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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2398
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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221.  東京上空いらっしゃいませ 《ネタバレ》 
それまで剛腕をたよりに数々の異色作・問題作を撮ってきた相米信二も、90年代に入って円熟味が出てきた感じがあります(もっとも彼の人生はその後10年余りでしたが)。そして本作は彼が手掛けた最後のアイドル映画で、相米アイドル・ムーヴィーの完成形でもあります。 ストーリーは大島弓子の『四月怪談』をモチーフにしたようなファンタジーですけど、やはりこの映画の魅力は初演技だった牧瀬里穂の存在に集約されるでしょう。正直いって最初は彼女のキンキン声のど下手なセリフ回しは引いてしまいますが、そのあまりに豊かな表情と瞳に引き込まれてしまって、「これもありかな」となってしまいます。そんな素人同然の新人女優が相米監督に長回し撮影で撮られたのだから、かなりハードな経験だったことでしょう。ハンバーガー屋では、殺到する注文を受けて一人で飲み物を準備しおまけに肉を焼いてハンバーガーを完成させるまでをワンカットで演技させられるんですから、こりゃ大変ですよ。名曲『帰れない二人』を、四人のシンガーにそれぞれのスタイルで歌わせるセンスはさすがです。吹き替えですけど、中井貴一のトロンボーンに合わせて牧瀬里穂が歌い踊るシーンは、懐かしの90年代の雰囲気にあふれていました。そして自分が大好きなのはラスト・シーンで、あのマウスピースを買いに来た女子高生はきっとユウの霊なんだろうなと思います。でも現世の中井貴一にはそれがユウには見えないんです。何かしらを彼は感じ取っているのは確かなんでしょうけど… 余談ですけど、鶴瓶は本作から相米映画の常連になりましたが、実はその後の出演作ではギャラは一銭ももらっていない友情出演だったそうです。
[ビデオ(邦画)] 8点(2017-11-26 23:27:28)
222.  震える舌 《ネタバレ》 
破傷風、この単語には私たちの世代は少なからず恐怖を感じるはずです。小学校のころには普通に破傷風の予防接種をみんな打たれたし(この注射と日本脳炎の予防接種はほんとに痛かった)、たしか同学年には破傷風で死んだ子もいた記憶があるぐらいです。その破傷風との闘病記を“あなたは、この恐怖に耐えられますか!”“彼女はその朝、悪魔とともに旅に出た…”なんてコピーを付けて映画化するんだから、松竹という会社はえげつないです。トラウマ映画としてはあまりに有名ですがとても観る勇気がなくて、今回初鑑賞となった次第です。 主演の女の子の演技が凄まじいというか、監督もよくここまでやらせたな、って呆れかえりました。今のご時世でこんなことさせたら、下手したら幼児虐待で炎上ものですよ。また、劇中でも医師に破傷風菌は唾液なんかじゃ感染しないと説明させてるのに、両親が感染したんじゃないかとほとんどノイローゼになってゆく様を丹念に撮っていて、これじゃほとんどゾンビ扱いじゃないですか。野村芳太郎は『砂の器』でもハンセン病患者団体から抗議を受けてますが、ちょっとリテラシーに欠けるところがありそうですね。まあ短期勝負で致死率の高い破傷風ですから、患者団体なんてなさそうですけど。あと気になったのが昭和50年代の医療体制で、こんなに程度が低かったのかな。それには宇野重吉と中野良子以外の医師やナースがあまりにも感じが悪く無能に見えたこともありますが、絶対安静で光線も遮断しなければいけない破傷風患者を小児科の大部屋病室の隣の病室で治療するなんてあり得ない感じがします。聖路加病院が撮影に協力してロケもしているみたいですので、実際こういうレベルだったんでしょうね。でも容体が急変して渡瀬恒彦が主治医の中野良子を自身で医局を回って探し回るシーンがありましたが、こんなこと大病院であり得ますかね?
