1. フランケンシュタインの怪物の怪物
《ネタバレ》 正直言って込み入り過ぎていて判りにくく&解りにくく設定されている感じ。主演が本人役として出演していてモキュメンタリー風に進行して行く。ただし、劇中及び劇中劇に登場する人物と一人何役も演じている。主人公、主人公の父親、主人公の祖父、劇中劇の主人公の父親と彼が演じる怪物。特にメイクで明確に区別している訳でもないので、集中して観ていないと誰が誰だか判らなくなりそうです。 結局、主人公が自分の父親とは一体どんな人物でどんな仕事をして来たのかを探るうち、父親の本当の姿、父親がしたことを知ることになるといった流れなんですが、何せ判りにくいし解りにくいです。なんとなくウェス・アンダーソン風味がしないでもない演出なんですが、かなりの変化球に加え、そもそも何故フランケンシュタインの怪物なのか?更には何故怪物の怪物なのか?というところを考えてしまうと、基本的にはコメディと思われる作品がその実かなり深いところを狙ってるのかな?という疑問に繋がって来て益々意味不明に思えてしまいます。 まぁ、その時点で作り手の術中にハマってしまっているのかも知れませんね。純粋にコメディとして観賞するのが正解かも知れません。てか、そう受け止めることと致しました。 [インターネット(字幕)] 4点(2025-04-29 15:04:47)★《新規》★ |
2. リミット・オブ・アサシン
《ネタバレ》 暗殺者の孤独、妻子がいたばかりに起きた悲劇、裏で彼を捨て駒の如く扱う組織への復讐、敵対する相手に芽生えるシンパシー。裏社会に生きる男を主役に据えたリベンジアクションに必要な要素は悉く兼ね備えた作品。あとはどう料理するかって感じですね。 本作では、凄腕暗殺者が妻子を自らの裏家業に巻き込んで失ってしまったショックによって非情さを失ってしまい(何で高額報酬で気持ちがなびいたかは不明、何で愛する妻を想いながらターゲットと寝たのかも不明)、結果感情的に流され本来の姿を失わされた相手によって殺されてしまうというのが一つ目の調理ポイント。そして組織によって蘇生して情報を聞き出され、お役御免となって再度殺されそうになったところで逆襲、余命24時間(薬物投与による副作用なのか埋め込まれた生命維持装置の寿命なのか不明)の間に組織の策略を阻止するというのが二つ目にして最大の調理ポイント。 そこにお決まりの逆転また逆転とか、主人公が知らなかった組織の非人間的な行為の露呈とか、思いがけない協力者の登場とか、いくつかのエッセンスが加わってくる訳ですが、スピーディな展開と派手なアクションシーンのおかげで大いに楽しませてくれるものの、肝心要の主人公の凄腕殺し屋感が弱いのです。この人ホントに非情なヒットマンなの?てな感じに見えてしまう。それは、彼の非情さを見せつけてくれるようなシーンがなかったのが一番の原因かと。組織の下っ端とかには滅法強いし非情ではあるものの、それはアクションシーンの中でのお話に限られるし、見逃してあげちゃったりもしてるし。 凄惨なシーンが多々登場する割には意外とライトな感じで鑑賞できる作品。決してキャスティングは悪くない、どころか寧ろ良いと思われるのに、今一つ浅いというかヒネリがないと言うか、シンプルな面白さは十分あるのに何だか勿体なさを感じた作品でした。 あ、ラストシーンは要らないと個人的には思いました。アレって観る者が想像すべき後日談的なもんじゃないかと。減点要素です。 [インターネット(字幕)] 6点(2025-04-24 00:15:04)《新規》 |
3. アビゲイル
《ネタバレ》 吸血鬼映画と言うと年代的には長いこと「吸血鬼=ドラキュラ=クリストファー・リー」でした。その後、明確に転換点がある訳ではありませんが徐々に吸血鬼映画はヴァンパイア映画に遷移していき(あくまでも個人的なイメージです)、2000年代に入って「トワイライト」等に代表されるファッショナブルなラブストーリーへと変わって行った、みたいな(あくまでも個人的な)印象を持ってます。 そんな訳で、本作は予告編やら公式のあらすじで吸血鬼映画と言うよりバイオレンスホラーを予感して鑑賞しました。シチュエーションとしては少し前に観た航空機内を舞台にしたアレと殆ど同じですね。閉鎖空間に悪党が籠ってみたらまさかの難敵登場!みたいな。悪党が食い殺されていく快感的面白さは同様にあるのではないかと。 が、これをもってヴァンパイア映画としての面白さを満喫できるかと言うと何だか違和感が無きにしも非ず。