401. プルート・ナッシュ
《ネタバレ》 黒幕が主人公のクローンであるという展開には意表を突かれましたし、二人が殴り合う場面なども面白かったです。 でも、悪役側に対しては「見分ける方法くらい用意しておけよ!」とツッコまずにはいられない。 そういった、何処か間の抜けた感じが本作の魅力なのでしょうか。 時間を損したという訳では決してなく、観ている間は退屈しなかったけれど「ああぁ、良い映画だなぁ……」と思える瞬間が訪れなかった事は、非常に残念。 主演がエディ・マーフィで、監督は「トレマーズ」と同じ人、という事で期待値が高過ぎたのかも知れませんね。 もっと肩の力を抜いて、リラックスした状態で観るべき映画だったのだと思われます。 そんな本作で目を引くのは、やはり脇を固める豪華な出演陣。 バート・ヤングが冒頭にチョイ役で顔見せしていたりして、自分としてはそれだけでも嬉しかったりしましたね。 特にランディ・クエイド演じるロボットのブルーノは、とても愛嬌があって、本作最大の癒しキャラ。 そして、主人公の母親としてパム・グリアが登場するのには驚いたし、クスッとさせられました。 何せ彼女が出てくる場面って、特にストーリー上は必要無かったように思えますからね。 「出したいから出したんだ、文句あるか」 という作り手側のメッセージが伝わって来るかのようで、少々呆れながらも、妙に微笑ましくて憎めなかったです。 [DVD(吹替)] 5点(2016-05-28 14:36:13) |
402. ラン・オールナイト
《ネタバレ》 リーアム・ニーソンとエド・ハリス。 二人が画面に映っているだけでも映画として成立しそうな名優の共演作、たっぷり楽しませて頂きました。 一緒に煙草を吸うシーンでの思い出話により、二人が長年の親友である事を自然と理解させてくれる作りなど、上手かったですね。 そして作中で主人公が息子に語り掛ける「お前は撃つな」という台詞。 汚れ仕事を引き受け続けてきた彼の過去とも合致しているし、何より息子を想う父としての願いが伝わってくるものがあって、非常に良かったと思います。 脇役である「誰よりも主人公を憎んでいるはずの警官」も、オイシイ役どころ。 そんな彼が、憎んでいるはずの相手の息子を救う事になる結末なんかも、渋くて好みでした。 一方で、最後の敵という形になる殺し屋に関しては、特にコレといった背景が描かれていなかった事も含めて、どうにも印象が薄くなってしまい、残念。 監督としても、この映画のクライマックスは主人公が親友を殺すシーンであると考えており、その後は簡略的に済ませて「後始末」のように主人公を死なせてみせた、という事なのかも知れませんね。 ただ、自分としては今一つ物足りないものがあって、これなら普通に自首させて終わりでも良かったんじゃないかな、と思えた次第。 それと、この映画のストーリーラインを考えてみるに「飲んだくれのダメ親父と化した主人公だが、実は今でも殺し屋として凄腕である」というサプライズが存在していた事も窺えました。 自分が「96時間」などを未見であったなら (えっ? この親父さん、こんなに強かったの!?) という衝撃を受けて、もっと楽しめた可能性も高そうです。 [DVD(吹替)] 7点(2016-05-27 14:41:53)(良:1票) |
403. ザ・インタープリター
《ネタバレ》 ニコール・キッドマンという人は、本当に美しい女優さんだなと、しみじみ実感。 主人公二人が共に悲劇的な過去を背負っている為、互いに慰め合っている内に恋愛感情が芽生えていく流れかな……と予想していたら、それを裏切ってくれたのが気持ち良かったですね。 冒頭のサッカー場での、少年達による銃殺シーンも衝撃的でしたし、中盤に起きるバス爆破シーンの迫力も見事。 実は一連の暗殺事件は、大統領側による狂言だったというオチも面白いと思います。 ただ、そういった要素の一つ一つは魅力的だと思うのですが、映画全体として考えた場合、少し贅沢過ぎたようにも感じました。 それというのも、立て続けにスケールの大きい事件が起こってしまうものだから、何やら置いてけぼり感覚があったのです。 なまじリアルな作風で、主人公達の能力も等身大であるがゆえに 「こんな事件、本当に彼女達で解決出来るの?」 という疑問符が浮かんでしまい、どうも画面に集中する事が出来ませんでした。 ニコール演じるシルヴィアが、大統領に銃を向けるクライマックスに関しても 「ここまで感情移入させて描いてきた主人公に、要人殺害の罪を背負わせたりはするまい」 と、何処か冷めた目で見つめてしまう事になったのが、非常に残念。 ラストにて読み上げられる死亡者リスト。 そして「誰も待っていない、思い出だけが残る故郷」に帰ると告げるシルヴィアの姿は、とても印象的で良かったですね。 自分にとっては、少し歯車が噛み合いませんでしたが、丁寧に作られた真面目な映画だと思います。 [DVD(吹替)] 5点(2016-05-27 12:00:02) |
