだなと納得させられました。途中、アラブ系の奴隷商人軍団が原住民の村を襲って奴隷狩りするところに遭遇し、逃げ遅れた少女をワイルドが助けるエピソードもあります。この少女とのふれあいと別れは良く考えられた脚本で、ジーンとくるものがありました。 ラストはなんか清々しいんですけど、観れば判りますけどそっくり『プレデター2』がパクってます。こうやって考えると、この映画は後世の作品に影響を与えたり丸ごとパクられたりしていて、まさに隠れた傑作と呼ぶに相応しいと思います。
[DVD(字幕)] 9点(2015-09-10 21:41:05)(良:1票)
3.  博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか 《ネタバレ》 
キューブリックは数少ないフィルモグラフィの中で色んなジャンルの映画をとっているが、彼が撮った唯一のコメディはブラックコメディとしては究極の域に達したと思います。なにがすごいと言ったら、P・セラーズ、G・C・スコット、S・ヘイドン、S・ピケンズ、P・ブルといった主要登場人物が全員で映画史に残る強烈な怪演を繰り広げてくれるところでしょう。良くこの映画ではセラーズの三役が話題にされますが、そんな彼を上回る凄まじい怪演でもっと評価されるべきなのはG・C・スコットのタージドソン将軍ですよね。この将軍のキャラは、当時の空軍司令官のC・ルメイ大将(太平洋戦争でB29による無差別爆撃戦略を実行した張本人)がモデルだそうですが、実は狂人なんじゃないかという説まであったルメイを強烈にカリカチュアしていて見事です。 いきなり空中で交尾しているB52爆撃機を見せてくれるオープニングは洒落てます。このB52が飛ぶシーンのチープな特撮がまた曲者で、完璧主義者のキューブリックですから低予算を逆手にとって狙った映像なのは明白です。地上戦闘のシーンも手持ちカメラで撮ったニュースフィルムみたいで、キューブリックの拘りが伝わってくるところです。そして“We'll Meet Again”をとんでもない映像にかぶせるあまりに有名なエンディング、そのセンスは今の眼で観ても鳥肌が立ちます。 こうして観ると、この映画は筒井康隆の初期の疑似イベントSFに通じるところがありますね(と言うより、筒井康隆の方が影響を受けたのかもしれません)。
[映画館(字幕)] 9点(2013-04-09 23:37:21)(良:1票)
4.  パットン大戦車軍団 《ネタバレ》 
“ドイツ軍が恐れた連合軍の唯一の将軍”パットンの伝記映画。その生涯が映画化された第二次世界大戦の指揮官は、ロンメル、マッカーサー、パットンの三人ですけど、その中でもパットンはキャラの面白さでは飛び抜けています。この映画はベトナム戦争真最中に製作され、オスカー受賞にも政治的な影響があったなどといまだに非難している人もいますが、そんな批評は的外れもいいとこで、ひとりの特異な人間を通じてアメリカ人の本質に迫った傑作だと思います。脚本を書いたのはコッポラで、彼の数ある脚本の中では本作が最高傑作、バイオグラフィーと戦争スペクタルのバランスがとれた非の打ちどころがないシナリオでしょう。パットンの性格は粗暴ながら詩人でセンチメンタル、とても同一の人間とは思えない複雑さですが、これまた非の打ちどころがないジョージ・C・スコットの演技でした。また脇にはカール・マルデンのブラッドレー将軍がいて、彼の真面目っぷりがきらりと光るいぶし銀の名演です。 最近出てきた史料からは、慰問に訪れたマレーネ・ディートリッヒと情事を楽しむなど、けっこうパットンはそっちの方も豪胆だったみたいです。
[映画館(字幕)] 9点(2011-10-27 00:11:10)
5.  裸のキッス 《ネタバレ》 