何よりも美しくないです。流血頼み過ぎる。死に様に至っては爆発ですし。ハッキリ言ってキタナイ!流血の中にも美しさは意識して欲しかったところです。 なので、↑でも言いましたが、鑑賞前からイメージしていたバイオレンスホラー作品でした。そして、そう観る限りは十分とは言えないまでも楽しめました。十分じゃないというのは、例えば、何で犯行グループをわざわざこんな面倒なプロセス踏まないでも力ずくで餌食を集めりゃいいんじゃね?みたいに思えてしまう。手下をコントロール出来てないのも謎。要は、ビジュアル面とかキャスティング面での完成度に対して薄いなーと思えてしまうのです。 続編あり?TVシリーズのパイロット版?のようなエンディングですね。流れ的には、ヒロイン@誘拐犯が生き残ったのは普通にアビゲイルの感謝の念じゃないような。 などと様々考えて、高評価はどうかなぁと思える微妙な作品でした。 [インターネット(字幕)] 5点(2025-04-22 10:27:37)(良:1票) |
4. タイムカット
《ネタバレ》 タイムパラドックスものとしては少々粗いかな?という作品。謎の装置のスイッチを入れたら、姉が殺された時点にタイムトラベルしちゃったから助けなきゃ、でも助けたら姉の死後に生まれた自分の存在は消えちゃうかも、でも助けなきゃ!という物語。そこに、そもそもタイムマシンを作ったのはヒロイン姉の同級生の物理学オタクで、当時の恨みを晴らすべく20年間頑張って完成したタイムマシンで過去に遡って同級生たちを抹殺する、という物語か重なります。 姉の死を契機に生まれたヒロインには、姉を殺人鬼の魔手から救えば自らの存在が消えるかも知れないというジレンマがあり、それに対して殺人犯は過去を変えても自分の現状は変わらないのだと確信している。過去を変えれば未来も変わるというタイムパラドックスものの一つの定番に、過去を変えても時間軸が分岐するから現在には影響しないというもう一つの定番が重なり合い、さてどっちが本当でしょう?結果ヒロインは影響を垣間見つつも過去に遡って生きることを選ぶというもの。 ん?矛盾してる?作り手的には矛盾はしてないのですね。作り手はタイトル通りに「タイム」は「カット」出来るのだという原則で組み立てている模様。でも、なんか違和感。ヒロインは姉の救出後に戻った現在で、自らの存在が両親に認識されていないことを確認しますが、だったら何であなたは存在してるの?という疑問が生じます。時間が分岐しているのであれば、もともとのヒロインの過ごした時間も存在し続けているのですから両親は認識できる筈。存在しているのに認識されないってのは変なような気が。ここはきちんと整理して欲しかったところです。 とは言ってみたものの、この手の物理の原理原則の美味しいところ取りをしてややこしく組み立てている物語は好物。難いこと言わずにエンタメとして楽しむのであれば大いに楽しい作品です。矛盾個所は多々あるものの、総じて言えばお楽しみ感十分のライトなSF。いろいろ考えさせられたというのも作り手の策にハマった証拠ですね。うん、結果的には満足したので高評価。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-19 09:40:14) |
5. バッド・バディ!私とカレの暗殺デート
《ネタバレ》 いいですね~♪ハッキリ言って中身はスカスカ。ストーリーがどうのこうのという内容ではありません。強いて言うなら、主人公の殺し屋(元殺し屋?)が、殺しは悪いことだから殺しを依頼する悪い奴を殺すという詭弁のようで単なる屁理屈というがポイント。そのくせ同じ血が流れてるのを本能適に嗅ぎ取った相手に心の底から恋をしてしまうというアホな純粋性。かなり無茶というか殆どコントです。 でも、だからこその楽しさってものに溢れてる訳で、難しいことを考えないで済むし、主人公もヒロインも概ね無敵だからピンチもピンチと受け取らずに済むし、いざとなれば敵さえ味方になるしで、完璧に無防備でエンジョイ出来るってもんです。 お約束とばかりに主人公が絶体絶命になったり、惹かれ合う二人が引き裂かれたりする心配なんかないこの手の作品は大好物。なので相当甘めの高評価です。 ちなみに邦題はちょっとどうですかね?原題のままとか原題の意訳が良かったような。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-04-16 16:53:51) |
6. ロマンティックじゃない?
