381. メガ・シャークVSジャイアント・オクトパス<OV>
《ネタバレ》 良くあるサメ映画の一つなんですが、何故かシリーズ化して第四弾まで続いてるんですよね、これ。 続編で戦う相手は「巨大ワニ」「メカゴジラならぬメカ・シャーク」「進撃の巨人そっくりな巨大ロボ」とバラエティに富んでおり、シリーズ化した理由は「色んな相手と戦わせる事が出来て、話を作り易いから」だと推測出来るんですが…… 肝心の第一弾である本作が、とてもシリーズ化出来るほどのクオリティに思えないんだから、困っちゃいます。 そもそも巨大ダコって海外では人気が高いけど、日本人の自分からすると、どうもピンと来ないんですよね。 「タコ」=「食材」ってイメージが強いし、いくら巨大化されてもワニやヘビなどに比べると「怪獣」って感じがしないから、本作の対戦カードに関しても(サメとタコが戦ったら、タコが食べられて終わりでしょ)と思えて、盛り上がれないんです。 実際は相打ちに終わった為、予想が外れた形ではあるんですが…… 何か、それに対しても特段の驚きは無かったし、最後までテンションが上がる事無く、映画が終わっちゃいました。 一応、良かった所も述べておくなら、巨大ザメと巨大ダコの出番は適度に確保されており、期待外れって感じはしなかった事。 この手のモンスター映画では、危険な怪物を殺そうとする主人公達に対し、お偉いさんが「殺さずに捕まえる事」を要求して足を引っ張るのがお約束なんだけど、本作は主人公達が「生け捕り」を主張する側だった為、中々新鮮な感覚を味わえた事。 主人公カップルが性交渉を行った後「フェロモンで二大怪獣を誘き寄せる」って作戦を思い付く形なので、お約束でしかないはずの濡れ場にも、ちゃんと意味があった事。 そして、海中からメガ・シャークがジャンプし、ジャンボ旅客機に噛み付いて墜落させちゃう場面は馬鹿々々しくて良かったとか、そのくらいになりそうですね。 特に最後の件に関しては、続編の「メガ・シャークvsグレート・タイタン」(2015年)では宇宙まで飛んで、人工衛星を破壊する場面もあったりするので、事前に本作を観ておくと、より楽しめると思います。 (今度は宇宙かよ!)とツッコみたくなる事、請け合いです。 [DVD(吹替)] 4点(2023-03-16 02:42:16)(良:2票) |
382. トラックス<TVM>(1998)
《ネタバレ》 こういった代物の場合「○○のリメイクとして考えると微妙だけど、映画単品として考えれば面白い」ってパターンもある訳ですが…… 残念ながら、映画単品として評価しても微妙な出来栄えでしたね。 全体的なクオリティは五十歩百歩なのに「地獄のデビル・トラック」(1986年)にあった「馬鹿々々しさ」「愛嬌」が失われてるというのが、何より残念。 爆発シーンも控えめになってるし、今回の籠城場所には拳銃が一つあるだけなので「人間と機械が戦ってる」感じも薄いしで、どうもテンションが上がらない。 陰鬱な作風と併せて考えるに「地獄のデビル・トラック」はアクション映画だったが、本作はホラー映画であると解釈する事も出来そうなんだけど、それにしては「一応拳銃も出てくる」「終盤には爆発シーンもある」って形なので、何か中途半端なんですよね。 元ネタとは違う魅力を出そうとしたのであれば、変に媚びるというか、元ネタにあった要素を少しだけ再現するような真似はせず、もっと「陰鬱なSFホラー映画」という方向性に振り切った作りにすべきだったと思います。 機械からのモールス信号を解読した訳でもないのに「やっと分かったぞ」「奴らが欲しいのは燃料なんだよ」って言い出す場面も不自然だったし、脚本も褒めるのが難しいんですよね。 元ネタにあった馬鹿々々しさが薄れてる分だけ「脚本の整合性」という意味ではアップしてるだろうと思ってたのに、全然そんな事は無かったというか…… 全体的に「長所は失われ、欠点はそのまま」って形に思えちゃって、非常に残念でした。 それでも、あえて良かった箇所を探すとしたら…… ロズウェル事件と絡めて、一応は「機械が暴走した理由」に説得力を与えようとしてる所。 「有害なガス」という要素で、危険度を高めてる所。 あと「防護服が勝手に動いて、殺人鬼のように襲ってくる場面」は中々感心させられたとか、そのくらいになっちゃいそう。 最後も「助けに来てくれたヘリは無人だった」=「主人公達は決して助かった訳ではない」と感じさせるバッドエンドで後味悪いし、どうも好みじゃないです。 ……とはいえ、能天気なハッピーエンドだった「地獄のデビル・トラック」とは真逆のオチなので、こちらの方が好きという方もいそうですよね。 「トラックス」の方が先に作られており、後から「地獄のデビル・トラック」が作られていたとしたら「真面目なSFホラー映画が、馬鹿映画にされてしまった」って印象になってたかも知れないですし。 やはり、こういうリメイク物は評価が難しいし、どうしても厳しい目で見ちゃうから不利だなって思わされた一品でした。 [DVD(吹替)] 4点(2022-02-02 11:57:38)(良:1票) |
383. クロコダイル
《ネタバレ》 冒頭、ワニに襲われる場面の血が如何にも嘘っぽくて(大丈夫かな?)と思ったんですが…… 結論から言うと、大丈夫じゃなかったです。 こういうモンスターパニック物が好きな自分から観ても、とても退屈な仕上がりとなっており、褒めるのが難しい品でしたね。 というより、冒頭で襲われるシーンを挟んだのって「ワニが出てくるまでは時間かかるけど、最初に襲われる場面やって盛り上げておいたから、我慢して観てね」的な意味合いだと思うんですけど、これだと逆効果というか…… どんなに我慢して観ても、その後に待ってるのは「あの嘘っぽい血が流れる場面」って分かっちゃう訳で、最初からテンション低いまま、希望を抱けないままで映画を観る形になるんですよね。 これなら冒頭で襲撃シーンを見せたりせず、途中までは(ワニが出てきたら面白くなるはず)って希望を抱かせてくれる作りの方が、ずっとマシだったんじゃないかと。 サーファーのヴォックとジョン船長、どちらが主人公なのか分かり難い構成になってるのも気になるし(ダブル主人公って訳でもなく、場面によって適当に主人公が変わるだけっていう印象です)ワニとの一騎打ちに挑んだジョン船長は呆気なく死んじゃって、驚くというよりガッカリしちゃうしで、登場人物にも魅力を感じられないんですよね。 