もう冒頭からコンスタンス・タワーズのスキンヘッドに強烈なパンチを喰らいます。しかしタイトルバックにもなっている彼女のカツラが吹っ飛ぶショットは、良く観るとバックにカツラをもぎ取るスタッフの腕が一瞬映るのですよ。いかにもサミュエル・フラーらしい粗っぽさなのですが、そんなこと気にならないほどのインパクトを持ったオープニングです。 B級ノワールや西部劇でしかお姿を拝めないタワーズですが、本作では「こんなにいい女優がいたんだ」と感嘆するほど魅力にあふれています。またフラーは劇中で登場人物に歌わせるのが上手くて、病院で子供たちがタワーズに歌ってみせるシーンは、思わず涙が出るほど素晴らしい名場面です。幼児に対する性犯罪を正面から題材にしたのは本作が初めてだったそうですが、もちろんこの時代では非常に象徴的な表現にとどまっています。逆にそのあいまいな描写が、スタンリー・コルテスのコントラストが強いモノクロ映像が描くちょっと不気味な田舎町の人間模様と相まって、独特の幻想的な雰囲気になっていて効果をあげています。 やはり本作がフラーの最高傑作だと思います。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2010-08-22 13:34:09)
6.  バージニア・ウルフなんかこわくない 《ネタバレ》 
言葉には暴力性があることは承知していますが、同じフレーズでも「文字にして紙に書く」のと「言葉を音声として発する」のではコミュニケーションの手法としていかに性格が違うのかと考えさせられました。テイラーとバートンの血が出るような罵り合いは、まさに「セリフのボクシング」と呼べるのでは。たった四人しか登場人物がいないのに、四人ともオスカーにノミネートされて二人が受賞って、ちょっとすごくないですか? 四人の中でもテイラー・バートンの毒気にあてられて、冒頭とラストでは同じ人格とは思えないほどボロボロになっちゃうS・デニスの演技の上手さには感心させられました。ちなみに本作はハリウッド映画で初めて“Fuck”というセリフが使われた記念すべき作品だそうです。実際のところどこで使われたか気がつかないほどですが、まさか40年後には“Fuck”だらけの映画が量産されるとは、当時の観客は想像もしなかったでしょうね。
[DVD(字幕)] 9点(2010-05-20 20:56:42)
7.  ハイスクール白書/優等生ギャルに気をつけろ! 《ネタバレ》 
原題は『選挙』、高校の生徒会役員選挙なんですが、シニカルでブラックな視点で描かれていて、ひどい邦題からは想像つかない奥の深さに感心しました。リース・ウィーザースプーンの顔芸にまず苦笑、クリス・クラインの演技とは思えないバカっぷりもおかしかったけれど、マシュー・ブロデリックの小市民根性丸出しの小物ぶりを見て、これは彼しか演じられないキャラだと感心しました。これは意外な拾いものですよ。なんでも、リースの役は最初ソーラ・バーチだったが撮影開始直後に降板しちゃったそうです。きっと変な顔撮られて怒っちゃったんだろうな。
[DVD(字幕)] 9点(2010-04-21 01:33:23)
8.  パンズ・ラビリンス 《ネタバレ》 
ダーク・ファンタジーというコピーに見事に騙されました。私はこの結末はバッドエンドと解釈します。確かにオフィリアは生き延びることができても、フランコ政権下のスペインではおそらくメルセデスたちレジスタンスも含めて長くは生きられなかったでしょう。そもそも母親が大尉と結婚(というか妊娠)さえしなければ内戦の残り火とも言える残酷な闘争にオフィリアも巻き込まれることはなかったはずだし、彼女はきっと平凡な育ち方をして人生を過ごしたのではと感じます。子供には自分の人生を自由に生きてゆくことができる無限の可能性があるはずなのに、母親の愚行によってこんな悲しい結末に終わってしまったことに、思わず涙してしまいました。観終わってからの後味は、私には「火垂るの墓」に匹敵する悲しみがありました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2009-07-28 20:41:20)
9.  張り込み(1987) 《ネタバレ》 
