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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2398
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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61.  弾丸ランナー 《ネタバレ》 
あの『ラン・ローラ・ラン』のプロットに影響を与えた(ホンマか?)という三人の男がただひたすら走る物語。SABU氏の初監督作品でもあるわけですが、田口トモロヲはじめ当時のサブカル界隈の曲者たちに加えて大杉漣や友情出演の堤真一までも登場するなかなか豪華なキャスティングであります。いまや伝説のAV女優白石ひとみも出ています。コンビニで万引きした田口トモロヲを追いかける店員のダイアモンド☆ユカイ、この二人はまったく無関係の間柄ではあるが、そこに両者と因縁があるヤクザ堤真一が参戦してくる。やはり見どころは三人の走りっぷりで、そこにそれぞれの身のうちや妄想をオーバーラップさせるのが特徴。でもそのパワーは警察が加わってくると萎んでしまったように感じるのは残念なところです。ラストにかけてヤクザ+警察の三勢力と三人のランナーが鉢合わせてお馴染みの三すくみ状態からの全滅、いやはやここにもタランティーノ風味の影響が色濃いですね。田口トモロヲやダイアモンド☆ユカイといったロック・ミュージシャン人脈を起用したんだから、ストーリーテリングとしてはもっとパンキッシュでオフ・ビートなら面白かったんだろうけどな。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-08-16 23:11:43)
62.  カメラを止めるな!スピンオフ「ハリウッド大作戦!」<TVM> 《ネタバレ》 
まああれだけオリジナルがバカあたりしたんで、調子というか勢いに乗ってこういうお遊びをしたくなる気持ちも、判らなくはない。本当にこんなんでどこが面白いと言ったらよいか悩むところですが、ラストのHOLLYWOODの人文字の件だけは、不覚にもクスっとしてしまいました。でも冒頭のシークエンスではHOLLYのパネルだけだったのはどう解釈すれば良いの?ネタバレさせたくないというのが意図だったんでしょうが、あまりに映画文法を無視しすぎです。まあこのいい加減さがらしいと言えばらしいところなんだけど。 こんな緩い企画がおフランスのオスカー受賞監督にウケて、リメイクされたってのが未だに信じられない。あの竹原芳子も出てるんですからねえ…
[CS・衛星(邦画)] 3点(2022-07-31 21:43:49)
63.  日本以外全部沈没 《ネタバレ》 
原作は、筒井康隆が本家『日本沈没』の出版直後にパロディとして数時間で書き上げたという短編小説、それが三十年以上たって突然の映画化、まあこれは草彅剛のあの『日本沈没』に悪ノリというか便乗して撮られた企画らしい。監督はそのセンスの悪さで撮る作品がことごとく酷評されるという特殊能力を持つ河崎実、本作でもその特技を遺憾なく発揮しています(笑)。 筒井康隆のブラックな持ち味は低予算パロディには相性がよさそうなもんだけど、あまりにエピソードがつぎはぎだらけ状態なのでほとんど笑えない。稲川素子事務所バックアップの甲斐あって無名の外人タレントが大挙出演、エキストラも含めると日本人出演者より数が多かったんじゃないかと思うぐらいです。まあその中でも印象に残ったのはオスカー俳優役だった人で、なんか若き日のエドワード・バーンズみたいでカッコよかったな。でも全編に満ち溢れる外人をコケにするギャグは“どこまで本気なの?”と心配になるぐらいで、こりゃ地上波じゃ絶対に放送できないレベルですな。そして妙なところで特撮に凝ったりしていて、ほんとこの監督のセンスにはついてゆけない。最後には日本も沈没して人類滅亡となるわけですが、なぜか穏やかな夫婦生活が何度も挿入されるTVプロデューサー夫婦が、線香花火を二人で愉しむカットにはなんかホロリとさせられました。せっかく子宝を授かったのに、産まれてくる子の顔も見ないでみんなとともに滅びてしまうんですからね。でも人類がけっきょく滅亡する筒井康隆の作品なら、『霊長類南へ』を映像化して欲しいものです、監督は河崎実以外でね。 田所博士役の寺田農は樋口真嗣版の『日本沈没』でも同役でのオファーがあってどっちに出演するか迷ったそうです、迷った挙句に出たのがこっちかよ!このチョイスは理解不能です(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2022-07-23 22:43:57)
64.  地獄の警備員 《ネタバレ》 
