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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1885
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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121.  記憶探偵と鍵のかかった少女 《ネタバレ》 
記憶探偵――。それは他人の記憶の中に入り込み、その人にしか知り得ない無意識下の真実を探り出すことによって、世の中に溢れる様々な難事件を解決へと導き出す特殊な職業だ。業界最大手の一流企業、マインドスケープ社に所属するジョンもそんな記憶探偵の一人。ところが2年前に妻を亡くしたショックから、彼は長いスランプに陥っていた。このままでは妻の思い出が沢山詰まった家まで売り払わないと明日にも破産してしまう。ジョンは上司に掛け合って、記憶探偵としての仕事を何とか廻してもらうのだった。「大富豪の一人娘がもう1週間も飯を喰ってない。きっと過去のトラウマが原因だ。ジョン、どうだ?簡単な仕事だろう。すぐに向かってくれ」。藁にも縋る思いですぐにその大富豪の邸宅へと向かうジョン。そこには謎めいた言動を繰り返す16歳の美しい少女、アナが待っていたのだった。彼女のトラウマの原因を探るため、ジョンはすぐさま彼女の記憶の中へと潜り込んでいくのだったが……。他人の記憶の中に自在に入ることが出来る特殊な能力を持った探偵が彷徨い込んだ、そんな一人の少女の深層意識という名の迷宮を濃厚に描き出すダーク・ミステリー。クリストファー・ノーランが生んだ傑作『インセプション』が公開されてから、こういう人の深層意識の中へと潜り込んでいく系の作品がやたらと流行ってますね~。でも、その多くは『インセプション』とは比べるべくもない駄作ばかり。本作もその例に漏れず、『インセプション』のような世界観を頑張って構築しようとして(主人公の妻が記憶の世界に留まり続けて鬱状態から自死へといたったという設定なんて、そのまんまですやん笑)、見事なまでにお話が破綻しちゃってます。クライマックスで種明かしされる事件の真相も「いやいやそんな馬鹿な」と呆れるようなもので、僕は思わず失笑しちゃいました。ラストのハッピーエンドなんて、無理やり捻り出した感が半端ない。そして、こういう作品の一番の肝となるのはやはり主人公が彷徨い込む精神世界をいかにセンスよく映像化しうるかどうか。確かに、監督がゴシック趣味全開の少女ワールドを濃密に描き出そうと頑張っているのは分かるのだけど、うーん、残念ながら僕はそんなにセンスを感じませんでした。こういうのを観るといかにクリストファー・ノーランが天才かがよく分かりますね。記憶の中に入り込まれるアナという少女を演じた子がなかなかの美少女で、そんな彼女が太ももムチムチのホットパンツ姿を惜しげもなく披露してくれたことを考慮して+1点しときます。
[DVD(字幕)] 5点(2023-08-15 09:22:40)
122.  ゲッタウェイ スーパースネーク 《ネタバレ》 
ブルガリア、ソフィア。かつて天才レーサーとして名を馳せたものの、その無謀とも言える運転がたたってレース界から追放を余儀なくされた男、マグナ。以来、闇の仕事で食いつないでいた彼だったが、いまは引退し愛する妻とともに幸せな日々を送っていた。だが、そんなある日、マグナがマンションに帰ってみると部屋は荒らされ彼の生甲斐である妻がさらわれていたのだった。直後に鳴り響く彼の携帯。「いいか、よく聞け。突然だが、君の妻を誘拐させてもらった。返してほしければこれから私が指示する駐車場にすぐに向かい、そこに停めてある特別な車を盗め。運転は久々だろうが、妻を救いたければ私の指示に従え。君の妻は実に美しい女性だ。もし通報したり君が警察に捕まったりすれば、彼女は死ぬ」――。謎の男の指示通り、駐車場へと向かうとそこには様々な改造が施されたスーパーカー〝スーパースネーク〟が停めてあったのだった。難なく車を盗み出すことに成功したマグナは、直後に乗り込んできた車の所有者を名乗る生意気な少女とともに、夜の街を疾走してゆく。そう、愛する妻を取り戻すために……。CGはいっさい使わず実際に街で車を暴走させて撮られた、疾走感溢れるカーアクション。全編カーチェイスに次ぐカーチェイス、そしてクラッシュ!クラッシュ!クラッシュ!90分間、もうひたすら車が走りぶっ壊れ続けるだけの、まあ潔いまでのB級エンタメ映でした。けど、確かに凝りに凝りまくったアクションシーンの数々はキレも勢いもあって最後まで楽しく観ることが出来ますね。どこか影のあるワイルドな男を演じさせたら右に出る者の居ないイーサン・ホークも相変わらず格好良いし、同乗者となるお転婆南米娘との凸凹コンビもバッチリ決まっていて素直に楽しかった。うん、90分な~んにも考えずに楽しめるエンタメ映画としては充分水準に達していたと思います。ただ…、ずっと車の中に居る彼らからの視点でしか物語が語られないため、ストーリーが幾分か一本調子なのが本作の弱点。これにたとえば、彼らを追う刑事からの視点などがあれば随分とメリハリの利いた展開になってもっと面白くなりえただろに。それに最後のどんでん返しがすぐには分かり難く、いまいちカタルシスが得られなかったのも残念。と、そこらへんが惜しかったですけど、酒でも飲みながら頭空っぽにして観るべき映画としてはそこそこ面白かったんじゃないでしょうか。うん、6点!
