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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2398
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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41.  ブレット・トレイン 《ネタバレ》 
恐るべきパラレル・ワールド、ニッポン!ここでは超豪華シンカンセン・ゆかりが東海道をリニア新幹線の様にぶとっばしている!でも東京駅を夜に出発して京都駅に着くころには夜が明けているけどね(笑)。ここは海外のサブカルマニアが妄想しているニッポンそのものって感じです。主演が日本カルチャー大好きなブラピを起用しているのは、さすが製作者たちは判ってらっしゃる、なんせ『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』のことをインタビューで熱く語る人ですからねえ(笑)。 伊坂幸太郎の小説が原作らしいけど、私は未読。でもこの列車に乗り込んでくる魑魅魍魎たちの関係が恐ろしいまでにややこしい。とくにホワイト・デス(マイケル・シャノン)長老(真田広之)殺し屋ウルフの三人もがかつて妻が殺されて復讐を企んでいてその回想シーンが挿入されてくるので、余計にストーリーを把握するのに苦労させられました。まあこの映画全編が伏線だらけみたいなものですから、最後に(けっこう強引だけど)綺麗に回収してくれたのは快感でしたけどね。京都についてからのブラピたちとホワイト・デス一味の対決が始まるともうほんとに何でもあり状態、新幹線同士がなぜか正面衝突までするという滅多に見れない光景まで拝めるんですからね。そんなカオスの中でも、狭い車内で見せる真田広之の刀裁きはさすがに見事でした。ラストでチラッと登場するサンドラ・ブロック、『ザ・ロストシティ』に続いてのブラピとの共演、でも『ザ・ロストシティ』とは逆で彼女の方がカメオ出演みたいな感じだったのが面白い。そしてなぜかノン・クレジット出演のチャニング・テイタム、あれはもう彼のパブリック・イメージを逆手にとったセルフ・パロディって感じですかね、そういやこの人も『ザ・ロストシティ』に出演していたなあ… 余談ですが、Bulletをブレットと表記するのはいかがなもんですかね、発音はどう聞いてもバレットなんですけど。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-05-13 23:44:35)
42.  Back Street Girls -ゴクドルズ- 《ネタバレ》 
私は原作コミックもTV放映アニメも未見で、「ヤクザ三人組が下手打って指ならぬアソコをつめて地下アイドルデビュー!」なんて超バカバカしいプロットなんで期待せずに観ましたが、けっこう真面目に撮っていて面白かったです。女性化した三人はなかなか魅力的で、だいいち彼女らの披露する楽曲が極道ネタを巧みに取り入れた歌詞で、しかもちゃんとアイドルソングとして成立しているのが凄い。聞けば三人はゴクドルズとして劇中楽曲をフューチャーしてアルバムリリースまでしているそうで、この楽曲の出来具合ならアイドルファンも納得できるんじゃないかな。挿入されているライブ映像も実に楽しそうで、コロナ流行以前のアイドルライブの盛り上がりがなんかすごく懐かしい感じがします。終盤のアイドルフェスに出演している他の架空アイドルのパフォーマンスも手抜きなくそれらしくて、良く創りこまれていると思います。女性化した三人のかつての荒ぶる男性としての内面との葛藤を男優との掛け合いとして見せる演出も秀逸、でもそれが彼女らが便所で便座に腰かけているときに扉ごしというのは、どういうもんですかね(笑)。岩城滉一の何を考えているのか理解不能な親分も、彼の貫禄で振りきったという感じですかね。そう言えば友情出演でちょっとだけ顔を見せた大杉漣は、これが遺作というか最後の映画出演だったと思うと感慨深いです。 ラストにはまさかの多幸感まであって掘り出し物でした、これなら続編製作もありなんじゃない?