「獲物を追って飛び降り、尖った岩に刺さって死亡」とか、ワニの退場の仕方も間抜け過ぎるもんだから、最後まで盛り上がる事無く終わっちゃいました。 それでも、何とか良かった箇所を探すとしたら…… 「サメを求めて撮影にやってきたら、ワニに襲われた」って展開は中々捻りが効いており、気が利いてるなって思えた事。 大まかな流れは「アナコンダ」シリーズを参考にしているようで、王道の魅力もそれなりに味わえた事とか、そのくらいになりそうですね。 あと、途中でヌードを披露した金髪美女さんがペタンコな胸をしていて(あれ、もしかして男の子?)かと思ったんですが、特に説明も無かったし、結局あれは貧乳の女性だったって事で良いんでしょうか。 あそこまでペタンコな胸の人は珍しいと思うし、妙に印象に残ってます。 でも、あのくらい貧乳だと巨乳に負けないくらい不思議な魅力あったなぁとか、そんな事が一番気になっちゃうような……まぁ、そういう映画でした。 [DVD(吹替)] 4点(2021-12-17 00:01:06) |
384. ラッキーナンバー7
《ネタバレ》 所謂「巻き込まれ」系かと思いきや、実は主人公が黒幕だったというオチの映画。 出演者が吃驚するくらい豪華だし、伏線も丁寧に張ってあるし、画作りも上手いしで、普通なら好みの品のはずなんですが…… 本作に関しては、どうも肌が合わなくて、観ていて辛かったですね。 復讐計画が偶然に頼り過ぎとか、種明かしの件が長過ぎてダレるとか、色々と欠点が目に付いちゃったし…… 中でも「主人公達に魅力を感じない」「復讐に正当性を感じない」ってのが、この手の映画としては致命的だったと思います。 そもそも主人公の父マックスが殺されたのだって「闇賭博に手を出して大敗した」って背景がある以上、自業自得感が強くて、復讐の動機として弱いんですよね。 でもって、復讐の方法がまた酷いというか、無関係のフィッシャーを殺してるもんだから、全然スッキリしないんです。 殺した後、まるで主人公達は悪くないという言い訳のように「十四歳の少女に暴行して、八年間更生施設に入ってた」「君は死んだ方が役に立つ」「死んでも惜しむ者のいないクズだ」なんて台詞が挟まれる訳だけど、それで納得出来る訳ないというか…… (無関係の人間殺してるアンタらの方が、よっぽどクズだよ)って思えちゃって、復讐者としての主人公に、全く魅力を感じなかったです。 大体、フィッシャーを殺す必然性も無くて、誘拐監禁しておくだけでも計画としては成立したと思うんですよね。 「それは面倒だし、殺す方が簡単で確実だ」という考えの主人公であるのなら、やっぱり最低な奴だとしか思えない訳で、困っちゃいます。 ポール・マクギガン監督は、自分の大好きなドラマ「SHERLOCK」の主要スタッフでもあるし、腕は確かな人だと思うんですけどね。 正直、映画に関してはパッとしないというか、観た後ガッカリしちゃう品の方が多い気がします。 それでも、あえて良かった点を探すなら…… ヒロインが可愛かったとか「ジェームズ・ボンドといえば、この俳優」と語り合う場面はロマンティックだったとか、そのくらいになるかな? 何よりも、主演のジョシュ・ハートネットが大好きであるだけに、こんな主人公を演じさせた事が、恨めしく思えちゃいます。 自分とは、相性の悪い映画でありました。 [DVD(吹替)] 4点(2020-06-18 11:47:13)(良:1票) |
385. 巨大怪獣ザルコー
《ネタバレ》 変に勿体ぶったりせず、始まって早々に怪獣が登場するのが良いですね。 これはスピーディーな展開で楽しませてくれる「隠れた傑作」じゃないかと、期待も膨らんだのですが…… 残念ながら、その後の展開は非常にノンビリしたものであり、本当に「冒頭で怪獣を出しただけ」だったりしたもんだから、ズッコケちゃいました。 そもそも本作って、劇中に「モスラ」の小美人のようなキャラが出てきたり、はたまたドクター・ストレンジラブっぽいキャラまで出てきたりと、如何にもな「オタク映画」って感じなんですよね。 恐らくは監督さんも「怪獣映画は、怪獣が出てくるまで長いのが嫌だ」って考えを、常々持っていたような人なんじゃないでしょうか。 だからこそ「勿体ぶらずに怪獣を冒頭で出す」っていう定石破りをやってくれたんでしょうけど……正直、この映画で評価出来るのって、そこくらいでした。 基本的なストーリーは「闘技場」(1944年)の系譜であり、王道の魅力はあるので、決定的に話作りがダメって訳じゃないんですが……やはり、もっと「本作独自の魅力」のようなものを感じさせて欲しかったです。 唯一「ザルコーは地球上のどんな武器でも倒せない」という前置きは中々面白くて、その倒し方に期待してたのに、それに対する答えも「謎の隕石が盾であり、ザルコーの光線を盾で反射すれば勝てる」ってのは、ちょっと拍子抜け。 実際に倒す場面も、人と怪獣の合成っぷりが丸分かりなクオリティだし (なんでザルコーは足元の人間を踏み潰さずに、わざわざ光線出すの?) って疑問も湧いてきちゃうしで、全然スッキリしなかったです。 他にも「主人公に背中見せたせいで銃を奪われる警官が間抜け過ぎる」とか「エイリアンの存在を信じてるジョージが仲間になる流れは、もっと伏線を張って丁寧にやって欲しかった」とか、色々と不満点が多い映画なんですよね。 そもそも、主人公達のパートと怪獣のパートが全然繋がってなくて、主人公達がアチコチ移動してる合間に、まるでノルマをこなすかのように怪獣がミニチュア破壊する場面が挟まれるって構成なのが、根本的にダメだったと思います。 例えば、せっかく「ザルコーは主人公を狙ってる」という設定がある訳だから、主人公がテレビ局を立ち去った直後にザルコーがテレビ局を襲う流れにするだけでも「巨大な怪獣に狙われている恐怖」「追われつつも、何とか巨大な敵を倒す方法を模索する主人公」って形で緊迫感が出たと思うし、作り込みが甘かった気がしますね。 軍隊と怪獣の戦いをラジオの中継で済ませたりとか、非常に低予算な作りなので、あんまりツッコミ入れるのも野暮なんでしょうけど…… それでも本作に対しては「もっと頑張って欲しかった」って気持ちが強いです。 自分も怪獣映画好きで、映画オタクだからこそ、観ていて共感しちゃうし、その分もどかしさも湧いてくるような…… そんなタイプの映画でありました。 [DVD(吹替)] 4点(2020-06-03 23:12:28) |
386. サバイバル・ソルジャー