404. コンドル(1975)
《ネタバレ》 「新聞に出ると思うか?」 というラストでの台詞に、ドキリとさせられましたね。 この手の映画は、主人公が新聞社に真実を告げる事によって、無事にハッピーエンドを迎えるもの……という固定観念のあった頃に観たもので、その台詞に秘められた恐ろしさには、本当に背筋が凍る思いがしました。 主人公が真実を告発する前に殺されてしまうアメリカン・ニューシネマな結末よりも、更に恐怖や無力感、やるせなさを感じさせる結末ではないでしょうか。 冒頭の事務所襲撃シーンでの、日常が瞬く間に破壊されてしまうシークエンスも迫力がありましたし、マックス・フォン・シドー演じる殺し屋と向き合う事となる、終盤の緊迫感も良かったですね。 ただ、映画の中盤に関しては、CIAのワシントン本部の描写が非常にチープであった点や、ヒロインであるフェイ・ダナウェイとのロマンスに、今一つノリきれなかった点などが響いてしまい、少々退屈に感じてしまったのも事実です。 勿論彼女は美人さんだし、こんな状況下においてもベッドシーンに突入してしまう男の気持ちも、分からないではないのですが 「えっ? これって仲間を殺された復讐の為に行動する、ストイックな主人公の話じゃなかったの?」 と、どうしても戸惑ってしまいましたね。 こういった展開を迎えた以上、彼女も殺されてしまうのじゃないかな、と思っていたら、そんな事も無く、ロマンティックな会話と共に別れる事となり、ホッとさせられる一方で、どこか物足りないような気持ちにもさせられました。 観客がマスコミの力を信じられるかどうかによって、ハッピーエンドともバッドエンドとも解釈する事が出来そうな結末ともども、色々と判断が分かれそうな要素が多いのですよね。 どんな映画にだって当てはまるでしょうが、この品は特に「これを名作と感じるも、駄作と感じるも受け手次第」という側面が強いというか。 自分がプラスに思った上述の部分だって「後味が悪い」「殺し屋と撃ち合いもせずに会話だけで別れるだなんて拍子抜け」と受け取る人もいるでしょうからね。 そういった諸々も含めて、面白い映画だと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2016-05-26 18:29:35) |
405. バス停留所
《ネタバレ》 マリリン・モンローが「演技派」への転身を図った第一作目という事で、彼女を語る上では外せないタイトルだと思います。 そんなモンロー当人の演技だけに着目すれば(頑張っているなぁ……)と、微笑ましい気持ちになったりもするのですが、映画全体から受けた印象となると、中々に厳しいものがありましたね。 まず、この映画の中心はモンロー演じるチェリー(=シェリー)ではなくて、ドン・マレー演じるボーな訳ですが、彼がどうにも感情移入を拒むような主人公像なのです。 根は悪い人間ではないのでしょうが、余りにも傍迷惑だし、現代の目線からすると思い込みの激しいストーカーにしか見えないのが困りもの。 そんな彼が殴られて、打ちのめされて、ようやく改心し、最後にはモンローと結ばれるというハッピーエンド構成なのですが、その「彼が反省して生まれ変わる」までが長過ぎるように感じてしまいました。 確認してみたところ、全95分の内、雪の中での殴り合いに突入するまでに70分以上が経過している計算なんですね。 個人的には、このイベントをもっと早い段階に持って来た方が良かったんじゃないかな、と。 まるで尺が足りないかのように、終盤にて「主人公が改心する」→「ヒロインと結ばれる」という出来事が立て続けに起きた印象を受けてしまい、今一つ納得出来ないものがありました。 上述のように「前振り」部分が長過ぎたんじゃないかと思えてしまう作品なのですが、終わり方は爽やかで好み。 子供っぽい主人公の面倒を見続けてくれた、親代わりのような年長の親友が「わしは邪魔だ。お前には彼女がいる」と身を引いて、バスに乗り込む二人を送り出す場面は、グッと来るものがありましたね。 相手を思いやる気持ちに欠けていた主人公が、ヒロインが凍えてしまうと気遣って、自らの上着を脱いで羽織らせてやると、ヒロインもそれに応えて、一度は勝手に彼に持ち出されてしまった緑のスカーフを、今度は愛情込めて彼の首に巻いてみせるシーンなども、負けず劣らず良かったです。 面白かったかどうかと問われたら、頷きがたいものがあるけれど「良い映画だった?」と問われたら、迷った末に頷いてしまう。 そんな映画でした。 [DVD(字幕)] 6点(2016-05-18 01:47:53) |
406. スティック・イット!