[CS・衛星(邦画)] 7点(2023-05-10 23:03:30)
43.  大怪獣のあとしまつ 《ネタバレ》 
ぶっちゃけますと、私は怪獣映画もおバカ映画も大好物です。でも近年まれにみる罵倒と酷評にまみれてしまった本作、まあ覚悟を決めて観ましたよ。 “死んでしまった怪獣の死骸はどう処理をするのが正解なのか?”という視点は、古今東西のモンスター映画にはついぞなかったもので、このアイデアを基に映画を一本撮ったということはそれはそれで快挙だと言えるでしょう。とくに前半は『シン・ゴジラ』を彷彿させるような真面目にリアリティを追及しているようにも感じます。怪獣の出現自体がリアルな世界での新型コロナの暗喩なのかとか、怪獣の腐敗ガスが爆発的に噴出する絵面は福島原発事故の水素爆発を想起させようとしているのかとか勘ぐりましたが、どうもそれは買いかぶりすぎだったようです。それは内閣の対応ぶりと西田敏行総理を始めとする大臣たちのキャラが、観ていて寒くなるほどの低レベルなギャグを繰り広げてくれるのが決定的でした。つまり山田涼介や土屋太鳳が見せるシリアスな芝居と、ムダに豪華なキャスティングの内閣の面々が見せてくれるギャグ芝居との乖離があまりに大きいわけです。たしかに『シン・ゴジラ』でも緊張感を緩める息抜きのような芝居もありましたが、庵野秀明にこの監督ののセンスは足元にも及ばないんですからどうしようもない。いっそのことこの小劇場的なセンスのギャグで全体を統一しちゃえば良かったのかというと、「それならこんなに予算をかけて劇場映画にする必要なくね?」ということになるんでしょうね。 とは言ってもそこそこに愉しんで観ていた私ですけど、あのまったく意味が判らないラストにはさすがに呆れました。もし劇場で観ていたらそれこそ「金返せ!」と暴れたかもしれません。「せっかく良い食材が手に入ったのに、なんちゅう料理をしてくれたんじゃ!」というのが私の感想でございます。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2023-05-07 22:45:02)(良:1票)
44.  兵隊やくざ 大脱走 《ネタバレ》 
本作まで常に部隊からの脱走を繰り返してきた有田と大宮なんですが、ソ連軍が満洲に侵攻してきたご時世となり身の安全を図るために自ら部隊に紛れ込むようになったのが面白い。まあその部隊はソ連軍に急襲されて全滅、生き残った彼らが今度は将校コスプレして通りすがりの部隊に潜り込むという展開。つまりサブタイトルに『大脱走』と銘打っているけど、本作では彼らはお得意の部隊脱走はやらかさないという新パターンで、『大脱走』とはクライマックスの保護した避難民を連れての脱出劇のことなのかと思います。 ソ連侵攻が始まっているとはいえ平常時と変わらない兵営生活を送っているところは「そんなのあり?」と違和感がありましたが、玉砕前提の捨て駒兵力として残置されているのでみな達観していると受け取ることもできるでしょう。本作では有田=田村高廣の存在感が高くなっているストーリーテリングのような気がして、偽中尉・有田の堂々たる指揮ぶりは惚れ惚れさせられました。でも “有田と大宮=勝新太郎の同性愛的な関係”というこのシリーズの裏テーマは健在で、慰問団の娘=安田道代と一夜を共にして帰ってきた大宮に嫉妬ともとれる視線を注ぐ有田の姿に象徴されていました。 そしてシリーズ前半の最大の悪役である青柳=成田三樹夫が再登場するわけですが、なんと脱走目的で憲兵から歩兵の上等兵に化けているというサプライズ。「お前らはバカか、脱走するには兵士が最適なのにわざわざ士官に化けるなんて」と嘲笑する青柳の言葉は、なるほど真理を突いていますね(笑)。この偽兵士・将校の三人組が今度はどんなバトルを見せてくれるのかと思えば意外にも最後にはすっかり善人と化してしまった青柳、拍子抜けさせられました。 本作は前半と後半ではストーリーの繋がりが悪い感じがするのが難点。どうせ成田三樹夫を再登場させるなら、もっと絡ませる脚本にしたら良かったのにねえ。
[試写会(邦画)] 5点(2023-05-04 17:31:09)
45.  兵隊やくざ 脱獄 《ネタバレ》 
前作のラストでサイドカーを奪って脱走した大宮と有田、冒頭からそこはきっちりと繋がっていて、けっきょく追手に捕まって陸軍刑務所にぶち込まれる。たぶん史実通りなんでしょうけど、作業に駆り出される以外は囚人は日中ずっと壁に向き合って正座していないといけない。もちろん私語は禁止、ちょっと自分には耐えられそうもない苦行です。けっきょく脱獄には失敗したわけで、『兵隊やくざ 脱獄』とは看板に偽りありです(笑)。そこで有田の大学時代の旧友の法務中尉と出会ったので死刑は免れてソ満国境の最前線部隊に転属される。「俺たちは帰国したいばっかりに脱走を繰り返してきたのに、とうとう日本からいちばん遠いところにまで流されてしまったなぁ…」という有田の嘆きが胸を打ちます。 本作は今までの三作と較べてコメディ要素がほとんどなくもっともシリアスなストーリーです。ここで出会った上官の下士官が大宮=勝新太郎曰く「今までの軍隊生活で出会った中で最悪の上官」となります。なんせ終いには、せっせと現地民から貴金属を買い集めていた兵士=田中邦衛を殺害して宝石を横取りしちゃうんですからねえ。そして最後には有田=田村高廣に射殺されて果てるのですが、このシリーズで初めて(大宮でさえやってないのに)有田が人を殺めることになりました。