[DVD(字幕)] 6点(2023-08-14 11:12:32)(良:1票)
123.  プロミスト・ランド(2012) 《ネタバレ》 
「僕の名前はスティーヴ・バトラー、グローバル社の者です。知っての通り、この町の地下から新たな時代のクリーンエネルギー、シェールガスが発見されました。この事実は、危機に瀕しているこの町に莫大な利益をもたらすことでしょう」――。アメリカ郊外にある地方都市、マッキンリー。長引く不況の影響で閉塞感に満ちていたこの町に、シェールガス発見という朗報が舞い込んでくる。業界大手グローバル社の営業マン、スティーヴはそんな小さな町に土地の買付と住民対策のために乗り込んでくるのだった。大金をちらつかせて順調に住民を説得していく彼だったが、突如として環境保護団体を名乗る男が町に現れる。「俺の故郷はグローバル社の環境汚染のせいで滅茶苦茶にされた!みんな、騙されるな!」。精力的にそう訴える男によって、順風満帆だったスティーヴの活動は窮地に追い込まれてしまう。自らの出世のために、なんとしてでもこの案件を成功させたい彼は躍起になって対策を練るのだったが……。環境保護と経済活性の間で揺れる一地方都市を舞台に、徹底的に資本の論理で動くエリートサラリーマンと環境保護団体の駆け引きをリアルに描いた社会派ドラマ。と、書くと物凄く重たそうな物語を想像してしまいそうだけど、そこはいままで青春映画の良品を幾つも手掛けてきたガス・ヴァン・サント監督。何処までも続くのどかな田園風景や純朴な田舎の住人たちを穏やかな視線で描くことで、非常にノスタルジックな雰囲気に満ちた佳品に仕上がっておりました。数々の賞に輝くベテラン監督だけあって、さすがに巧い。個性豊かな登場人物たち、分かりやすいストーリー展開、詩情豊かな映像と音楽…、もう最後まで安心して観ていられます。最後のあっと驚く展開も「なるほど…」と唸らせておいて観終わったあとに色々と考えさせるところも見事。ただ……、その抜群の安定感がこの作品の魅力となっているかというと僕は逆にあまりにもスタンダードすぎてちょっぴり物足りなさも感じてしまいました。もう少しこの作品ならではという何か新しいものを求めてしまうのは欲張りというものでしょうか?とはいえ、この抜群の安定感はやはりいい。環境保護と経済活動…、そんな難しい問題を考えるきっかけとしても観て損はないだろう。
[DVD(字幕)] 6点(2023-08-14 10:50:56)
124.  エクソダス:神と王 《ネタバレ》 
「出エジプト記」――。それはユダヤ教、キリスト教、イスラム教という世界の約半数の人々の精神的支柱であり、さらにはあらゆる文化的生活の基礎となり道徳心や倫理観の規範となるべきものでもあり、時にはその解釈を巡って歴史を揺るがすような諍いを巻き起こし続けた旧約聖書、世界宗教の原点とも言うべきその中でももっとも重要な部分と言っていいだろう。そして恐らく人々が歴史に刻んだ原初にしてもっとも有名な物語だ。本作は、そんな誰もが知るお話をいまやハリウッドの重鎮となったリドリー・スコット監督が、新たな解釈のもとに映像化した重厚な歴史スペクタクル巨編である。特徴的なのは、そんな宗教掛かった原典から出来るだけ神秘性を排除し、あくまで科学的に解釈出来るように神の奇跡を描いていることだろう。特に〝エジプトを襲う十の災い〟と〝追い詰められたヘブライ人のために海が割れる奇跡〟。現代の常識ではあり得ないこの奇跡を、監督は――多少の無理があるとはいえ――あくまで科学的に証明できるものとして描き出してゆく。また、モーゼが縋る神の存在も見えるのは彼自身にのみであり、子供の姿で現れる神はあくまでモーゼの妄想が創り出した想像上の産物かもしれないものとして描写されている。ここでこの老監督の狙いが明らかとなってくる。「神は死んだ」。これはニーチェが唱えた有名な言葉だが、神とはもしかしたら人が生きるために創り出した一つの壮大な物語ではないのか。科学が極限まで発達し、この世に神が居ないということを論理的に証明しつつある現代においてもなお、宗教が現代のあらゆる問題に影を落としている。もしかして、人は生きるために神という物語を必要とする生き物なのかもしれない、たとえそれが間違った物語であったとしても――。本作の優れている点は、宗教という人間の生きるうえでの根源的なものをテーマとしながらも敢えて否定的な視点をも備えているところだろう。そこには、それでも自分は映画という世界で物語をずっと創り続けてきたというスコット監督の矜持が力強く貫かれている。ただ、本作はよくも悪くもR・スコット作品。長い間、人が生きるうえでの倫理的規範であり続けてきた〝十戒〟を根底から否定するわけでもなく、かといって狂信的なまでに肯定するわけでもないそのスタンスは「浅い」と非難されても仕方がない。『グラディエーター』や『ロビンフッド』という、その重厚な世界観には圧倒されはするものの肝心の内容のほうは――あくまで個人的にだが――そこまで深いものが感じられなかった過去の作品に比べればより芸術性は増したものの、彼の代表作の一つとして映画史に残るほどの出来かというと残念ながら“否”と言わざるを得ない。それが僕の本作に対するあくまで冷静な評価だ。
[DVD(字幕)] 7点(2023-08-09 13:32:53)
125.  インヒアレント・ヴァイス 《ネタバレ》 
トマス・ピンチョン――。それは現代アメリカ文学を代表する作家であり、何度もノーベル文学賞の候補となりながらも、その極度の偏執的な性格のせいでプロフィール完全非公開、誰からのインタビューも受けず高名な文学賞授賞式にも一切出席せず、顔写真すら公表していない孤高の覆面作家だ。そして代表作――寡作なので、何十年という作家生活の中でもその全体の作品数は数えるほどしかないのだが――と呼べる幾つかの作品もその経歴以上に難解で前衛的で多くの謎に満ちていることでも知られている。本作はそんな孤高の作家の代表作を、これまた現代ハリウッドでも特異な位置に居るポール・トーマス・アンダーソン監督が、豪華キャストを揃えて映画化したものだ。観終わってすぐの率直な感想を述べるならば、「凡庸」。この一言に尽きるだろう。ピンチョンの作風を言い表すとき、よく〝パラノイア(偏執狂)〟と表現されるほど徹底的な独自性と有無を言わさぬ破壊力に満ちているというのに、ポール・トーマス・アンダーソンともあろう者がこのような凡庸な出来で満足するとはどうしたことだろう。ただただ思わせぶりで大して面白くもない映像が延々と続き、正直、僕は最後まで観るのが苦痛で苦痛で仕方なかった。原作のことを前提に考えるならば、もっとぶっ壊れていてしかるべき!もっとエキセントリックでアナーキーな内容を追求してこそ、これまで映像化は不可能と言われ続けてきたピンチョンの原作を映画化したと初めて言えるのに、これでは到底認められない。たとえばテリー・ギリアムの作品に『ラスベガスをやっつけろ』というのがあったが、あれも映像化は不可能と言われた原作を映画化したこともあって完成度は必ずしも高くはないのだが、それでも他の追随を許さない圧倒的なオリジナリティを構築した監督のその気概に僕は震えたものだ。対して本作のこの凡庸ぶり。かつて『パンチ・ドランク・ラブ』という怪作を撮った彼がピンチョンの『LAヴァイス』を映画化したということで、かなり人を選ぶぶっ飛んだ内容を期待していた僕としてはかなり残念な作品であった。