《ネタバレ》 これでもかと言わんばかりの鉄板的ラブコメ作品ですね。数多ある名作ラブコメをパロっているようでいて本作こそが真のラブコメ的な作りになっている。安心・安定のラブコメです。ラブコメ好きの方は勿論のこと、ヒロインのように本当はラブコメ好きなのにラブコメ嫌いを装っている方も含め、大いに楽しめる作品だと思います。なので、心の底からラブコメ嫌いの方は視聴注意ですね。 かく言う私はラブコメ好き(ただし感情移入し過ぎるのであまり見ないようにしているというヒネクレ者)なので大いに楽しみました。結末が分かっていても楽しめてしまう。分かりますよね~、見え見えです。それでも楽しめるように丁寧に作られている作品。作り手のセンスに拍手です。 強いて言わせていただくならば、レベル・ウィルソンさんが美し過ぎ。確かに立派な体格ですがどっからどう見ても美形です。正直、彼女のことはあまり知らないのでライトな体型だった頃とかは分からないのですが、間違いなく美形です。対するアダム・ディバインさんは他の出演作のイメージが濃すぎて素直に美男子には見えないのですが、それでも優しくて気のいい好青年のオーラが出てます。なので、ちょっとお膳立てが揃い過ぎな感が否めません。 とは言え、そんなことに少々抵抗感があったとて本作のラブコメとしての完成度は下げられませんね。ハッピーエンド、しかも誰も不幸にならない完全なハッピーエンド。たまにはこういう作品を観ないとね。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-04-14 13:57:09)(良:1票) |
7. NIMIC/ニミック
《ネタバレ》 当たり前の日常。家族で一番早く起き、朝食用の茹で卵を作る。オーケストラのリハーサルに行き満足した演奏が出来ないまま帰路に着く。妻との間に、そして子どもたちとの間に何があるのか?冷めてもいなければ温かさもない日常。チェロの演奏もまた然り。日々リハーサルを積んでもそこには新たな喜びもなければ達成感もない。 そして、特に必要性もないまま唐突に発した「今何時?」という一言。聞かれた女はその時点で彼と同期する。或いは入れ替わり始める。そして、彼と同様に彼女もまた誰かに時間を聞く。その上で彼女は彼を追う。否、追っているようでいて追ってはいない。それは彼女は彼だから。自宅の鍵も所持している。夫として父親として家族に受け入れられる。更にはオーケストラにも受け入れられる。そのことは即ち彼が存在を失ったということなのか。しかし、彼は誰なのか判らないまでも少なくともそこに存在する。そして、もしかしたら彼女がそうだったように、彼もまた失った存在を取り戻すべくNIMICを求めるのでしょう。誰かに時間を訪ねるカットこそありませんが。もしかしたら連鎖を断ち切る?そんなことはなさそう。 タイトルの「NIMIC」はルーマニア語で「何もないこと」らしい。何もない彼女は全て揃っている(機能しているか否かは兎も角として)彼になり、彼はいったん「NIMIC」となって行く先を求める。存在は本質的には限りなく不安定かつ流動的であって、見極める間もなく移ろいでしまうものなのだ、といったメッセージなのでしょうか? 日々の生活の足元を揺るがされるような不気味さが漂う、単調ながら不安と期待が綯い交ぜになった短編作品でした。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-11 00:09:53) |
8. ロブスター
《ネタバレ》 近未来SFなんですね。未来の世界は今と違ってこれこれこうなっていますみたいな一つの定番。ここでは子孫を残せない独身者は社会悪、ということのようです。今の世界で常識化しつつある「多様性」とは真逆の世界。現実世界にシニカルな視線を向けたダークファンタジー、或いはダークコメディといったところでしょうか。 キライではありません。一見奇抜さを求めて思い付きのままに作られた作品のように思えなくもありませんが、考え抜かれたプロットに基いた作品であることは間違いないと思います。ただし、テーマが解りにくいことも間違いない感じ。おそらくは「愛」なのでしょうけれど、設定が設定なだけに少なからず歪んだ愛のような。 この世界では「似たもの同士こそが夫婦のあるべき姿」のようですね。意外と古風。ホテルでの一連のプロセスはそのフィルターということでしょう。支配人のカップルが理想型とも思えないあたりはコメディ要素かと。 で、生き残るためには、幸せになるためには、愛する人と同じ特性を身に着けなければならない。