すでに時は昭和20年8月9日、ソ連が国境を破って攻め込んで来てしまって、避難民をトラックで避難させた大宮・有田のコンビの運命や如何に… ということでシリーズ半分弱のところでソ連参戦、実際には満洲における戦いはあと一か月は続くんですけど、そこにあと五作も詰め込むんですからどういう展開になるのか心配というか愉しみです。でもシリアスなテイストの本作ですが、私にはこのシリーズ中いちばん見応えがありました、暫定一位です。初めて大宮・有田が脱走しないラストでしたが、小川真由美を捨てて田村高廣のもとに戻ってゆく勝新太郎の姿を見ると、男の友情・戦友愛というよりも同性愛的なニュアンスを感じるという批評にも一理ありかなと感じた次第です。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-04-04 22:59:00)
46.  ゴジラvsコング 《ネタバレ》 
なんかこのシリーズ、回を重ねるごとに脚本が酷くなってきましたね。ゴジラとコングが対決しても、東宝特撮の『キンゴジ』の例もあり勝負つかず引き分けというという予測通りの結末でしたが、ここにメカゴジラを登場させてゴジラ&コングvsメカゴジラの変則タッグマッチが用意されていたとは期待を良い感じで裏切ってくれました。でもそのメカゴジラを操縦するのは小栗旬、芹澤蓮なんて名前だから芹澤博士の遺児であろうと当然予測しますが、劇中このキャラについては一切説明がないのでわざわざこのキャラ名にしたのか意味が判りませんでした。「それだけはやって欲しくなかった…」と思わず呻かされたのは唖者の少女とコングが手話だかテレパシーだかで会話が出来るという設定で、これじゃあ昭和のガメラ・シリーズと一緒じゃんか!日本では『シン・ゴジラ』などから始まる『シン…』作品群が現実世界にシンクロさせたリアル路線であるのとは対照的です。そして頭を抱えたくなるのは真面目に“地球空洞説”を取り入れているところで、空洞内の原始的な世界がコングとゴジラの生誕の地なんだそうです。何故かその世界に埋まっていた化石みたいな銅剣をコングが見つけて振り回し始める、これまた何の説明が無いので事情が理解できませんが、これはコングがエクスカリバーを見つけたと解釈すればいいんですかね(笑)。またまたチャイナ・マネーの御威光か三怪獣の決戦の地は香港でしたが、どうせなら北京でゴジラが荒ぶって中南海あたりを廃墟にする画が観てみたい(笑)。 またエイペックスなる悪の秘密結社みたいな企業の内部告発者という役柄の男、こいつイルミナティまで持ち出すバリバリの陰謀論YouTuberなんだけど、こういう陰謀論者が真実を探り当てたみたいなヒーローにするのは、ほんと止めて欲しい不快です。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2023-04-01 23:23:18)
47.  ベイビーわるきゅーれ 《ネタバレ》 
期待しないで観始めましたが、JKコンビがヒットマンで高校卒業とともに二人で自炊生活を始めるという世界線には思わず引き込まれてしまいました。二人が属する組織はなんか芸能事務所みたいな感じで、周りに客がいるのに殺しのビジネス打ち合わせを喫茶店でやっているところは、アイドルとマネージャーにしか見えなません。この二人の元JKがまた対照的なキャラで、とくにコミ障の金髪ショートの伊澤彩織はその聞き取りにくいボソボソ・セリフとキレッキレのアクションには引き付けられてしまいました。聞けば彼女はハリウッドでも活躍しているアクション・スタント・ウーマンなんだそうで、きっとこれから日本のゾーイ・ベルみたいな存在になるんじゃないかな。相方の高石あかりとともに卒業したばかりのJKを演じているわけですが、伊澤の方が9歳も年上だと言うから驚き、違和感が全然ない!彼女らが立ち回るバイト先などもなんかシュールな世界感で、冒頭のコンビニなんて店員がみなナイフを持ってるヤクザか半グレが運営しているような不思議なお店でした。組織には死体の後始末をしてくれる専属の掃除屋がいるんですが、このイケメン君がビジネスライクに徹しているのが面白い。「お願いですから眉間を撃ちぬくのだけは止めてください、少しは後始末する身になっていただけたら幸いです」なんて愚痴をこぼすのですが、やっぱ頭の中から色んなモノが出てくるのはプロにもしんどいところがあるみたいですね(笑)。本宮泰風が演じるヤクザの親子も面白いキャラで、あの『日本統一』の本宮ですからてっきりラスボスとして彼女らに立ちふさがるのかと思いきや、息子と二人でメイドカフェに行ったばかりに遭えなく退場。まあ仇を獲るべく娘が大暴れはしてくれますけど、ほとんど彼はギャグ・キャラでした。 こうやって見るとこの映画のテーマは「殺し屋の社会適応」という感じだったと言えますが、ぶっ飛びすぎている設定とヒロインたちの生活が不思議と噛み合っていて、なかなかの良作かとお見受けいたしました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-03-31 23:21:20)
48.  熱泥地 [短縮公開版] 《ネタバレ》 