《ネタバレ》 女子の体操競技には、あまり興味が無かったような自分にも分かりやすく、楽しめる内容となっていましたね。 編集のテンポが良く、音楽もノリノリで、観客を飽きさせません。 レオタードがズレるのを防ぐ為に、滑り止めのスプレーを吹きかける場面などの 「詳しい人なら知っているので、ついつい説明を省いてしまいそうな部分」 を、きちんと映像化して教えてくれた形なのも嬉しかったですね。 主人公ヘイリーの皮肉っぽいモノローグによる 「体操競技って、こんな感じ」 という解説も、初心者に親切な作りとなっていて、ありがたい。 一見すると優雅で美しい世界に思えるかも知れないけど、その実は血が滲む程に厳しいトレーニングを行っているんだぞ、と分からせてくれる辺りも好みでした。 ただ、終盤の展開には少し疑問というか、観ていて呆気に取られてしまい、最後まで一緒にノリ切れなかったのが残念。 そりゃあ主人公の主張が間違っているとは思いませんし、ブラが見えた程度で減点の対象になるのは納得いきませんが、だからって周りの選手達も揃ってサポタージュしてみせるだなんて、流石に無理があるように思えました。 最後の床運動に関しても、本来なら型破りで痛快なシークエンスなのでしょうが、上述の展開にて興醒めしたせいもあり、どこか距離を置いて眺めるような形になってしまった次第。 気持ち良くハッピーエンドで終わってくれた事も含めて、素直に「面白かった!」と言いたいところなのですが…… やっぱり、クライマックスで不満を感じた以上は、それをやると嘘になってしまいそうです。 何だか自分が劇中の意地悪な審査員になってしまったようにも思えて、心苦しい限り。 それでも、実際に観ている間は、心地良い気分に浸れる場面が幾つもあった映画でした。 [DVD(吹替)] 5点(2016-05-16 07:57:22) |
407. ジャイアント・ベビー
《ネタバレ》 子供達が小さくなってしまう映画の続編として「今度は大きくなる!」という内容を持ってきたのは面白いし、その子が幼児である為に、大人達がひたすら翻弄される事になるというのも、ユーモアが利いていて良かったと思います。 ただ、自分としては前作の家族ドラマの延長のようなものを期待していたので、長女のエイミーの扱いや、魅力的だった隣家の人々に出番が無かった事に関しては、ちょっと残念でしたね。 最後の最後まで「彼らが応援に駆け付けてくれるのでは?」なんて勝手な期待を抱いてしまい、それが肩透かしな結果になってしまったのは、やや消化不良な感じです。 その一方で嬉しかったのは、小さな子供だった長男のニックが立派なティーンエイジャーに成長している事。 部屋でギターをかき鳴らしている姿なんて、もう見ただけで頬が緩んでしまいます。 今作ではベビーシッターの少女との恋模様まで描かれており、幼かった頃の姿を知る身としては、とても微笑ましい気持ちにさせられました。 正直、赤ん坊が車の中や家の中に収まるくらいのサイズの頃は、あまり楽しめなかったりもしたのですが、ラスベガスにジャイアントベビーが襲来する終盤に突入してからは、観ているこちらも大いに満足。 怪獣映画めいた非現実感と、巨大な存在を退治するするのではなく保護しなければいけないという斬新な感覚が混ざり合い、不思議な気持ちに浸る事が出来ましたね。 作中にて語られた「(赤ん坊にとって)パパは遊び相手、ママはママ」という台詞が、妙に心に残る映画でもありました。 [DVD(吹替)] 6点(2016-05-08 05:01:59) |
408. グリーン・デスティニー
