1. 座頭市血煙り街道
《ネタバレ》 もはやキャラクターと化した勝新の座頭市。本作は子どもと絡んでの安定の人情噺で泣かせます。もうベタでもいい。むしろベタを求めます。「ああーとんだことに関わっちゃったなあ」との市のボヤキを聞いて嬉しくなる。子どもを親に託して隠れて泣く市と一緒に泣く。時代劇、楽しいな。 そうそうたる女優陣の若き頃が見られます。それに近衛十四郎氏を見て息子の松方弘樹氏を想起する世代の方が今や多いでしょうね。そっくりなんだもの。どうにもバラエティ番組に出ていた松方氏の陽気ぶりがチラついて、集中を削がれちゃった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2023-04-13 23:14:40) |
2. THE FIRST SLAM DUNK
《ネタバレ》 今また大好きな湘北高校のみんなに会えるとは。原作者の井上氏が手がけているとあっては見逃すわけにはいきますまい。 驚いたのはアニメーション技術の進化。その洗練されていること。特筆すべきは試合のシーンで、動きの自然なことはアニメを観ていることを忘れそうになるほどです。 原作の漫画作品が画力もコマ割りのセンスも大変高いので、読み手としては脳内でキャラクターを容易に動かすことができていました。でも実際この目で動く彼らの山王戦を観ることができたのは、想像よりも一層の迫力を伴ってもう圧倒的。幸せな体験でした。 宮城リョータのエピソードを深掘りしてきたのにも驚きました。りょーちんは花道と気の合う一つ上の良き先輩でコミカルパート担当のイメージだったので、こんなにずっしりした背景を持たせたのは意外に感じました。でも、そうだ彼は背の小ささを抱えながらも有能なPGとして健気に務めを果たして来たんだった。それだけのバスケへの愛着を抱いていたのは何故か、種明かしにもなっているのですね。 試合が途切れる度、リョータのエピソードが挿入され桜木や流川にしわよせ(?)がきて出番が少なめ。花道流川好きには物足りないかも。この二人の丁々発止の関係がずーっとあったからこそ最後の得点シーンが生きるので、そこはちょっと残念。 [映画館(邦画)] 9点(2023-03-07 23:44:43)(良:1票) |
3. 座頭市物語
《ネタバレ》 邦画No1のハードボイルド味。情感は完ぺきに和のテイスト。抑えめの友情、仁義、淡い悲恋。良いなあ控えめなケレンみ。 剣術のレベルが超人的な市の、その技が三回ほどなのも良いです。あまりに連発されるとありがたみが減っちゃいますもんね。「見世物じゃねえや」です。 勝新の市は文字通り唯一無二のキャラクター。親分には(一応)へりくだりつつ、腹の中では高く買っちゃいない。そのトボけ具合と真人間としての気骨。この役をその後も誰一人ものにできていないのもむべなるかな。 天地茂の愁いを帯びた平手の存在感もおたね役の万里の美貌も、組の下っ端らのこすっからさも皆その役柄にピースのようにぴたりとハマる。観ていて快感です。 江戸の町がリアルに感じられる美術も撮影も素晴らしいと思いました。夜道は闇が深いし、人物が提灯を手渡す気遣いをしょっちゅう見せるところに日常の考証の行き届きを感じます。乱闘の際は貧しい町民の家屋の壁戸がばりばりと破られたり。市がおたねを避けて街道の脇の小高い藪の中を行くラストシーン。上から小さい彼女を見下ろした画がほんとに‶土の道だけ”で、確かに往時は馬や人が通るだけの、土ぼこりの舞うそこが街道だったのだろうなあとそんなことを思いました。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2023-02-03 23:07:49) |
4. ザ・マジックアワー
互いの意図したところが違うのに何故かハマる面白さ。三谷氏の脚本、キレています。三谷作品はわりとそうなのですが今作は特に舞台劇な感じが強いですね。作られた街は現実感ゼロ、レトロっぽさでファンタジー感も増します。 チョイ役に至るまでまあー日本芸能界の一線級にいる人たちがぞろぞろ顔を出しますなあ。端役にまで主役クラスを使われるとなんだか気が散ります。 演技力の差もはっきり分かりますね。わたしが邦画を苦手とするのはこれがあるからで、言語の繊細な響きも母語だと聞き取れてしまうから「下手だなあ」と感じやすくなるんですね。演技評価をするなら上位では佐藤浩市の仕事が凄いです。けっこう難しいキャラクターだと思うんですよね。ズレてて抜けててでも芝居には純粋な。彼のイメージに無い要素ですから、意外だったし楽しかったです。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2021-07-12 23:11:41) |
5. 残穢 -住んではいけない部屋-
《ネタバレ》 こけおどしを一切廃してリアリティ追究型に徹したジャパニーズホラー。鼻白むような演出はあまり無く、しんみりと怖い。でもいかんせん地味。 橋本愛が終盤に「自分が何を追っているのかわからなくなりました」と言っていたけど、うん私はソレもっと中盤から感じていたよ。遡ってゆくうちに場所も変われば怪談の「肝」の部分も変わっていっちゃって、炭鉱事故のくだりではもはやたくさんの赤ちゃんはどこへやら。これがリアリティと言われればそれまで。うーんでも正直怖がりたくて観に来たわけですから、もうちょっと盛り上げてほしい気もする。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2017-05-16 23:58:18) |
6. さよならドビュッシー
画はがんばっている。ショットを工夫したり、邸宅の隠美な雰囲気や湿度は気持ちが乗ります。 だけども演出が平板なせいか、だらっと展開するうちぼやーっと事件が起きてもやっと真相が明かされて、見ててつまんない。 台詞でネタばらすのやめてくれないかなあ。 杖が必要なんだか不要なんだか、声が出るのか出ないのか一定しない表情2パターンのヒロイン。この作品がぺらぺらで安っぽい印象なのは彼女の責任も大きい。ぎりぎりアイドル映画に落ちずにすんでいるのは、役者が本業でないピアノ教師役の清塚信也のお陰であるというのも困った現象ではないかね。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2017-03-17 00:06:33) |
7. 秋刀魚の味(1962)
笠智衆がそこにいるだけで、もうなんだか安心している自分がいる。剛でなく柔の迫力、「ふぅん」という相槌のまろやかさ。「良かったじゃないか。戦争に負けて」とこの人ににこにこと言われると、そ、そうですねと涙ぐみそうになる。棒読み台詞にも慣れた。笠しかり、岩下志麻しかり、美しい日本人がここにいる。ひょうたん先生をあんまり苛めないでほしかったなあ。 [ビデオ(邦画)] 7点(2012-11-27 16:24:29) |