二本立て・三本立て興行を維持するために、末期の新東宝は旧新東宝(大倉貢体制になる前の健全なころ)の作品を尺をぶった切って短縮版にしたうえで改題して再公開するという荒業というか禁じ手を使って配給作品を増やしました。50年代とはいえさすがに監督協会からは抗議されましたが、「脚本の著作権は原作者やオリジナル脚本にあるが、映画としての著作権は資金を出して製作した者、つまり映画会社にある」という強引な主張で押し切っていました。後にお昼の時間帯に東京12チャンネル(今のTV東京)が放映したいわゆる“東京12チャンネルver”の先取りみたいなものですね。『現金と美女と三悪人』という身も蓋もないタイトルに変えられた本作は、オリジナルの尺は100分余りで、つまり三分の一程度がカットされているわけですが、許せないのはこれらの短縮版たちは杜撰な体制だったのでオリジナル・ネガが喪失してしまっていることでしょう。まあどの作品も映画史的に貴重というわけではないのも確かですけどね。 さて本作、三分の一カットされている割にはストーリーは破綻していなくて、まあ編集としては上手いと言えるかもしれません。藤田進が酒浸りの現金強奪犯というキャラを演じているのは珍しい、まだ若いのに既に老け顔の東野英治郎のふてぶてしい悪役ぶりも板についています。唯一の女優である利根はる恵はデビュー直後の出演ですが、とても終戦直後の女性とは思えないそのグラマーな肢体には驚きました。でも細かい描写はほとんどカットされているので、やはりぶつ切り感は否めないかと思います。だいいち、“三悪人”とは誰なのか?という疑問が、二人は判るんですけどねえ。 監督・市川崑、音楽・伊福部昭という組み合わせは珍しいかも、でも伊福部昭の音楽にはすでにゴジラ風味があって笑ってしまいました。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2023-03-13 21:49:58)
49.  新・兵隊やくざ 《ネタバレ》 
三作目も前作と同様に脱走したが再び他の部隊に見つかって何とか潜り込むことで軍隊生活になってしまった大宮と有田、しかし今回は開幕十五分余りで部隊を脱走、そこからは天津の街に紛れ込んでゆくという新しい展開です。ここでは女郎屋でこき使われた挙句女郎を引き連れて逃亡、なんとその女郎たちとともに新規に女郎屋を始めるという予想外な展開。本作では藤岡琢也=豊後一等兵や玉川良一=坊主上がりの上州一等兵といったゲストキャラが登場しますが、彼らが良い味出しているんです。大宮と有田の関係も、それぞれの出自が違うところから来る対立もありながらも、友情・信頼関係がより深まってゆくところが丁寧に描かれています。二人が同性愛的な心情を持っている観方もありますが、これはさもありなんという感じです。後半から登場する成田三樹夫=青柳憲兵伍長がまた彼にマッチした悪辣なキャラで、まるで憲兵隊のラインハルト・ハイドリヒという風情すら感じてしまいました。大宮と嵯峨三智子=桃子が結婚してしまう展開もびっくりですが、後のシリーズでは桃子という役は登場しないみたいなので、この結婚の先行きが心配です(笑)。 本作は軍隊映画というよりもヤクザ・マフィア映画に分類したくなるテイストでしたが、ここまでのシリーズ三作中ではもっとも痛快でした。ラストが大暴れしたあと何か乗り物を分捕って銃撃を浴びながら脱走するというのはいつもの展開ですが、むき出しのサイドカーに乗って突破するというのはさすがに無理ゲーでしょう、ほんと二人には一発も弾が当らないんだから(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2023-02-28 23:16:53)
50.  続・兵隊やくざ 《ネタバレ》 
前作ラストで機関車を強奪して脱走したかに見えた大宮と有田、その機関車がゲリラに爆破され負傷して病院送り、原隊はフィリピンに転進した後なので地元の部隊に編入、つまり軍隊生活に逆戻りというわけです。前作以上にその部隊は陰湿で、こうやって見ますとまるで刑務所ものみたいなお話しですね。大宮=勝新太郎の石頭ならぬ石面、ビンタを喰らわす相手が手を痛めるという大宮の得意技(?)はこれからも定番になりそうです。大宮が惚れた看護婦=小山明子にアソコの毛をお守りにねだるのですが、本来脚本では石鹸を所望するとなっていたのを勝新が毛に変えさせたそうで、さすが勝新、大宮というキャラを二作目にして完全にモノにしています。物語自体はちょっとやり過ぎというぐらいに大宮と有田が暴れまわった挙句に今度はトラックを強奪して脱走という前作を踏襲した幕の下ろし方でしたが、続編としては勝新と田村高廣のキャラを定着させて次作に繋げる手堅い出来かなと思います。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2023-02-28 00:52:02)
51.  鉄砲玉の美学 《ネタバレ》 
東映との提携作品とはいえ、今は亡きATGが唯一製作したヤクザ映画として観ると貴重。監督は中島貞夫ですけど、サウンドトラックに頭脳警察を起用するところなどATGっぽさが感じられます。渡瀬恒彦の他は、東映ヤクザ映画の常連は川谷拓三と小池朝雄ぐらいしか男優では顔を見せないので、一段とATG風味が濃厚となっています。渡瀬は聞き取りにくいほど早口な河内弁でまくし立てるチンピラで、これは好演です。彼が商売のネタにしていたのが“これ以上大きくならないウサギ”なんですが、こいつらがキャベツをむしゃむしゃ喰ってどんどん成長してゆくのが可笑しい。鉄砲玉になって宮崎に乗り込んでからも、拳銃と軍資金100万円を貰っているのに大して暴れもせずけっきょく自分の遊興にのめり込むだけ、対する宮崎地元の組織も渡瀬の属する組織の意図が見え見えなだけに、何をされても大人しく恭順の意を見せるだけ。低予算を逆手にとったような実録ヤクザ映画ファンが怒りそうな何も起こらない展開、とくに中盤はタイアップしたホテルに気を使ったようなシーンの連続なのが鼻じらむところです。中島貞夫は当時の東映ヤクザ路線でも深作欣二のような本流ではないのですが、彼本来の志向としてはアヴァンギャルドに親和的だったみたいな感じです。鉄砲玉・渡瀬の死に方としてはもっと壮絶かつ無様な方が良かったのにとつくづく思います、これじゃまるで『真夜中のカーボーイ』のダスティン・ホフマンと一緒じゃないですか(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2023-02-25 23:25:38)