[CS・衛星(邦画)] 6点(2017-11-21 23:48:54)
223.  赤西蠣太 《ネタバレ》 
これほど見事に省略技法と繰り返し話法を駆使する映画は初めてです。ラストの小波の家を訪れた赤西蠣太の「今日はあまりゆっくりできなくて…」の三回繰り返し、そしてウェディング・マーチで閉めるセンスにはもう脱帽。確かに夭逝せずに戦後まで映画界におれば、伊丹万作は日本を代表する巨匠に間違いなくなっていたでしょう。あの片岡千恵蔵が不細工男に扮してラブコメするのが観られるなんて、予想もしませんでした。また原田甲斐との二役も見事な貫録で、これが同一人物とは信じられないですよね。この映画の魅力を語るにはモダンなカメラワークを外すことはできません。冒頭の唐傘がクルクルと回るところやクライマックスの寛文事件の立ち回りなど、真上からとらえたショットはバスビー・バークレーのミュージカル映画を彷彿させるセンスです。 古い映画ですけど、観て絶対に損はないですよ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-10-19 23:44:42)
224.  IAM A HERO アイアムアヒーロー 《ネタバレ》 
やっぱり日本映画界はできる子だったんですよ、でもこれだけグロかったら地上波放送は絶対に無理ですね。と思ってよくクレジットを眺めたら、この映画にはTV局が製作委員会に加わってないんですよ。日本映画界をここまでダメにしちゃったのは、製作委員会に大手TV局が名を連ねていることなんだなと、確信した次第です。 主人公とJKが山に迷い込むまでのこの世の終わり感は半端なくて、ここだけでもハリウッドのゾンビ映画と真っ向勝負ができるでしょう。「テレ東が通常放送をやめたら日本は終わり」というネットギャグを盛り込んでいるところなんか苦笑ですが、これも製作にTV局が絡んでないから可能な脚本だったのかも。半面、モールにたどり着いてからのモタモタ感は残念です。確かに立て籠もり軍団の構成には違和感があります。男女とも平均年齢が若すぎるし、とくに男は徳井優を除くとヤカラみたいなのがほとんど。その中でニートみたいな吉沢悠がリーダーとして采配を振るえたというのは、なんか説得力がないんですよね。大泉洋のヘタレぶりは観ていてイライラさせられるほど上手いです、銃刀法違反を極端に気にする訳の分からない小心さも笑えました。まあなんでこんな漫画アシスタントがクレー射撃用ライフルを持っているのかは謎ですけど(笑)。 これは原作ありきなんでしょうけど、有村架純の身に何が起こっていたのかは、すごく気になるところです。続編製作を希望です。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-10-15 20:04:14)
225.  幕が上がる 《ネタバレ》 
昔のモーニング娘。の超駄作を引き合いに出すまでもなく、日本のアイドル映画というやつはロクなもんがないというのが世間の常識。そう考えると(あくまで)アイドル映画として観る限りでは最も良く撮れた作品と言えるかもしれません。これはもう原作があるので如何ともし難いところなんですが、登場するJKたちがあまりにも優等生過ぎるのでリアリティーが無さすぎるところで、原作者の平田オリザの作家としての限界なのかなと感じます。授業シーンなんかでは確かに存在は確認できるのに、男子生徒がまったく登場しないのは、これまたストーリーテリングの不自然さを際立たせている気がしました。存在感の希薄な他の演劇部員どころの騒ぎではありません、まるっきりエキストラしかいないんで、ここは女子高かと突っ込みたくなります。色恋沙汰に発展させないためかもと思いますけど、こういうところがアイドル映画の限界なんでしょう。 ももクロの中でひとりNHKのオーディションに合格するだけあって、百田夏菜子の演技力はちょっと光ってました。あの演出センスを疑うモノローグがなければもっと印象が良かったと思うんですけど、これは彼女の責任じゃないですね。この人はアイドル辞めても女優として成長してゆく予感がします。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2017-09-23 21:43:12)