《ネタバレ》 虎に襲われる場面にて(これはもしや、ヴァン・ダムは序盤で退場して出て来なくなるパターンなのでは?)と危惧しちゃいましたが、そんな事は無くて一安心。 鮮やかな蹴りを披露してボスキャラを倒してくれるサービスシーンもありましたし「ヴァン・ダムは主演じゃないけど、彼のファンも満足出来るように作ってあるよ」という制作側の配慮が感じられましたね。 でも、映画自体は色々と粗が目立つというか……正直、観ていて退屈する時間の方が長かったです。 大人版「蠅の王」といった趣のストーリーなのですが「登場人物を子供から大人に置き換えたからこその魅力」のような物が全く感じられず、本当に舞台設定やプロットを拝借しただけって形なのが、如何にも寂しい。 「地獄の黙示録」や「コマンドー」をパロった場面でも、どうもテンションが上がらなくて「独自の魅力を打ち出せないから、他の作品の真似をしてみただけ」とすら思えたくらいです。 敢えて言うなら「会社では冴えない主人公が、無人島で活躍して同僚を見返してみせる」というカタルシスが本作独自の魅力なのかも知れませんが、その辺りも上手くやれてなかった気がするんですよね。 「日頃はダメ人間扱いされている主人公だけど、実は凄い奴だった」とは思えなくて、敵役になる同僚のフィルが無能で酷い奴だから、相対的にマシに見えるだけって感じなんです。 こういう「ダメ人間にとって都合の良い妄想映画」的なストーリーは自分も好きなんだけど、それだけに上手くやって欲しいというか…… (ダメ人間の自分から見ても、これは都合が良過ぎて嘘っぽいよ)と思えてしまったんだから、かなり辛かったです。 これなら「実は凄い奴だった」パターンじゃなくて「不器用ながらも無人島で頑張って成長し、周りに認められるようになる主人公」ってパターンの方が、もっと感情移入出来た気がしますね。 あと、これは我ながら贔屓目が過ぎると思うんですが、道化役を演じるヴァン・ダムが「恰好良い」「頼もしい」ってオーラを隠し切れていなかった事も、映画としてはマイナスポイントかも。 そんなヴァン・ダムを差し置いて、スター性に乏しいルックスの主人公が「恰好良くて、頼もしい存在」として描かれているもんだから、余計に説得力が薄れるし、胡散臭いキャラクターに思えちゃったんですよね。 本作はヴァン・ダムの出演が売りの映画なんでしょうけど、どちらかというと彼がいない方が完成度は高まったんじゃないかな、って気がしました。 ラストにて、フィルの偶像に火を放って救援の狼煙を上げる件は中々良かったし、詐欺師として逮捕される間際「刑務所宛てに手紙を書いて、面会にも来て欲しい」と主人公に頼みつつ敬礼して別れるヴァン・ダムはやっぱり良い味出していたしで、好きな場面も色々あるんですけどね。 「ヴァン・ダム出演映画は、一通りチェックしておきたい」という熱心なヴァン・ダム好きなら、ある程度は満足出来るかも知れませんが…… 自分としてはオススメし難い、物足りない映画でした。 [DVD(吹替)] 4点(2019-05-02 23:03:51) |
387. ホーム・アローン3
《ネタバレ》 「悪い大人と、家に仕掛けた罠で迎え撃つ子供との攻防戦」を楽しみたいのであれば、本作がシリーズ中で最も適しているかも知れませんね。 主人公の少年が科学好き、機械好きという事もあって、仕掛けも非常に凝っている。 敵側も銃を持った殺す気満々の連中なので、彼らを可哀想と思ったりする事もなく、純粋に少年側を応援出来た気がします。 ……ただ、自分が1と2を好きだった理由はそんな攻防戦にあるのではなく「一人ぼっちになった子供が、親を気にせず好き勝手にやって楽しんでみせる」「偏屈な大人と心温まる交流をして、幸せな結末に導いてみせる」部分にあったもので、その二つが希薄な本作に関しては、どうしても楽しめず仕舞いでした。 一応、後者に関しては「意地悪なご近所のヘスさんを救出して、感謝される」という形で描かれているのですが、主人公が一方的に彼女を助けて、それで仲良くなって終わりってだけなので、如何にも寂しい。 空港にて、袋を間違えて持ってきたのはヘスさん当人なのに「どこかの馬鹿に袋を間違えられてね」と発言するシーンがあるなど、ヘスさんに対しては「嫌な人」という印象しか抱けず、最後までその印象を払拭出来なかったのも痛かったです。 やはりこの辺に関しては「怖い大人、嫌な大人かと思ったけど、実は良い人だった」という、ギャップの魅力を感じさせるような場面が欲しかったですね。 他にも「主人公の少年が登場するまで十分近く掛かるので、感情移入し難い」「悪党にトドメを刺すのがペットのオウムという形なのは、カタルシスに欠ける」など、細かい不満点ばかり目についてしまうのも、全くもって困りもの。 主演のアレックス坊やに関しても、カルキンとはまた違った可愛らしさがあって良かっただけに「意地悪な兄と姉がいる」「悲鳴を挙げる仕草が似ている」など、前作までの主人公と同じ属性を盛り込んでいる形なのが、残念に思えちゃうんですよね。 これなら、もっと「機械が好き」って属性を強調して、前作までとは全く違った主人公像にしても良かったんじゃないかな、って気がします。 あえて言うなら「敵が銃を持っており、過去作よりも遥かに危険な存在」「美女のアリスもいるので、視覚的に楽しい」って部分が本作独自の長所と言えそうなんですけど、前者に関しては「銃を持ってるなら、さっさと撃てばいいのに」と思えちゃうし、後者に関しても「別に敵は全員男でも問題無い展開だったな」と思えちゃうしで、イマイチ褒めきれないんですよね。 せっかく敵役に女性がいるなら、それを活かし「彼女が母性に目覚め、寝返る事になる」とか「主人公の父や兄に色仕掛けして、篭絡しようとする」とか、もっとやりようがあったんじゃないかと。 「泥棒を目撃したのに、周りの大人が信じてくれない」→「見事に泥棒を退治し、周りに認められる」って流れは、起承転結がしっかりしていて良かったですし「アレックス・プルイットの科学実験」のシーンなど、ところどころ好きな部分も見つかっただけに、勿体無かったですね。 「観て損した」「失望した」って程に酷い訳じゃないけど、自分としては物足りない一品でした。 [DVD(吹替)] 4点(2019-01-09 01:17:38) |
388. ジョーズ3