52.  血とダイヤモンド 《ネタバレ》 
3億6000万円相当の価値があるダイヤ原石を税関前で強奪することを計画する宇津木組(ボスは田崎潤)。ところがその計画は思わぬルートで漏れて、小柴(佐藤允)がかき集めた四人組によってダイヤは横取りされてしまう。ダイヤの保険を引き受けた保険会社から調査を請け負っていたゴロツキ私立探偵黒木(宝田明)は、ダイヤを警備するガードマンの線から利恵(水野久美)が強奪に絡んでいると見抜いて保険会社と密約してダイヤ争奪に割り込んでくる。神戸港の倉庫に逃げ込んだ小柴一味だが、小柴は犯行の際に負った銃創がどんどん悪化してゆく。彼らは町の外科医・秋津(志村喬)父娘を拉致して来て、小柴を治療させる。こうしてハイエナされた宇津木組やダイヤ故買商、そして警察も含めた一夜限りの大乱戦が幕を開けるのであった。 監督の福田純は捻ったストーリーを書く東宝の脚本家として知る人ぞ知る存在ですが、監督としてはその才気が邪魔したのか評価は決して高くない。その中でも『百発百中』と並んで本作は隠れた傑作として名高い。どちらも宝田明が主演で、この両名はコンビを組むと不思議な化学反応が起きるみたいです。この映画は佐藤允一味や水野久美たちの背景事情などはほとんど語られることはないストーリーテリングですけど、ほぼ一晩の佐藤允一味・志村喬親子・宝田明の言動だけに絞った脚本には東宝には珍しいフィルムノワール色が濃厚です。とにかく序盤を過ぎると登場人物たちの裏切りの連続、まるでゲーム理論で言うところの“囚人のジレンマ”を具現化したような壮絶さです。まあ警察以外では志村喬親子以外は大なり小なり悪人なんですが、意外とそれまで演じることが少なかった水野久美の悪女キャラが彼女のイメージ通りでかえって新鮮でした。行き掛かりで宝田明と文字通り“血を分けた兄弟分”関係になった佐藤允ですが、劇中ずっと銃創で悶え苦しんだ挙句の壮絶な死にざまは見事です。 悪党一味はそれぞれが普段のイメージとちょっと違う演技を見せてくれたのが良かったですけど、志村喬だけは『生きる』の主人公の様ないつものキャラでした(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-01-13 22:34:33)
53.  暴力金脈 《ネタバレ》 
東映実録路線もついにネタが尽きたか、とうとう総会屋が主人公の映画を製作することに。総会屋なんて稼業はコンプライアンスが厳しい現代では絶滅危惧種で、もはや金融業界の人間でも「そういや、かつて総会屋なんてものがあったということは聞いたことがある」という程度の存在ですが、いわば経済ヤクザのはしりみたいなものだったんじゃないでしょうか。だいたいにおいて、資本主義国家の中でも日本の株主総会は他国では考えられないような異質なものだったから(今でもそうかな?)、総会屋みたいな職業(?)が成立出来たんでしょうね。最盛期には一万人いたそうですが、現在では警察の調べでは190人程度しか総会屋はいないそうです。正直とっくに絶滅したって思っていましたが、こんなグローバル化した金融界で、この人たちはどうやって食べているんでしょうかね? 本作は当時まだ現役バリバリだった大物総会屋・小川薫がモデルなんだそうです。松方弘樹が演じる大阪のチンピラ総会屋が東京で成り上がってゆく物語ですが、松方はこれが初の主演映画です。中盤までの展開はかなりコメディ調で、それが中盤以降はだんだんシリアスになってゆき総会での松方の大演説ラストとなります。これは前半は笠原和夫で後半が野上龍雄と執筆した脚本家が分かれたせいかと思いますが、このタッチの違いはかえってこの映画の弱点となってしまったかと思います。笠原は御存じ『仁義なき戦い』で有名なヤクザ映画のドン、小川薫のことにも精通していて彼の取材がこの企画の元ネタです。対するそれまで任侠もの脚本がメインだった野上は経済ヤクザのことは全く判らず、それで近親相姦まで持ち出してくるドロドロ劇にしてしまったんじゃないかと思います。山城新伍・田中邦衛・小沢栄太郎と言った面々も顔を見せますがみなそれぞれ一エピソード程度で、実質として松方弘樹と梅宮辰夫がメインでそこに丹波哲郎が絡むというストーリーテリングでした。それでも丹波は相変わらずの存在感を見せ、ラストの総会は松方の奮闘も空しく仕切り役・丹波の勝利に終わった感じで、どこか無常感がある幕切れでした。 これ以降に総会屋が主人公の映画は存在しない異質の作品ですけど、その後にVシネマなんかで闇金稼業が題材になる現代まで続く潮流の先駆けとなったのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-12-03 22:56:07)
54.  地獄の花園 《ネタバレ》 
