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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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1.  遊星よりの物体X 《ネタバレ》 
リベラル系のスピルバーグやカーペンターにしろ、この映画に惹かれる人間は何に影響を受けているのだろう。 ましてスピルバーグはユダヤ系。よくこの映画は赤狩り時代のユダヤ人差別映画だと言われているが、本当にそれだけの映画なら前述した彼らがこの映画に惚れ込むだろうか。 ホークス自身はユダヤ人のシオニストであるベン・ヘクトと何度も仕事をともにしているし、ユダヤ系のローレン・バコールを自分の映画のヒロインに選んだりしている。肉体に障害を抱えた人々が支え合って危機に立ち向かう「リオ・ブラボー」なんかもあるし、正直よく解らん。この映画にはそのヘクトもノンクレジットとはいえ参加している。   それに、映画の物語も差別うんぬんより単純だと思う。 作りは予算もない俳優も無名揃いですべてアイデア勝負。冒頭からスピーディーなセリフのやり取り、突然宇宙から落ちてきた得体の知れない、氷の中に眠る不気味な何か。ソイツが犬や実験のためとはいえ交流を試みた科学者をブチ殺してしまう(博士がイカれ野郎すぎるので観客の中には宇宙人ありがとうなんて人もいるだろうけど)。 残された人々は密室で迎撃態勢に臨む。Xが突然現れる瞬間の、動くはずのない植物が動き襲い掛かってくるという、一斉に迎撃する瞬間に奔る緊張。炎だの拳銃だのカメラのフラッシュだのその辺にあったあり合わせのものしかないということも拍車をかける。 後のスピルバーグの「ジョーズ」やリドリー・スコットの「エイリアン」、カーペンターの「遊星からの物体X」にも正体の知れない敵との戦いを描いている。当時この作品が大ヒットしたは、そんな未知との戦いに人々が惹かれたからなのだろう。 物体Xの造形はジェームズ・ホエールのSFホラー「フランケンシュタイン」を思わせる。というかそのままパクッたような姿。この辺は技術的な問題よりも他に解決策がいくらでもあったと思うけどどうなんだろう。  だが決定的に違うものがある。「キングコング」のように巨大な恐怖でもないし、感情を示すような描写はほとんどない。ひたすら襲撃を繰り返す怖さが徹底されている。 「ジョーズ」は同じホークスの少数で挑まざる負えない「虎鮫」や「リオ・ブラボー」等へのリスペクトも盛り込み、逃げ場のない密室空間における緊迫をより強固にしていた。 本作は味方があまりに多すぎるのである。先ほどの迎撃もまるで集団リンチ。罪悪感も無いから余計にタチが悪い。だって一応は仲間や犬の敵だし。これ以上犠牲者を出したくないという当事者たちの覚悟。 同じクリスチアン・ナイビーが制作に関わった「赤い河」も人数は多かったが、理不尽なワンマン上司との対立や仲間だと思っていたはずが招くトラブルや仲間割れと緊迫した状況が続くスリルがあった。コーヒー一杯すら少ない食料でやり繰りしている苛立ちを高める演出に使われていた。 本作は物体Xが出現したという状況にも関わらずのんびりコーヒーをずるずる飲んでいるではないか。まだ危険性を図り切れていないが故の行動なのかも知れないが。 ホークスは人との信頼を重んじるタイプの人間だった。世の中が人間不信になればなるほどホークスはそれに逆らうように人々が助け合う映画を撮る。対立を経て団結する。平時故の交流とリラックス、有事故の緊張や恐怖との戦い。 しかし、この映画には時に分裂して殺し合いにまで発展するという恐怖まではない。襲われて死ぬ犠牲者も異常事態という割に少ないし。  ロマンスやコメディも盛り込みすぎだ。つうかコイツら陽気にもほどがあるだろ。猛獣狩りやモンスター退治とか、狂った集団が一生命を集団で嬲り殺したという設定にしてもまかり通りそうで逆に怖い。 