《ネタバレ》 この作品が、後世の武侠映画に与えた影響は大きいのでしょうね。 ただ、それゆえに、現代の目からすると斬新どころか、陳腐にさえ見えてしまうのが残念なところ。 それだけ模倣されてきた画期的な作品という事ではないか、と頭の片隅では感じているのですが、観賞中「これは凄い!」と唸らされる場面には遭遇出来ませんでした。 とはいえ、終始退屈だったという訳では決してなく、壁走りや竹の上を走る場面、剣を使って敵の剣のギザギザ部分を一気に削ぎ落とす場面などは面白かったし、テンションも上がりましたね。 今時はこんなシンプルな、分かりやすい引っ張り上げ方のワイヤーアクションには中々お目に掛かれないという事もあり、何やらストップモーションで動く怪獣を見るような、時代が違うからこその目新しさもありました。 ではストーリーはどうかというと、残念ながら好みとは言い難い内容。 まず、主人公であろうイェンの立ち位置が「悪い事をしてしまって大人に追いかけられている子供」という印象なのです。 善人とは言い難いし、かといって格好良い悪党でもない。 作中の雰囲気からしても、いずれ彼女に罰が当たるという事は随所から感じ取る事が出来るので、彼女に感情移入して物語を追いかけると、酷く居心地の悪い感覚を味わう事になるのですよね。 じゃあ俯瞰で楽しもうと距離を置いて観賞すれば、何だか家出娘が引き返せずにどんどん深みに嵌っていくのを見守るだけのような気分になって、やっぱり楽しめない。 結末もハッピーエンドとは思えず、スッキリしない後味となってしまいました。 好みの映画ではない、と断言出来たら気持ちも楽なのですが、上述のアクションの数々など、面白かった部分も確かに存在しているのが、悩ましいところですね。 著名な竹林での攻防シーンも、非常に緑が印象的で、白い着物が幻想的で、美しさすら感じました。 とかく知名度が高く、エポックメイキング的な作品という事もあり、何とも判断が難しい。 この映画は面白いかと問われたら、素直に頷く事は出来ませんが、そういった諸々を含めて、観る価値はあった映画だと思います。 [DVD(吹替)] 5点(2016-05-07 07:53:24) |
409. ルームメイト2
《ネタバレ》 続編というよりはリメイクに近い印象を受けました。 1で印象的だった「髪型を同じにしてルームメイトとの同一化を図ろうとする女性」というシークエンスなども、ほぼそのまま再現されていますね。 ただ、長い黒髪を短い茶髪に変えた前作に比べると、今回は髪色を変えた程度の変化に思えて、インパクトは弱かったように感じられます。 「良い子」だと思っていたルームメイトが、卑猥な店で働いているのを見かけて衝撃を受けるシーンなども、今作の女優さんに関しては失礼ながら「そういう店で働いていても驚かないタイプ」という印象を受けたので、意外性という点では不利かと。 序盤は前作とは違う展開だっただけに、新しいストーリーを見せてくれるかと期待していたところだったので、中盤以降は「結局、同じ話になるのかよ!」という落胆を感じてしまった……というのが、正直なところですね。 2から先に観ていれば印象も変わったかも知れませんが、この辺は後発の作品の辛いところ。 結末に関しても大体同じなのですが、彼氏が生き残っているのでハッピーエンド色が強まっている一方、ヒロインは死んだルームメイトに憑りつかれているような描写もあり、一概に後味が良いとは言い切れないものがありました。 相手を殺して一緒に死ぬ事が愛情表現であった彼女に対し、ヒロインは殺すだけで自分も死んであげる事は出来なかったという形で「彼女の愛には応えられない」という事を示した点に関しては、中々味わい深くて好みです。 最後にヒロインが見せた笑顔は、過去を吹っ切ろうという決意の表れにも、殺したルームメイトと同化するのを受け入れたようにも思えましたね。 それまでは予定調和な展開ばかりだった中で、初めて「この後どうなるの?」と身を乗り出した途端に、スタッフロールが始まってしまうというオチ。 何とも残酷な映画でした。 [DVD(吹替)] 5点(2016-04-17 19:40:06) |
