181. 近松物語
《ネタバレ》 上下の隔てのある不義密通。命で償わねばならぬ時代に自分の心に正直に生きた二人。手を繋いだ二人の面持から本懐を遂げた喜びを汲み取れる一世一代の晴れ姿が、覚悟の死地への行進であるラストシーンのこれ以上ない非情さ。その背中にかける言葉がありません。合掌するのみでした。 [DVD(邦画)] 9点(2011-11-05 19:39:32)(良:1票) |
182. 西の魔女が死んだ
《ネタバレ》 慈愛に満ちて且つ凛とした祖母に癒されました。生き生きとしたスローライフをを見るにつけ、学校へ行けない等、子どもが皆と同じでなくとも恥じる必要はなく、荒んで腐ってしまうのを恥じるのだと思いました。ほろ苦い別れを経た永遠の別れ、無限の後悔にさいなまれた心を救うメッセージに祖母の有り難味を痛感しました。 [DVD(邦画)] 7点(2011-11-05 17:58:41)(良:1票) |
183. ダーリンは外国人
他人同士が暮らしを共にするというのは人種関わらずギャップがあります。そこに文化の違いが加わる本作。肝心の異文化ギャップの部分でもっと楽しませてもらいたかったですね。家事にいそしむ以外に仕事しているトニーの姿も見たかったです。日本人にも今時なかなか見かけない穏やかな彼が醸し出す空気に、心穏やかに鑑賞できるこじんまりとした小品。 [DVD(邦画)] 5点(2011-11-05 14:56:05) |
184. 祇園の姉妹(1936)
おもちゃは、男に負けんと封建社会に声高に物申しておりますが、鼻白むばかりでした。自らの意志でその職に就き、口先だけペラペラペラペラ、人の心を平気で裏切って踏みにじる、裏切られるのがボンクラだとばかりに居直る。これの何処が女の強さなのか。ラストで悔しさに喚き散らすおもちゃの傍らで悲しみに耐えている梅吉にこそ、女性の、人間としての真の強さを感じました。時代に関わらない、芸妓で有る無しに関わらない、男女関わらない、人の有りようを考えさせられる幕切れが象徴する姉妹の生き様を見せてもらいました。 [DVD(邦画)] 6点(2011-11-03 16:43:32)(良:1票) |
185. 丹下左膳餘話 百萬兩の壺
完璧な脚本と演出と展開でもって、左膳、お藤、安吉、源三郎、萩野の味わい深い面々が織りなす人情時代劇に、爆笑し、苦笑し、ホロリとし、ハラハラし、これ以上ない心地良さに感動し通しでした。痛快無比の大傑作に出会えた事にも感激しています。 [DVD(邦画)] 10点(2011-10-25 20:59:33)(良:2票) |
186. 祇園の姉妹(1956)
溝口健二(予備知識がなく、リメイクの本作では原作者である事を本サイトで知りました(汗))の芸者もの。芸達者が揃っており安心して観れたものの、心揺さぶられる事のない平坦な物語に物足りなさを感じました。情の厚さとドライさが折り合う事が肝要なのかなぁと姉妹の生き様を見て思いました。 [DVD(邦画)] 6点(2011-10-19 20:35:52) |
187. 金環蝕(1975)
贈収賄のお話は今も脈々と受け継がれているようなので、未来にも受け継がれていくのかなぁと思うくらいで取り立てて面白いとは感じませんでした。数多の名優が演ずる意地汚い面々の中で官房長官が飛びぬけて嫌らしく、仲代達矢は日本一の男優だと改めて認識しました。 [DVD(邦画)] 6点(2011-10-12 23:47:16)(良:1票) |
188. 祇園囃子
《ネタバレ》 神崎の前で美代春が脱いだ白足袋。何とも言えぬ艶めかしさに息を呑みました。観終わって、単なる売春婦ではない「富士山同様日本の宝」と言われる祇園芸妓としての気位の高さ、乙に澄まして紳士面するものの仕事に欲情を絡める薄汚い本省課長にカラダを売らねばならぬ理不尽さ、相反する二つを繋ぐ人としての情け、それぞれが白足袋に凝縮されていたように思いました。女優三人の好演の相乗効果が構図同様に作品の奥行きの深さを与えていました。 [DVD(邦画)] 8点(2011-08-26 23:28:04)(良:2票) |
189. サンダカン八番娼館 望郷
《ネタバレ》 後世に語り継がれるべき作品。「人にはその人その人の都合ちゅうもんがある」と語る、多くの人の身勝手な都合によって幼年から老年まで辛酸を舐め尽くしたおサキさん。それなのに田中絹代演ずる彼女の姿は菩薩様でした。 [DVD(邦画)] 9点(2011-08-16 18:55:51) |
190. 浪華悲歌