80年代に流行したいわゆるバディ刑事もの映画の一つだけど、ラブコメと刑事アクションと緩さがバランスよく結合した佳作です。改めて感心したのは、リチャード・ドレイファスの芸達者ぶりです。考えてみればこの頃が彼のキャリアの絶頂期ですから、これは必然でしょう。80年代に刑事を演じた男優たち(エディ・マーフィ、メル・ギブソン、ブルース・ウィリス、そしてイーストウッド)の中でも、ドレイファスがいちばんリアルで人間味があったんじゃないかな。張り込み対象の女性と出来ちゃうって洋の東西を問わずもっとも刑事がやっちゃいけないこと、描き方を変えれば悪徳刑事になっちゃうところですが、ドレイファスの軽妙な演技と秀逸な脚本のおかげで愉しく観ることができます。けっこうハラハラ・ドキドキさせてくれるストーリーですけど遊びの部分も多く、張り込み中にエミリオ・エステベスと退屈しのぎに映画クイズをしていて「人喰いサメが出てきた映画は?」との問いに「知らんね」とドレイファスが返すところは傑作でした。ラストの対決場が製材所というのはちょっと変わったパターンでしたが、悪役の最期が製材用の鋸でスプラッターかと期待(?)してたのに、予想を見事にかわしてくれたのはかえって好印象でした。使われている楽曲もグロリア・エステファンを始めとする懐かしのサウンドで良かったなと思います。ほんと、80年代独特の雰囲気が漂う良作です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-09-05 23:06:21)
10.  白熱(1949) 《ネタバレ》 
この映画はよく観ると、アル・パチーノの『スカーフェイス』とよく似たプロットなんですよ。ジェームズ・キャグニーが演じるコーディが病的なマザコンというところは、『スカーフェイス』でトニー・モンタナがシスコンというところを彷彿させるし、コーディが劇中何度か口にしラストの閉め台詞でもある“The Top of The World”も『スカーフェイス』で死せるモンタナに落ちてくる垂れ幕のキャッチ"The World is Yours"に通じるものがあるし、その垂れ幕をぶら下げていた気球は爆発するガスタンクを彷彿させるところがあります。もっともこれは『スカーフェイス』の元ネタになった33年の『暗黒街の顔役』に『白熱』が寄せていった結果だったのかもしれませんが、オリヴァー・ストーンも少なからず意識していたんじゃないかな。 コーディ一味はどいつもこいつも1ミリも感情移入できないクズばかりというのがある意味凄い。コーディは強盗の被害者や仲間でさえも容赦なく殺すけど、いちばん怖いと思ったキャラはやはり母親ですかね。まさに「この親にしてこの子あり」という感じですが、シェリー・ウィンタースが演じたマ・バーカーを遥かに凌駕しています。ある意味もっと怖いというか悪辣なのはヴァージニア・メイヨ=ヴェルナで、全編裏切りの連続のうえに母親まで殺しちゃう。でも最後までコーディを騙して悟られず結果的には彼女だけが生き残って逮捕、お前なんかコーディに…!(以下自主規制させて頂きます)つまりこの映画が言いたいことは、“女は怖い”ということになるんでしょうかね。 とにもかくにも40年代とは思えないスピード感に満ちた作品でした。警察(厳密には財務省なのでシークレットサービスか)の潜入捜査や追跡も丁寧に描かれているし、良い脚本です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-02-22 22:04:05)
11.  ハッピー・デス・デイ 2U 《ネタバレ》 
前作がホラー+ラブコメという図式だったのに対して、この続編では完全にホラー要素がSFに置き換わっております。タイムループならぬ次元ループとも呼ぶべき現象、これを全人類の99%が理解できない量子力学という呪文を使って説明してしまう荒業、ちょっと強引すぎるきらいはあるけど何となく納得させてくれたような気がします。前作でツリーのループで毎回冒頭にだけ登場していたアジア系のライアン君、実は彼は卒業研究で量子反応炉なるトンデモない装置を開発してしまう天才的な学生で、本作ではとくに前半で大活躍を見せてくれるところが見どころです。