410. スティーブン・キング/ドランのキャデラック
《ネタバレ》 クリスチャン・スレーター主演という情報を元に観賞してみたら、まさかの悪役。 元々善玉だけでなく悪党も器用に演じきる俳優さんという印象がありましたが、今回もハマっていましたね。 彼が演じた役柄で一番好きなのは「フラッド」の主人公なのですが、この映画のドラン役も、それに次ぐインパクトを与えてくれました。 特に終盤、自慢のキャデラックの中に閉じ込められてしまうシーンでの焦燥感や、息苦しさを伝えてくれる演技なんかは、必見です。 そして、そのキャデラック。 映画のタイトルになっているだけの事はあり、魅力たっぷりなアイテムとして描かれています。 完全防弾、背後を追跡してくる車を観察出来るカメラ、車内用パソコンに、緊急時の酸素吸入器(?)まで付いているという至れり尽くせりっぷり。 劇中では悪役が乗り回している代物であり、主人公にとっての復讐の対象となる車なのですが、妙に男の子心を刺激され、憧れてしまう存在でした。 原作がキングという事もあってか、主人公に妻の亡霊が見える設定もあるのですが、こちらに関しては必然性があったのか、少々疑問。 妻が妊娠していた事を悟らせる効果があったのでしょうが「それって幽霊経由でなくとも良かったのでは?」という疑念を抱いてしまいましたね。 映画後半では主人公とドランとの一騎打ちとなって、妻の幽霊は全く姿を見せませんし、決着が付いた後に、何か一言残して天国へと旅立ってくれる訳でも無し。 よって、幽霊の存在が途中から立ち消えする形となり、何だか宙ぶらりんに感じてしまうのです。 超常現象などを絡めずとも、純粋に復讐譚として楽しめるクオリティがあるじゃないかと思えただけに、そこが気になってしまいました。 映画終盤「主人公が行動を起こさずとも、いずれドランは逮捕される運命だった」と判明する件に関しては、実に皮肉が利いていて良かったと思います。 逮捕のキッカケとなった児童売買についても、ドランは決して乗り気ではなく、むしろ苦悩すら垣間見せていた辺りなんかも、好みのバランス。 主人公側だけでなく、ドラン側にも感情移入させてくれて、両者の対決の行方がどうなるのかに注目させてくれました。 全てが終わった後に、空を見上げて、乾いた高笑いを響かせる主人公。 そこには達成感が多分に含まれていたのでしょうが、それと同時に、復讐の空しさも感じていたのではないかな、と思えます。 独特の後味を与えてくれる映画でした。 [DVD(吹替)] 7点(2016-04-13 17:26:03) |
411. トランスポーター
《ネタバレ》 これは度胆を抜かれた映画ですね。 「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」でお馴染みの顔だったジェイソン・ステイサム。 彼が主演の映画という事で、軽い気持ちで観賞してみたら、予想を遥かに上回るアクション濃度。 特に終盤の上半身裸になっての格闘シーンは圧巻で 「えっ? この人こんなに強かったの!?」 と、画面の中で躍動する彼の姿に、呆気に取られ、次いで笑みが込み上げてきたのを覚えています。 