《ネタバレ》 我が身を犠牲にして尽くした相手に裏切られる。恋人はともかく家族の冷たさが堪えます。誰のおかげですき焼きを食べていられるのか! それでも一滴の涙も流さぬアヤ子。犬と朝寝をしている社長夫人共々女性陣の逞しさに魅入ります。それに引き替え男性陣ときたら・・・心斎橋そごうのエレベーター、地下鉄淀屋橋駅(?)当時の最先端の街並みが興味深かったです。 [DVD(邦画)] 6点(2011-08-13 20:53:23) |
191. 豚と軍艦
若さの特権かのように描かれる弾けるエネルギー。その発散の仕方が肝心と思わされる事を、走り回る豚たちのような無秩序なものであった青年の末路が表しています。 [DVD(邦画)] 4点(2011-08-12 22:06:02) |
192. 夜の女たち
家族を養うため止むに止まれずでなく、単に悲しみで捨て鉢になって躰を売る。ことは止めましょう。ごもっとも。田中絹代の演じる夜の女が単に言葉遣いが悪いだけという演出で、青臭い子供にしか見えなかったのでそれ以上の感慨が湧いてこない作品でした。 [DVD(邦画)] 3点(2011-08-12 20:07:18) |
193. 大阪物語(1957)
一家の長として守るものが、家族から金へと変わる生き様に、共感するやら呆れるやら。日々遣り繰りに汲々としている身にとっては、何が幸せなのかを考えさせられた訓話の如き作品でした。カラリとした味わいが心地よかったです。 [DVD(邦画)] 8点(2011-07-31 11:41:52) |
194. 背徳のメス
登場人物すべてが背徳者。その心模様は見応えがありましたが、サスペンスとしては入り込めませんでした。当時の病院の模様がありのままだとしたら、びっくり仰天です。 [映画館(邦画)] 6点(2011-07-30 00:06:41) |
195. 噂の女
娘が母に代わって、店を切り盛りしている姿に、それまでの曲折を思い感慨深いものがありました。監督の女性に対する労わりと励ましが仄かに滲み出ている秀作。 [DVD(邦画)] 7点(2011-07-29 23:21:03) |
196. しとやかな獣
団地の一室二間を舞台としたホームドラマ。工夫を凝らしたカメラワークは飽きさせないもののそれ以上の意味を感じません。「獣」と言うよりは飼育ケースの中の食虫植物のよう。気味が悪くて薄汚いと見るか、種の保存の為の堂々とした営みと見るか、結論が出ません。始終交わされる会話の、お上品ぶって取り澄ましてのご丁寧な言葉遣いであっても、中身は恥知らずの下劣である様子から、監督の軽蔑が「しとやかな」に込められているように思えました。本作に限っては若尾文子は山岡久乃の軍門に下っていました。上には上がいるものです。恐るべし。 [DVD(邦画)] 7点(2011-06-25 20:17:17) |
197. 沈まぬ太陽
山崎作品に共通する、職場で筋を貫き通す男とそれに振り回される妻子。本作では鈴木京香演ずる妻の静かな強靭さが一家を支えているように見えました。会社更生法を申請するに到る事を作者は予見していたのかと思わせる私欲に塗れた幹部と政治家、官僚達。こういう連中が淘汰されて再建を果たせれば正直に真面目に働いてこられた方々が報われるのに、と思いました。原作の第三巻以降は未読なせいもあるのかラストに唐突さを感じました。ただ、恩地に自身の辛苦を「取るに足りないもの」と語らせるご遺族の胸中を思うと生ある有難味を感じさせられます。 [DVD(邦画)] 6点(2011-02-13 15:46:41) |
198. 居酒屋兆治
《ネタバレ》 山口瞳の原作にほぼ忠実に作られていました。キャスティングが絶妙で、全員がぴったり役にはまっていました。ただ、大原麗子さんを思うと、もう本作を観る事は出来ません。 [ビデオ(邦画)] 6点(2011-01-05 01:47:45) |
199. 駅 STATION
誇りと信念を持って職責を果たす三上刑事。その職責は、他人の命を絶つ事の苦しみを伴い、男女の情よりも重い。そんなやるせなさを「舟唄」流れる空間がかきたてます。 [ビデオ(邦画)] 7点(2011-01-05 01:42:00) |
200. 私は貝になりたい(1959)
戦争行為や自国軍隊の有り方はもとより、勝者が正義面する軍事裁判の理不尽さを見せ付けられます。天が罰を下せるのなら何千何万何十万の非戦闘員を爆弾で殺戮した米兵も絞首刑になるのです。当人や残された肉親が味わう思いを何時の世代までも語り継がねばならない事をエンディングに思いました。 [DVD(邦画)] 8点(2010-11-23 23:34:49) |