まさかのライアン君のループ地獄が展開してこれも仰天の二人のライアンが出現して量子反応炉が暴発、なんとツリーの方がやっとの思いで抜け出したはずのループ状態に逆戻り。正直この展開には観ていてほんとにびっくりさせられました、まるでこの映画は前作と同時に脚本が書かれて撮影したんじゃないかと思うぐらいです。明らかにこの後は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズを意識した展開になるのですが、前作公開後にこの展開を構想出来る脚本家は、類まれなる才能の持ち主であることは確かです。実際には本作が期待ほどヒットしなかったので構想は萎んでしまったみたいですけど、さらにシリーズ化するプランはあるみたいですね。実現すれば、まさに21世紀の『バック…』シリーズときっと評価されることでしょう。 それにしても、ツリーとカーターおよびライアンを演じた俳優たちは、この二作で何度ほとんど同じような演技(ツリーが目覚めてカーターの部屋を飛び出すまでのシークエンス)をさせられたことでしょうかね、編集マジックで軽減されているかもしれないけど、彼らにはまさにループ地獄ですね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-12-24 22:58:26)(良:1票)
12.  ハスラー 《ネタバレ》 
自分は大昔に少しビリヤードをやったことがあったけど、おそろしく下手くそでつくづく才能がないと凹んでしまった記憶があります。この映画では“プール”と“ビリヤード”という二種類の競技が登場しますが、競技自体にはほとんど焦点を合わせない撮り方をしているためにその違いはさっぱり判らない。ハスラーというのはどちらかというと裏街道の世界に属するプロで、日本で言うと雀荘に巣くうプロ雀士やパチンコ世界のパチプロみたいな存在みたいですかね。 60年代のハリウッドは中盤からはニューシネマの時代になるけど、この60年代の幕が開いたところで誕生した本作こそ、ニューシネマの先駆けとなったんじゃないかと自分は思っています。暗いながらも鮮明なモノクロ撮影で音楽もほとんどなしで淡々と進行し、ほとんどカタルシスを与えることのないラスト、50年代にはほとんど存在しなかったパターンの映画ですね。そして同じく60年代の特徴であるアクターズ・スタジオ出身俳優の活躍の掉尾でもあり、ポール・ニューマンも本作から演技派としての名声を高めることになってきます。またこの映画の凄いところは、ニューマン、パイパー・ローリー、ジョージ・C・スコット、ジャッキー・グリーソンという主要キャストが全員オスカー演技賞にノミネートされたということ。ジャッキー・グリーソンなんて本来はコメディアンというか芸人で、映画でのシリアスな演技は本作だけなんですからねえ。個人的にはやはりアクターズ・スタジオ出身のパイパー・ローリーのメンヘラ・アル中気味のヒロインに引き付けられました、彼女は本作以降76年の『キャリー』まで映画出演がなかったってのはほんと勿体なかったです。でもやっぱミネソタ・ファッツは、気が付いてみればほとんどセリフがなかったけど、渋すぎですよ。彼こそは映画史上最高のデブキャラだと確信した次第です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-11-12 23:12:46)
13.  バイス 《ネタバレ》 
最近は特殊メイク技術の進歩で演技力がある俳優ならばどんな有名人に化けることもできそうですが、クリスチャン・ベイルはデ・ニーロの流れを組む肉体改造型キャラ創りの最後の雄、メイクも凄いですけど20キロ近く体重を増やしてディック・チェイニーを演じ切りました(さすがにこれは辛いらしくて、今後は肉体改造を止めると宣言したそうです)。彼に限らずブッシュ大統領やラムズフェルド国防長官などそっくりさん大集合といった観もある作品ですけど、みな対象の仕草や喋り方を演技で見事に再現しているところが感心します。 原題の“Vice”には副大統領の“副”という意味のほかに“悪徳”という意味もあり、これはなかなか意味深です。