[DVD(字幕)] 4点(2023-08-09 13:08:05)(良:1票)
126.  パワー・ゲーム 《ネタバレ》 
アメリカン・ドリームを求めて世界的IT企業ワイアット社に入社した青年アダム。だが、厳しい競争社会に敗れて、彼は職を失ってしまう。ところが後日、アダムはワイアット社の役員室に呼び出され社長からとある〝社命〟を受けるのだった。それは、ライバル企業に産業スパイとして潜り込み、極秘プロジェクトの情報を盗み出せというもの。もちろんバレたら犯罪者として逮捕される。当然、最初は断ろうとしたものの、アダムは成功を夢見るあまり、そんな極秘任務を受け入れるのだった。ワイアット社の裏工作により、無事ライバル企業に潜入することに成功したアダムだったが……。ある日突然、巨大IT企業の内部で暗躍する産業スパイとなった青年が辿る運命をスタイリッシュに描いたサスペンス。ゲイリー・オールドマン&ハリソン・フォードという二大ベテラン俳優競演ということで今回鑑賞してみました。うーん、おおよそ想像していたとおりの、まあ可もなく不可もなくな作品でしたね、これ。よく言えば最後まで安心して観ていられる定番のエンタメ作品、悪く言えば新しいところがいっさいないベタベタな企業サスペンス。別にそういう映画があってもいいとは思うのですが、ちょっとこれは後者の印象のほうが強かったですかね~。もう何処かで見たようなシーンと何処かで見たようなキャラクターと何処かで何度も見たことがあるような展開が延々と続き、僕はいまいち楽しめませんでした。最後の取ってつけたようなハッピー・エンドも、なんだか、ねえ……(苦笑)。久し振りに悪役を演じたゲイリー・オールドマンの不穏な空気に満ちた相変わらずの格好良さに+1点しときます。
[DVD(字幕)] 5点(2023-08-09 13:05:01)
127.  フォックスキャッチャー 《ネタバレ》 
1980年代、レスリングの世界で揃って金メダルを手に入れたシュルツ兄弟。だが、私生活でも家族に恵まれ次のオリンピックに向けて精力的に活動する兄デイブとは対照的に、弟マークは長いスランプに喘いでいた。そんなマークにある日、とある男から連絡が入る。男の名は、ジョン・デュボン。アメリカ屈指の大財閥の御曹司だった。何よりもレスリングを愛するデュボンは、レスリングを下等なスポーツだと切り捨てる母親に反発するかのように、「君が金メダルを取れるように支援したい。必要なものは何でも揃える。私のチームに加わってくれ」とマークに依頼してくるのだった。優秀な兄を少しでも見返したいと願うマークは彼の依頼を快諾する。訪れた彼の屋敷で、「フォックスキャッチャー」というチームを立ち上げたマークだったが、次第にデュポンの歪んだ野心が彼の心を蝕んでゆく……。実際にあった金メダリスト射殺事件を元に、心に闇を抱えたアスリートたちの葛藤を終始淡々と見つめたヒューマン・ドラマ。金メダリストとして華々しく活躍する兄と、その陰で同じく金メダリストでありながら鬱屈した毎日を送る弟、そんな2人に忍び寄る怪しげな大富豪。実在した人物をリアルに演じた新旧個性派俳優の競演は確かに見応えありました。特にコンプレックスの塊のような主人公マークと、金と地位だけはあるもののその心には歪んだ虚栄心しか存在しない大富豪デュポンとの共依存関係――そこには幾分か同性愛の要素をも感じさせる――は非常に興味深いものがあり、社会に蔓延る悲劇はこうして生まれるのだと納得させる説得力には戦慄させられるものがあります。これぞ、実話を元にした作品の醍醐味だろう。ただ残念ながら、事実に寄り添いすぎたその演出手法はあまりにも淡々とし過ぎていて〝冗長で退屈〟と批判されても仕方ないと僕は感じてしまいました。徹底的に事実を再現した演出だからこそ、この社会の不条理を残酷に浮き彫りにしている(一番善人だった人が悲劇に見舞われる)とは思うのですが、映画として人を惹き込む最低限の面白さがもう少し欲しかった。最後に訪れる悲劇にしたって、どうしてそうなったのかという因果律を見る人それぞれの解釈にあまりにも委ねすぎていてちょっと肩透かし。主演俳優陣の抑えた熱演が良かっただけに残念です。
[DVD(字幕)] 5点(2023-08-09 12:32:57)
128.  エンジェルの狂気 《ネタバレ》 
かつて荒れた生活を送っていたものの、臨死体験を経験してからは生まれ変わったように神秘的な世界に傾斜し始め、いまや心理セラピストとして活躍するトミー。愛する妻にも恵まれ、本の売れ行きも好調な彼の前にある日、刑務所に服役していた兄が数年振りにやって来るのだった。昔のチンピラ仲間との関係を清算するために大金が必要だと願う兄のために、トミーはサイン会に来ていたエンジェルと名乗る怪しげな中年男性と連絡を取る。自分にしか見えない死んだ母の霊に悩まされているというエンジェルは、トミーに個人的なセッションを施してくれと言うのだ。金のために仕方なくエンジェルのセラピストとなるトミー。だが、彼は次第にその狂気性をあらわにしてゆく。やがて〝エンジェルの狂気〟を持て余し始めたトミーは、とうとうセッションの中断を申し出るのだった。だが、それを聞いたエンジェルはついにその内に秘めていた真の狂気を爆発させ、トミーを自宅の地下室へと監禁すると2人きりのセッションを再開させるのだった……。母の死や妻との離婚によって精神疾患を患ってしまった孤独な中年男性エンジェル、彼によって地下室へと監禁されてしまったそんなセラピストの恐怖を描いた密室型サイコ・サスペンス。と、スティーブン・キング原作の同じく監禁型サイコ・サスペンスの秀作『ミザリー』を髣髴させる本作なのですが、そんな狂気に囚われた孤独な中年男性を実力派俳優のフォレスト・ウィッテカーがリアルに生々しく演じていることもあり、僕は最後まで緊張感を途切れさせずに観ることが出来ました。鎖に繋がれ自由を奪われた主人公に対して、次にどんな〝痛い〟ことを仕出かしてくれるのか全く予想がつかない(床に転がる様々な工具がこれまたヤな感じ!!)F・ウィッテカーの不気味な佇まいは、まさに『ミザリー』のキャシー・ベイツにも匹敵するほど怖かったです。地下室でそんな残虐行為に及びながら、階上に戻ってくると幼い娘を溺愛する優しい父親に戻るところなんてなんとも不気味。ただ……、肝心のストーリーの方が物凄くこじんまりと小さく纏まってしまっているのと、後半設定上の明らかな破綻のあるのが本作の難点。特に、最後に明かされるエンジェルの母親の死の真相がかなり強引で説得力に欠けるのが残念でした。それに最後のオチもかなり後味悪いですし…。と、いろいろと惜しい作品でしたね、これ。うん、5点!