ヒロインも他のホークス映画ほどスリルに貢献しているとは思えない。なんせ他のホークス映画の女性はもっと積極的でクレイジーな魅力に富んでるからねー。「暗黒街の顔役」なんか誰も信じられなくなって女のために野郎ブッ殺しまくる最高のキチガイ映画だったし。そういう意味じゃ凄い物足りない。 魅力的に映らなかったが故に「ジョーズ」と「遊星からの物体X」は女性が巻き込まれず男たちのよりハードな物語になったのだろうか。そう思うと意外な決着を迎える「エイリアン」と見比べるのも面白い。  何よりカーペンターがホークスの本作や「エイリアン」との差別化も図って、原作とホークス版の美味しいところを凝縮した大傑作の存在もデカい。俺も個人的にはアッチの方が好きなんだ。 なんせホークス大好きなカーペンターの野望の結晶、ホークスの傑作群を髣髴とさせる面白さなんですから。飛行機乗りのタフガイがライフル片手に奮闘する姿なんて特にね。音楽もホークス映画等で活躍したディミトリ・ティオムキンに影響を受けたエンニオ・モリコーネだし。
[DVD(字幕)] 8点(2016-01-14 22:58:50)(良:1票)
2.  遊星からの物体X 《ネタバレ》 
クリスチャン・ナイビー&ハワード・ホークスによる「遊星よりの物体x」の神リメイク。 ジョン・カーペンターはホークスの傑作「リオ・ブラボー」にオマージュを捧げた「要塞警察」という傑作を撮っているし、本作もホークスへの尊敬の念を強く感じられる見事な傑作である。 ファーストシーンの謎の円盤からはじまり、物語は南極という陸の密室で展開される。 VHSのデッキか・・・オレもガキの頃はギリギリビデオだったっけか。 謎のヘリ、それから逃げるように走る謎の犬。 「本物の犬では無い(セット的な意味で)」 それにしたってどんだけ射撃下手なんだよ・・・テメえらのせいでコッチの基地にも飛び火だぜ。 音信途絶、オマケに言葉が通じない事の不幸。不幸が重なり、またも悲劇は起きてしまう。 「ゴジラ」といい「キングコング」といい、好奇心は解るけど人が死んでいるという事をもう少し考慮して欲しいもんだ。 「エイリアン」と似たプロセスだが、リメイク元の方がずっとご先祖だし、本作と「エイリアン」は徹底的に違う。 「エイリアン」は他の惑星という、別の宇宙船が助けにくる望みが絶望的にない。 今作は地峡上なので助けがくる望みがある反面、感染が拡大してしまえば地球上にまで拡まってしまう。物体Xは人体に入り込んで“同化”するという。 「既に仲間の一人が同化しているのでは?」 クルー全員が疑心暗鬼だ。緊張感が尋常ではない。 嵐の前の静けさ・・・そして次々と巻き起こる物体Xの恐怖。 犬好きが見たら発狂しそうな場面、 ある者は本当に狂い、 1人、また1人散っていく仲間たち。 物体Xの造詣がスゲーリアルで吐きそう。(褒めてる) ドクターの判断は正しかったのか間違っていたのか。 “検査”のシーンは心臓バクバクだったよ。解っていてもこの恐怖、この面白さ。 どうせ死ぬなら道連れにしてやらあっ!吹っ飛べクソ野郎があっ!! 南極の空にあがる巨大な爆煙、それで助けが来るか来ないのか。あとは神のみぞ知るところ・・・。 カーペンターの良心は、この場に女性を巻き込まなかった紳士的なところにあるのかもな。(何じゃそりゃ)
[DVD(字幕)] 9点(2014-08-15 16:15:57)(良:1票)
3.  友情ある説得 《ネタバレ》 