また本来“副”には“正”のような権限はないけど責任も負わないという立場なので、考えてみればこの立場を悪用すれば陰に隠れてけっこうヤバいことができるという絶妙なポジションでもあります。この映画の描いていることがどこまで真実に近いのかは判るはずもありませんが、観る限りではチェイニーはとんでもない悪徳政治屋と解釈されるかもしれません。でも、猛妻の尻に敷かれていたりとても家族思いな面があったり、クリスチャン・ベイルの演技もあって好感までは持てないにしても人間として理解はできるんじゃないでしょうか。観るまでは野心家妻に陰で操られる人という印象はありましたが、どうしてどうして、ワシントンでのチェイニーの活動は完全に彼個人の野心が暴走してゆく過程であると思いました(だいいち、副大統領になることには奥さんは反対してましたからね)。サム・ロックウェルの演じるブッシュ大統領がまた絶妙で、たぶん実物も実像はこんな感じだったんだろうなと思わせる説得力がありました。この映画の脚本は秀逸で、狂言回し的に前半から登場するブルーカラー労働者風のおっさんを「こいつは何者だろう?」と訝しんでいたら、まさかそんな人だったとはと心底驚かされました。編集も実にコミカルで雰囲気を出しているのですが、題材が題材だけに後半に行くに連れてどんどんシリアスになってゆくのは止むを得ないところかと思います。 考えてみると、このブッシュ政権は正・副両大統領とも伝記が映画化されたわけになります、これはある意味で快挙なのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-02-12 21:59:11)(良:1票)
14.  バラバ 《ネタバレ》 
「キリストが身代わりに死んでくれた男」盗賊バラバの数奇な運命を描いています。原作はノーベル文学賞を受賞したペール・ラーゲルクヴィストの傑作小説、映画化に挑んだプロデューサーはディノ・デ・ラウレンティスで監督はリチャード・フライシャーだけど実質イタリア映画です。当時のマカロニ映画界では“サンダルもの”とバカにされていた古代ギリシャ・ローマ帝国の歴史スペクタルが一ジャンルを確立していましたが、この映画はそういう駄作・凡作とはとは明らかに一線を画する良作だと思います。これもリチャード・フライシャーの力量がなせる業かもしれませんが、とにかく丁寧に撮られた作品です。 新約聖書に出ているお話しに沿った前半部分は、イエスに命を助けられたのにちっともイエスの教えを理解しようとしないバラバの姿が描かれます。もっとも無宗教の私にもイエスの復活なんて信じられませんし、大部分の人にもバラバの観方はしごく合理的だと思うはずです。逆に一度恩赦を受けたから盗賊稼業に戻ってまた捕まっても死刑にならず、硫黄鉱山に送られて20年奴隷労働をしても生きている、「死にたくても死ねない男」となってしまったバラバの苦悩が浮き彫りとなります。アンソニー・クインが好演しています。物語が大きく動くのはバラバが剣闘士になるべくローマに連れていかれてからです。このローマのシークエンスがカネもかけて大掛かり、この映画の大きな見どころかと思います。特に剣闘士の生活とコロセウムの描写は素晴らしく、これは『スパルタカス』を超えていると思います。それがセットなのか現存する遺跡なのかは判りませんが最上階までエキストラで埋め、「なるほど、ローマ帝国はこうやって民衆にショーを見せていたんだな」と納得できる再現力でした。 まあ間違いなく言えることは、この当時のキリスト教信仰は中世以降そして現代の私たちが知っているキリスト教とは、別物だということでしょう。ペトロの言葉を真に受けてローマに放火してしまうバラバの行動には、これからどんどん血生臭くなってゆくキリスト教の行く末を暗示しているようにも思えました。原作小説のおかげかもしれませんが、思った以上に奥が深い映画だったと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-04-03 21:09:56)(良:1票)
15.  ハンバーガー・ヒル 《ネタバレ》 