92年の製作、もう三十年も前の映画なんですね。この頃はまだバブルが残っていたころ、そういや商社なんかではいわゆる絵画ビジネスなんて代物が流行っていましたね。「セザンヌを85億円で落札出来たら安い買い物か?」なんて会話があって、時代を感じさせられます。そして警備員に電源を落とされて外部に電話して助けを求めることが出来なくなる、そうかまだこの頃は携帯もPHSもメールもない頃、せいぜいポケベルが最先端ツールで、現代の若者には絶対理解できないシチュエーションだと思います。 松重豊が演じる元力士という設定の警備員はいわばジェイソン的なサイコキラー、というよりなぜか赤いロングコートらしきもの着ていて『帝都物語』の嶋田久作みたいな感じ。彼の登場シーンはすべて薄暗いシーンなのではっきりした姿形を認識しづらいけど、どう見ても“身長が2mちかい元力士”にはほど遠い感じがするのが難点。それこそ嶋田久作をキャスティングした方が正解でしょう。殺しの手口も巨漢という設定を活かしたあまり凶器に頼らない工夫が認められます。まあキ〇ガイのすることですから理屈が通らなくても全然かまわないんですけど、終盤でヒロインが唐突に警備員を説得というか対話を始めるのは黒沢清映画らしいところです。あと大杉漣がヒロインを個室に連れ込んでいきなりズボンを脱ぐところや、ラストで長谷川初範の奥さん(?)として洞口依子がワンカットだけ登場するところなんかもね。 怖いか、面白いか、と問われれば「微妙です」としか答えられないけど、不条理劇のようなものを好む方にはお奨めできるかも。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-07-11 23:03:01)(良:1票)
65.  張込み(1958) 《ネタバレ》 
現在のような猛暑の最中に観る映画じゃないよね(笑)、刑事二人が下着姿にまでなって苦労しての佐賀までの列車行から始まって、いくら昭和三十年代と言っても扇風機ぐらい置くもんじゃない?と呆れる旅館での張り込み、とにかく二人の刑事の汗まみれの姿を延々と見せられるのはちょっとしんどい。冒頭でラジオから聞こえる佐賀の天気予報で「本日の最高気温は35度の見込み」といっているけど、昭和三十年代にそんな猛暑があったとはサプライズです。この予報自体はもちろんフィクションでしょうけどね。 この映画のほぼ三分の二はヒッチコックの『裏窓』を彷彿させるいわば“覗き”のシーンの連続。対象者の家の真ん前に丸見えできる旅館があるなんて笑っちゃいますけど、あんだけ堂々と窓から身をさらしたら気づかれそうなものですけどね。拳銃を所持している可能性がある強盗殺人犯が逃走中なら、ふつうは大々的に指名手配されるのは間違いなしですしね。でも何も起こらない日常を飽きもせずに観させてくれる橋本忍の脚本もですが、一時間半あたりまでほとんどセリフもない高峰秀子の使い方にも驚かされます。そこからの二十五分はまるで別人のような情念を見せてくれるのですけど、この激しいギャップが幸薄い女としての高峰秀子のキャラを強調しているんじゃないでしょうか。 東京に出てきた青年が貧困から抜け出せなくて犯罪に走るといういかにも松本清張らしい今となっては古臭いプロットであるのは否めませんけど、昭和三十年代という中途半端に近代化しつつある東京と地方の世相が丁寧に撮られているのは高評価です。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-07-02 21:58:58)
66.  東京裁判 《ネタバレ》 
最近は“東京裁判史観”なる用語まであって色々と論議が尽きない東京裁判、判決から35年後に裁判を真正面からとらえたこのドキュメンタリー、製作からほぼ40年たった現在でも考えさせられることが改めて湧いてきます。■とにかく上映時間四時間半はめちゃくちゃ長い。でもよく考えると、ニュルンベルク裁判と違って判決までほぼ二年半も続いたわけで、真面目に追ったらこれぐらい長くなるのもやむを得ないかなと思います。最も昭和初年から敗戦そして占領時代までの挿入された記録フィルムだけで全部足すと一時間近くになるけどね。高校生あたりの現代史授業の教材としてはうってつけかもしれません。■検事側すら最終論告で言及しているように、ナチスの犯罪をさばいたニュルンベルク裁判の被告たちと東京裁判の被告は同列に置かれるべきではない。これは私個人の感想ですが、東京裁判は政治家・官僚組織がその行政および外交の失敗が罪に問われた珍しいケースなんじゃないでしょうか。大日本帝国はドイツ・イタリアの様に一人の独裁者が好きなように動かせた国家じゃなく、明治憲法の下での集団指導で運営される体制で“天皇制独裁”なんて大嘘です。明治維新以降だんだんと国家の指導層が劣化してゆきついにたどり着いたのが敗戦だったわけで、その意味ではA級戦犯の中には万死に値する人物がいるのは確かだと思います。とは言ってもそれがいわゆる勝者によって断罪される筋合いのことかというと別問題です。温度差があったとはいえやはりこれは連合国による復讐で、裁判自体が戦争行為の一部で正義とは無関係なんじゃないでしょうか。■こうやってじっくり見させていただくと、勝者の法廷の粗や杜撰さが発見できました。まず裁判長以下の判事団は、それぞれ母国で法曹に関係していた面々だけど、国際法の専門家が一人もいないというのが驚きです。ソ連とフランスの判事に至っては、英語も日本語も理解できなかったというから呆れます。