南北戦争を舞台にした大作。ワイラーの西部劇はこれが一番好きだ。 「西部の男」はゲイリー・クーパーとウォルター・ブレナンの演技以外見所が無いと言っても良いパッとしない作品だったし、 「大いなる西部」は「丘の一本松」の二番煎じだし何より主人公の正義面が鼻に付いた。 大根ペックに絵に描いたような善人なんかやらせるな。ペックは「アラバマ物語」や「無頼の群」みたいに少しひねた男や熱血漢の方がずっと魅力的だしカッコイイ。  「友情ある説得」は、そういった説教臭さや博愛主義的な正義面が無いのが良い。 レッド・パージ(赤狩り)への批判は元より、“本当の勇気とは何か”を考えさせてくれる。  暴力を否定するクェーカー家教の一家は、暴力のぶつかり合いで全てを片そうとする南北戦争について疑問を持つ。 本作のクーパーは、一家の長として温厚で落ち着きのある父親だ。妻の言いなりかと思いきや、負けず嫌いだったりいざという時には頼りになる男でもある。 アンソニー・パーキンスの青臭い正義感を抱いた優しくおっとりした様子は、若きクーパーの風格(「オペラ・ハット」等)を感じさせる。  ストーリーは基本ユーモアがあるが、抱える問題はフランク・キャプラのように「笑いの中の重さ」を持っている。 「或る夜の出来事」がコメディのフリをした恋愛映画だったように、この作品は心暖まるほのぼのとした情景の裏に、戦争という理不尽な暴力と辛い現実を映し出した映画でもある。 パーキンスが兵士として人を殺めてしまった場面は、彼の主義と現実との心の葛藤が伝わってくる。  一番暴力を否定していたあの母親ですら、家族を守るために南軍兵をほうきで殴ったりしていた。  戦争とは、何かを奪うために始まるのだろうか。 それとも、何かを守ろうとしていつの間にか大切な何かを奪ってしまうものではないのだろうか。  祈るだけで現実から逃避する宗教とは違い、クェーカー教は行動によって集団に訴えかける考えがあるそうだ。  あの母親も、パーキンスも、クーパーも「誰かを守るため」に自ら行動を起して行く・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2014-05-02 19:21:04)
4.  夕陽のギャングたち 《ネタバレ》 
原題は頭を下に、もしくは「伏せろ!(Giù la testa)」、あるいは「伏せろマヌケ野郎!(Duck, You Sucker!)」、あるいはジェームズ・コバーンを指して「一握りのダイナマイト(A Fistful of Dynamite)」、あるいはワンス・アポン・ア・タイム三部作を飾る「昔々の革命(Once Upon a Time... the Revolution)」か。  レオーネの作品は「夕陽のギャングたち」以前の大成功と高い評価、以降の再評価によって大多数が傑作と称賛されている。本作は他の作品ほど評価されていないが、俺個人は結構好きな作品だ。 ロッド・スタイガーの強盗とジェームズ・コバーンの爆弾魔。二人の悪党が次第に友情を結んでいく過程が楽しい(流石に回想シーン多すぎ&長すぎるとは思ったが)。利害の一致から腐れ縁、漢の友情へ。  戦闘面も銃撃戦と爆弾の使い方、特にファーストシーンが良い。 走る駅馬車、乗り込む乗客、巻き起こる事件。子供軍団と一緒に死線を潜り抜けてきたであろう野獣のようなスタイガー。レオーネの映画における駅馬車は無事では済まないのである。  今回のコバーンは爆弾魔。 趣味は爆破(ジェームズ・ドカーン)、好きな飲み物はニトログリセリン(嘘)。 ヒゲがあまりにも似合ってなかったが、ヒゲの無かった過去とヒゲのある現代の対比。ヒゲの無いコバーンの若々しさが、アイルランド時代の青臭さを出していて良かったと思う。  金目当てで突撃したら実は・・・知らず知らずの内に臨まぬ英雄&もっとヤバい奴に狙われる。コバーンと二人で小高い丘から機関銃で迎撃するワクワク感・戻って来た先に拡がっていた絶望。 救出劇は「善玉・悪玉・卑劣漢(続・夕陽のガンマン)」のイーストウッドとウォラックを髣髴とさせる!  列車でのやり取りは「善玉・悪玉・卑劣漢(続・夕陽のガンマン)」から「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト(ウエスタン)」へと受け継がれる。本作は列車もドカーンの標的となる。  コバーンはあの終わり方以外考えられなかったような気がする。友を失い、想い人とも離れ離れ、旅路でも散っていく仲間・・・コバーンは先に行った仲間たちに会えたのだろうか。  そして「俺はこれからどうすりゃいいんだよ」という表情を見せるロッド・スタイガーの何とも言えない顔が忘れられない。何もかも失ってしまった漢たちの旅・・・。