訴えたいことは違えども、その鮮烈な戦場感覚は『プラトーン』を遥かに凌ぎ、ベトナム戦争を描いた映画ではもっともリアルな作品ではと思うぐらいです。監督のジョン・アーヴィンはのちに傑作『プライベート・ソルジャー』を撮ることになる人で、知られざる戦争映画の名匠と呼ぶにふさわしい監督です。 “ハンバーガー・ヒル”と兵士たちに恐れられた高地を攻めるアメリカ第101空挺師団の実話をもとにしたストーリーです。本編がスタートして30分以降はラストまでひたすら戦闘シーンの連続、それもジャングルの中から這うようにして高地を攻めあがってゆく苦しい戦いで、米兵たちが文字通りミンチにされてゆくところがこれでもかと見せつけられます。あの『バンド・オブ・ブラザーズ』の精鋭101空挺師団とは思えない冴えない戦いっぷりは、まあ史実だからしょうがないんでしょうね。これは兵士の質と言うより、当時の米軍司令部の無能ぶりが原因として指摘されるでしょう。確か十人以上いたはずの分隊が、ラストに頂上に生きてたどり着いたのはわずか三人になってしまう無常な結末、しかもこれが戦史にも残らない無名の戦闘ですから嫌になります。私の持論では「この戦場に自分がいなくてほんとによかった」と心底感じさせるのが優れた戦争映画なんですが、その意味では本作は三本の指に入る出来です。終盤の斜面を泥だらけになり滑り落ちながらバタバタ死んでゆく兵士たちの姿を観ていると、「負け戦の次に悲惨なのは勝ち戦だ」というウェリントン公爵の至言が心に浮かびました。 激戦の割には斜面をただ上ってゆくだけの単調な絵面と、ヒロイズムやヒューマニズムが皆無のストーリーテリングですので「退屈だ」という批評は当然あると思います。でも登場人物たちの個性は丁寧に描かれているし、ドラマとしては良くできていると感じます。
[ビデオ(字幕)] 8点(2017-11-17 23:28:59)
16.  ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い 《ネタバレ》 
ドタバタ・コメディー+謎解きミステリーというプロットはなかなか斬新だったと思います。きわどい下ネタと人種ネタは拒否反応がある人も多いでしょうが、すいません私“黒いダグ”には心底大笑いしてしまいました。フィル・スチュ・アランのキャラもキレまくってます。いちばん悪そうなフィルが教師と言うのは強烈な皮肉ですよね。マイク・タイソンが出てきたのはびっくりでしたが、このネタでⅡまで引っ張るとは思いもよりませんでした。可笑しかったのはMr.チャウで、だってグラサンを外したら不祥事でバッシングを受けてすっかり干されてしまったあのお笑いタレントにそっくりなんですもの。でもこいつが実はシリーズ最重要のキー・パーソンだったとは、Part.1では想像できませんでしたね。ネタがヤリ過ぎ状態になったりタッチがちょっと変わってくる『国境を越える』や『最後の反省会』と比べると、やはりこの第一作が笑いのバランスが取れていていちばん愉しめるんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-05-28 20:53:43)
17.  バタリアン 《ネタバレ》 
根拠はないですけど、おそらく日本でいちばん愛されているゾンビ映画ではないでしょうか。グロあり、エロあり、そして涙ありとゾンビ映画のジャンルを超えた80年代を代表するコメディ・ホラーの傑作です(ちょっと言い過ぎですかね)。 注目は何と言っても赤毛のトラッシュ姐ちゃん、演じているのはB級ホラー映画の三大絶叫クイーンのひとりと崇められたリネア・クィグリーでございます。もうほれぼれする美乳でしたが、そう言えば彼女が墓場でいきなり脱ぎ出すシーンで流れる“Tonight (We'll Make Love Until We Die)”は、ストリップティーズの代表的なBGMとして一時期定着していましたね、これも本作の偉大なる業績かもしれません。 上半身だけになった婆あゾンビが“オバタリアン”だとずっと認識してましたが、実は“オバンバ”とネーミングだったことを今回観直して初めて知りました、まあどうでもイイことですけどね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-01-14 20:51:14)