《ネタバレ》 サメの造形については、前二作よりも明らかにレベルアップしています。 それに伴い、ストーリーの方も進化している……と言いたいところなのですが、ちょっと厳しかったですね。 主人公はブロディ署長の長男マイクであり、可愛い恋人もいたりして、前二作を観賞済みの身としては「立派な大人になったねぇ」と、ほのぼのさせられるのですが、正直マイクである必然性は薄かったように思えます。 父親からサメ退治のコツを教わっているとか、前作で負ったトラウマを今回乗り越える事になるとか、そういう要素が無いんですよね。 弟のショーンも登場するのですが、兄弟らしく絡んだのなんて最初の二十分程であり、以降は全く出番無しというのだから「何の為に出てきたの?」と呆れちゃいます。 水中にある遊園地がサメに襲撃され、客達が園内に閉じ込められてしまうというプロットは、決して悪くなかったと思うんですけどね。 いざ観てみると、どうもバランスが悪いというか、展開がチグハグに思えて「う~む」と首を傾げてしまう感じ。 例えば、中盤にてシー・ワールドに客が訪れるシーンでの、楽し気な雰囲気なんかは良かったと思うんです。 でも、事前にサメとの対決(=生け捕り)が描かれた後なので、その落差で今一つ楽しめないし、どうせ再びサメに襲われるのは分かっているんだから、どうしても「中弛み」に感じられてしまう。 ベタな考えかも知れませんが、こういった「楽しい遊園地」という日常的なシーンは、やはり序盤で描いておくべきだったのではないでしょうか。 そして、中盤にサメの襲来によって日常が崩壊し、後はクライマックスまで一直線……という作りにした方が、良かったのではないかと。 それと、これは恐らくサメの模型を素早く動かす事が出来なかったという技術上の問題なのでしょうが、とにかく襲撃シーンのテンポが悪いんです。 水中のガラス越しにサメが体当たりを行い、中の人々が悲鳴を上げるという、本作最大の見せ場においても「サメの動きが遅いので、仕方なくスローモーション演出にしました」という感じがして、観ていて興醒め。 その後、五分程でサメを爆殺して終わりを迎えるというのも、こちらは逆に早過ぎるというか、アッサリ倒し過ぎに思えちゃいましたね。 緩急のある演出と褒める事も出来そうですが、自分としては戸惑いが大きかったです。 そんな本作で癒しとなるのは、イルカのサンディとシンディの存在。 ただ単に可愛らしいというだけでなく、サメに体当たりして主人公達を助けたりと、しっかり活躍してくれるのが良かったですね。 主人公とヒロインは生き残るも、イルカ達は死んでしまったかと思われたところで、水中から飛び跳ね、元気な姿を見せてくれて、ハッピーエンドに華を添える形になっているのも嬉しい。 本作のMVPには、このイルカ達を選びたいところです。 [DVD(字幕)] 4点(2017-08-03 20:28:02)(良:1票) |
389. ブルークラッシュ
《ネタバレ》 この監督さんは、海を美しく撮るのが上手いなぁ……と、改めて実感。 海と、水着美女、爽快感のあるサーフィンの映像。 それらが画面に映っているだけでも満足しそうになるのですが、内容については、正直疑問符が付く代物でしたね。 同監督作の「イントゥ ザ ブルー」は結構楽しめたのに、本作を微妙に感じたのは何故だろうと、自分でも不思議。 理由を分析してみるに、主人公が女性である事が大きかったように思えますね。 ある日突然、理想の王子様が現れてくれる。 でも、それに溺れる事は無く、スポーツの分野でも成功してみせて、仲の良い女友達が沢山いて、陰口を叩くセレブ女には強気に対応してみせてと、如何にも女性が憧れそうな人物像。 それだけに、ちょっと距離を感じてしまったというか(あぁ、女性が観たらこのシーンは痛快かも知れないな)なんて思いながら、他人事気分で観賞する形になった気がします。 主人公がNFLの選手達にサーフィン指導を行うという形で「初めてサーフィンに挑戦した時の喜び」を劇中で描いている辺りは、凄く良かったのですけどね。 こういう初心者に配慮した作りって、とてもありがたい。 ……ただ、それなら劇中の大会ルールについても「彼氏に質問させて、主人公に簡潔に答えさせる」という形で、観客に教えてくれても良かったんじゃないかと思えるのですが、これは我儘というものでしょうか。 後は、主人公が大して努力しているようには見えなかった辺りも難点。 冒頭にてトレーニングしているし「これまでアンタがどれほど努力してきたか」という台詞もあるんだけど、映画を観る限りでは「男とイチャついてばかりで、殆ど練習していなかった」としか思えないし、あんまり彼女を応援する気になれなかったです。 「優勝を逃す」というオチについても、普通なら(あれだけ頑張ったのに……)と涙腺を刺激されそうなものなのに、本作に限っては(まぁ、練習してなかったんだから当たり前か)と納得してしまい、感情を揺さ振られず仕舞い。 一応、優勝したのと変わらないくらい皆に祝福されて「雑誌の表紙を飾る」という夢も叶えて終わる形の為、ハッピーエンドではあるんですが(それなら、もうちょっと贅沢に、あれもこれも手に入れる終わり方でも良かったんじゃない?)なんて、つい思っちゃいましたね。 「王子様のマットは一時の休暇で訪れただけなので、その内に別れる時が来る」「妹のペニーがマリファナをやっているので、止めさせなければいけない」「家出したママも帰って来ていない」と、まだまだ問題が山積みなので、今一つスッキリしないんです。 「何もかも上手くいく訳ではない」「それでも、サーフィンの楽しさを思い出した主人公なら、きっと大丈夫」という、ほろ苦さの中に希望を見出すような終わり方なら、それでも納得なんですが、本作の終わり方は、そうじゃない。 底抜けに明るくて、何もかも上手くいったと言わんばかりの空気の為(えっ、今までに描かれていたマイナス要素の数々は何だったの? 無かった事になったの?)と、戸惑っちゃうんですよね。 ここの部分を、もうちょっと上手く着地させてくれていたら、好きな映画になっていた気がします。 音楽や演出は決して嫌いじゃないし、大人も子供もサーフィンに興じるエンドロールの映像は素晴らしいと思うだけに、何だか勿体無いですね。 自分としては、好きになれそうというか……好きになりたかったタイプの作風なだけに、ノリ切れなかった事が残念な映画でありました。 [DVD(吹替)] 4点(2017-07-20 16:02:36)(良:1票) |
390. アラクノフォビア