徹頭徹尾ヤンキー漫画のパロディで、脚本を書いたバカリズムのこのジャンルに対する愛が感じられるぐらいです。彼はこの前に『架空OL日記』という怪作を撮って自ら制服コスプレして主演までしているぐらいで、どんだけOLが好きなんだよ、と思わず突っ込んでしまいます。主演の可愛い平凡OLが永野芽郁、まあ彼女が本性を表すだろうなということは予想が付きますけど、思った以上にアクションの動きがキレキレでなかなか良かったです(もっともCGのおかげだったかも)。学生時代はスケバンやレディースでトップをとっていた連中が就職してOLになり、それでも各社で裏OLを従えて抗争を繰り広げるという世界線がバカバカしいけど面白い。この裏OLたちもケバい化粧だけど社内では普通にOL仕事をこなしている、そして時には社内にまで乗り込んでの大乱闘を繰り広げるけど、一般OLや上司たちはそれがまるで目に入らないような無関係の存在、まるで社内に異世界が拡がっているような世界観がまた面白かった。“地上最強のOL”小池栄子もまつ毛を無くしての怪演、でもなんか10歳は若返ったような感じで、ちょっと見では彼女とは気が付きませんでしたよ。監督は知る人ぞ知る関和亮、劇場映画は初監督ですが彼は初期からMV監督としてPerfumeのブレイクに貢献し、海外アーチストではOK Goの『I Want Let You Down』という度肝を抜かれるような映像のMVを手掛けている鬼才です。彼ならデビュー作でこれぐらいの映画なら難なく撮っちゃえるでしょうね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-11-30 23:02:36)
55.  雷撃隊出動 《ネタバレ》 
湿っぽいストーリーなので現在の視点からはまるで反戦映画の様に捉えられがちですけど、まあこれは普通に戦意高揚プロパガンダ映画だと思います。帝国海軍の雷撃機部隊をメインに据えていますが、そもそも海軍航空隊は43年以降は華々しい勝ち戦はほぼ皆無、さすがに実話での景気が良いお話しにはできなかったんじゃないですか。すでに特攻隊が編成されたという事が大々的に新聞等で報道された後ですからねえ。 迷彩された甲板やゼロ戦の部隊番号からして、空母瑞鶴とその航空隊が撮影に参加していることは明白で、貴重なフィルム映像資料となっています。おそらく時期としてはマリアナ沖海戦からレイテ沖海戦までの間でしょう。円谷英二の特撮は戦争末期ということもあってスケールダウン感はぬぐえませんが、雷撃機に正面から撃ち込んでくる高額処理された曳光弾には、さすがに迫力がありました。 公開時にはレイテ沖海戦に惨敗して瑞鶴も海の藻屑と消えて連合艦隊は実質的に壊滅していたのは有名ですけど、撮影中もさすがにスタッフは戦争の行く末が危ないことは実感していたんじゃないかな。現代人としては理解しがたいところがありますが、当時の日本は軍部も国民もいわば“滅びの美学”というようなものに憑りつかれていたような気がします。劇中でも「米国は人命の損失がいちばん堪えるから、10人殺してひとり戦死すれば勝てる」なんてセリフがありましたが、実際には殺すどころか敵艦に近づくことすらできずに一方的に撃墜されていたのが現実です。こういう心理状態にまで追い込まれていますので、ラストで敵艦隊壊滅の代償で雷撃隊が全滅しても製作側も観客もちっとも反戦的なメッセージというふうに受け取ることはなかったはずです。 興味深いことに、ナチス・ドイツも戦時中プロパガンダ映画をけっこう製作していますが実際に進行している戦争を題材にしたものは皆無、反ユダヤ主義プロパガンダや明るいコメディ調の軽い娯楽映画が大半なんです。終戦間際になってナポレオン戦争時代のプロイセンの戦いを再現した大作映画を製作したぐらいで、徹底的な現実逃避が貫かれています。これは映画プロデューサーとしても有能だった宣伝大臣ゲッベルスの方針で、国民に鞭だけじゃなく飴をしゃぶらせることを忘れないナチスらしい政策でした。そういうところを比べると、日本の軍部は幼稚というか馬鹿正直なんですね。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-11-24 22:03:52)
56.  華麗なる一族 《ネタバレ》 
コテコテのバルザック調の作品で有名な山崎豊子の『白い巨塔』と並ぶ代表作の映画化。神戸を地盤とした成り上がり財閥である万俵家の当主・大介とその家族が繰り広げるドロドロの愛憎劇、そして政界を巻き込んだ銀行再編を巡る暗闘劇がこれでもかというネチッこさで展開するストーリーですが、三時間半という驚異の長尺映画です。でもこの映画は短いシークエンスを延々と繋げる撮り方をしているので、自分にはさほど長尺が苦にはなりませんでした。 製作年は74年、映画界はどん底状態ですでに日活と大映は倒産して天下の東宝ですら自社では映画製作をストップしていたご時世、本作も東宝は配給だけで製作部門を切り離した別会社・芸苑社が製作。でもかつての五社体制当時では考えられなかったキャスティングが可能になっており、京マチ子を初めとした旧大映の俳優陣が大挙出演して豪華な顔ぶれが愉しめます。モデル小説で評判というか物議をかもした山崎豊子の原作だけあって、劇中のエピソードや登場人物は当時の観客には容易に想像がつきます。その中でも万俵一族だけはもちろん架空ですけど、そのまるで中世ハプスブルク家の婚姻外交のような閨閥造りはまさに“華麗”の一語です。