中でも裁判長のウェッブが日本憎悪に凝り固まっており、何が何でも天皇を訴追しようとゴネるわけです。首席検事のキーナンがこれまた典型的な強面で、ギャング相手みたいに被告たちに接します。でもマッカーサーからは天皇を訴追しないという方針を伝えられており、ウェッブを抑え込もうと陰で東条英機の失言をまるで弁護人の様に修正させるのがなんか滑稽。ソ連の検事に至っては日露戦争も日本の有罪要因だと主張、ここまで来ると失笑するしかないですね。その反面、各被告についたアメリカ人弁護人たちの弁論は想像以上に雄弁で、学会の大御所を引っ張ってきた日本人弁護人とは比べ物になりません。彼らは本国でも無名の弁護士たちですけど、やはり訴訟大国だけあってその能力は半端ないです。■判決はご存知の通り七人が絞首刑ですけど、やはりただ一人文官で死刑になった広田弘毅はさすがに可哀想でしたね。なんせ南京事件が彼の責任とされているのにはびっくりです。あと、全員が有罪というのは驚くべき厳しさ、ニュルンベルク裁判でも何人かは無罪だったのにね。しかしこの被告たちの人選には首を傾げるしかないです。大川周明なんて、当時の日本人でも知らない人がほとんどでしょ。この被告人選定には、なんか日本人で入れ知恵した人がいたんじゃないでしょうかね。あと海軍から死刑が出なかったのもなんか腹立つ、永野修身が生きていたらたぶん死刑だったんじゃないかな。宣告後に隣の留置所から死刑を免れた嶋田繫太郎の高笑いが聞こえてきて腹が煮えくり返った、と武藤章が手記に残しています。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-06-13 10:22:51)(良:1票)
67.  勝手にしやがれ!! 英雄計画 《ネタバレ》 
このシリーズもついに大団円ですが、妙に弾けていた前作からは想像もつかない幕の閉じ方です。お手本というかネタ元だった『傷だらけの天使』も最終回は予想を超えてましたが、このシリーズもかなりシュールでぶっ飛んだ最後でした、でもこんなぶっ飛び方は好きじゃないよな。ヤクザを町内から追放しようとする寺島進が中心の前半のストーリー展開はたしかにいつものグダグダ系コメディですが、後半からエンディングまではもはやシリアス・ドラマとしか言いようがないです。寺島進の妹キャラがヒロインですけど、いつものように不思議ちゃんではないのからして違和感がありました。バブル時代が終わって大不況になっていった時世を反映して登場キャラたちが離散してゆくんだろうなというのは想像していましたが、まさか哀川翔と前田耕陽のコンビが警官隊に包囲されて銃撃されるようになるとは、予想を大きくはずされました。 “やっぱり腹黒い奴だった”寺島進がけっきょく生き延びたのには何のカタルシスもなかったし、警官隊の待ち受ける中に飛び出してゆく二人の姿は『明日に向かって撃て』のパクりじゃねえかよ!暖簾が風に揺れた瞬間に居眠りしていた洞口依子が目覚めるのがラスト・カット、これは二人が死んだことを暗示していました。ここまで来ると、黒沢清の「最後は俺の好きなように撮らせろ!」という魂の叫びが籠っているような気がします。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2022-06-03 22:25:20)
68.  切腹 《ネタバレ》 
井伊家上屋敷に突然現れた浪人・津雲半四郎、「当家の玄関先で切腹させてください」と申し出る。食い詰めた浪人者が大名屋敷に押しかけて腹を斬らせろとごねて金品を恵んでもらうというゆすり・たかりまがいの手口が多発していた昨今、「どうせ腹をさばく覚悟もないたかりだろ」とタカをくくった家老・斎藤勘解由は津雲を追い返すべく面談する。それは日本時代劇史上まれにみる陰惨かつグロテスクなストーリーの幕開けであった。 いやぁもう、凄い映画としか言いようがありません。数ある橋本忍の脚本の中でもトップクラス、ひょっとしたらベスト・ワンなのかもしれません。津雲半四郎=仲代達也と斎藤勘解由=三國連太郎の緊迫したやり取りから始まる序盤から、謎の浪人・津雲は何の意図があってやって来たのかが判らないまるでミステリー現代劇のような展開、もうぐいぐいと引き込まれてしまいます。幕藩体制が固まってきた寛永年間、各藩は多くの従業員を抱える法人組織みたいな存在になっています。井伊家は言ってみれば名門大企業、芸州福島家はちょっと大きめの中小企業みたいな位置付けでしょう。幕府の引き締め政策が猛威をふるって地方企業がバタバタ潰れても、財閥企業である井伊家はびくともしないわけです。そして大企業らしい官僚制のうえ建前でガチガチに固まった組織、これは現代のメガ企業のオマージュじゃないかと思うほど60年代とは思えない鋭い視点です。斎藤勘解由や沢潟彦九郎=丹波哲郎が振り回す“武士の面目”はたしかに武家社会のど正論なんですが、裏を返せば体面を保つための手段に過ぎなかったという事が劇中で見事に喝破されます。騒動が終息して記される覚書にも、まるで「西部戦線異状なし」という感じで隠蔽される幕の閉じ方、もう無常観が半端ないです。 まるで舞台劇のような展開でしたが、ラストニ十分の斬り合いがまたリアルです。さすがに眠狂四郎でも勝てるかどうかというぐらいの井伊家の手勢の人数、満身創痍になりながら息が上がってくる仲代達也の立ち回りが壮絶です。そして沢潟彦九郎=丹波哲郎との決闘、なんとこのシーンは両者とも真剣を使っていたんだと。私は剣道には知識はないですけど仲代達也の構えは戦国時代の実戦的なものなんだそうです。それにしてもこの映画での丹波哲郎は、立ち振る舞いからして迫力があってほんと強そうです、この人は剣豪役をやらせたらピカイチですね。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2022-05-30 22:08:51)(良:2票)