[DVD(字幕)] 5点(2023-08-09 12:16:28)
129.  ビースト 《ネタバレ》 
2人の娘とともにアフリカのサバンナへとバカンスにやって来た父親を悲劇が襲う。密猟者に群れを皆殺しにされた孤独な雄ライオンが突然、襲い掛かって来たのだ。現地でガイドを務める長年の友人は真っ先に瀕死の重傷を負わされ、父はまだ幼い娘たちとともに車の中へと命からがら逃げ込むことに。だが、人間に激しい憎しみを持つライオンは決して諦めない。数発しか弾が残っていない麻酔銃だけを手に車に閉じこもる親子を、ライオンは執拗に襲い続けるのだった。果たして親子の運命は?炎天下のサバンナ、狂暴化したライオンと妻を失くした親子との決死のサバイバルをノンストップで描いたネイチャー・アクション。全く期待せずに観たらこれが意外や意外、なかなか面白かった!最初から最後までエンタメ全振りで、とにかくお気軽に楽しんでもらおうというサービス精神が大変グッド。密猟者に群れを皆殺しにされた人喰いライオンにひたすら襲われるだけというシンプルイズベストにも程があるほどシンプルな内容なのですが、家族愛に焦点を絞った脚本が良い感じにベタで最後まで楽しかったです。反密猟者や群れの中での雄ライオンの役割といった分かりやすい伏線が分かりやすく回収されるのもけっこうカタルシスあったし。ライオンのCGも本物と見間違うほどの高クオリティで、こいつが何度も何度も襲ってくるシーンには素直にハラハラドキドキ!まぁ3日も経てば完全に忘れてしまいそうな内容ではあるけれど、自分はけっこう楽しんで観ることが出来ました。
[DVD(字幕)] 7点(2023-08-07 04:33:42)
130.  NY心霊捜査官 《ネタバレ》 
「扉(ドアーズ)に気をつけろ」――。毎日気がおかしくなりそうなほどの陰惨な事件ばかりが続発するニューヨーク。市警本部に勤めるサーキ捜査官はそんな危険な街で日々業務に忙殺されていた。それでも愛する妻と娘のために今日もそんな酷い事件と向き合っていた彼のもとに、更なる陰鬱な事件の通報が舞い込んでくる。ゴミ捨て場に遺棄された赤ん坊の遺体、我が子をライオンの檻に投げ込んだ母親、子供の目の前で妻に暴力を振るう元海兵隊員、アパートの地下室で発見された謎の腐乱死体……。一見、共通点のなさそうなそんな凄惨な事件だったが、捜査を進めていくうちにサーキ捜査官はとある共通点に気づくのだった。「扉を開け」。ラテン語で残されたそんなメッセージと現場に見え隠れする黒いフードをかぶった謎の男。やがて、それらの事件は全て、数年前にイラクに派遣されていたある海兵隊員が地下で発見した謎の扉へと繋がっていく。事件の背後に人智を越えた存在を感じ取ったサーキ捜査官は、捜査の過程で知り合った謎の神父とともに何としてでも事件解決を目指すのだった。だが、扉の向こうからやってきた〝悪魔〟はついに彼の家族にまでその魔の手を伸ばしてゆく……。実話を基に(?)、現代社会の闇夜に暗躍する悪霊と壮絶な戦いを繰り広げるニューヨーク市警の活躍をオカルティックに描いたホラー・サスペンス。まるでマイケル・マン作品を髣髴とさせる男臭いハードボイルドな世界観に、完全オカルティックな心霊世界を融合させたこのセンスはなかなか新しい!こういう都会の夜の重苦しい空気が全編に漂うダークな作品って普通に自分の好みなので、まあなんだかんだでけっこう面白く観ることが出来ました。怖がらせ方とかもベタっちゃあベタですけど、なかなかツボを押さえた手堅い演出のおかげで所々ゾクッとさせられたしね。ただ…、難点を挙げるとすれば、やはりストーリーの整合性に幾分か無理があるってところですかね。特に肝心のクライマックスが今まで色んな映画で散々見たことがあるような単なる悪魔祓いで終わってしまったのは、さすがにちょっとねぇ……。それに要所要所でキーとなるあのドアーズの楽曲はどういうことなんでしょう?悪魔って実はドアーズファンだったってこと?まあ、ドアーズ好きな自分としては久し振りにジム・モリソンの歌声が聴けてけっこう嬉しかったですけど。結論。色々不満はあれどハードボイルド・ホラーとしてそこそこ面白かったんじゃないでしょうか。事実を基にしたストーリーってのはご愛嬌ってことで(笑)。
[DVD(字幕)] 6点(2023-07-28 13:04:43)
131.  ギリシャに消えた嘘 《ネタバレ》 
1962年、ギリシャ。3度目の結婚を果たし、新たな若い妻と新婚旅行でこの地を訪れた初老の証券マン、チェスター。その正体は本国アメリカで詐欺まがいの取引によって多くの被害者を生んだ証券詐欺師だ。ある夜、高級ホテルに泊まっていた彼らの部屋に怪しげな男が訪れる。どんな手を使ってでも金を取り戻したいと言う投資家に雇われたという彼に、チェスターはいきなり拳銃を突きつけられるのだった。だが、チェスターは思わず反撃し彼を殺してしまう。さらに間の悪いことに、数日前に知り合った怪しげな現地の観光ガイドにそれを見られてしまう。「あなたとあなたの奥さんを助けてあげてもいい」。何故かそう訴えるその若い観光ガイドの名はライダル。その日から、証券詐欺師とその若く美しい妻、そして彼女に熱い視線を向ける観光ガイドという3人の危険な逃避行が始まったのだった…。風光明媚な観光地ギリシャを舞台に、嫉妬と愛情、そして犯罪が渦巻く男女の逃避行をミステリアスに描き出すサスペンス・スリラー。ヴィゴ・モーテンセンとキルスティン・ダンストという実力派俳優2人が、そんな刹那的な逃避行を続ける夫婦を艶かしく演じていると言うことで今回鑑賞してみました。