長男が政権党の大物代議士の娘を娶り、長女がキャリア大蔵官僚で主計局次長の妻、次女に至っては現職総理大臣の甥と婚約(結局破談にはなる)と凄過ぎです。だいたい親父の大介からして妻妾同居どころかいい歳して3Pが大好きですので、もうハプスブルク家どころかボルジア家やメディチ家も裸足で逃げ出す内情です。この脂ぎった連中を佐分利信や京マチ子が演じるので、こりゃ堪りませんぜ。長男役は仲代達也ですけど、実質的には一人二役でしたね(笑)。また銀行・企業側や政界関係にも曲者が勢ぞろいといった感じで、とくに大蔵大臣の小沢栄太郎が印象深かったです。 考えてみれば70年代初頭は銀行業界は大蔵省と政界にガチガチに支配されていた時期で、現在みたいに銀行が実質倒産したり大手行が合併しまくってメガバンク数行に減ってしまうなんて誰もが予想だにしなかったことです。そうすると山崎豊子の原作は、近未来に起こる金融ビッグバンを予言していたような読み方もできます。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-11-03 21:59:12)
57.  兵隊やくざ 《ネタバレ》 
『座頭市』『悪名』『兵隊やくざ』といえば、かつて大映が誇った勝新太郎三大シリーズですけど、『座頭市』は孤独なヒーローが主人公だったけど後の二シリーズは完全にバディムービー。実は勝新太郎はバディムービーになると俄然本領発揮してくる感があり、その最高傑作と呼べるのがこの『兵隊やくざ』、いや邦画史上最高のバディムービーかもしれません。 昭和40年代までの旧日本軍を舞台にした戦争映画は、まだ従軍経験者が映画界にもたくさんいたこともあって、平成以降の戦争映画とは比べものにならないぐらいディティールはリアルです。原作小説は有馬頼義の軍隊経験を基にしたものですけど、満洲に駐屯して後にレイテ島に転送されて全滅、兵士たちが東京出身というところからも第一師団であることは明白。一兵卒から叩き上げが就ける最高ポストである准尉が、中隊の人事を司る実質的には最高権力者であるところなんかも忠実に描かれています。徴兵されたやくざの一等兵とインテリの上等兵が、最後には機関車を強奪して脱走するという破天荒なストーリーだけに、こういう細部をきちんと押さえておくことは“あってもおかしくない話”という雰囲気になるので大事なところです。田村高廣が演じる古参上等兵が、ただのインテリじゃなくて軍隊の細部に通じた骨太の常識人で、脱走に成功したところで今まで散々面倒を見てきた勝新に「これからはお前が俺の上官だ、どこまでもお前について行くよ」と言うラストには、なんか清々しいものすら感じてしまいました。ほんとこの二人の友情と信頼関係には、観ていて心が清められるような感すらありました。 本作といい『独立愚連隊西へ』といい、中国戦線を舞台にした痛快戦争映画は、日本映画界ではもう製作されることはできないんでしょうね、なんか悲しくなります。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2022-10-19 22:43:56)
58.  プリズナーズ・オブ・ゴーストランド 《ネタバレ》 
日米映画界のヤバい奴二人、園子温とニコラス・ケイジがタッグを組むという異色の映画。話題になりそうな要素は十分だったのに、園子温が例の騒動を起こしてしまって世間から無視されてしまった感はあります。まあ映画自体の出来からいってもしょうがなかったかもしれませんけどね。 ストーリーの基本はファンタジー。いつの時代かどの国なのかは不明な世界にサムライ・タウンという町があり、そこはテキサスのおっさん風のガバナーと呼ばれる権力者が牛耳っています。まずこの町がまるで田舎の吉原みたいな江戸時代の宿場町風なのがぶっ飛んでいます。住民は江戸時代ぐらいの着物姿で皆キツネやひょっとこ風の能面をつけています、そして住民の半分は遊女です。そんな町にも銀行があって、そこに強盗に押し入って逮捕されるのがニコラス・ケイジ、“バンザイ”と叫びながら突入してくるのが可笑しい。収監されていたニコジーは、ガバナーから失踪した(逃げた)孫娘のバーニス(実は愛人)を自爆装置が付いたスーツを着せられ五日間のうちに連れ帰ることを命令されます。この町の外部はゴーストランドと呼ばれて下層民の一団(プリズナー)が廃墟みたいなところで生活していてバーニスもこの場所にいるわけですが、お話しはここから『マッドマックス』チックな展開となるわけです。 ニコジーの登場シーンからして褌一丁姿、なぜかママチャリを漕いで街から出てゆく、もうこの辺りから訳が判らん世界線です。実はこの映画はサムライ・タウンなどのセットには凝っているというかカネがかかっており、プリズナーの居住区なんかもかなり大掛かりな造りです。実はこの映画は園子温のフィルモグラフィ中でいちばんカネをかけてるんじゃないかと思います。この映画の設定というか世界観はシュールの極みで、好みが分かれるところでしょうが自分は好きです。というわけで好意的に観ていた自分でしたが、後半になってくるとストーリーが破綻というか訳わからなくなってきて、「やはりいつもの園子温映画だな」というのが感想です。この人の映画って、掴みはイイんだけどたいてい途中からグリップが効かなくなって暴走しちゃうんだよな。そういう意味では、やはり本作は典型的な彼の映画だと言えるでしょう。 とは言え園子温に思い通りにやらせるなら、ハリウッド映画の規模の方が彼の異能を活かせるんじゃないかとも思えてきました。ここしばらくは日本映画界での活動は厳しそうだから、いっそのことハリウッドに拠点を移しちゃえばとも思います。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-09-30 20:58:02)