[DVD(字幕)] 8点(2014-04-09 21:47:59)
5.  夕陽に向って走れ
インディアン問題からアメリカそのものを暴こうとしたポロンスキーの復帰作。 フィルム・ノワール「苦い報酬(悪の力)」以来映画を撮れなかったポロンスキーだが、その情熱が途絶えていない事はこの作品を見てよく伝わってきた。少なくとも「苦い報酬(悪の力)」やロバート・ロッセンの「ボディ・アンド・ソウル」等を手掛けた脚本家としてのポロンスキーを知る者ならば、より一層理解して貰えると信じたい。  60年代の終わりはフリッツ・ラングの「暗黒街の弾痕」を彷彿とさせるアーサー・ペンの「俺たちに明日はない」が大ヒットした時代だ。西部劇のジャンルで男女の逃避行を描いた作品はラオール・ウォルシュの「死の谷」くらいかと思っていたが、このポロンスキーの西部劇も充分逃避行物の傑作と言えるだろう。インディアンの血を引くというだけで差別されるのはウォルシュの「死の谷」やキング・ヴィダーの「白昼の決闘」を思い出させる。  「夕陽の向かって走れ」はポロンスキーなりの「俺たちに明日はない」への回答だと思うが、複数のアンチ西部劇を手掛けた(等身大のビリー・ザ・キッドを描いた「左きゝの拳銃」等)ペンにとって、世界恐慌後の西部で暴れまわったボニー&クライドは西部劇の延長に過ぎないのだろう。
[DVD(字幕)] 9点(2014-04-09 21:12:11)
6.  勇者の赤いバッヂ
ジョン・ヒューストンによる西部劇、そして戦争映画の傑作。 南北戦争の恐怖に苦しめられる兵士の葛藤。ラストシーンの壮絶な突撃も忘れられない。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-18 17:14:22)
7.  勇気ある追跡 《ネタバレ》 
チャールズ・ポーティスの原作を映画化した「True Grit」。 これは数ある保安官ものの中でも一番好きな西部劇かも。 ジョン・ウェインの事を「いつも同じような口調で野暮ったい役者だよね」と思う人は本作を観れば意識を改める事だろう。 本作のウェインは実に人間臭く味わいのある演技を見せてくれた。 あの眼帯が無くとも表情豊かでノリノリな感じが伝わって来る。 犯人を捕まえるのは賞金目当て、常にケンカ腰な不良保安官「ルースター・コグバーン」。 酒好き、ポーカー三昧、大昔は仕方無いとはいえ盗みもやっていた筋金入りのワル。 ワイアット・アープがグレたらこうなんだろうなぁ・・・。 肉屋の爺さんと「プライス将軍」と呼ばれる猫が唯一の家族という寂しさも覗かせる。  物語はそのコグバーンに父の仇を討って欲しいと「マティ・ロス」という少女が願いに来る。 そこから同じく犯人を追うテキサス・レンジャーの「ラ・ビーフ」と3人の奇妙な追跡が始まった。 この3人のキャラが実に良いんだよね。 老いを感じさせない超ワル親父のコグバーン、 父の仇を討たんと、法律や持ち前の度胸を武器に動くボーイッシュで男勝りなマティ、 憎まれ口を叩くコグバーンに何かと突っかかるラ・ビーフのユニークなやりとり。 敵も地味にデニス・ホッパーとロバート・デュバルという顔ぶれ。 通りで強烈な印象があったわけだ。  ストーリーは人間ドラマが占める作品だが、中盤の逮捕劇と尋問、ラストの決闘と帰還劇など見所も多く、何より人間ドラマが最高。 特に銃ではなく法律を武器に駆け引きをするストーリーが現代的で面白い。 終盤でヒロインが敵とバッタリ会って人質になるのはどうかと思ったけど、そこには「リオ・ブラボー」に通じる交渉術があった。  仲間の仇の一人と言える娘をあえて生かしたのは人質とするため=娘が死ねばコグバーンに血祭りにされる(まあ結局は「お約束」でしたけどね)。  ラストの疾走するコグバーンが最高にカッコ良いのでそんな事はどうでも良くなるね。  人質の件以外は文句なしの傑作!  