226.  蘇える金狼(1979) 《ネタバレ》 
大藪春彦は高校生ぐらいのときにはまって愛読しましたね。荒唐無稽なストーリーですけど、あの独特の文体には読む人を引き込む魔力があった思います。ハードボイルド畑で凝った文体という共通点があるので、この人は日本のヘミングウェイだったのかもしれません(ちょっと褒めすぎかな)。 小説の映画化はその作家が文章を通して描こうとする世界観をいかに料理するかと言うのが重要なポイントですけど、監督の村川透や角川春樹にそんな高尚なことを期待するのは無理というものです。このお話自体は『特命係長 只野仁』の元ネタみたいなもので、まさに“カネ!暴力!SEX!(by宇多丸)”の世界です。主人公のキャラは正義の味方どころかまるっきり真逆な存在ではありますけど。まあ確かに村川透作品としてはカネがかかっていますが、撮り方自体は東映セントラルとまったく変わっていないのでチープ感は健在です。悪役やわき役のキャスティングにカネを使ったのかもしれませんけど、千葉真一の使い方だけはさすがに?でした。松田優作はいつもの優作で平常運転でしたが、こういうB級アクション的な撮り方が原作の持っていたハードボイルドな雰囲気を雲散させてしまったのです。松田優作の芝居は灰汁が強すぎて続けて観るとほんとに疲れます、でも旅客機の中でこと切れる最後の表情は、やはりこの人じゃなきゃできない凄い演技でした。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2017-09-09 22:38:33)
227.  独立機関銃隊未だ射撃中 《ネタバレ》 
この映画の陰の主役と言えるのは、三橋達也たち五人の兵士が撃ちまくる九二式重機関銃です。使われているのはもちろん撮影用のレプリカでしょうが、金属を多用して製作されているので、質感がとてもリアルに感じます。機関銃発射までの手順も丁寧に描写しており、脇に控える兵士が保弾盤を使って弾薬補給するところなんて実感たっぷりです。“狙撃機関銃”の異名をとるだけのことはあって、スコープを使って射撃するシーンもあります。昭和三〇年代の映画ですから、実際にこの機関銃を撃った経験があるスタッフもいたんじゃないでしょうか。そういや軍隊経験のある親父も、「九二式重機は撃ちやすくて命中率が高い、陸軍で最良の兵器だった」と回想していました。 ほぼトーチカの中だけで物語が進行する密室劇の様な趣きもあって、日本版『Uボート』みたいなところもあります。敵の砲撃を雨あられと浴びるトーチカの中に籠る恐怖は、爆雷攻撃を受けるUボート乗員の絶望に通じるものがあるんじゃないでしょうか。三橋達也がまた自然でリアルな演技で、この軍曹についてゆけば生き残れるんじゃないか、と頼もしく感じてしまうぐらいです。でもそんな有能な下士官に率いられていても、所詮は多勢に無勢でソ連軍に叩かれて全滅してしまうわけです。その各人の死にざまもけっこうエグくて、佐藤允は火炎放射器に顔を焼かれてモンスターの様な顔貌になってしまうし、志願兵は爆破されたトーチカの中で文字通り肉片になってしまいます。明らかにラストは『西部戦線異状なし』の模倣ですけど、それなりに雰囲気はよく出ていました。 この時期に製作された日本の戦争映画には反戦を主張するイデオロギーの道具の様な代物が多かった印象がありますけど、本作は戦争というか戦闘を真正面から描いていて、なおかつ反戦メッセージとのバランスも良くとれています。ただ少し残念だったのは、九二式重機関銃にかけるような拘りを攻めてくるソ連軍の描写にも見せて欲しかったところです。戦車なんかはまるで国籍・年代不明な代物で、まるでおもちゃ屋で買ってきたブリキ戦車をそのまま撮影に使っているような感じです。どうせプロップやミニチュアを造るんなら、センスさえあればいくらでもソ連戦車に似せることができるんですけどね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-07-31 22:40:33)