《ネタバレ》 冒頭の南米でのパートが、ちょっと長過ぎた気がしますね。 巨大な滝など、壮大なスケールの自然を拝ませてもらってテンションは上がりましたが、そこを舞台に二十分近くも引っ張ったのは、バランスが悪かったんじゃないかと。 (そうか、これは秘境を舞台にした冒険物だったのだな……)と感じ始めた矢先に、都市部の物語に移行する形なので、観ていて(えっ、そっちだったの?)と戸惑っちゃいましたからね。 物語の導入部に過ぎないなら、南米の件は十分以内に収めた方が良かったのではないかな、と思います。 そんな具合に、序盤で作品への不信感が芽生えてしまったせいか、以降も殆ど楽しむ事は出来ず仕舞い。 丁寧に作られた、真面目な映画だとは思うのですけど、その真面目さが「面白みに欠ける」「退屈」という印象に繋がってしまった気がします。 日常生活の中で、知らぬ間に小さな毒蜘蛛が脅威として迫っている……という描写にしても、子供が本を落とし、その上に足を乗せるだけで踏み潰せちゃう程度の脅威な訳だから「怖い」とは思えなかったりしたんですよね。 主人公家族が都会の生活に戻り、田舎を馬鹿にした台詞を口にして終わりっていうのも、ちょっと後味悪い。 蜘蛛の巣が我が家にあると気が付き、主人公が戦いを挑む終盤の展開は中々に面白かったですし、観賞中ずっと退屈だったという訳では無いのですが、正直「良かった」と思える部分が少ないですね。 そもそもタイトルからして「アラクノフォビア」=「蜘蛛恐怖症」なのだから、蜘蛛に対して怖いというイメージを全く持っていない自分が観たのが間違いだったのかも知れません。 肌に合わなかったのが残念な一品でした。 [DVD(吹替)] 4点(2017-07-12 04:51:32) |
391. アフター・アース
《ネタバレ》 ゲーム的な要素の強い内容ですね。 船尾という名のゴール地点、ホットスポットという名のセーブポイント、空気濾過カプセルという名の時間制限、ゴーストという名の無敵モード、といった感じ。 この「船尾を目指せゲーム」を主人公父子が頑張ってクリアしようとするのを見守る形になる訳なのですが、これがどうにもこうにも退屈で、困ってしまいました。 せっかく通信機によって父子は意思疎通が出来るのに、ナビゲイター役の父親は視力の低下と眠気によって殆ど役に立たない&必要な事以外は喋らないというんだから、盛り上がりようが無いんですよね。 喧嘩していた父子が和解し、協力する事によって危機を乗り越えるのかと思いきや、結局主人公が助かったのって「鳥による自己犠牲」「ゴーストの習得」という要素が大きいし、これらに必ずしも父子の和解や協力が必要だったという訳でも無いのだから、何とも中途半端。 どうやら制作側は本作を三部作の一作目とする目論みがあったらしく、父子の決定的な共闘を描くのは先延ばしにする腹積もりだったのかも知れませんが、どうもそれがマイナスに作用してしまったように思えます。 「危険度最高レベル」「全てが人類を殺す為に進化している」という地球の恐ろしさが、具体的に伝わってこないのも不満。 殺すどころか、地球の鳥が命を投げ出して主人公を助けている訳だし、それが「人間を殺す立場にあるはずの存在が、逆に助けてくれた」という意外性の感動に繋がらず「全然殺す気なんて無いじゃん」という拍子抜けに繋がってしまったのですよね。 鳥の自己犠牲(我が子を助けてもらった恩返し?)シーンの演出からすると、ここは宗教的なメッセージ性もありそうなのですが、信仰心なんて殆ど持ち合わせていない自分からすると、どうもピンと来ない。 そもそも序盤において「能力は高いが性格に難がある」という主人公の姿が描かれていた以上、改心するなり精神的な成長を遂げるなりするのが王道なのでしょうが、本作ではそんなの関係無しに「エリートの息子がエリートの父親と同じ超技術を習得して敵を倒す」というシーンがクライマックスとなっているので、物語の前後が繋がっていないような気がしました。 ここ、父親役のウィル・スミス目線で考えるなら「息子が自分と同じ力に目覚めて成功してくれる」というのは、そりゃあ嬉しいだろうけど、観客としては置いてけぼり気分です。 結局、主人公の「周りの意見を聞かずに独断で暴走する」という性格は作中で明確に改善される事は無く「父親の意見に背いて崖から飛び降りたお蔭で二人とも助かった」という形で、むしろ肯定的な結果に繋がっているのだから、何というか……主人公を最終的にどうしたいのか、着地点が見えてこないんです。 姉が目の前で殺されたトラウマを乗り越える事を主軸に据えたかったのだろうな、という事は窺えましたが、それなら上述の要素の数々は排して、もっとシンプルに「姉のトラウマを乗り越える主人公」という形だけに定めた方が良かったのではないかと。 ラストシーンで「母親と同じ仕事」を主人公が選び、父離れするのかと思ったら「父さんもだ」って最後まで父子一緒なのが示唆されるのも、凄く微妙。 仲が良いんだなぁと和む気持ちより、もうちょっと互いに親離れ子離れした方が良いんじゃないかって冷めた気持ちの方が強かったです。 「バッドボーイズ」や「ベスト・キッド」(2010年版)など、父子で共演しておらずとも面白かった映画があるし、二人とも好きな俳優さんであるだけに、何だか非常に勿体無く思えましたね。 舞台となる地球の風景などは中々壮観でありましたし、アクション描写なども悪くないと思います。 けれど、それ以上に色々と気になる点が多過ぎて、最後まで没頭出来ず仕舞いな、残念な映画でありました。 [DVD(吹替)] 4点(2017-03-19 22:53:56) |
392. ドッグ・ソルジャー(2002)