69.  スウィングガールズ 《ネタバレ》 
オーディションで選んだ楽器未経験の女優たちをしごいてビッグバンド・ジャズの演奏を披露させるというコンセプトありきの映画。出落ちならぬ“ラス落ち”とも言うべきラストの演奏を見せるために書かれた脚本みたいなもので、いかにも広告屋とTV屋が考えそうな企画ですね。 ストーリー展開は『ウォーターボーイズ』とほとんど同じような感じ、竹中直人に至っては同じキャラなんじゃないかと錯覚してしまうほどです。ギャグも大人が観るのは恥ずかしくなるレベルで、それを若手(当時)女優たちのクサい演技で“これでもか”という圧で見せられるのには、正直辟易させられます。楽器指導にかける労力の何分の一かでも演技指導して欲しかったところですが、こういうのが監督の趣味らしいので如何ともし難い。あんなにやる気がなかったJKたちが半年ぐらいであのレベルの演奏が出来るようになる過程が、いくらギャグをまぶしたからといって説得力がなさすぎでしょう。まあ出演女優たちが三カ月ぐらいで実際にあれだけの演奏を披露できたわけだからという言い訳は出来るかもしれませんが、この人たちはたぶん相当な苦労をしたわけで、劇中のキャラ達にも努力の跡を見せる演出をして欲しかったですね。そして地方というか田舎をバカにしたような底意を感じてしまうのは、なんか嫌な気持ちになります、こういうところがフジTVらしいのかもしれません。あと、「人間は二種類に分かれる、○○と○○だ」というセリフが数か所で出てくるのですけど、わたくしこのフレーズが大嫌いなんです。軽々しくこのフレーズを使うってのは、やはりダメな脚本の証です。 などと文句を並べましたが、そうは言ってもラスト十五分の演奏シークエンスは文句なしに素晴らしいのは確かです。演奏が万雷の拍手を浴びて終了したあとJKたちの浮かべる笑顔と表情は、演じた女優たちが「やり遂げた」という満足感が表出した素の表情なんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-05-29 11:43:30)(良:2票)
70.  柳生一族の陰謀 《ネタバレ》 
日本で時代劇映画が死滅したと言われるまでになっていた70年代後半、かつて時代劇で邦画を牽引してきた東映が時代劇復興を期し満を持して世に問うた超大作、このバクチは御存じのように大当たりだったわけです。 まず、登場する俳優陣の顔ぶれの豪華なことと言ったら、目をむいてしまいます。萬屋錦之介の東映出演なんて十二年ぶりだし、三船敏郎や芦田伸介といった東映作品では他では見れない大物がキャスティングされているのが凄い。豪華かどうかは?だけど、なぜか角川春樹や映画監督の佐藤純彌まで出演しています、もっとも何度観てもどこに出ているか不明ですけど(笑)。柳生十兵衛は千葉真一の当たり役ですけど、意外にも映画では本作が初の十兵衛役だったんですね。登場人物はみなキャラが立ちまくっていますが、やはりその筆頭は成田三樹夫の烏丸少将であることは異存ないでしょう。意外なことにわりとあっさり十兵衛に斬られてしまって退場、どうせ架空のキャラなんだからもっと暴れるところが見たかったです。 ストーリーはもう荒唐無稽の極み、でもここまでぶっ飛んでると清々しいぐらいです。深作欣二が監督と脚本を書いているだけあって、言ってみれば『仁義なき戦い』大江戸版といった感じです。要は“家光組”と“忠長組”が日本の覇権をめぐって壮烈な跡目争いを繰り広げ、かつては覇者だった“公家連合会”は両組が抗争で共倒れするのを裏で画策し、再び暗黒街の覇者に返り咲くのを狙うという感じです。“忠長組”に集まる浪人たちや柳生宗矩に操られる根来衆は、抗争で使い捨てされる鉄砲玉というわけです。そこに出雲阿国までムリやり気味に絡ませてもうテンコ盛り状態、そしてあの驚愕のラストになだれ込むわけです。 深作欣二が初めて撮った大作時代劇としては上出来だったんじゃないでしょうか。ただ柳生宗矩=萬屋錦之介の大げさな歌舞伎演技だけは違和感が半端ないです。これは錦之助の彼なりに計算したうえでの拘りで、深作も指導したけど頑として変えず一時は真剣に降板させることを考えたそうです。でも、当時の深作にはこんな大物スターをクビにする権力がまだなかったのは、幸いだったのではないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2022-05-18 22:25:51)
71.  徳川セックス禁止令 色情大名 《ネタバレ》 