228.  7500(2014) 《ネタバレ》 
前のレヴュアーの方、途中でオチに気が付いたとのことですが、恥ずかしながらわたくしめは全然ダメで意表を突かれてしまいました。ですけどストーリーテリングにはけっこう疑問が残りますね。 飛行中の旅客機の中で男が突然死するところから異変が始まるわけで、その後の怪異現象を見せられると、これはいわゆるパンデミック・ゾンビものなのかと思っちゃいます。飛行中の航空機という密室で繰り広げられるゾンビ劇ってなんかそっくりのB級ホラーがあったよな、って余裕こいていたらあの結末です。それはそれでいいんですけど、そしたらあの勿体ぶった怪異現象はいったい何だったの?と首を傾げたくなります。こういった思わせぶりな見せ方は清水崇の得意技ですから、しょうがないのかもしれません。でもこれは日本人的な怪談趣味にはマッチしていることは認めます。 ちなみに、この脚本家はギリシャで実際に起こったヘリオス航空522便墜落事故を参考にしてますね。信じられませんが本当にこんな事故があったんです、CSで放送している『メーデー!航空機事故の真相と真実』でやってました。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2017-07-28 22:19:00)
229.  誘惑(1957) 《ネタバレ》 
かつて売れない画家だった銀座の洋品店の店主(千田是也)は、店の二階を客寄せのためにギャラリーに改装する工事を始めています。数年前に妻を亡くした彼には娘(左幸子)がいて、親の血を引いたのか彼女もオブジェを造ったりするグループに所属して芸術活動に余念がありません。恋人が所属する売れない画家グループのために彼女はギャラリーのこけら落としに彼らの展覧会を開こうと提案しますが、そこはお金が絡むことでもありことが上手く進みません。 登場人物たちの心の声をモノローグで聞かせる撮り方は、単純な手法だけどなかなか面白かったです。ふつう男女が相手を異性として見れば、なにかの感情が頭の中で湧いてくるのは動物の本能みたいなものですからね。銀座のシークエンスはセットで撮影されていますが、雰囲気はルネ・クレールなんかの戦前のフランス映画みたいな感じがします。洋品店と向かい側の喫茶店だけのセットですけど、それぞれの店の一階と二階から見える道路を挟んだ向かい側の光景が印象的に使われていました。さすが才人・中平康だけあってこの若さでフランス映画のエスプリを完璧にマスターしていたと言えます。登場人物たちが多くて群像劇みたいなところがあるストーリーですけど、その中でもヒロインといえる左幸子の個性は光っていました、この人はやはり天才女優です。そして岡本太郎や東郷青児といった有名画家が本人役で出ているのも楽しい、岡本太郎なんてまさに“岡本太郎そのもの”といった存在感でした。 でもそのフランスではヌーヴェル・ヴァーグが始まろうとしていて、同年代のトリュフォーやゴダールが頭角を現しだしていたことを考えると、ここが中平康の限界なのかなとも感じます。小津や溝口といった大家ではなく若手監督が撮った映画ですからねえ、こういうところにその後の60年代の興業面だけではない日本映画界が衰退した根っこがあるんじゃないでしょうか。ヌーヴェル・ヴァーグやニュー・シネマの様なムーヴメントがおきなかったのは、映画先進国の中では日本だけだったということは一度分析されてもいいんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2017-07-05 19:42:29)
230.  怨霊佐倉大騒動 《ネタバレ》 