《ネタバレ》 冒頭にて「純銀のペーパーナイフ」が登場する時点で「じゃあ狼男が出てくるって事か」と観客に理解させてくれる、非常に親切な映画。 でも、こういった分かり易い籠城系ホラーは好みのジャンルのはずなのに、どうも最後までノリ切れないまま終わってしまった気がしますね。 恋愛要素を排した硬派なストーリーに、ユーモアの効いた会話、CGではなくあえて着ぐるみに拘った特撮部分など、文章にしてみれば褒めたくなるような要素ばかりなのに、何故楽しめなかったのか、自分でも不思議。 あえて理由を考えてみるなら、同監督の「ディセント」に比べ、全体的にカメラワークや画作りが粗削りで、洗練されていないように思えた辺りがネックになっているのでしょうか。 それと「分かり易い」を通り越して「分かり易過ぎる」脚本な辺りも気になります。 なんというか、フリが丁寧過ぎて 「どうせ狼男をペーパーナイフで倒すんでしょう?」 「このヒロインって絶対に敵側だよね?」 「これだけ伏線張ってるって事は、サッカーの試合結果も分かるんでしょう?」 と思ってしまうし、事実その通りになるのだから、全く意外性が無い。 特にペーパーナイフの件は深刻で、こんな軽い小ネタみたいな代物は、映画の中盤で窮地を脱するくらいの使い方しかしないだろうと思っていたら、とっておきの隠しネタみたいにラストで使われるものだから(そんな大層なネタじゃないでしょうに……)と、ガッカリしてしまったんです。 ヒロインが勿体ぶって正体を現したと思ったら、ヘッドショット一発で即退場しちゃう辺りも、何だか拍子抜け。 サッカーの試合結果ネタにしたって「狼男事件よりもサッカーの試合の方が記事が大きい」っていう皮肉さを出したかったとは思うんだけど、そこを写真無しで文字だけでスコアを表示しているから、写真付きの狼男事件の記事の方がスペースは小さくても重要に扱われているようにも見えちゃって、どうにもチグハグなんですよね。 その辺りに、作り手との「好みの違い」「感性の壁」があったように思えます。 狼に絡んだ童話の「赤ずきん」や「三匹の子豚」を連想させる台詞がある辺りはニヤリとさせられたし、主人公が何とか生き残るハッピーエンドに近い作りなのも好み。 低予算ながらも「面白い映画を撮ろう!」という意気込みは伝わってくる、好ましいタイプの映画であるだけに、楽しめなかった事が残念な一品でした。 [DVD(吹替)] 4点(2017-03-12 08:33:20)(良:1票) |
393. アローン・イン・ザ・ダーク
《ネタバレ》 この手の「モンスターと戦うアクション映画」って好きです。 そして主演がクリスチャン・スレーターとくれば、否応なくテンションは高まるのですが…… 冒頭のナレーションで「長いよ!」とツッコみ、その後「モノローグで自己紹介やったのに、何で台詞でも自己紹介するの?」とツッコみ、以降はもう何かを諦めた境地で、ただただ画面を眺めるだけでしたね。 物凄く退屈だとか、観ていて不愉快になったとか、そういう訳じゃないんだけど…… とにかく盛り上がりに欠けており、気が付けばエンディングを迎えてしまったという形。 自分は主演の俳優さんが好きなので、彼が主人公というだけでもある程度は楽しめたんですが、もし魅力を感じない人が主演だったらと考えると、空恐ろしくなりますね。 一応(おっ)と思わされる場面もあって、拳銃から発射された弾丸を追いかけるスローモーション演出なんかは悪くないし、無人と化した都市の風景も「現実では中々体験出来ない、映画ならではの味わい」があって、良かったです。 ラストシーンに関しても「あぁ、サム・ライミの『死霊のはらわた』をオマージュしているんだなぁ……」と分かって、微笑ましい。 ウーヴェ・ボル監督の作品って、観賞済みの中では「ザ・テロリスト」(2009年)と「ウォールストリート・ダウン」( 2013年)が例外的に面白く、それ以外は全滅だったりするんですが…… それでも何か愛嬌があって、憎めないから不思議ですね。 聞くところによれば、映画を酷評した評論家と、ボル監督とがボクシングで戦うドキュメンタリーもあるそうなので、機会があれば観賞してみたいものです。 [DVD(吹替)] 4点(2017-01-29 11:39:02) |
394. YETI イエティ<TVM>
《ネタバレ》 所謂「アンデスの聖餐」を元ネタとした作品。 飛行機事故で雪山に取り残され、生きる為に仲間の死体を食すべきか否かという極限状況の中で、イェティが襲い掛かってくるというんだから、余りにも無茶な組み合わせです。 作中にて「遺体を食べ続けるなんて、ケダモノにも劣る行為よ」なんて具合に、史実の事件を揶揄するような発言も飛び出すものだから、観ているこちらの方が(えぇっ……そんな事を言って良いの?)と不安になってしまいましたね。 肝心のイェティの描写はといえば、非現実的なジャンプを移動手段としているし、襲撃シーンでは男女が棒立ちのまま悲鳴をあげ続けて逃げる素振りを見せなかったりするしで、どうにも緊張感に欠けるという印象。 同じ遭難事故を元ネタとした傑作「生きてこそ」を意識したと思しき「生きる為に禁忌を犯すべきか?」と人間同士で言い争いする場面は意外と面白かったのに、本作の目玉であるはずのイェティが出てくると途端につまらなくなるという、非常に困った現象が起きている形です。 隠し持っていたチョコを食べていた事が仲間にバレて責められるとか、そういうシーンだけでも楽しめたのに、そこにイェティが絡んできちゃうものだから「来なくていいよ……」なんて思ってしまいましたね。 二通りの魅力を味わえるお得な映画、と言えない事もないのですが、自分としては「生きる為の究極の選択」「イェティの襲撃」どちらかに絞った作品を観てみたかったところです。 [DVD(吹替)] 4点(2016-12-21 10:44:00) |
395. ハウス・オブ・ザ・デッド2<TVM>
《ネタバレ》 前作からは一転、かなり真面目に作られているゾンビ映画。 こういった形で作風が分かれた以上「1の方が好き」あるいは「2の方が好き」という論調で語りたかったところなのですが、正直に感想を述べると「どっちも同じくらい……」という結論に達する為、困ってしまいますね。 分かりやすいところで比較すると、主人公に関しては、本作の方が圧倒的に好感が持てます。 如何にも有能そうなルックスに反し、作中の行動はドジが多くて頼りないのは玉に瑕ですが、観客としては応援したくなるタイプの人物でした。 キーアイテムとなる血液サンプルの価値を「売却によって齎される金額」でしか考えられない悪役に対し「それによって救える命の数」を語ってみせる辺りも、良い奴っぷりが伝わってきましたね。 作中にて、ユーモア部分も適度に取り入れつつ、それらは大体ゾンビ達に担当させて、主人公側の人間達は出来るだけシリアスな雰囲気を保てるよう配慮しているのも、良いバランスだったのではないでしょうか。 特に、図書館では静かにするよう「シーッ」と言い出すゾンビなんかは、自分もお気に入りです。 では、難点はというと……何だか根本的な話になってしまうのですが、緊張感が無いのですよね。 蚊に刺されただけでも感染してしまうという設定は非常に驚異的なのに、何故か主人公達は返り血ばんばん浴びまくって、口にも血が入っているはずなのに、全然平気で人間のままなのです。 (えっ? 感染しないの?)