いわゆる東映時代劇ポルノでもかなり後期の作品。時代の進展により初期と比べるとエロ度のパワーアップはかなりのレベルに達しています、なんせにっかつロマンポルノという強力なライバルが登場していますからね。というわけで今回はカネをかけていますね、なにせヒロイン(なのかな?)におフランスからあのサンドラ・ジュリアンを呼んできました。サンドラ・ジュリアンと言えば日本でだけ人気が爆発した伝説のポルノ女優、もちろんリアルにスクリーンで観たことはなく自分は今回が初体験です。しかしよく見るとボディに関しては良く言えば日本人向きという感じの大人しさ、やはりウケたのは清純的と言えなくもないルックスなんでしょうね。初期のポルノ映画界隈ではやはり欧州系の方が日本では流行ったみたいで、ケバケバしい女優が多いUS製はまだ刺激が強かったんじゃないでしょうか。たしかにサンドラよりも一緒に登場する無名の黒人女優の方が、目を奪われるナイスバディでしたからね。そんなサンドラをお殿様に献上する豪商・博多屋を演じるのが渡辺文雄、サンドラとはフランス語で会話したりしてさすが東大卒だけあって様になっています。でもなんでフランス娘が江戸中期の日本にいるの?それはね、彼女は処刑されたフランス人宣教師の娘だからよ、っていう設定みたい。はぁ、女人禁制の宣教師になんで娘がいるの?なんて突っ込むのは野暮ってもんですよ(笑)。エロ以外にもサービス精神過剰なのか、女性の作法通りの切腹まで見せてくれます。この映画は切腹シークエンスの演出に見られるように、とてもコメディとは思えない重い撮り方をところどころでしているんです。あとバカ殿の近習若侍や途中から登場する山城新伍の様に、ふつうはストーリーの核になるようなキャラが途中で消えちゃんですよ。まさか監督は、この映画を群像劇のつもりで撮っていたのかも(笑)。 まあ基本はそのぶっ飛んだバカバカしさを愛でる類の映画ですけど、下品さくだらなさの陰に意外と製作当時の状況をシリアスにぶっこんだ脚本でもあります。バカ殿が押し付けるセックス禁止令・法令175條とは猥褻物頒布等の罪・刑法175条のパロディであるのは明白。ラストの字幕ももろにその反175条のスローガン。でもこんなおバカ映画で気勢を上げても、説得力ないんですけど…
[CS・衛星(邦画)] 6点(2022-05-09 22:53:10)
72.  勝手にしやがれ!! 成金計画 《ネタバレ》 
このシリーズもたいがいマンネリ化してるよな、と舐めていたら五作目にして突然の大変調!なんと言いますか、リミッターが解除されたようなぶっ飛びぶりとかなりシュールなセンスのギャグで、なんか鬼気すら感じてしまいました。ヒロインはシリーズ中で最豪華といえるあのWinkの鈴木早智子、トレードマークの無表情を活かした大根芝居なんですがそのキャラのバカっぷりと訳の分からなさは、これまたシリーズ随一!八億円分のヘロインを拾った(?)OLに振り回される哀川翔と前田耕陽のコンビという図式なんですけど、今回はそのヘロインを競り落とそうとするヤクザたちのキャラが立ちまくっています。ヤクザなんだからヘロインは強奪するのが普通なのに、めちゃくちゃにダンピングしながらもまるでオークションみたいに落札しようとするのが可笑しい。そのヤクザ・トリオのうちの金髪野郎は、首輪で繋がれて犬みたいに吠えるだけ、まるで人間ドーベルマンです。東京湾で捨てたヘロインが富士五湖に流れつくなどいい加減なストーリー展開は相変わらずですけど、散りばめられるギャグは今までにないセンスがあって自分にはけっこうツボでした。映像的にも遠景ショットや長回しの多用が見られ、今まで薄かった黒沢清風味が濃厚な感じがしました。ラストもパスポートを持って旅に出る哀川と前田の姿を見せてエンド、こりゃあ最終第六作では波乱の展開になるのかな?とはいえ、本作がシリーズ中でいちばん面白かったとは言っておきます。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-05-03 23:41:25)
73.  妖怪百物語 《ネタバレ》 
“大映京都の妖怪三部作”の第一作目。当時は水木しげるがブレイクして鬼太郎ブームの真最中、水木漫画に登場する妖怪たちを勧善懲悪の時代劇にぶっこんだいわば『大魔神』のモチーフをそのまま流用したような感じ。この1968年から69年にかけての大映京都撮影所はどうかしちゃったんじゃないかと思うほどのペースで『大魔神』シリーズ三作とこの妖怪三部作を立て続けにリリース、思えば時代劇が青息吐息の中での大映京都が放った最後の煌めきだったのかもしれません。『大魔神』が暗い基調のお話しだったのに、怪談噺ながらも唐笠お化けの件などユーモアを交えての語り口が対照的です。『大魔神』のような大掛かりな舞台設定ではないので特撮自体は地味です、それでも毛利郁子のろくろ首なんかは今観てもインパクトは大で、子供にはトラウマものでしょう。若き日の藤巻潤は痺れるほどカッコよいし高田美和は相変わらず可憐で五味龍太郎はふてぶてしいほど悪辣で、子供向けとは思わせないアダルトな撮り方も大映京都らしいところです。そして怪談映画の音楽ならこの人しかいない、第一人者である渡辺宙明もイイ仕事をしています。ラストのお約束の百鬼夜行もなんか雰囲気があってシュールでした。 この映画は『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』と二本立てで公開されています。ガメラ・シリーズは大映東京撮影所の製作ですけど、手間のかかる特撮映画を二本立てで興行できたというのは大したもので、やはり今は亡き大映は凄い映画会社だったんですね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2022-04-29 22:13:49)(良:1票)