狂言歌舞伎の題目になっていて有名な佐倉惣五郎の直訴事件をストレート勝負で映像化、かつて活動弁士だった社長の大蔵貢がいかにも好みそうなお話しでもあります。監督は渡辺邦男で佐倉惣五郎役には嵐寛寿郎という、『明治天皇と日露大戦争』で天下をとった新東宝いちの黄金コンビでございます。 お話しは舞台化された佐倉惣五郎もので使われたエピソードというかネタを総動員したって感じで、謂わば集大成と言えます。堀田家のバカ殿様をはじめ家老連中のあくまで憎々しくて、王道のストーリーテリングで安心して観れます。もちろんアラカンも期待通りの重厚な演技、名主とは言え農民なのに役人とのいざこざで見せる立ち振る舞いはまるっきり剣豪のそれなのは、まあご愛敬です。惣五郎一家が処刑されてからのラスト10分は、怨霊となった惣五郎一家が悪役たちに憑りついて大暴れします。アラカンが「そこまでせんでも…これでは映画の余韻が台無しに…」と渋い顔したという話も伝わっていますが、やっぱ新東宝ですからこのお化け屋敷テイストは必須ですよね。 というわけで、深く考えなければ退屈せずに時間がつぶせる一編です。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2017-06-23 22:26:32)
231.  穴(1957) 《ネタバレ》 
以前のレビュアーの方もおっしゃてるように、私も市川崑は”日本のビリー・ワイルダー“だったんだなと再認識させられました。コメディと言っても、邦画界でこれだけセリフ過剰な映画を上手くコントロールできる監督は稀有な存在でしょう。そしてあの京マチ子がこんなに早口なセリフのオンパレードでコメデイ演技を易々とこなせるとは全く想像を超えていました。彼女を観ていると、『ワン・ツー・スリー/ラブハント作戦』のジェームズ・キャグニ―を思い出してしまいました、そういえばこれも監督はビリー・ワイルダーでしたね。 ミステリーと言ってもこういう緩いお話しなので重箱の隅をほじくるような観方をしてもしょうがないです、でもミステリーとしても良く考え込まれた脚本だと思います。ラストの船越英二の飛び込みはちょっとシュールさすら感じる唐突ぶりですけど、そのために窓に空いた大穴の周りで、死ななかった登場人物たち全員がカーテンコール宜しく勝手なことを言い合っているところなんぞ、市川崑らしいブラックな幕切れだと感じました。 でもいちばん訳が判らなかったのは、石原慎太郎の無意味としか言いようがない出演でしょうね。もう調子に乗ってど下手な歌まで披露しちゃうんだから…
[CS・衛星(邦画)] 7点(2017-06-16 23:23:15)
232.  お葬式 《ネタバレ》 
自分が喪主を務めた経験から閃いて一週間で書いた脚本なんだそうですが、その着想と切り口はさすがというしかなく、この一作によって伊丹十三自身も映画作家としての道を切り拓けたわけです。伊丹映画というと作りこまれたキャラの登場人物が特徴ですけど本作は逆に主人公夫婦が俳優というほかは出演者がみな平凡な一般人という設定です。山崎努もお得意の脂ぎったアクの強いキャラではなく、私生活の雑事からは逃げるタイプの優柔不断な男であるってのが新鮮です。この映画の凄いところは、“お葬式”という自身が葬られることも含めてどんな人間でも一度は体験する儀式を、その平凡な進行の中に潜む“可笑しさ”をまるで神の眼で見ているかのように客観的に描いているところなんです。こういう知的なアプローチのコメディはそれまでの日本映画にはほとんど皆無だったことを考えると、伊丹の才能は驚嘆すべきものがあります。さすがに長い俳優生活を経て映画を知り尽くしていただけあって、随所に見られる映画技巧はこれが初監督作とは信じられないですね。その後はどんどんその技巧に溺れるような作風になってしまったのは残念ですけど。 そして見るたびに感じるんですけど、メンヘラ愛人の高瀬春奈のキャラは果たしてこの映画に必要だったのかな、ということです。確かにあの爆尻と腋毛を見せつけるシーンはもう強烈で、現在ならあのシーンのおかげでR15指定ぐらいにされるのは必定でしょう。でもそこでカットバックを使って宮本信子がブランコで揺れるところを見せるのがまた強烈な印象で、あの横移動する木柱は夫の不倫に気づいている彼女の葛藤を表しているんですけど、それと同時に山崎努が高瀬春奈に行っている行為の暗喩にもなっているんです。伊丹の作品にはたいがい1箇所はエロシーンが入るのが恒例ですけど、どの映画でもハッとさせてくれます。彼自身もそういうのが好きなんでしょうけど、それにしてもこの山崎努と高瀬春奈のシーンは、伊丹の全フィルモグラフィ中でも最高峰のエロなんじゃないでしょうか。