少々問題ありのキャラ設定である主人公は、愛するが故に自ら失明の道を歩んだのか。多分答えは「否」のように思えます。彼にはそこまで出来ないでしょう。そしてロブスターにされたかの如きエンドロール。 繰り返しますが嫌いではありません。敬愛する故デヴィッド・リンチ監督の描いた不条理劇を愛する私。不条理風なこの作風も嫌いではない訳です。だいぶ異なる作風ですが。 絶賛したいところです。ただ、冒頭の馬射殺と中盤の主人公の元兄の犬惨殺とウサギの受難には許し難いものがあります。愛するサメ映画の鉄則(ただし一部の作品にのみ通用)「犬は死にません」を見習って欲しい。これはいけません! まるで別人の如きコリン・ファレルさんの演技の素晴らしさ(太ったのは役作り?)の分を考慮しても、動物殺しのマイナスの方がデカいので7点止まりとさせていただきます。 (追記です) 書きたい小ネタは多々ありますが、どうしても書きたいのを追記します。 ①ホテルの従業員の女性がデヴィッドを助け「何でだか分からない」みたいなこと言いますが、そりゃ毎日あんなことやってたら情が移りますって。 ②プールのシーンの背泳ぎ。今まであんなに官能的な背泳ぎを見たことがないです。あぁなんと艶めか美しいこと。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-10 18:45:11) |
9. ビーキーパー
《ネタバレ》 素晴らしい!これぞジェイソン君!彼は無敵で良いのです! 今回は終盤に怪我しちゃいましたが(よくよく考えればラスボスに弾を打ち込んでるのに防弾ベスト部分を撃って頭を狙わなかったのはラストバトルに向けてのお約束?)、そこに至るまでの間にも普通だったら(既に状況が普通じゃありませんが)せめて掠り傷ぐらい負ってるだろうに無傷でスルー。やっぱヒーローは無敵じゃなきゃいけません。お約束めいたピンチやら名誉の負傷やらは無用!これでいいのです。 今回は関係ない下っ端とかFBIとかもだいぶお亡くなりになっちゃいましたが、正義のためなら仕方ない?いやいや、ちょっとFBIとかヤリ過ぎちゃいましたね。でも、やっぱ仕方ないですね。てか、考えちゃいけないですね。 兎にも角にもジェイソンこそが正義!法令遵守に拘泥してたら正義は守れません。ジェイソン流のコンプライアンスですね。正しいです。 シリーズ化して何本も、とまではしないまでも2か3ぐらいまでは観たい作品。どうか無理せず同じ路線で。ちょっとだけ中身を変えてくれるだけで良いのです。うん、今回はヒロインとの間に色気なしでしたから少しだけその辺も足すとか。ジェイソン君のキレが維持されてる間に(まだまだ大丈夫ですよね)、是非とも楽しませて欲しいところです。期待! [インターネット(字幕)] 9点(2025-04-08 23:56:34)(笑:1票) (良:1票) |
10. エイリアン・バトルフィールド
《ネタバレ》 ストーリー的にもかなり雑ですが、何よりも映像があまりに雑。どっかからか借りて来た映像や恐らくはソフトに殆ど丸投げで作ったCG。エイリアンとかロボットの動き、或いは宇宙船内の様子は、他のB級SFホラー作品のそれとソックリ、てか殆ど同じ。同じプログラムで作ったとしか思えないです。 見た目がそんななのでストーリーはどうでもよくなってしまう感じでした。それでも、一応振り返ってみれば、墜落した(撃墜された?)異星人の宇宙船と搭乗していた異星人が米国政府に持ってかれる。定番のエリア51ものです。異星人の指揮官は原則不戦の方針。まともに戦ったら簡単に勝っちゃうよ、という考えから親切にも人質返せば去るよと停戦を申し出てくれる。が、小規模の戦闘で少し勝ったからって米国は強気。停戦なんてとんでもない、こっちは絶対有利、全滅させてやる!とばかりに都市部の上空でも平気でUFO爆破撃墜。おいおい一般市民が下に居るってのに。その後は似た状況の繰り返し&何故か飛び入りで他の星の軍まで参加しての戦闘&お約束だから盛り込まなきゃ的な仲間割れ、更には家族ドラマ、更には謎の解説口調のオジサン。カオスです。そして最後には、人類の半分が死んでしまうと承知の上で米国大統領は世界各地(の上空にいるUFO)への核攻撃のボタンを押す。かくして地球上は焼け野原。 と言う訳で、全てにおいて雑な1本。それでも何とかストーリーなり映像なりを工夫して仕上げてやる!という気概が見えれば良かったのですが、残念ながら見るべき点はないままでした。走り出してから現場での思い付きで作り足していった感じです。なので、個人的最低点の1点です。 [インターネット(字幕)] 1点(2025-04-07 13:48:12) |