74.  愛の亡霊 《ネタバレ》 
『愛のコリーダ』に続いてフランス資本が主導で撮られた一編、仏語原題と邦題の『コリーダ』との類似性から未だにハードコア作品と誤解されている節があるのはちょっと残念です。自分は『愛のコリーダ』は一種のゲテモノ映画だと思っているので、物語として何の繋がりもない本作の方が評価されるべきじゃないかと思っています。 茨城県で実際に起こった事件を基にした脚本だそうですが、大島渚映画の中でもピカイチと言えるぐらい映像が美しい。それもそのはず、撮影の宮島義勇を始め主要スタッフが小林正樹の『怪談』を製作した人たちなんですから。武満徹の音楽がまた絵も言えぬ独特の雰囲気を出しています。お話しは吉行和子と愛人の藤竜也が夫の田村高廣を殺して古井戸に隠すけど、その後田村の幽霊に悩まされるという割と単純なものです。前半では藤と吉行が田村を殺すに至る経緯があまりに雑なのが気にかかります、殺人から三年たっても二人の関係が変わらないというかかえって疎遠になった様な感じで、これじゃなんで夫殺しに走ったのか?って言いたくなるけど、実話って案外と雑なことが多いんですよね、まあ生身の人間のすることですから。でもそれから田村の亡霊が出現するようになってからは、俄然見どころが多くなってきます。この亡霊は自分を殺した妻の前にだけ現れるのですが、彼女を恨む様子はまったくないんです。そりゃ女房の方は恐怖のどん底ですけど、彼女の注ぐ酒は飲むし勧められれば芋は食べるしでで、こんな人の良い亡霊は珍しいです。だいたい幽霊が現生のものを飲み食いするのは初めて観た気がします。でもこの幽霊・田村はいつも寂しそうに出現するけど不気味さは高レベルで、生前は車引きだった彼が吉行を人力車に乗せて走るところなんかゾクッとさせられますよ。粗野で自分勝手な男としか見えなかった藤も、後半になると亡霊に悩まされて半狂乱になる吉行と供に苦しむようになる演技には胸を突かれました。 斜に構えたような映画を撮っていた大島渚ですが、本作はそんな彼の残した珍しい正統派の映画だと思います。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-04-23 22:39:31)
75.  釈迦 《ネタバレ》 
日本初の70ミリ映画として有名だけど、最近はあまり語られることのない寂しい超大作でもあります。熱心な日蓮宗(あの宗教団体ではない)信者であった大映社長・永田雄一としては、やはり“自分がやらなきゃ誰がやる”という感じのテーマであったのは確かです。イエス・キリストの生涯を描いた映画は古今で数多製作されていますけど、マホメットを画像・映像化することがご法度であるイスラム教は別にしても、お釈迦様を正面から映画化したのは浅学ながら本作しか知りません。 製作費が七億円というのは確かに破格の超大作で、現代の貨幣価値でいうと何十億ということになりますかね。でも七億円というのは永田雄一お得意の大ぼらで、実際には一億七千万程度というのが真相みたいです。70ミリ撮影と銘打っていますが『スパルタカス』で使われた35ミリビスタビジョン・カメラをパラマウントから払い下げてもらい、それに圧縮レンズを装着して撮影して現像時に70ミリに焼き付ける“なんちゃって70ミリ”方式だったみたいです。でもそのカメラは重量860キロもある代物で、おかげで見せられるのは演劇公演の舞台映像みたいに動きが極端に少ない映像になってしまっています。 美術やセットには確かにカネをかけているのは判りますが、問題なのは脚本です。この映画では本郷功次郎演じるシッダ太子よりもダイバダッタの勝新太郎の方が目立ちすぎちゃってるんですよ。なんせ本郷は開始二十分あまりのところで悟りを開いて仏陀になってからは、影や遠景で存在を示しているだけでまったく画面に登場しないんですから!まるでマホメットの映画を見せられているみたいです(笑)。対する勝新は座頭市になる直前のキャリアで、『マグマ大使』のゴアみたいな風貌の悪役王子を熱演しています。ストーリー自体も史実を改変しているのは良しとしても、釈迦入滅後のエピソードまで同時代の出来事としたりして、要は詰め込み過ぎなんです。出演者はまさに大映オールキャストで豪華絢爛、雷蔵の義父である市川壽海まで登場するのは珍しい。 まあ言ってみると特撮スペクタクルは期待するほどでもなかったし、文字通りの“説法映画”というわけでした。これを70ミリスクリーンで観ればまた印象も違ってくるのかもしれませんが、現在70ミリスクリーンで上映できる映画館なんて日本にあるんかね?