序盤に繰り広げられるストーリーや、主人公とヒロインの設定に関しては 「あぁ、リュック・ベッソンだなぁ……」 としか思えず、完全に油断していただけに、今作で明かされた「強さ」というステイサムの強烈な個性に、痺れてしまいました。 今は日本でも気軽に購入出来るようになったジュースのオレンジーナを、作中でヒロインに飲ませてあげるシーンなんかも印象深いですね。 ラストも囚われの人々を開放するのと同時に、スパっと切れ味良く終わるのも好印象。 エンディング曲も好みでしたし、気持ちの良い時間を過ごせた一品でした。 [DVD(吹替)] 7点(2016-04-12 08:06:17)(良:1票) |
412. 名探偵登場
こういったコメディ映画は、元ネタに対する愛情があってこそだと思っていた自分にとって、むしろ元ネタのミステリー小説群を否定するような内容であった事は、非常に驚きでした。 ラストの主張に全く説得力が無かった、とは言いません。 けれど、そこにはユーモアという以上に悪意を感じてしまって、とても賛同する気持ちにはなれませんでした。 ピーター・フォークが出演している事もあり、観賞前は期待していただけに、それを裏切られたという思いもあります。 豪華な出演者陣は、ただ画面を見ているだけでも楽しい気分にさせられるし、作中のギャグシーンで笑いを誘うものがあったのも確か。 そういった「好き」な部分も簡単に見つけられるだけに、残念な気持ちになる映画でした。 [DVD(字幕)] 3点(2016-04-08 11:48:42)(良:1票) |
413. 裸の十字架を持つ男/エクソシストフォーエーバー
《ネタバレ》 アメリカ産の映画を観ていると「嘔吐」ネタのギャグが多い事に気が付きますが、その中でもコレは極め付けの一本なのではないでしょうか。 とにかくもう、登場人物が吐く吐く吐く。 観ていると、こちらまで吐き気を催してきそうな程の畳み掛け。 「下品だなぁ……やっぱり日本人とは笑いのツボが違うのかな?」 なんて考えすらも頭をよぎってしまいますが、そんな日本人もおならネタで笑ったりするので、あちらさんの嘔吐ネタを馬鹿にしたりは出来ないのでしょうね。 それに、自由の女神までもが口から滝を流す様には、思わずクスッとさせられたのも事実です。 基本的なストーリーとしては「エクソシスト」のパロディであり、リンダ・ブレア本人が出演しているのは貴重。 ツボにハマれば楽しめる映画だと思います。 [DVD(字幕)] 2点(2016-04-08 10:26:08) |
414. ホーリー・マウンテン
《ネタバレ》 カルト映画として人気があるみたいですが、それも納得の内容です。 ただ、その魅力が自分には伝わって来ない。 信じてもいない神様についての説法を、延々と聞かされているような気分になってしまいました。 ラストシーンに関しても、映画の世界に入り込んで観ていれば衝撃的なオチだったかも知れませんが、正直「だから何?」としか思えない。 雨が降っている日に「雨が降っているね」と言われて、それっきり会話が途絶えてしまった時のような感覚です。 監督としては、一種のユーモアのつもりで「これは映画だ」という結末にしたのかも知れませんが、それを笑い飛ばす事が出来ない。 映画そのものに対しても、観客に対しても、否定的なニュアンスを色濃く感じてしまいました。 好きになってさえしまえば、それらの諸々も愛嬌に感じられて、とても楽しめそうな作品であるだけに、残念です。 [DVD(字幕)] 0点(2016-04-08 08:55:55) |
415. ファニーゲーム U.S.A.