という混乱が先立ってしまい、折角真面目にゾンビ映画をやってくれていても、その世界の中に没頭出来ない形。 その他、暗闇の中の人影を「人間か」と思って近付いたら「実はゾンビだった」ってパターンが連続して発生するので(またかよ)とゲンナリしてしまったのも大きいですね。 序盤の段階で、こういう演出への不信感みたいなのが芽生えてしまうと、中々払拭するのは難しいみたいです。 極め付けは「大切な血液サンプルを失ってしまった」という展開を、終盤の短時間の内に二度も見せられた事で、これはもう、正直ガッカリ。 これまでの事は全部無駄骨だったなんて、観ているこちらまで落ち込んじゃいます。 主人公とヒロインの二人は生き延びる為、後味が最悪という事はなく、その点に関しては安心。 作り手は色々と頑張ったのは伝わってくるだけに、もう少し達成感というか、カタルシスを与えて欲しかったなぁ……と思わされた一品でした。 [DVD(吹替)] 4点(2016-11-21 10:05:15) |
396. ハウス・オブ・ザ・デッド
《ネタバレ》 同監督作の「ウォールストリート・ダウン」が、危険な内容ながらも中々面白かったので、期待を抱きつつ観賞。 ところが序盤、主人公が他の登場人物を紹介するパートにて(友達相手のはずなのに、悪口ばかり言っているなぁ……)と思ってしまった時点で感情移入が出来なくなり、以降も第一印象が覆る事はなく、残念でしたね。 「実は主人公こそが、後にゾンビを大量発生させる元凶である」という、2にも繋がる伏線である為、嫌な奴として描いておくのは仕方ない事なのかも知れませんが、それならそれで「最初は善人だった主人公が、事件を通して狂気に囚われてしまった」という形にしても良かったのではないでしょうか。 この手の映画の主人公は「駄目な奴」だったとしても「実は良い奴」だからこそ(生き残って欲しい)(頑張って欲しい)と思える訳なので、今作のように一貫して「嫌な奴」だったりすると、それだけで観るのがキツくなっちゃいますからね。 唯一、ヒロインへの愛情だけは本物だったのでしょうが、流石にそれだけでは肩入れ出来なかったです。 決定的に(これはダメだろう)と落胆してしまったのは、クライマックスの場面。 何故かラスボスが「主人公に首を斬り落とされるまで、剣を手にしたまま無防備に突っ立っている」という不自然な態度を取っていたりして、これはもう完全に興醒め。 背中を向けていた恰好なので、振り向き様に首を斬られるだけでも充分だったと思うのですが、何故ああも無抵抗だったのか、本当に謎です。 勢い良く突っ走るタイプの映画に、こんなツッコミをするのは野暮かも知れませんが(勢いを重視する作風だからこそ、こういう細かい部分で観客にブレーキを掛けさせるような真似はしないで欲しい)と、つい思ってしまいました。 とはいえ、ゲームの爽快感を再現した中盤の大袈裟なアクションシーンなんかは、結構好み。 作中で「ロメロゾンビ映画の四作目」が「多分やらないだろう」と言われているのも可笑しかったですね。 冒頭、ヒロインについて「フェンシングにのめり込んでいる」との情報があり(何その分かりやすい伏線)とツッコませておいて、終盤で本当にチャンバラをやらせてくれちゃうノリの良さも、嫌いじゃないです。 ゾンビ映画に必要なものが、面白さではなく愛嬌だとしたら、それは間違いなく備えている一品だと思います。 [DVD(吹替)] 4点(2016-11-21 09:33:06) |
397. ヤング≒アダルト
《ネタバレ》 序盤にて(うわぁ、嫌な女だなぁ……)とゲンナリ。 中盤辺りで(あぁ、でも結構可哀想だな。彼女なりに幸せになろうと頑張っているんだな)と同情。 そして終盤にて頭を抱え込まされるという、良くも悪くも、観賞中ずっと主人公に釘付けになってしまった映画ですね。 基本的には暗い作風なのですが、何処か軽快でオシャレな匂いも感じさせる辺りは、この監督さんの持ち味なのだと思います。 過去作の「JUNO/ジュノ」に比べると、どうにも主人公の成長を感じられない内容だったりするので、それが意図的なのかどうかも気になるところ。 印象的な場面は幾つもあるのですが、特に「離婚した旦那との写真が、実家に今でも飾られている」件なんかは、本当に上手いなと感心させられましたね。 その一事だけでも、主人公が実家に帰るのを忌避する理由が把握出来たし「失敗した結婚なんだから、何時までも飾っておくのは止めて」と訴える気持ちも分かります。 帰省する車内にて、楽しそうに聴いていた「元カレとの思い出の曲」を、彼の奥さんが歌ってみせるのを目の当たりにして、呆然とするシーンなんかも良い。 それらの積み重ねがあるからこそ、主人公が単なる「嫌な女」で終わらずに、感情移入出来る存在となっているし、無茶苦茶な行動を取っても、何処か納得させられる説得力があるのですよね。 主人公が元カレの家に乗り込んで、二人で駆け落ちしようと迫るも、当然のように断られてしまう件なんかは、本当に痛々しくて目を背けたくなりましたが、彼女が何故そんな行動を取るのか理解出来ないという事は無く、混乱せずに見守る事が出来るのだから、凄い脚本なのだと思います。 ただ、彼女の最大のトラウマが「流産した事」というのは、少々安易に思えてしまって残念。 それほど独創的なネタでもないでしょうし、それなら終盤にて、さも驚きの真実のように告白させる形ではなく、もっと前の段階で分からせていても良かったんじゃないかな、と感じられました。 元カレに固執する理由が「一番良い時の私を知っているから」というのは、過去に囚われた彼女を表す台詞として、非常に良かったと思いますね。 その後、友人の妹から「この町は最低。都会で暮らす貴方が羨ましい」と言われて元気を取り戻す事になるのですが、正直そこに関しては、どうしても賛同する気持ちになれず、カタルシスを得られませんでした。 「相手の男を放ったらかしにして、一人だけベッドから抜け出す彼女」というシーンを、序盤と終盤とに挟む事によって、彼女が成長していない事を描いてみせる表現技法などには感心させられるのですが、それが感動にまでは結び付かない。 事故で傷ついた車のまま走り出すラストシーンなんかも「傷付きながらも生きていく女性の力強さ」を象徴しているようで、爽快ではあるのですが(結局、彼女って他人を思いやる優しさを持たないまま終わっているよなぁ……)と、ついつい考えてしまいます。 最後の最後で主人公を救う解決法が「他者を否定する事によって自己を肯定する」という形であった以上、どうしても後味が悪かったですね。 丁寧に作られた、クオリティの高い品である事は、疑う余地が無いと思います。 だからこそ、ラストシーンの主人公に共感出来ない事が、勿体無く感じられる映画でした。 [DVD(吹替)] 4点(2016-06-23 15:45:08)(良:1票) |