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-04-21 11:10:55)
76.  勝手にしやがれ!! 逆転計画 《ネタバレ》 
懲りもせずにまたまた観てしまったシリーズ第四作、やはり今回も同パターンのストーリー展開です。哀川翔が惚れる今回のマドンナはタバコ屋の一人娘。今までにない真面目な娘で観ているときは「いよいよ新パターン展開か?」と思いきや、期待を裏切ってくれません、娘の競馬狂いの父親が登場してからは毎度おなじみの怒涛の展開に。だいたい、哀川翔がなぜか行倒れるヤクザの持っていた1千万円を盗むところからして、「なんじゃ、こりゃ?」という脚本。そしたらあの真面目な娘が父親もたじろぐ無謀ギャンブラーにキャラ変して、なんと1千万円を1レースにぶっこんで溶かしてしまう。まあこの1千万円が盗み盗まれて持ち主が転々とした挙句に、中央競馬会に巻き上げられたというわけです。ヤクザがカネを取り戻そうと追ってくる状況で、なぜか前田耕陽が買っていた馬券が大穴的中ですった1千万円が戻ってくるという、相変わらずいい加減な脚本です。そしてこれもお馴染みのいい加減な展開でエンド、ちっとは工夫しろよ、黒沢清!でも今回は父親役の河原崎健三がとぼけた良い味を出していたのは、良かったです。 今回気が付きましたが、このシリーズはビデオ・スルーのVシネマじゃなくていちおう劇場公開されていたんですね。さすがバブル時代の余韻が感じられる90年代、邦画界にはまだいい時代だったのかも。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-04-03 10:46:28)
77.  野獣死すべし(1980/日本) 《ネタバレ》 
いやはや、本作の松田優作を観るたびに、ほんとに日本映画界は惜しい俳優を若くして失ってしまったな、と痛感させられます。もうあの眼が怖すぎです。役作りで減量して奥歯を四本も抜いたそうで、こりゃ完全にロバート・デ・ニーロかクリスチャン・ベールの域に達しています。頭のおかしいキャラを演じさせたら右に出る者がいないデ・ニーロとの共通点を感じますし、彼はきっと長生きしていたら“日本のデ・ニーロ”と呼ばれる存在になったと思います。リップ・ヴァン・ウィンクルのシークエンスなんかは、演技と判っていても相手役の室田日出男は怖かったんじゃないかな。もっともこのシーンのカメラアングルを見ると、松田優作を正面からとらえる映像では向かい側の座席に座っているはずの室田日出男は映さないし、なんかそこには誰もいなくて松田が一人芝居しているようにも見えます。 しかし原作ものとしては?な部分だらけで、大藪春彦の『野獣死すべし』とはまったく別物だと言い切っても差し支えないでしょう。こりゃ大藪春彦が怒ったというのは当然でしょうけど、彼が怒ったのは脚本を書いた丸山昇一に対してで、当時メディア・ミックス戦略で大藪春彦作品を売りまくってくれた角川春樹にはさすがに何も言えなかったみたいです。監督がまた“カネがかかった映画になればなるほど粗が目立つ”村川透ですから、彼特有の雑な演出のおかげで冗長かつ意味不明なところが多すぎ。たしか泉谷しげるもちょっとだけ出ていたけど、ほとんどエキストラみたいなもんで、なんで彼を引っ張ってきたのか理解不能でした。この人はこういうのがカッコよいと確信しているけど、劇中何ヵ所かで使われている長回しシーンもセンスのなさが感じられ、相米慎二の足元にも及びません。 この映画のラストについては個人的には伊達邦彦の夢オチだったようにも取れる気がして、そりゃ大藪春彦が怒るのはムリもないと思いますよ。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2022-03-27 11:51:04)
78.  座頭市(2003) 《ネタバレ》 
21世紀にもなって、これほど「め〇ら」というセリフが多用される日本映画が観れるとは、もう嬉しくなっちゃいます(笑)。「北野武が座頭市を撮る」と聞いてびっくりしたもんですが、観てみれば勝新太郎の『座頭市』とは似ても似つかず、“リブート”というよりも“リコンストラクション”と呼ぶのが相応しいぶっ飛びぶりでした。その強さはもう超能力者レベル、だいいち座頭市が金髪というところからしてどうかしています。自分は本作の特徴は“リズム”をとことん重視した撮り方じゃないかと思います。タップのリズムで野良仕事する百姓など時には意味不明なところもありますが、シーンが切り替わるタイミングなんかも含めて快調なリズム感はなかなか心地よい感じすらありました。まるでポリウッド・ムーヴィーみたいなラストはちょっとやり過ぎ感すらあり賛否が分かれていますが、自分は好みです。