夫婦に何故か現地の貧しい若い男が割り込み、アテネからクレタ島へと逃走を続けていくうちに、彼らに何だか三角関係的な葛藤が芽生えていく様を本作はスリリングに描き出していきます。確かにこの最後まで続くねっとりとした緊迫感はなかなかのもの。歴史や文化に彩られた60年代ギリシャの風景もとても美しく、そんな3人のミステリアスな関係を盛り上げるのに一役買ってます。そこらへんは素直に楽しめました。ただ、演出的に爪の甘さが目立つのが本作の弱点ですね。特に、簡単に人が死んでしまうのは如何なものか。冒頭、私立探偵がホテルにたった一人でやって来て主人公ともみ合ううちに浴室に頭を打って呆気なく死んでしまうというのは、さすがに物語の導入としては弱いと言わざるを得ません。他にも、若い観光ガイドが何故か主人公たちの逃避行についてくる理由付けや主人公の妻が辿る運命など、色んなところに粗さが目立ちます。3人の男女の嘘と嫉妬が交錯する怪しげな雰囲気は凄くよかっただけに、そこらへんが残念な作品でありました。6点。
[DVD(字幕)] 6点(2023-07-28 12:43:57)
132.  アナベル 死霊館の人形 《ネタバレ》 
おかしいわ、確かに捨てたはずなのに……。ほら、あなたが捨てたはずのアナベル人形が何故かここに戻ってるの――。出産を間近に控えた人形好きの専業主婦、ミア。幸せいっぱいの彼女はある日、夫からとある人形をプレゼントされる。それは昔からミアが欲しがっていたレアな人形だった。夫の優しさに胸をいっぱいにさせたミアは、さっそく部屋の中に大量に保管された人形の棚にそれを飾るのだった。だが、彼女は知らなかった。そのアナベルと言う名の古い人形には恐ろしい悪魔の力が宿っていることを……。ジェームズ・ワン監督が製作した正統派ゴシック・ホラーの秀作『死霊館』、その中に出てくる不気味なアナベル人形をモチーフに製作されたスピンオフ・ホラー作品。本家である『死霊館』がけっこうよく出来ていたので、その中に出てきたあのあり得ないほど不気味なアナベル人形(てかあまりにも不気味すぎて誰がこんな気持ち悪い人形買うねん!って突っ込んじゃうくらい笑)を取り上げた本作もそこそこ期待してこの度鑑賞してみました。結果は……、びっくりするくらい怖くないうえにびっくりするくらいつまらなかったです!とにかく観客を怖がらせようという演出が次々と繰り広げられるのですが、それ以前に肝心のストーリーにおける因果律が全く上手く機能してないから、これがまあ見事なまでに盛り上がらない。このアナベル人形さんがまず何をしたいのかが最後までいまいちよく分からないってのが致命傷でしょうね。結局、最後の方でこの母親の命を貰いたいってことが分かるのだけど、それはこの人形に取り憑いた悪魔の方の目的であってこのアナベル人形さんはほとんど関係してませんやん。だから、クライマックスでアナベル人形と悪魔の両方がちぐはぐに迫ってくるもんだから、これじゃ怖さが盛り上がらなくて当然。この不気味なアナベル人形がぐいぐい主人公を追い込んでこその恐怖でしょーに。対する主人公夫婦もせっかく捨てたアナベル人形がまた戻ってきて恐怖に震え上がるのかと思ったら「やっぱりこの人形は飾っときましょう」ってもう一度棚に置くって、思わず「はぁ?お前はアホか!!」って突っ込んじゃいました(笑)。最後もほとんどストーリーに絡んでこなかったおばさんが、急に「私が身代わりになるわ!」って窓から飛び降りてチャンチャン…。「もっとしっかり脚本練れやーー!!」と大声で叫びそうになっちゃったし。ちゅう訳で、観るだけほとんど時間の無駄でした。3点。
[DVD(字幕)] 3点(2023-07-28 12:31:26)(良:1票)
133.  パーフェクト・プラン 《ネタバレ》 
俺たち、ずっと真面目に生きてきてそれで何を手に入れた?答えは、何もだ。この金はそんな俺たちに対する贈り物だ。確かに君の言うとおり、この金はもしかしたら汚いものかも知れない。でも、金は悪くない。問題なのは、人がそれをどう使うかだ――。アメリカで夢破れ、妻とともにロンドンへと帰ってきた造園設計士トム。だが、現実は何処までも厳しく、生活は一向に上向かないばかりか、妻とは不妊のせいでギクシャクし、さらには母が遺してくれた唯一の財産である実家も来週までに金を払わなければ差押えられてしまうことに。そんな折、トムは少しでも生活の足しにしようと間借りさせていた地下室でそこの住人が薬の過剰摂取で死んでいるのを発見する。単なる麻薬中毒者の孤独死、警察はすぐに捜査を終了しさっさと帰ってゆく。ところが、残された部屋を掃除している最中、トムは屋根裏から大金が入ったバッグを見つけてしまうのだった。総額22万ポンド。なんとしてでも生活を立て直したかったトムは、思わず窓枠の隙間にそれを隠してしまう。だが、彼は知らなかった。その金は、麻薬組織の取引現場から強奪された危険な金であることを……。生活に困窮した夫婦がある日発見した危ない大金、それを巡って繰り広げられる麻薬組織や犯罪グループ、汚職警官たちの駆け引きを濃厚に描いたクライム・サスペンス。なんだけど、これがこれまで散々作られてきた同ジャンル作品の見事なまでの焼き直しに過ぎませんでした。もう何処かで見たようなストーリーに何処かで見たような設定、何処かで見たようなキャラクターたちに何処かで見たようなアクション・シーンの雨あられ。