18.  バーディ 《ネタバレ》 
正直言って中盤までは「ちょっと退屈な映画だな」という感想でニコジーの髪の毛ばかりに眼が行ってしまったんですが、バードアイ・ビューの映像を見せてくれるあたりからはラストまでぐいぐいと引き込まれてゆきました。マシュー・モディーンは一世一代の名演なんじゃないでしょうか。この頃はまだニコジーとマシューは同格だったのに、かたやニコジーは稼いだカネを湯水のように浪費するオスカー俳優になるとは、まあ彼の人生が楽しいのかは別にしても随分とハリウッド業界の位置づけが変わってしまったものです。バリ島のケチャをモチーフにしたピーター・ガブリエルの音楽も変わってるけど作品に良くマッチしているし、アラン・パーカーはほんとに音楽センスが良いですね。 誰もが意表を突かれるあのラスト、あれは元から常人とは違っていた戦争に行く前のバーディに戻ったというわけなんですね。バーディはとっても魅力的なキャラなんですけど、プロムの後で誘ってきた巨乳の彼女に恥をかかしたのだけは個人的にはぜったい許せません(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-09-19 20:43:18)
19.  ハロー・ドーリー! 《ネタバレ》 
かつてハリウッドの古き良き時代のミュージカル映画が世界を魅了しましたが、その時代に幕を下ろすには相応しい華やかな一品です。天才J・ケリーがメガホンをとった最後のミュージカルでもあります。振り付けはM・キッドなのでJ・ケリーの様なモダニズムを追求したダンスではありませんが、かえって昔の『ショウ・ボート』みたいな懐かしさに溢れている映画だと思います。それでもあのレストランでのウェイターのダンスには、J・ケリーらしいダイナミズムが感じられました。それにしてもレストラン“ハーモニア・ガーデン”や19世紀末のNYの街並み、美術にはもの凄いカネをかけているのが良く判ります。 W・マッソーはあの歌唱力ではミス・キャストなのでしょうが、B・ストライサンドはもう「さすが」としか言いようがありません。この映画のときは『ファニー・ガール』の翌年でまだ27歳ぐらいですから、すでにここまで完成された歌唱力を持っていたとはこの人怪物ですよ。サッチモ御大とからんでも全然貫禄で負けてないのもまた凄いところです。さすがにダンスは見せませんでしたが、これがS・マクレーンが主役なら踊りまくるところでしょう。
[DVD(字幕)] 8点(2013-08-18 21:12:19)(良:1票)
20.  ハート・ロッカー 《ネタバレ》 
始まりもなければ終わりもないような泥沼のごとき任務に就く爆弾処理兵、決してカタルシスを与えてくれる映画ではないが、今までにない戦争映画だと思います。表現としての手ぶれ映像は最近の流行りだからもう珍しくもないが、爆弾処理班の三人に徹底的に近接した視点は戦争ものとしては珍しい。彼らの上官はいっさい画面には登場しないしどこから命令が下りてくるのかも判らない。ガイ・ピアースやレイフ・ファインズという主役級のスターが、まるで雑踏の中の通行人の様な軽さで画面に登場したかと思うとあっけなく死んでゆくのには驚かされました。考えてみれば、どんなにハンサムだろうと高潔な人格だろうと戦争ではいとも簡単に死んでしまうものだし、贅沢かもしれないけどこういう俳優の使い方はありかもしれません。 この映画を観ての最大の収穫はジェレミー・レナーを知ったことで、こんな不敵な面構えの俳優がいるとはハリウッドも奥が深い。邦画界に彼と同年代でここまで存在観のある風貌の男優がいるでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2012-06-12 21:30:26)
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