1. TAKESHIS’
《ネタバレ》 「座頭市」や「菊次郎の夏」など、割りと一般向けの分かりやすい作品を作ってきただけに、今作も娯楽映画だろうと思って見た人はご愁傷様です(笑)。 アンチミステリーとかメタミステリーなんてジャンルに慣れ親しんでいるようなヒネくれた人でないと、この手の作品を楽しめないのも無理はないし、評価が下がりがちなのも当然かも。 「最初と最後が繋がる円環構造」とか、「見ている者を混乱させる事が目的化しているメタ構成」とか、それゆえ「結論が無い」とか、こうした作品特有の典型的特徴は有しているから、そう言う意味では、むしろ分かりやすい作品とも言える。 そんな構造解析を楽しむべき作品ではあるけど、残念ながら、今作はそこまで徹底して作られているようには見えなかった。監督本人も「好きにやりたい」という気持ちの赴くままに撮ったようだし、変に穿った見方を観客にされる事も望んでいないはず。 ただ、地位も名誉も金も手に入れてしまった監督の虚無感や不安感、厭世感といった色々なモヤモヤが、作品内現実と作品内フィクションの「入れ子構造」を通して強烈に表現されてはいる。 まさに「映画は理解するモノではない 感じるモノだ」って感じ。まあ何にしても、このくらい好き勝手にやらせてもらえる程度に大御所になったというのは羨ましい限り。 賛否、どちらの意見もよく分かるので、間をとって5点献上。 [DVD(邦画)] 5点(2006-10-16 17:34:50) |
2. 弾丸ランナー
《ネタバレ》 「ポストマン・ブルース」の原型か? 「アンラッキーモンキー」や「MONDAY」に比べたらシナリオに一貫性があるが、やはり他作品同様、全体的にストーリー展開が行き当たりばったり過ぎる。はっきり言って、最初から最後まで監督が計算しているとは、ちょっと思えない(その荒削りっぷりがこの監督の魅力なのかも知れないけど)。 この作品も、最初は些細な事から始まり、途中から破綻した方向に進むという黄金パターン。後半に行くほど、見ている方もまさに「ランナーズハイ」のような、一種独特なカタルシスを感じられるようになるのは面白い。 しかし、ラストの終息の仕方がいい加減なのが残念。あのカタルシスのまま、みんなで星空を眺めて終わるというような、爽やかなラストが良かった。 今後はこういう勢いだけの脚本ではなく、もう少し落ち着いた作品が見たいところ。 [ビデオ(邦画)] 5点(2004-11-27 11:33:36) |
3. たそがれ清兵衛
幕末の不安定な時代を、同じく先行き不透明な現代とシンクロさせ、平侍の生き様を通して、平凡な日常と向き合う生き方や本当の幸福とは何かを問い掛ける。ただ、テーマが地味なだけに、どうしても展開も地味にならざるを得ない。「平凡に生きることは悪い事ではない」とする、いわば「癒し系」映画。 6点(2004-03-21 16:47:49) |
4. 大誘拐 RAINBOW KIDS
《ネタバレ》 ミステリーの最高傑作と大絶賛されている原作を、この映画版を見る前に読んだが、個人的にはどちらもイマイチ。 「痛快で心温まるストーリー」という振れ込みだが、あの愚直で田舎臭い誘拐犯たちのキャラクター性や、「虹の童子」と名乗ったり、お互いを「雷」「風」「雨」などと呼び合ったりする垢抜けないセンスにどうしても馴染めず仕舞い。 すべて関西弁(河内弁?)というのも抵抗があった(方言が嫌いなわけではないけど…)。原作を読んで感じたマイナスイメージは、この映画版も変わらなかった。 攫われた老婆が、逆に誘拐犯を手玉にとって、壮大な身代金強奪計画を実行するというシチュエーションは確かに面白いけど、それも、そこまで工夫のある展開には感じられなかった。 と言うのも、「刀自がすべてを計画している」事は、読者(観客)には最初から分かっている訳で、客観的にストーリーを追う形になる以上、途中経過の緊張感もラストの意外性も薄れるのは当然では? 原作共々、それなりに完成度の高い作品ではあると思うけど、個人的にはどうにも肌に合わない作品だった。すべては、あの登場人物のキャラクター性に感情移入できるかどうか、かな。 [ビデオ(邦画)] 5点(2003-10-26 23:56:47) |
5. タイム・リープ
原作を読んでから見ました。おかげで、いまいち分かりにくかったシーンが理解できて助かったんですが、やっぱり何故かすっきりしないんですよね~。バラバラになった時間を飛び越えつつ、パズルのように情報を整理していく過程は面白いんですが、どこか矛盾があるような気がしてしまいます(私の理解力の無さが悪いと思うんですが)。この設定だと、タイムパラドックスとかの心配は無いんでしょうか?また、バラバラになっているのは彼女の主観的な時間なんですから、それを外側から見ているとどうなっているのかなーとか、余計なことを考えてしまいます(笑)。でも、面白いことは確かです。 7点(2003-09-23 14:21:34) |
6. ターン/TURN
《ネタバレ》 誰もいない世界の恐ろしく寂寞とした雰囲気がよく出ていた。それとやはり感心したのは、ストーリー展開の巧さ。「自分だけ誰もいない世界に行く」という設定だけなら誰でも考えつくけど、そこからいかに飽きさせない展開を作るかとなると、これは至難の業。 その点、この作品は外界と電話で連絡が出来るようになったり、同じような境遇の人間(しかも犯罪者)と出会ったりと、意外性のある展開に飽きずに見続けることが出来る。 ただ惜しいのは、これだけ興味深い展開を用意しながら、いまひとつそれを生かせていない点。例えば、現実の世界に戻るための「謎解き」や、犯罪者との心理的な駆け引き、さらには違う人間との邂逅などがあったらより面白くなったはず。 また、ラストがあっさりし過ぎで物足りなかったのも残念。やはり「こちら側に帰ってくるきっかけになるだけのイベント」は必要でしょう。せめてエンドロールに合わせて、彼女のエピローグを紹介して欲しかった(彼と植物園をデートしているシーンとか見たかった)。 傑作になるだけの潜在力があるのに、肝心の部分でいくつか手を抜いてしまったような印象。惜しい。 [ビデオ(邦画)] 7点(2003-09-21 07:30:16)(良:1票) |