11. 遊星よりの物体X
《ネタバレ》 原作未読。その原作は1938年作、そして本作は1951年製作と、いかにも古のSF作品といった趣です。カーペンター作品とは似て非なる、否、全く異なる作品でした。 今の時代の尺度で捉えてしまうと、全てにおいてチープで雑な1本と思えてしまいますが、それは野暮と言うもの。戦後間もない時代に創り出された作品でここまで描き切ったことに賛辞を贈るべきでしょうね。当時の観客は本作を一体どのような感銘(とは限りませんが)をもって受け止めたことでしょう。そんなところに思いを馳せて鑑賞するのも一興かなと。 異星人が地球とは異なる進化を遂げた植物という発想はユニーク。それが動物(ヒトでもイヌでもいいらしい)の血液成分によって生長するというのも面白いですね。つまりは消化器官は持たないということでしょうか?地球上の植物の知性?について科学者が述べますが、ちょっとズレてるところはご愛敬ですね。昔のSF小説を読んだりSF映画を観たりすると様々な衝撃(良くも悪くも)を受けますが、本作も例外ではありませんでした。登場人物の行動や言動の一つひとつが、ひとことで言えば「面白い」に尽きます。 ただ、核や放射能に対する捉え方だけはいただけないです。ガイガーカウンター振り切って観測不能な状況なのに、防護服なしでグイグイ近付く。全員被ばくです。戦後間もない作品ということは、原爆がもたらす悲劇は承知しているし、核実験を繰り返す中、原爆・水爆の危険性や長きに渡り止むことなく続く放射能汚染の恐怖についての認識も高まりつつあった筈の時代。なにか見て見ぬふり的なご都合主義を感じてしまいます。本作にそんな社会的、或いは政治的メッセージが込められているかは正直なところハッキリとは判りませんが、無知故の愚かしいまでの無防備さと無知故の理不尽な攻撃性の狭間を行ったり来たりしている当時の米国民の標準的な志向を垣間見る思いです。 総じてみれば、様々な観点をもって興味深く、かつ惹き付けられる作品でした。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-04 22:48:22)(良:1票) |
12. 我らの罪を赦したまえ
《ネタバレ》 この歴史は詳しくは知りませんでした。戦後世代、しかも遠く離れた日本の地においては、余程興味を持って積極的に学ばなければ詳しく知ることはないかも知れません。勿論、本作を観て全てを知ったなどとは思いません。 当時のナチスドイツであれば当然の如く達したであろうこの非道な判断。障がい者を養うためには通常以上に経費がかかることを教える教師。上からの命令に抗えず教える教師には障がいのある我が子がいる。ジレンマに負けて教壇を去ることも許されない。そんなことをすれば捕えられ、場合によっては命を失うかも知れない。だから教え続ける教師。そして生徒の中には、経費がかかるのだったら殺すしかないと答える者までいる。おそらくは素直に合理的に答えているだけであろう生徒。恐ろしい教室です。そしてそれが社会の縮図になろうとしている。 教師の家にもナチスは来る。母親として教師は我が子を逃がす。逃げた少年は、途中で同じく逃げ隠れている子を見つけ、その子のために囮になって追手を引き付け結果殺されそうになる。本能的な当然の行動として、勝ち目のない相手と戦う少年。そして遂には奪った銃で追手を射殺してしまう。 殺されるからその前に殺す。究極の判断に至った少年の心情。そしてその後の運命。更には残して来た母親の運命。先行きの全てに暗雲が立ち込めます。 戦時下の狂気が引き起こす過ち。過去を知って決して繰り返すことのないように、などというシンプルなテーマではなく、タイトルからして少なからず宗教的な側面を持たせつつ、もっと深い、人間や人間社会の本質に触れている作品として受け止めました。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-04-04 11:21:21) |
13. シャーク・クルーズ