398. 恋と愛の測り方
《ネタバレ》 明るいラブコメ映画は好きだけど、こういう真面目な恋愛映画は苦手だなぁ……と、自分の嗜好を再確認させられましたね。 丁寧に作られているし、主人公の感情の機微を描いたという意味においては質の高い作品なのでしょうが、どうにも好みの内容とは違っていた為、楽しむ事が出来ませんでした。 男女の浮気の違いを描いている点は興味深いのですが、どうも女性贔屓な目線であるように思えてしまった点も、マイナスポイント。 夫は妻を愛しているのに、一時の欲情に流されて同僚の女性と浮気してしまう。 そして妻の方はといえば、夫と同じくらい愛している元浮気相手の男性と心を通わせ合うも、最後の一線は越えていない。 しかも、夫の浮気相手となる女性には殆ど好意的な描写が無かったのに、妻の浮気相手である男性の方は如何にも同情的に描かれているものだから、やりきれません。 「性欲に駆られた夫の浮気は醜い」「それに比べて妻の浮気は悲劇的で美しい」という対比が窺えてしまい、どうしても賛同する事が出来ませんでした。 観賞後に調べてみたら、監督さんは女性であったらしく、何だか妙に納得。 男性贔屓な内容の映画を観て、女性が呆れてしまうのと同じような現象が、今回我が身に起こってしまったみたいです。 そんな風に、今一つ魅力が分からなかった品なのですが、そんな自分でもハッとさせられる場面も盛り込まれており、作り手の力量を感じさせてくれましたね。 特にラストシーン。外出用のハイヒールが投げ出されているのを映し出し、その後の夫婦の衝突を予感させる終わり方には、素直に「上手いなぁ」と感心。 「あの後、どうなったと思う?」「やっぱり旦那に浮気バレたよね」「最後の吐息からするに、奥さんの方から告白しそうな気がする……」 などといった具合に、観賞後にアレコレ話し合う楽しみも与えてくれる映画でありました。 [DVD(吹替)] 4点(2016-06-17 07:06:09) |
399. オブザーブ・アンド・レポート
《ネタバレ》 モールを舞台にした映画という事で楽しみにしていたのですが、ちょっと予想していたものとは違いましたね。 まず、コメディ成分が希薄です。 主人公は精神的な病を抱えた人物であり、笑いを誘う場面よりも、重苦しい雰囲気の漂う場面の方が中心。 警官となる為の体力テストを受ける件では、クスッとさせられる一幕もありましたが、印象的だったのは、そこくらい。 露出狂の犯人がシュールで面白いという面も、あるにはあったのですが、最後は主人公に撃たれて血まみれになって終わりという形なので、どうも爽快感に欠けていたような印象を受けました。 途中から「これはタクシードライバーに近しい映画だったのだな」と気が付き、何とか頭を切り変えようとしたのですが、上手くいかず仕舞い。 病人だから仕方ないとも思うのですが、どうしても主人公に感情移入が出来なかったのですよね。 社会から疎外された可哀想な人、という訳でも無く、実際は母親に同僚にヒロインの女の子にと、周りに良い人が沢山いて支えてもらっているのに、当人だけが自分勝手に悩んで暴走しているように思えて仕方なかったのです。 何といっても衝撃的だったのが、ラストにて犯人を撃ってモール内で殺人未遂を犯しているはずなのに、彼が作中でヒーローとして称賛されるエンディングを迎える事。 そりゃあ正当防衛が成り立つのかも知れないけれど、いくら何でもやり過ぎに思えたし、途中から彼の目的が「愛する女性を守ってあげたい」から「自分を振った女性を見返してやりたい」に摩り替っていたようにも感じられて、応援する気持ちにも、祝福する気持ちにもなれませんでした。 「警官」「化粧品売り場の美女」という主人公を悩ませていた二つの要素に対し、精神的な勝利を収めてみせた終わり方となっており、観客にカタルシスを与えようとしている事は感じられましたし、決して嫌いな映画では無いんですけどね。 音楽の使い方も良かったし、主演のセス・ローゲンも難しい役どころを丁寧に演じてくれていたと思います。 個人的好みとしては、仲良くなった友人が強盗犯だと気が付き、説得を試みるも結局は裏切られてしまう件が一番面白かったので、そこをもっと重点的に描いて欲しかったところです。 [DVD(字幕)] 4点(2016-06-15 03:51:18)(良:1票) |
400. 欲望のバージニア
《ネタバレ》 どうやら史実を基としたお話であるらしく、お酒をガソリン代わりに使って車を動かしたシーンなど、何処か微笑ましさを感じられましたね。 完全にフィクションであった場合、もう少しコミカルさを抑えた陰鬱なストーリーになりそうだっただけに、そういった「隙のある、ちょっぴり緩い感じ」が好ましく思えました。 主演のシャイア・ラブーフに関しては「トランスフォーマー」や「イーグル・アイ」で馴染みの顔なのですが、本作は少々感情移入しにくい役柄だったかと。 元々頼りないキャラクターを演じる事が多い俳優さんなのですが、今回は肝心な場面で兄の名前を出して難を逃れようとしたりして「虎の威を借る狐」感が強かったりしたのですよね。 クライマックスにて、そんな頼りない弟が兄に代わって敵役に銃弾を撃ち込むシーンに関しては、確かにカタルシスもあるのだけど、ちょっとそれまでが情けなさ過ぎて「最後だけ唐突に活躍した」という印象を受けてしまいました。 何せ、その数分前に「敵地に勇ましく乗り込んだかと思ったら、あっさり撃たれて倒れた」という、少々情けないシーンがあった直後の話でしたからね。 もう少し段階を踏んで、主人公が成長していくのをじっくり描いてくれていたら、ラストにも感動出来たかも。 監督さんは「ザ・ロード」と同じ人という事もあり、こちらにもガイ・ピアースが出演しているのには、何だかニヤリとさせられます。 他にもトム・ハーディにゲイリー・オールドマンと、脇を固める俳優陣も非常に豪華で、魅力的。 主人公とヒロインの恋模様なども描かれており、犯罪映画というよりは、若者を主役に据えた青春映画という印象の一品でした。 [DVD(吹替)] 4点(2016-06-08 22:39:19) |