《ネタバレ》 「1997年版と、全く同じような内容だなぁ……」 と感じていたのですが、監督さんも同じだった訳ですね。納得。 ある意味では、とても真摯な態度でのリメイクと言えるかも知れません。 初見の衝撃、といったものを差し引いて考えれば、元作品のファンも楽しめる仕上がりだと思います。 有名俳優が出演している事によって何か変わるかな、とも思いましたが、特に変わっているようにも感じられませんでした。 自分としては、1997年版と同じ内容である以上、同じ点数をつける他ありません。 [DVD(字幕)] 0点(2016-04-08 08:20:10) |
416. 狼たちの午後
《ネタバレ》 「緊迫感のある映画」というと、真っ先にコレを思い浮かべますね。 特に、主人公が電話越しに元妻と話す場面なんて、真冬に観ても汗が滲み出て来るかのような、何かに追い詰められているかのような気分を味わえます。 彼が今現在愛している相手はレオンなのでしょうが、元妻に対しても完全に愛情を失ってはいない事、不器用で世間に適応出来ないだけで、優しさを備えた人間である事などが、痛々しい程に伝わってきました。 一方で、人質達との束の間の交流が描かれる場面では、こちらも緊張から解放される思いがして、ホッと一息。 無造作に銃を渡してしまうほどに心を許している両者の関係性に、ハッピーエンドすら連想させられました。 けれど、それゆえに、そんな積み重ねがあったがゆえに、空港にて、全ては仮初めの絆に過ぎなかった事を実感させられる顛末が、余りにも悲しい。 無事に保護されて、もはやこちらに視線を寄越そうともしなくなった人質達を見つめるパチーノの表情、運ばれていく相棒の死骸を見送って、慟哭を必死に噛み殺すような表情、どちらも素晴らしかったです。 パチーノの主演作は色々と観てきましたが、切ないほどに感情移入してしまう主人公という意味で、今作がベストアクトであるように思えました。 心に残る一品です。 [DVD(字幕)] 10点(2016-04-07 08:30:59) |
417. シノーラ
《ネタバレ》 古き良き映画として、その雰囲気を楽しむ事が出来る映画だと思います。 シリアスなストーリーのはずなのですが、主人公が壺を振り子のように動かして敵の頭にぶつけるシーンの演出など、妙に笑いを刺激する部分などもあったりするのが面白かったですね。 もしかしたら作り手は大真面目で、笑わせるつもりなど皆無なのかも知れないけど、壺が砕け散る音がやたらと大きかったりして、妙にお気に入りの一場面。 上述のように、主人公が雇い主側を裏切って戦いが始まるシークエンスは中々にテンションが高まるものがあるのですが、そこに辿り着くまで一時間ほど掛かってしまうのが難点でしょうか。 また、ストーリーに関しても「裏切りに至るまでの主人公の心情の変化」が伝わってこない為、最後まで感情移入する事が出来なかったのも残念。 雇い主は最初から悪役として描かれていたし、美女の存在だけでも裏切りの理由には充分、という解釈も出来るのですが、もう少し決定的なイベントなどがあった方が良かったかな、と思えます。 撃たれた敵の倒れ方が、ややオーバーアクト気味な辺りも、シリアスとギャグとの境界線を曖昧にしているように感じられました。 以上の如く、全体を通して考えると気になる点も多い品なのですが、それでも主人公を演じるイーストウッドの存在感は抜群。 汽車で屋内に突入し、そのまま銃撃戦を行ってみせる姿などは、素直に格好良いと思えましたね。 [DVD(吹替)] 5点(2016-04-07 07:56:15) |
418. New York 結婚狂騒曲
《ネタバレ》 こういったラブコメ映画において「主人公が結婚式を直前でキャンセルする」という展開が訪れると、大抵は相手方が可哀想になってしまうのですが、本作はそれを感じさせませんでしたね。 何といっても「振られる」形となる婚約者のコリン・ファースが格好良い。 このまま結婚したら君は不幸になる、という理由で潔く身を引いてみせるなど、中々出来る事ではありません。 少し女性主人公側にとって都合の良過ぎる展開ではないか、と思えない事も無いのですが、こういった場合に婚約者側を分かり易い悪役にしてしまう展開よりも、ずっと好感が持てると思います。 とはいえ、中盤において、女性側には婚約者がいるにも拘らず情熱に任せて性交渉を行る主人公カップルなど「おいおい、それで良いの?」と感じてしまう部分が多かったのも事実。 その後に主人公は直ぐに後悔する事となるのですが、ここで少し作中人物に距離を感じてしまったというか、白けた気持ちになってしまったのは残念でした。 ラストに関しては「結婚式を中止させる為の手段として火災報知機を鳴らす」→「消防士である意中の彼が駆け付けてくれて、そのまま二人は結ばれる」という形となっており、綺麗に纏まっているなぁ、と素直に感心。 上述の婚約者を筆頭として「過去に間違いを犯したからこそ、真の伴侶に出会えた」と語る父親など、脇役に魅力を感じさせるキャラクターも多く、最後は安心のハッピーエンド。 観賞中は色々とモヤモヤした気持ちに襲われた一方で、観賞後には「良かった」と感じさせてくれる、そんな一作でありました。 [DVD(字幕)] 6点(2016-04-04 07:18:51) |