《ネタバレ》 なんと感想を述べたらいいのか…迷います。まぁB級サメ映画の王道と言うか定番と言うか、全てがお約束感に包まれている感じとでも言いましょうか。ある意味、安心して観ることが出来ます。 サメ登場。お気楽カップル犠牲。緊急警報発令。主人公の乗るクルーザーは無線がイマイチで警報聞こえない。死亡フラグ順に船から転落。喰われる。クルーザー故障。犠牲者続出。ヒロイン他生き残り救助される。そんな流れです。 オリジナル?ポイントがあるとすれば、クルーザーを砂州に乗り上げて沈没回避。ヒロインのお父さん、なんとゴムボートで救援。そんなところなんですが、何と言っても目を引くのはDVDのジャケです。オリジナル版は完全に内容とは異なる絵面。日本版はヒロインの戦うイメージってのはいいのですが、絵面は作品中には見当たらないもの。オリジナル版の乖離っぷりが強力です。 原題、邦題ともに地味なネーミングなので目立ちませんが、「なんか今日は普通のB級サメ映画が観たいな」という日には最適の内容、最適の尺の作品でした。 [インターネット(字幕)] 4点(2025-04-04 11:00:27) |
14. ザ・サイレンス 闇のハンター
《ネタバレ》 面白くないとは言いません。ただ、№1のレビューでも触れていらっしゃいますが、あまりに類似するプロットが先行作品にある(それも複数)のが気になり過ぎます。正直なところ、タイトルとジャケだけ見て、「あ、これは視聴済み!」と思って当初はマイリストから外してしまいました。ざっと調べた限りでは本作は後発作品。他社系と本作と同じネトフリ系各1作を調べたら、いずれも原案・原作は大分遡りますね。オリジナリティがあることは判るのですが、やはりそこが一番残念でした。 ただ、オリジナリティと言っても、例えば洞窟を壊したら飛び出しちゃったというのは怪物系のアルアルですし、設定を置き換えれば呪い系や悪魔系のアルアルでもあります。モンスターにしてみても、先行作のはもっとデカくて人間では太刀打ちできない感じなのに対し、こちらは集団で襲い掛かるタイプという違いはあるものの、ピラニアとか虫系のホラー等々による既視感は否めません。そして、カルト集団が理不尽に襲い掛かるってのは、世紀末モノやオカルトものの定番。これも既視感タップリです。 繰り返しにはなりますが、なんだかんだ言っても面白くない訳ではありませんでした。観終えてみれば続編製作意欲満々みたいな終わり方。そもそもが連続TVシリーズのパイロット版的な雰囲気でもあり、ネトフリでそういう構想があるのかどうかは知らないのですが、そうであれば本作としてはこの程度の展開で留めるのもありかなと思えないこともありません。回を重ねるごとに様々なエピソードが積み上げられて作品世界を充実させていくみたいに。 と言う訳で、何か一味違うものが欲しかったという4点献上です。 [インターネット(字幕)] 4点(2025-04-04 00:04:37) |
15. ミッドナイト・マーダー・ライブ
《ネタバレ》 すっかり落ち着いたと言うか年相応と言うか、否、年齢以上に老け感のあるメル・ギブソンさんが大活躍のノンストップアクション。メルさん、クソ野郎ぶり実に板に付いてますね。飽きずに一気に観れるシンプルに面白い作品ではあります。 ただ、ダブルのドンデン返しが用意されていてソコが本作のキモな訳ですが、いくらなんでも「んな訳ないだろが!」と思えてしまう結末ありきの展開。途中でバレるでしょ?新人のディランさん、どんだけニブイの?そしてエルヴィス翁もどんだけニブイの?てか、出来過ぎでしょ?スタッフにしても関係者にしても演技力高過ぎでしょ?警察まで協力するの?などなど。 あぁそうか。スタッフや関係者はオレ様状態のエルヴィス翁に辟易してたっつうか寧ろ怨恨の域にまで達してたのかも。お祝いのふりして恨みを晴らしてた感がありますね。ん?よく判らなかったけれどディランも騙されたふりしてたのかな?うん、きっとそうだな。さもなきゃ彼が抱えるPTSD級のダメージは訴訟モノのレベルだし。 まぁその辺はぜ~んぶ目を瞑ってしまえば一粒で3度ぐらい楽しめるエンタメ作品。でも、現実場面に置き換えたら無理・無謀の嵐がヒド過ぎるので若干減点の6点献上です。 [インターネット(字幕)] 6点(2025-04-01 11:03:51) |
16. ファンタジー・アイランド