[映画館(邦画)] 8点(2017-05-23 23:26:43)
233.  日本暗殺秘録 《ネタバレ》 
これはもう血盟団事件と小沼正のことを描いた映画だとしか言いようがありませんね。聞くところによると、実際に小沼正のことをテーマにした映画を撮るために中島貞夫と笠原和夫が脚本を書いていたら、社長命令でオールスター方式の通史形式になったんだそうです。まあそこは140分の上映時間のうち100分が血盟団事件に尺をとっていることからもうかがえます。脚本は時代を反映しているというか全共闘世代に媚びているというかアジっているような過激さで、自民党筋から製作中止の圧力がかかったというのも頷けるアナーキーさです。ラストの226事件の首謀将校たちの処刑シーンなどは、ちょっとトラウマになりそうなぐらいです。でも小沼正を演じる千葉真一は彼のフィルモグラフィ中でも屈指の名演を見せてくれます。彼は同時代の黒沢年男みたいな激情的な演技が持ち味だったんですが、本作ではそれなりに抑えた演技を見せてくれて魅力的でした。彼と悲恋の関係になる藤純子も、博徒映画の姐御というイメージを払拭させてくれる好演です。脇を固める片岡千恵蔵の井上日昭もさすが千恵蔵という存在感で、多少セリフ回しに灘がありましたがその怪物的なカリスマは圧倒的な迫力があります。 桜田門外の変から始まって226事件までの暗殺事件を取り上げていますが、犯人が処刑もしくは自害で終わらなかったのは、血盟団事件とその影響を受けたこの映画では取り上げられていない515事件だけなんですね。小沼正にいたってはこの映画の製作時にはまだ存命で撮影を見学したっていうのだから驚きです。やはりこの事件が起きた昭和一桁のころは、日本の社会はテロに甘いというかまだまだ民度が低かったと結論付けるしかないでしょうね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2017-04-18 20:52:56)
234.  野火(1959) 《ネタバレ》 
これが現実だったんでしょうけど、日本兵たちの汚れっぷりは凄いもんですね。みんなひげ面で軍服だったとは想像もつかないようなぼろ布を身にまとい靴はボロボロ。最近の太平洋戦争をテーマにした邦画が観るに値しない大きな理由は、俳優たちをここまで汚くさせないところでしょう。船越英二なんか、もちろん役作りには力を入れたんでしょうけど、ひげ面に目ばかりギョロギョロさせていて真に迫っています。この映画はその船越英二演じる田村一等兵の彷徨を描いたロードムービーみたいなものです。教会のある村で出くわしたフィリピン人女性をいきなり射殺するエピソードなんかは唐突過ぎる気もしますが、その他の彼が出くわす人々や戦闘も、まるで田村一等兵が死ぬまでに見た幻想のように観ることもできるでしょう。ということもあって、人肉食というショッキングなテーマもちょっと薄らいでいる気もします。まあそこら辺が市川崑らしいとも言えますけど。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2017-04-14 22:32:30)
235.  宇宙大怪獣ギララ 《ネタバレ》 
松竹が製作した唯一の怪獣特撮映画、おそらくこの称号(?)は確定でしょう。このギララという名前は、当時大々的なキャンペーンを組んで全国の子供から募集して命名されたはずです。 今じゃけっこうトンデモ映画視されていますが、改めて観てみれば特撮シークエンスは当時の東映や日活に比べても遜色はない水準だったと思います。けっこう都市破壊にも頑張ってるし、とりあえずギララは北関東まで出張って関八州で暴れまわったみたいです。ギララの造形自体も宇宙怪獣という設定もありどの動物にも親和性がなく、個人的にはけっこう好きなカタチです。 