1. デッドマン(1995)
《ネタバレ》 ‶退屈映画”は世に数あれど、観続けるのが苦痛になるものと意味は分かんないながら観入ってしまうものとあって、わたしにとってジャームッシュ作品は後者なのです。 不条理に巻き込まれて命が抜けそうな男(いや実はもうdead manなのか?)と、彼の魂を平穏に送り出そうと手助け(?)するネイティブアメリカン、ノーバディ。 この作品を正確に解説する術も技量も持ち合わせていないのですが、そうだな生と死のあわいを行ったり来たりしているかのような映像美とか、ほんとにあの世に片足突っ込んでいるような形相のJ・デップがハマっていて目が離せないとか、マトモな人物が出てこないそのシュールさの塩梅が個人的に好みであるとか、なぜこの映画が良かったのかと聞かれればこんな感じで要領を得なくなってしまうんだけれども。 ジャームッシュ贔屓の点数であることは認めます・・。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-03-04 23:26:31) |
2. 天国と地獄
《ネタバレ》 143分間、凄まじい重厚感にただただ圧倒された。前半は誘拐事件の中で各人の思惑が交錯する人間ドラマに、後半は高度経済成長期の光と影がくっきりと刻まれた昭和の世相描写に。 かっちりと美しいバンフォーカスの枠に配置された演者たち。台詞を言わない者は無言で、表情と佇まいで演技をする。権藤が裏切り秘書を喝破した際の仲代の表情や、ラスト近くで時を告げる時計の音に振り向いた眼に飛び込む差押さえ状。途端に漂うお通夜のごとき空気。忘れ難い場面の数々、なんという役者の力だろう。メインから端役に至るまで、名演につぐ名演に酔う。 息もつけなかったのは昭和の世の、経済成長から取り残された貧困の姿。場末の歓楽街からアヘン窟へと移るカメラは情け容赦なく、オリンピックを控えた都市の底辺の様子には心胆が冷えた。インターン竹内の暮らす貧しい路地。野良犬にシミーズ姿の洗濯女,三畳の暗い安アパート。彼の母親の早い死に、アヘン窟の女たちの姿が重なった。壮絶な幼少期を送ったであろう竹内の、貧困がむしばんだ魂の叫びには、私も権藤氏と同じく一ミリも身体が動かなかった。 [CS・衛星(邦画)] 10点(2014-10-20 01:14:14)(良:1票) |
3. デビルマン
何ということでしょう。憤死した原作ファンの屍の山を、制作は越えられるのか。 このキャスティング。芝居のできないモデルに二世俳優に格闘家に演歌歌手。業界の都合で映画を作るな。オリジナルをつぎはぎしただけの脚本。原作に敬意を払え。映画というものにもっと愛を注いでくれよ。 [インターネット(字幕)] 1点(2014-09-16 23:35:19) |
4. デルス・ウザーラ
《ネタバレ》 圧倒的なシベリアの風土、この迫力、画の力。映像にこれだけの厚みと熱量をもたせて映画として完成させる、黒澤明という監督が無二の映画人であるとつくづく感じ入る。沈みゆく真っ赤な夕陽を、恐怖におののきながら見守ったのは生まれて初めての経験だ。あああんな恐ろしい太陽を見た事がない。広大な凍てつく大地にゆらゆらと沈んでゆく命の陽。夜=死へのカウントダウン、強まる風雪、不吉な枯れ草。デルスと隊長の、死闘ともいえるこの場面では息をすることすら忘れた。圧倒的だった。 デルスは森の人、自然の一部。この人物の造型に大成功していることも、作品の魅力。最初は珍獣扱いしていた隊員たちも、日が経ち、別れが近いと知ると食事すら忘れて惜別の思いに沈む。暖かく泣いて、再会を誓って別れる第一部は本当に素朴に感動した。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2014-08-09 00:39:42) |
5. テルマエ・ロマエ
《ネタバレ》 阿部の濃い顔を古代ローマ人の設定にしたら面白いんじゃない?というアイデアは秀逸で、宣伝の段階ですでにウケる。たしかに面白いけど、皆さんの感想どおり、面白さが最後までキープできないんだよなー。現代日本人を巻き込んで古代にでかい湯治場作ってめでたしめでたし、かあ。つまんないオチ。上戸彩が出てくるととたんに学芸会になってしまうし。ちゃちさを感じさせない豪華なセットには感心。 [地上波(邦画)] 6点(2014-05-16 00:54:33) |