《ネタバレ》 元ネタのTVドラマ、リブート版TVドラマとも未見です。そもそも本邦で放送や配信されていたかも知らない状態ですので、あくまでも予備知識なしでの感想です。 既にご意見のあるように、謎の力を持った島というとTVドラマ「LOST」を想起するところですが、本作については島の持つ謎の力についてはあまり掘り下げず、その力を利用する者たちを描いた感じ。始めのうちはそれぞれの思惑もあって島の力に翻弄される参加者の姿が描かれますが、展開が早いので惹き付けられはするものの何だかバタバタとした感じは否めません。 一人ひとりの「夢」についてのエピソードは解り易く描かれてはいますが、解り易いだけであってイマイチ感情移入出来ないと言うか、それぞれのエピソードを繋ぐにあたってのご都合主義が見え隠れ、と言うか見え見えだったりもします。 ロークは亡き妻を蘇らせるために島を乗っ取った。妻は蘇るが長くは生きていられない。夢の実現は一度きり。だからリゾートとして島を運営し他人の夢を利用して妻を都度蘇らせる。それは解るのですが、そのために入念に参加者を下調べして必要とあれば拉致監禁するってのはどうなんでしょう?元の所有者の手下がゾンビ化して襲って来るのは何故?いじめられっ子の学校の教員が殺人鬼ゾンビ化して居るのは何故どうやって?あげく拉致監禁されていたいじめっ子はいじめられっ子と和解してダブルヒロイン化?等々、やっぱりバタつき加減がハンパないです。 何も考えず疑問を挟まずという条件付きで楽しめる荒唐無稽なダークファンタジーコメディ。そう、コメディと思えば一番楽しめるかもといった感じです。 それにしても行方不明者続出(おそらくは全員死亡)のリゾート。捜査の手が及ばない訳ないです。やっぱコメディですね。 [インターネット(字幕)] 5点(2025-03-28 10:37:45) |
17. ザ・ウォッチャーズ(2024)
《ネタバレ》 別に揚げ足撮る気はないのですが、「衝撃の覗き見ホラー」ということですが「覗き見られホラー」ですね。否、「ガン観られホラー」かな?マジックミラーなだけで観察ですからね。見られてる方は覗かれてる感があるかも知れないけど観てる方はガン観の監察。 まぁその辺は配給元の売り方の問題なので別として、アプローチとしてはユニークに思えました。新たな妖精観と言うか、妖精って言うとティンカーベルとか古のドイルさんがらみの事件?のイメージのように小っちゃくて可愛くてか弱い感じなんですが、ここで登場するのは凶暴で恐ろし気で(人間との戦いに敗れて辛酸を舐めさせられた結果変わっちゃったのかも知れませんが)、挙句変身までしちゃう。で、人間とのハーフともなれば無敵の強さにバージョンアップ。これはユニークに感じました。普通なら悪魔が登場しそうな流れです。 ただ、そんな感じで最初っから最後まで突き抜けてくれればかなり楽しめたと思うのですが、冒頭は孤独なヒロインの過去を追ってヒューマンドラマ的に組み立てるの?みたいで、森に入ってからダークファンタジー風ホラーに方向転換、あれ?ヒロインの過去は関係ないの?って感じになり、とは言え鳥籠に居た青年にも哀しい過去があったりもして、もしかしてここに集められたのは何か暗い過去を背負っているから?などと思わされはするものの、やっぱり関係ないようでもあり…。今ひとつ纏まりと言うか一貫性がないように思えたりもします。ラストは姉妹がひさびさに心を通じ合わせたりするから、なんだか無理無理のハッピーエンディングみたいな。でも、路上から見つめるどう考えてもマデリン若しくはその仲間が居たりするから続編の予告編みたいだったり。 何も考えず、ホラー感十分な美しく妖しい森の映像とアップが多めに感じるダコタさんの美貌を楽しむのであれば問題なし。深堀りしようとすると混乱してしまう。雑、とは言いませんが、何かもうひと味欲しい作品でした。 あ、トリさんがキーマンになってるので甘めの7点献上です。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-03-26 14:37:58) |
18. ドリーム・シナリオ
《ネタバレ》 アイディアは面白いですね。所謂不条理系とでも言いましょうか、全くもって平凡な大学教授の主人公。ホントにサエないオヤジ。ニコラスさん、禿ヅラが似合うこと似合うこと。そんなオヤジが突然世界中に降臨する。勿論原因理由は述べられません。もしかしたらこの時点で全てが妄想妄念の類じゃないかと思われるぐらいに唐突で意味不明。世界中に無差別に夢の中に現れるだけでも相当イカレタ展開ですが、さらに夢の中でのポールが全くの傍観者であって積極的に夢の主に関与しないという意味不明の上塗り。キモ面白い設定です。あ、完全ではないですね。積極的にエロオヤジになってる場合もあります。都合がいいなぁ。 ところがある日を境に急転直下のキャラ変でキモコワオヤジに。傍観者だったポールは悪事の限りを尽くし始めるのですね。これまた唐突かつ理不尽かつ意味不明。そりゃ嫌われますよ。昨今のネット環境からすれば大炎上必至。当然実生活まで踏み込まれる展開。家族だって例外じゃない。