と、ここまでは褒めてみましたが、宇宙シークエンスと本編ドラマがもうひどすぎます。特に何の必然性もなかった月基地の挿話はひどかった。月面基地内に木製のお風呂があり、おまけにラウンジまであってカクテルドレスに着替えた女性陣とダンスを楽しめます、ってここは京橋のグランシャトーかよ!(むかし関西に住んでいた時さんざんこのCMを観ましたっけ)主人公は高倉健の従弟みたいな顔つきの男で、なんでこんな任侠映画の方が合いそうな奴が日米のおなごと三角関係みたいな展開になるんだよ!脚本を書いた人は初代『ゴジラ』の芹沢博士たちの悲恋のような三角関係を少しは見習え! とどめはやはり音楽で、特撮映画にいずみたくを起用するセンスは絶望的、まあそこが松竹らしいと言えなくもないですが…
[CS・衛星(邦画)] 2点(2017-03-24 23:35:44)
236.  監督・ばんざい! 《ネタバレ》 
北野武版『81/2』という感じなんでしょうけど、自分版『81/2』を撮った映画作家たちは芸術性の行き詰まりをテーマにとしているのに、「どうしたらウケる映画すなわちヒット作が撮れるか?」というどの映画監督も悩んでいるけど口に出せないことを赤裸々に語っちゃうところが武らしいです。小津風、文芸作品、昭和回顧、ホラーもの、忍者映画、と構想練るものの次々に失敗する展開はなかなかの抱腹ものです。武登場シーンのほぼ半分はたけし人形に代役させるのも傑作で、もうこの人は映画に出て演技するのが嫌になっちゃったんじゃないかと勘繰りたくもなります。このまま続けば楽しいのに、SF編になってからは訳の分からない展開で、けっきょく『みんな~やってるか!』とおんなじ様なパターンとなってしまいました。私はたけし軍団の中では井出らっきょが特に嫌いなので、途中から見ていて苦痛でなりませんでした。最近は地上波でもやらない様なセンスが悪いギャグを延々と見せられた挙句の小惑星の地球激突、これがSF編だったことをすっかり忘れていました(笑)。 まあこんな悪ふざけをお金を払った観客に見せつけた末に、「やっぱバイオレンス映画しか受けないんだ」と気が付いて『アウトレイジ』を撮るわけですが、もっと早く気づけよ!
[CS・衛星(邦画)] 3点(2017-03-09 23:31:42)
237.  陸軍中野学校 竜三号指令 《ネタバレ》 
軍事探偵ものとしてはかなりイイ線行っている出来じゃないでしょうか。シリーズ三作目となって市川雷蔵の背広スパイぶりも堂に入ってきました。地味目ではありますがメガネや万年筆といったスパイものらしいガジェットも登場したりして、雰囲気がでています。シリーズお約束の雷蔵の変装も、ちょっと地味でしたがちゃんとツボは押さえてらっしゃいます。ストーリーはもちろんフィクションですが、蒋介石との和平交渉やそれを邪魔しようとする参謀本部との対立など史実を上手く溶け込ませた脚本です。中国人役はがきちんと(たぶん)中国語を喋っているところも好感が持てます。細かいなと思ったのは杉本が顔を洗っていて中国兵に正体がばれるところで、中国兵曰く「手を動かして顔を洗っているからこいつは日本人だ!」なんだそうです。ということは、中国人はお椀にして貯めた水につけた顔の方を動かすってことなんですかね?ちょっと想像つかない図なんですけど… とはいえ突っ込みどころもちゃんとあります。ラストで死に際の黒幕が明かす衝撃の事実、つまりヒロインは日独のハーフだった!でも演じているのは安田道代、どう見たって両親は東洋人でしかあり得ないお顔なんですけど…
[CS・衛星(邦画)] 6点(2017-02-28 21:37:40)
238.  SHORT PEACE