別に、これで面白ければ娯楽映画として充分アリなんだけど、本作はびっくりするぐらいお話のテンポが悪く、出てくる登場人物も根暗でウジウジしたちっとも魅力を感じさせない人たちばかりで、もう途中から眠気と戦いながらの鑑賞となってしまいました。それに脚本上の粗も多すぎ!特に悪役。多くの汚職警官に金を払って犯罪を繰り返しているマフィアのボスなのに、主人公のところに部下一人を引き連れてわざわざやって来るってどんなけ警戒心ないねん!しかもど素人の主人公に反撃されて呆気なく怪我させられちゃうって、お間抜けにもほどがある。挙句、何故か最後は主人公の実家に麻薬組織やマフィアのボスがのこのこやってくるのだけど、どちらもやはり部下は一人だけ…、んで何度も強調しますけどど素人の主人公夫婦に電動クギ打ち機や電ノコで呆気なくぼこぼこにされるって…、お間抜けにもほどがあるって!!このチープ感たるやもはや目も当てられない。ま、ぎりぎり暇潰しにはなるかなぁってくらいの凡作でありました。
[DVD(字幕)] 4点(2023-07-28 12:17:09)
134.  ブラック・フォン 《ネタバレ》 
1978年、デンバーの町は不穏な空気に満ちていた。何故なら〝グラバー〟と呼ばれる、少年ばかりを狙った連続殺人鬼が今もまだ捕まっていなかったからだ。残虐な犯人は、さらってきた少年をしばらく監禁すると酷い拷問を行った末に殺害し、遺体はまるでゴミのように捨てられる。グラバーは今日も町のどこかで獲物を求めて蠢いているだろう――。貧しい父子家庭に暮らす少年フィニーもまた言い知れぬ不安を抱えて生きていた。酒浸りの父は気に入らないことがあるとすぐ暴力を振るい、まだ幼い妹は精神的に不安定で常に目が離せない。そんなある日、恐れていた事態が起こる。ちょっと気を許した隙を突かれ、彼もまたグラバーに誘拐されてしまったのだ。薄汚れた地下室で目を覚ましたフィニー。そこにあったのは使い古されたベッドと年代物の黒電話のみ。「あいにくその電話は随分昔に壊れてしまって何処にも繋がらない」。不気味な仮面を被ったグラバーは、恐怖に怯えるフィニーにそう言い残し、地下室を出ていくのだった。このままじゃ僕も殺される!極限状況に追い込まれた彼に、さらなる不穏な出来事が起こる。電話線が切られたはずの黒電話が突如鳴りだしたのだ。恐る恐る受話器を取ると、受話器の向こうからありえない声が。なんとグラバーに殺された少年たちが彼に話しかけてきたのだ……。けっこう既視感満載のそんなオカルティックなスリラーなのですが、この全編を覆う重苦しい空気はなかなか良かったですね。小さな窓しかない完全防音の地下室に閉じ込められるというこの設定がとにかく最悪過ぎる!しかもそこに何故か置かれてある壊れた黒電話。誘拐された子供がもしかしたら助けを呼べるかもと期待を持たせるために敢えて置いてあると思うと胸糞さマックス。犯人が被る上下分割マスクは余りにも不気味でこの犯人の異常性を見事に視覚化しており、なかなかにセンスがいい。そして黒電話を通して話しかけてくる事件の被害少年たち……。ここら辺のホラー描写もベタながらけっこう怖かった。彼らが主人公に与えてくれるヒントが一見的外れかと思いきや、最後に全て回収される脚本も良く出来ている。ただ、惜しいのは物語の芯となる部分が弱いところ。特にグラバーの目的がいまいち分からないところが残念。何のために少年たちを何人もさらって殺すのか、その動機をもう少し踏み込んで描いていればもっとサスペンスが盛り上がったと思うのに。また全体的にスティーブン・キングの『IT』と設定が被ってしまっているのも残念。とまぁそこら辺に目をつむれば、この鬱屈とした雰囲気や禍々しいホラー描写などは普通に楽しめると思います。6点!
[DVD(字幕)] 6点(2023-07-28 07:51:52)
135.  ジャッジ 裁かれる判事 《ネタバレ》 
「いいか、ここは弁護人として言っておく。親父、勝つためにあんたに証言台に立ってもらうつもりはない。あんたはキリスト教保守の田舎者ばかりが住むこの町の一公務員に過ぎない。誰もあんたの功績なんて気にしてないさ」「私が気にする。42年間、判事としてこの町の裁判長席に座り続けたんだ。人々は私を信じ、私が下す判決を支持してくれた。証言台から逃げたがるのは罪を犯した者だけだ。余計なことはするな」――。大都会、シカゴ。金持ち専門のやり手として忙しい毎日を送る敏腕弁護士ハンクの元に、地元インディアナから一本の電話が掛かってくる。長年疎遠にしてきた実家で彼の母親が病死したというのだ。すぐに現在担当する裁判を延期し、飛行機に乗り込むハンクだったが、彼には長年の気がかりがあった。それは地元でずっと判事として働いてきた父親との長い確執を抱えているという事実。無事に葬儀を終えた彼だったが、やはり父親とは酷い口論となってしまい、「もうこんなところ二度と戻ってこないからな!」と捨て台詞を残して家を飛び出すのだった。だが、飛行機に乗り込んだ彼の元に再び電話が掛かってくる。なんとその父親が酒を飲んで死亡轢き逃げ事件を起こしたらしい。すぐに引き返し、窮地に陥った父親のためにやむなく弁護を引き受けたハンクだったが、長年の親子の確執は裁判に暗い影を落としてゆく…。アメリカの保守的な田舎町で、父親である堅物の判事が起こした交通事故、その弁護を引き受けることになったやり手弁護士である息子が、裁判を通して向き合うことになる家族のドラマを軽快に描き出す法廷サスペンス。新旧実力派俳優の競演と言うことでこの度鑑賞いたしました。