初めて観たときはまだ『踊るマハラジャ』などのポリウッド・ムーヴィーを知らなかったので、そりゃびっくりしましたよ。このセンスならダンス・ミュージカル映画を撮らせたら面白いんじゃないかな。思うにこの映画での座頭市は狂言回しみたいな役柄で、浅野忠信の浪人夫婦や盗賊一味を追う姉弟のエピソードがメインなのかなとすら思ってしまいます。だとすると、このサブストーリーの描き方(とくに浅野忠信パート)が弱いのは気になるわけで、ここが本作の最大の弱点なのかと感じます。またラストで座頭市の座頭市たる所以を否定する驚愕(?)のオチが用意されているわけですが、これなんかも勝新版『座頭市』のファンから嫌われる理由なのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2022-03-20 17:30:17)
79.  3-4X10月 《ネタバレ》 
北野武、監督第二作目にしてやりたいことを全部ぶち込んできたというところでしょうか。というかこの一作で北野映画の基本プロットを全部手の内明かしたとも言うべきで、続いて撮った『あの夏、いちばん静かな海。』や『ソナチネ』は本作を因数分解したような感すらあります。音楽を全く使わず極端に少ないセリフ、そしてあっけにとられるラストといい一種の不条理劇と言えるんじゃないでしょうか。まだ俳優素人だったたけし軍団の面々も初起用、彼らにバラエティーのような騒々しい演技をさせなかったなかなかの慧眼です。とくにガダルカナル・タカの強面ぶりはかなりのもので、この人ヤクザを演じて凄ませたらピカイチです。あと渡嘉ちゃんのくりだすパンチは、さすが元チャンプだけあって惚れ惚れさせられます。どうせあのラストにするなら、もうちょっと続けて便所から出てきた柳ユーレイが実はあのチームのエースで四番打者、そして活動的な陽キャラだったと判らせるオチにしたら、パラレルSFみたいで面白かったんじゃないでしょうか。まあ北野映画に全般的に言えることは、SF要素というか発想が無いということで北野武のいちばん苦手な分野なのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-03-10 22:38:41)
80.  太平洋奇跡の作戦 キスカ 《ネタバレ》 
日露戦争の『日本海大海戦』やWW1の『青島要塞爆撃命令』なんかは確かにあるけど、戦後の太平洋戦争をテーマにした東宝特撮戦記映画で“勝ち戦(?)”を描いた唯一の作品です。真珠湾攻撃が含まれる『太平洋の鷲』や『太平洋の嵐』もありますが、どっちもボロ負けするまで描いていますからねえ。 有名なキスカ島撤退作戦の実話映像化ですけど、登場人物は全員仮名で生存している関係者がまだ多かった時期ですから、致し方ない面もあるでしょう。三船敏郎が演じる大村少将は“ヒゲのショーフクさん”で知られた木村昌福提督のわけで、容貌は似ても似つかないんですがその物に動じない豪傑ぶりは三船にはぴったりのキャラでした。前半で一水戦の長官として阿武隈に着任するシーンで、捧げ銃をして迎える水兵長のカイゼルひげこそが木村昌福が生やしていた髭で、三船と水兵長のやり取りを含めていわば楽屋落ちみたいになっています。その阿武隈や一水戦の駆逐艦群は東宝特撮で使われた艦船プロップでは最大縮尺で作られており(五十分の一ぐらいか)、モノクロ撮影も相まって迫力満点でした。だいたいは史実に沿ったストーリー展開ですが、けっこうフィクションも織り込まれておりそれが映画的にはスリルを盛り上げる効果を上げています。たとえば濃霧の中で補給船と阿武隈が衝突しますが、実際には衝突したのは駆逐艦でした。でも阿武隈が応急修理に一時間かかって「果たしてキスカ島突入に間に合うか?」というサスペンスを生むわけで、史実を上手く改変した脚本だと思います。エキストラを含めて女性がまったく登場しない、漢くさいお話しでもあります。 チャーチル曰く「撤退戦だけじゃ戦争に勝てない」のも真理ですけど、もぬけの殻になったキスカ島に上陸した米軍が同士討ちで三百人余りの死者・行方不明を出して、「史上最大の最も実戦的な上陸演習」と公式戦記にまで皮肉られているの知るとやはり痛快でしょう。しかしですね、アッツ島では全員玉砕、キスカ島では全員撤退、この差はなんなんでしょうかね。それは、アッツには海軍兵がほとんどいなかったけどキスカの守備隊のうち半分は海軍だった(この映画では全員海軍みたいな描き方ですけど)、という事情を言っちゃうと身も蓋もなくなっちゃうんですけどね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-03-07 22:57:44)
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