59.  雨月物語 《ネタバレ》 
『雨月物語』は上田秋成の九編からなる怪異譚集だが、その中の二編をピックアップして再構築した脚本、モーパッサンの短編からもインスピレーションを受けているそうです。幽霊屋敷で男が女幽霊に好かれて憑りつかれるという原作『蛇性の婬』がメインプロットとなっていますが、これは『耳なし芳一』などの古くからある怪談のパターンで王道と言えば王道です。森雅之が体に梵字を書いてもらって危機を脱するところなどは、まさに『耳なし芳一』の影響を感じます。『雨月物語』は昔読んだ記憶ではもっと無常観というか辛口の語り口だったけど、全体的に教訓めいたお話しに落とし込んだ感が強いですね。これは溝口健二は人間の本性のダークな面を強調する脚本にしたかったけど、会社というか社長の永田雄一の要望でマイルドな方向になったらしい。その代わりというか撮影にはいっさいの妥協なしで、構図と言いカメラアングルも名手・宮川一夫のキャリアでも最高の仕事と言っても過言じゃない。田中絹代が落ち武者に槍で突き殺されるシーン、こと切れる田中の遠景の下方の田んぼでは落ち武者たちが奪ったおにぎりを喰らっているのがはっきり映っているのは驚愕のショットでした。はっきり言って日本人にはあまりインパクトは感じない題材ですけど、欧米人には絶賛され高評価を得ているのはなんか判る気がします。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-09-18 22:34:38)
60.  モスラ(1961) 《ネタバレ》 
それまで爬虫類や鳥類をモチーフにしていた東宝特撮の怪獣でしたが本作ではついに昆虫・蛾をモンスター化に挑み、ここにゴジラ・ラドン・モスラの東宝三大怪獣が出揃うことになりました。■モスラの造形は歴代東宝怪獣の中でも群を抜く色鮮やかさが特徴で、日本怪獣映画史の中でも特異な存在と言えるでしょう。昆虫をモチーフにした怪獣は日本映画ではもちろん初めての登場、ハリウッドにも存在しないことはないけどこれほど巨大で現物を活かした設定のモンスターはありませんでした。そして初の善玉(?)怪獣であるというのもトピックスになるでしょう。もっとも本作でのモスラはまだ“人類の味方”などという陳腐な存在ではなく、小美人を救出するという刷り込まれた本能に従ってただ突き進む社会性昆虫的なキャラです。当然なことですがモスラのその行動により多数の犠牲者が出るわけですが、そこに間接的に触れるセリフとして「多くの人が不幸になります」という言い方をしている。「死人がでる」という事を決してセリフにしないところがいかにも東宝らしい。■幼虫から繭を経て成虫に変態してゆくというそれまでの特撮技術ではハードルが高い撮影に挑んだ円谷特撮陣のチャレンジ精神には、素直に敬意を表したいところです。青梅街道を南下し渋谷を経て東京タワーまでばく進してゆくモスラの幼虫は、二十分の一で組まれたセットの中を複数の人間が巨大なモスラの着ぐるみの中に入って演技するという新方式。成虫はもちろん操演ですから、さすがに中島春雄もスーツ・アクターとしての見せ場はなかったみたいです(笑)。『ゴジラ』以来となる本格的な東京破壊シークエンスとなりましたが、出来たばかりの東京タワーを惜しげもなくぶっ壊すとはさすが東宝特撮。『ゴジラ』のときとは異なった東京西部からの南下ルートを採用しているところなんかは芸が細かい。でも太平洋を北上していたモスラがなんでダム(小河内ダムがモデルみたいです)に出現するのかが意味不明、途中から海底を掘り進んできたのかな(笑)。■音楽面では伊福部昭じゃなくて古関裕而が起用されていて他の東宝特撮とは明らかに異なるサウンドが聴けます。そしてあの有名な『モスラの歌』、これは本多猪四郎たちの作詞を東大のインドネシア人留学生が現地方言で訳したという話が定説となっています、つまり♪モスラ―ヤ、モスラーは実はインドネシア語なんです!■あくまで個人的な感想ですけど、この映画は実は反米映画なんじゃないかと思います。ロリシカ=アメリカ合衆国・ニューカーク市=NYなのはミエミエですし、ネルソンはじめロリシカ人は邪悪で極悪非道、ロリシカ大使館も当初はネルソンたちの利権を保護しようと圧力をかけてくる。そして住民がいることを確認もせずにインファント島を巻き込む核実験をしたあげくに、後は知らぬ存ぜぬを押し通す。製作されたのは安保闘争の余韻が残る61年ですし、“不偏不党”がモットーの東宝までもが時代の雰囲気に迎合しちゃったのかな。成虫モスラがニューカーク=NYを壊滅させるシークエンスには、日本の当時の観客は内心では喝采を叫んでいたかもしれません。でも、ラストで小美人を連れて飛び去ってゆくモスラをフランキー堺たちと一緒に手を振って見送るニューカークの人々、都市を壊滅させられたのに笑って見逃すはずないでしょ‼太平洋戦争で散々な目に遭ったのに、まだ米国人の執念深さ・復讐心を理解していないみたいです。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2022-09-09 23:25:50)
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