確かにエンタメ映画に徹したその演出手法は最後まで好感を持って観ることが出来て、そこは素直に良かったと思います。普通に考えて重たくなりそうな題材だけど、本作では田舎ののどかな田園風景を背景に、ロバート・ダウニー演じる弁護士の飄々としたちょい悪ぶり(確かにアイアンマンのトニー・スタークと思いっきりかぶるけど笑)がいい感じで作品を軽いものにさせている。そんな彼の周りに配置された演技達者たち(偏屈親父役のロバート・デュバルはもちろん、僕的にはビリー・ボブ・ソーントンが凄くいい味出してました!)のいぶし銀の競演が華を添えてます。うん、良い映画でした。7点…、と、言いたいところだけどさすがに長すぎるかなぁ。この題材で2時間20分はちょっとねぇ…。いらんエピソードを削ってもっとスリムに出来たはず。それに後で思い返してみたら、結局真相は完全には明らかになってませんやん。ここまでベタでいくなら、最後までベタで通してすっきりと終わらせてほしかったです。と言うわけで-1点。
[DVD(字幕)] 6点(2023-07-19 09:48:17)
136.  アナーキー(2014) 《ネタバレ》 
シェイクスピアの古典的舞台劇を現代のアメリカに置き換えて描いたバイオレンス・アクション。イーサン・ホークやエド・ハリスなど、実力派の役者たちが熱演しております。とはいえ、こういうスタイルの映画って昔からけっこう創られてきましたが、ほんの一部を除いて成功した例は少ない。本作も見事なまでに、その試みは失敗しております。まず、登場人物たちがあり得ないような再会や出会いを繰り返す。こういうご都合主義的展開って場面転換の少ない舞台劇だと自然に観ていられるのですが、さすがに映画としてそのまま描かれると「いやいやいや。そんなんあり得へんやん!!」といちいち突っ込んじゃって、とてもじゃないけど作品世界に入っていくことが出来ませんでした。そして、時代掛かった大仰で大袈裟なセリフの数々。まあワザとやっているのは分かるのだけど、観ているこちらとしてはただ違和感だけが先行しちゃって最後まで何だかとっっっても居心地悪かったです。これで、バズ・ラーマン監督が過去に同じスタイルで製作した『ロミオ&ジュリエット』のように、抜群の映像&音楽センスが冴え渡っていれば良かったのだけど、はっきり言って本作はどちらも凡庸極まりない。監督は、過去に同じくイーサン・ホーク主演で『ハムレット』を映画化しているみたいで、僕は未見なんだけど調べてみたらこちらもなかなか評判悪いみたい(笑)。うーん、この監督はどうしてそんなにシェイクスピアに拘るんですかね~。けっこう豪華な役者陣の競演に惹かれてこの度鑑賞してみましたが、残念ながら僕にとってはほとんど観る価値のない凡作としか思えませんでした。
[DVD(字幕)] 4点(2023-07-19 09:09:34)
137.  チャッピー 《ネタバレ》 
極端なまでに治安が悪化した、世界でも有数の危険都市ヨハネスブルク。業を煮やした警察はロボット警官隊の導入を図る。IT企業テトラバール社の開発した、人間以上の能力を有するスカウトは瞬く間にその実力を発揮し、それまで我が物顔で街を牛耳ってきた犯罪者たちをどんどんと一掃してゆくのだった。気を良くした上層部は本格導入を決定、数百体規模のスカウトを実戦配備し街の治安は飛躍的に改善する。だが、開発者であるエンジニア、ディオンはそれでも飽き足らず、自らの意思で判断し、感情さえ有するAIを持った新型スカウトの研究を独自に続けるのだった。やがて、本物の〝心〟を持ったロボットの完成にとうとう成功したディオン。自宅でそんな〝心〟を持ったロボットを起動させようと家路を急いでいた彼だったが、不幸にもその日、街のチンピラどもに襲われ、その大事なロボットを奪われてしまうのだった。「チャッピー」。チンピラ一味の若い女性から、奪われたロボットはそう名づけられ、次第に犯罪者としての教育を施されてゆく。そんな折、ディオンのライバルである研究者の男がその事実を知り、やがて、事態は取り返しのつかない危機を迎えてしまうのだった……。『第9地区』で鮮烈なデビューを飾った、ニール・ブロムカンプ監督の新作は、そんな原点に立ち返ったような小気味のよいロボットアクションでした。冒頭から、現実のヨハネスブルクを舞台に疾走感抜群で展開されるそんな物語に僕のテンションは否が応にも高まっちゃいました。『第9地区』の衝撃再びか?!と思ったのも束の間、肝心のチャッピーが登場してからは、そんな疾走感はものの見事に失速、僕の期待は見事に打ち砕かれてしまうことに。何が駄目かって、まずストーリーがあまりにもごちゃごちゃしてていったい何をメインに描きたいのかかなり焦点がぼやけてしまっているところ。チャッピーも、開発者のディオン博士も、頭の弱いチンピラたちも、悪役のライバル・エンジニアも、いったい何がしたいのかいまいち分かり辛いためさっぱり物語に入り込めません。次に、メインキャラのチャッピー。ピュアさをいかにも強調しようとしているのが見え透いてしまい、いかんせん魅力に乏しい。クライマックスなんてもはや破綻寸前で、ほとんどカタルシスを得られることなく終わっちゃいました。『第9地区』があまりにも出来が良かったから仕方ないのかも知れませんが、ブロムカンプ監督、一作ごとにそのクオリティが下がっちゃってるような気が…。きっと、次がこの監督の勝負所でしょう。スラム街で展開されるロボット対犯罪者のアクションシーンはやはりすこぶる格好良かっただけに、僕はそれでも期待して待ってますんで、頑張ってください!!