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-06 14:54:31)
8.  許されざる者(1992) 《ネタバレ》 
再見。 イーストウッドが到達したリアリズム、反西部劇、アンチ・ウエスタンの最高峰。  個人的には「アウトロー」の方が痛快で好きだが、この作品を最初見た時の戸惑いと衝撃、そして再見すればするほどその凄味に惹かれた作品でもある。  夕暮れで土を耕す孤影、一軒家と一本の木の影。この強烈な黒のコントラストが本作の恐怖と緊張をより盛り上げる。 雷鳴と土砂降り、情事を語る影の蠢き、ベッド上のギシアンを止める怒声、身を守るために水を浴びせる者、凶刃を振り回され傷つく者、凶行を止める背後の気配と撃鉄の音。 柱に縛り付けられた罪人を解放してしまう汚職、悪徳保安官の不気味な笑み。初っ端から恐怖と暴力が支配する世界を叩きつけられる。  生々しいを傷を癒し、苦笑いし、黙って耐えるしかない者たちが託す「依頼」。ただただ引き受けてくれる者が現れるのを待つことしか出来ない無力さ。  一方、農場で泥にまみれ豚を追い回すヨレヨレの農夫、回りを無邪気に走る幼い兄妹の微笑ましさ、それを鼻で笑う馬に乗り訪れる若きカウボーイ。彼は銃を手放した者を再び殺しの世界に引き戻すために現れる。  主人公のマニーは若い頃、女子供を問わずに手をかけた極悪非道のアウトローだった“らしい”。マニー本人はそう語りますが、劇中のマニーは年老いた父親でしかありません。妻に先立たれ、残った幼い子供たちを養うために精を出し、何十年も銃の代わりに家族の手を握りながら生活してきた。そんな男が再び銃を握るという。家族のために。 昔のカンを取り戻そうと射撃訓練、それを心配そうに見守る子供たち。リボルバーからショットガンに変える一連のアクションが後の布石として生きてくる。  髭を剃り、窓の向こう、木の根元に眠る者に別れを済ませ、馬に乗るのも一苦労の男が覚悟を決めて旅立っていく。  「アウトロー」における農夫がガンマンへと変わる物語が繰り返され、より突き詰められる。 イーストウッドにとってはシーゲルとレオーネに捧げた作品だそうだが、この映画には全ての西部劇に対する望郷とアンチテーゼのメッセージが入っている。 人一人を死に追いやってしまう集団心理の恐怖は「オックス・ボウ・インシデント(牛泥棒)」の流れも感じさせる。   大自然の中を旅する平和な一時。それが人間の支配する魔窟に入れば空気は一変する。   この映画の保安官が振るう正義は法の執行ではなく独裁者の暴力でしかない。 法を取り締まる者がみずから法を乱す。法を乱した犯罪者を見せしめにするために制裁を加えるのは当然ですが、いきすぎた制裁は単なる暴力となり、やがて失望へと変わる。  復讐者からの「依頼」でもある賞金首探しは、腐りきった法との戦いでもある。それを受け取ってしまった男たちに待ち受ける死、死、死。  この映画にはカッコいいカウボーイなんざ一人も出てこない。 気取った老体、銃から何十年も遠ざかっていた中年、本当は人を殺すことをためらう猟師、近眼の若造、狂った保安官…往年の西部劇に溢れていた夢と希望、活気とヒーローがこの映画にはいないのさ。彼等を彩る風景だけがその美しさを失わずにいるだけで。  人を撃てば撃つほど虚しさや罪悪感が重くのしかかり、ガンマンに憧れていた青年でさえ初めて人を撃った後に恐怖で震えてしまう。「命を奪う」ということの重さ。  「いくら古い時代に夢を追い求めても、現実はこうだ」と言わんばかりの雨粒と泥にまみれた世界。 人を殺した者は当然「自分が殺されても文句なし」という覚悟が必要だし、事情を知らない者が殺しの現場を見れば「人殺し」と罵られても仕方がない。  ただ、ラストの決戦まで“おのれ”を取り戻していくマニー。  彼が一発一発放つ弾丸は、今は亡きフロンティア精神への鎮魂か、イーストウッドなりのケジメか。密室にショットガンを突きつけながら乗り込み、“投げる”ことによって緊張が跳ね上がる瞬間!  たった1人の男を集団で嬲り者にするような連中だ。そんな奴らに、卑怯だの何だの言う権利も資格もあるものかっ!!  イーストウッドは、いつも他人のために怒る男だ。自分は殴られても殴り返さない。ただ、仲間や知人を傷つける奴は絶対許さねえ。名誉なんてクソ喰らえ、「殺る時は殺る」漢なわけよ。ガンマンではなく、一人の人間としてカッコイイ。イーストウッド主演の西部劇群を見た後だと余計に感慨深い。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-30 10:29:38)(良:1票)
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