始めはかばってくれても、そもそもがポールは小心者と言うかイケ好かないというか万人に愛されないタイプ。いずれは愛想を尽かされてしまうことに。そしてついには彼の夢の中にも彼が現れて彼は殺されてしまうというカオスの極み。 結局ポールが全てを失うと世界中の誰もが彼の夢を見なくなってしまい、残されたのは彼の不幸な(自滅ですが)境遇のみ。新開発のシステム「NORIO」(妙なネーミング)によって別れた妻を彼女の夢の中で追うものの、彼女が目覚めれば元の木阿弥。彼の夢は全て潰えたということですね。 不条理系ダークコメディと割り切ってみれば、ニコラスさんのキャスティングも含め良作かと思います。けれども何かしらテーマを見出そうとすると結構空虚かも。主人公の自業自得ぶりを示さんがための大騒動?確かに彼はイケ好かないオヤジなんですが、だからと言って不幸になっても構わないという程にワルイ人間でもないし、平凡な一般人を無作為にチョイスして夢を砕き不幸にするというのも賛同しかねるし、思い切って全てが主人公の夢オチ!というのも無理やり感が強過ぎてしまうし。 やっぱり、特に深く考えずに展開を楽しむダークコメディということで納得しての7点献上です。それにしてもニコラスさんの出演作ラッシュは続きますねえ。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-03-26 11:41:10) |
19. レディ・オア・ノット
《ネタバレ》 シンプルに楽しめました。由緒正しき大金持ちの一族。その成功の秘密は悪魔に魂を売ったこと。だから定期的に生贄が必要。そのための儀式を一族として定め、代々守り抜いている。そこに嫁いだ花嫁の危機。そんな感じの物語ですね。大笑いの場面はほぼありませんが、所謂ダークコメディと言えるのではないかと。だって荒唐無稽に過ぎますから。 明確に悪魔崇拝を前面に置いている訳でもないのですが、まぁ崇拝しているのは悪魔なんでしょう。悪魔系のお話は正直あまり好まないのですが(何でもありになってしまうので)、参加者の多くが儀式自体を迷信的に捉えていて信じておらず、ノリで人殺しを楽しんでいるだけみたいなところとか、罪もない使用人が巻き添え食ってしまうところとか、ダークな笑いが仕込まれているのとスピーディな展開で一気に楽しめました。 そもそもはあり得ない設定(まぁB級悪魔系ホラーだと思えば定番ですが)ながら、罠にはまったグレースが事の真相を理解して逆襲に出て、ル・ドマスの胸糞一族を次々に血祭りにあげる爽快感。何も考えず見る分には文句なしです。なんだ何にも起こらないじゃんと思いきや一族が次々と爆発するのが最も笑えるところかも。 そして、個人的には何より相変わらずキュートなサマラさんのキレっぷりが観れるというのが一番の評価点。うん、今回も可愛い。ということで+1点の7点献上です。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-03-26 10:31:08) |
20. マルセル 靴をはいた小さな貝
《ネタバレ》 小さな貝の目線で見た世界。人間の世界に生きる貝という設定だけれど、決して人間の世界を悪く表現はしていなくて、寧ろその便利さを自分たちなりに活かして生活している貝たち。かと言って人間の世界への憧れやオマージュもなくて、そこにあるのは全てが上手く溶け合った世界とでも言いましょうか。上も下も優も劣もないです。 そもそもマルセルは自らを「貝」だと言っているから「貝」なのであって、ディーンとの関係性を見れば明らかなように所謂「貝」ではなくて「人間の隣に居る人間ではない存在」なのでしょう。少なくとも「巻貝」じゃないし。だって貝殻の中に住んでる訳じゃなくて貝殻と本体は一体化してますしね。よくよく仲間たちを見てみれば全然「貝」じゃないのもいますし。いや、そんなこと観察することはこの作品の鑑賞にあたっては全く意味がないですね。 同じ世界に住む異なる存在。彼らが助け合い認め合い共存している姿。そこに住む者は皆自分たちなりに自由。ひとつの理想郷ですね。シンプルにその在り方を描いた作品。どう解釈しようとそれは観る者の自由でしょう。実写とストップモーションの組み合わせで創り上げられた世界。それを際立たせる声の演出。少なくとも私は温かな気持ちになることが出来ました。間違いなく良作ですね。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-03-21 23:38:29) |