『武器よさらば』、そういえば昔ヤングマガジンかなんかに載っていたのを読みましたよ。あのころの大友克洋は『童夢』も描いていたし、この人の才能が満開に近かった時期ではなかったかな。それがこうやって30年の月日が過ぎてアニメになって甦るとは感無量です。彼の画はとてつもなく緻密だから、これぐらいの短編の尺が製作側としてもちょうど良いんじゃないでしょうか。いかにも大友らしいオチが微笑ましいとも言えます。他の三篇は時代設定が戦国時代や江戸時代という最近の彼の趣味が反映している感が強いですが、『武器よさらば』との組み合わせは映画としてはどうなのかなと首をかしげるところがあります。でも個人的には『火要鎮』の独特の世界感がツボでした。 大友克洋と言えば『気分はもう戦争』や『童夢』のアニメ化が実現する可能性はないんでしょうかね?やっぱり『童夢』はあまりに画が凄すぎて無理かもしれない。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2017-02-27 23:38:10)
239.  恐竜・怪鳥の伝説 《ネタバレ》 
いやもう何と言いますか、スッゲーものを観てしまったとしか感想はございません。「突っ込んだるぞー!」と気合い入れて観始めましたが、まさかこれほど愉しませていただけるとは感激です(笑)。でもこれだけは皆さんにぜひ広めたいポイントを挙げておきます。①プレシオサウルスや翼竜よりはるかにカネと手間をかけている人体破壊シーン、東映はほんとに子供向けを狙っていたのか?併映が『ドカベン』と『世界のスーパーカー』ですからねえ…②TVニュースで大々的に報道している割には恐竜対策にあたるのが自衛隊はおろか警察ですらなく、なんと村の消防団!なぜか爆雷なんて物騒なものを持っている不思議な村です。山と積んだ爆雷に慌てた警官が拳銃弾を撃ち込み大爆発で消防団は全滅、思わず「ウソだろ!」と画面に突っ込んでしまいました。③西湖の湖底がなぜか樹海につながっていて渡瀬恒彦たちはラストはウエットスーツを着て森の中を彷徨うという不思議な光景を見せられます。そして富士山が大噴火、二人は地面が割れて火が噴き出す中を逃げまどいます。でもどう見ても渡瀬恒彦の方が常に恋人より先を進んでいて、彼女を捨てて逃げてる風にしか見えません。そして恋人は割れて火を噴く地面に落ちそうになりますが、それを救い上げようとするシーンがもう引っ張ること引っ張ること、でもあれじゃあ溶岩に飲み込まれて二人とも死んだとしか解釈のしようがないラストです。どっと疲れました。④そして絶望するほどチープかつダサい音楽、だいたい諸口あきらって、誰よ? でもこの映画ってけっこう各国に売れて、海外でもカルト映画になっているそうです。ちょっと恥ずかしい気分です。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2017-01-30 23:51:06)(良:1票)
240.  処刑遊戯 《ネタバレ》 
前二作とは180度違う超ハードボイルド・タッチです。始めの方で前作のラストの銃撃戦のことがちょっと出てくるので、一応は『処刑遊戯』の後日談という体裁にはなっています。謎の女りりィ(そういえばこの人先日亡くなりましたね)が実は意外な役どころだったという展開は面白いし、シリーズでは唯一まともな脚本で撮られたといえます。多少はセリフの臭みが鼻につきますけど、本作の松田優作は彼のフィルモグラフィの中でも頂点といってよいほどのカッコよさじゃないでしょうか。反対にどうも生理的にムズムズしてしょうがなかったのが優作に殺される青木義朗の殺し屋で、優作なら許せますけど同じように臭いセリフをこの人が言ってもねえ。前作までの撮り方ならばりりィはベッドシーンで脱ぎまくってたはずなのにシーツを身体に巻いて不自然なまでの隠し様、これならもっと潔く脱ぐ女優を使った方が良かったんじゃないかと思いますが、捨て難い存在感を彼女が持っていたことは否定できません。ラストはお約束の大銃撃戦ですが、なぜか各部屋に一人ずつ敵キャラがいてこれまた一人ずつ優作に撃ち殺されていきます、これじゃあまるで最近の主観モードのシューティングゲームですよ(笑)。 そういえば森下愛子も出てましたよね、彼女の使い方はなかなかシャレていたと思いました。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2016-12-25 22:00:09)
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