[DVD(字幕)] 5点(2023-07-19 08:53:15)
138.  オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分 《ネタバレ》 
それはたった一度の過ちだった――。イギリス、ロンドン。愛する妻と2人の息子に恵まれ、仕事でもビッグプロジェクトを任されるなど、順風満帆の生活を送っていた建築技師、アイヴァン・ロック。だが、彼はその夜、そんな愛する家族が待つ家へと向かう道を逸れ、高速道路へとハンドルを切るのだった。目的は、一つ。それは7ヶ月前にたった一度だけ関係を持ってしまった女性の突然の出産に立ち会うため。孤独に道を走らせるアイヴァンに、当然家族から何度も電話が掛かってくる。さらに間の悪いことに、明日はヨーロッパで最大規模を誇る高層ビルの大事な基礎工事立会いの日だった。総責任者である彼がいなければ工事は始められない。このまま車を走らせれば、会社は首。だが、アイヴァンは男のけじめをつけるため、たった一人で夜の高速道路をひた走るのだった……。都会の片隅で、たった一度の過ちから人生の危機を迎えてしまったある一人の男のドラマを、高速道路を走らせる彼の車の中のみで描いたヒューマン・ドラマ。映画が始まって86分、登場人物はトム・ハーディ演じるこの一人の男しか出てこず、彼にかかってくる色んな人々との会話のみでドラマを展開してゆくというなかなか挑戦的な作品だった。なのに、最後まで観客の興味をぐいぐい惹き込むこの監督の手腕は大したものだ。彼に電話をかけてくる人々も誰もがちゃんとキャラ立ちし、今何処で何をしているのかが容易に映像として浮かんでくる。トム・ハーディの相当に役作りしているだろう一人芝居も充分に見応えがあった。そして、何より映像が美しい。夜の高速道路、窓のフレームに写り込む色とりどりの幾つもの灯りがとても綺麗で、この孤独な男の心情を色濃く表している。小品ながら、なかなか見応えのあるドラマだった。ただ、お話としてはありきたりなもので少々物足りなさを覚えたのが僕としてはちょっと残念だった。6点と言ったところか。
[DVD(字幕)] 6点(2023-07-12 06:32:12)(良:1票)
139.  ラン・オールナイト 《ネタバレ》 
かつて、マフィアの殺し屋として幾多の標的を抹殺してきたものの、いまや落ちぶれアル中となってしまったジミー。息子夫婦からも疎遠にされ孤独に生きる彼は、かつてのボスで若いころからの親友でもあるショーンのお情けで何とか食わせてもらっている。そんなある日、彼の息子で堅気の生活を送っていたマイクが、麻薬がらみのトラブルに巻き込まれたことを知るのだった。すぐに息子の家へと向かったジミーは、今にも息子を殺そうとしていた男を射殺してしまう。だが、彼は知らなかった。自分の息子を殺そうとしていたのは今も闇社会で絶大な力を持つかつてのボス、ショーンの息子だったことを。「何があろうと俺がお前を守ってやる」――。息子のためにそう決意したジミーは、かつて狂犬のように恐れられていた血を呼び覚まし、夜の街を疾走してゆく……。無実の息子のためにマフィアや殺し屋、それに長年自分を追い続けていた刑事の追跡を決死の覚悟で逃れようとする父親の一夜の逃走劇をノンストップで描いたエンタメ・アクション。リーアム・ニーソン主演&セラ監督作品を観るのはこれで何度目かですが、このコンビの作品ってけっこう当たりハズレが多い印象。本作は何だかハズレに近いような感想を僕は持ってしまいました。うーん、何だかエピソードを盛り込みすぎて全体的にごちゃごちゃし過ぎな感じですかね。たとえば、この主人公親子を追う人たちなのですが、①マフィアのボスのショーン、②彼を長年追ってきた刑事、③ショーンに雇われた凄腕の殺し屋、はっきり言って3つもいらんでしょ。だから最後はエド・ハリス演じるショーンと一騎打ちを果たしてそこで終わったらすっきりしたはずなのに、途中でいきなり出てきた殺し屋と森の中で銃撃戦を繰り拡げられても何だか蛇足感が強くていまいちカタルシスが得られなかったです。さらに、幾多のサブエピソードも、①親父がかつて息子のいとこを殺した過去、②入院中の母親に会いに病院へ向かう、③無実を証明するために目撃者の黒人の子供を捜す、と一夜の逃亡劇を描くにしてはいかんせん多い。少なくともこれらのエピソードのうち2、3個は削って、90分ぐらいで終わってくれたら小気味の良いエンタメ映画として面白かったって言えたはずなのにね。セラ監督、ちょっと欲張り過ぎたんじゃないですか?
[DVD(字幕)] 5点(2023-07-10 10:43:26)(良:1票)
140.  ブラックハット 《ネタバレ》 
香港の原子力発電所で爆発事故が発生。現地が大混乱に陥る中、今度は大豆先物市場で価格が暴騰する。背後にハッカー集団の暗躍を察知した中国政府は、人民解放軍のサイバー部門トップであるチェンに全面捜査を命ずるのだった。中国独自の捜査に限界を感じたチェンは、アメリカFBIにも協力を要請。なんと彼は、アメリカの刑務所に服役中の天才ハッカーを釈放させ捜査に協力させることを提案するのだった。男の名は、ハサウェイ。チェンの大学時代の親友であり、四つの銀行から少なくとも4600万ドルを奪い取った男だった。「このブラックハット(凶悪ハッカー)を、俺の力で逮捕出来たら俺を釈放しろ。もし失敗したらムショに戻していい。それが協力への条件だ」――。当初は彼の要求に難色を示したアメリカ当局も、事態を打開するために釈放を許可する。さらには民間で有能なエンジニアとして働いていた妹も呼び寄せ、釈放させたハサウェイと共に、チェンはそんな凶悪なハッカー集団を次第に追い詰めていくのだったが…。戦うことでしか自分の居場所を見つけられない男たちの美学を重厚に描き出してきたマイケル・マン監督久々の最新作は、そんないかにも彼らしいハードボイルド作品でした。確かに、よく考えたら設定上のおかしな部分がちらほら散見される本作(現在服役中の犯罪者である主人公を中国当局の要請で簡単に釈放させたばかりか、あそこまで自由に捜査に協力させるのはさすがにあり得ないっしょ!挙句の果てに、機密情報満載の原発内部に進入させるってどんなけ甘いねーん!笑)。ですが、街中で突発的に繰り広げられる緊迫感に満ちた銃撃戦や絶対に裏切らない男たちの超熱い友情物語などなど、いかにもマイケル・マンらしいシブい内容に僕はけっこう楽しめました。特に、相棒の中国人捜査官が車に乗り込んだ直後にウクライナ人に銃撃されるシーンなんて、思わず手に汗握っちゃいましたもん。それに冒頭、ハッカーが放ったプログラムがインターネット回線を通じてどんどんとシステムに侵入してゆく映像も緊迫感があって良かったです。まあ、クライマックスでのジャカルタの祭りの中の攻防とかなかなかグダグダでしたけども(笑)。あと、どうして主人公にクリス・ヘムズワースをバッティングしたんでしょうね。これまで脳みそ筋肉のお馬鹿キャラばかりを演じてきたせいで、とてもじゃないけど天才的頭脳を持ったハッカーに見えないってのはさすがにちょっと…。と、細かな部分に目を瞑り暖かな視線で鑑賞すればけっこう楽しめると思います!6点!
[DVD(字幕)] 6点(2023-07-10 10:09:23)
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