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イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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121.  最後の特攻隊 《ネタバレ》 
神風特攻隊を題材にした佐藤純弥監督による東映のオールスター大作戦争映画。1970年というカラー映画であってもおかしくない時代にあえて白黒で撮影されているところにこだわりを感じる。群像ドラマとしてもしっかりと作り込まれていて、見ごたえがあり、とくに中盤以降は渡辺篤史演じる吉川のエピソードを中心に構成されていて、この吉川の話はかなり丁寧に作り込まれている。実家に帰ってきた吉川を母親が涙ながらに叱責し、追い返すシーンや、その直後に自殺しようとする吉川を宗方(鶴田浩二)ともう一人の仲間が止め、必死に説得するシーンが良いし、特攻作戦で死ぬのを恐れていた吉川が空襲で燃えはじめた戦闘機に自ら乗り込み、自爆して最期を遂げるという彼の結末には思わず泣いてしまった。吉川を演じる渡辺篤史もいい演技を見せていて、彼の代表作とも言える役柄だと思う。そのほか、山本麟一と梅宮辰夫の兄弟のエピソードも印象深かった。得てして大味になりがちなこの手の映画であるが、本作はこの二つのエピソードのおかげで印象に残る佳作になっているし、また70年代後半以降に大作映画を多く手掛けることになる佐藤監督の演出にも光るものがあり、今まで見た彼の監督作の中でもいちばん面白い映画だった気がする。ただ一つ、終盤の終戦になったというシーンがえらく唐突に感じたのはちょっと残念。このあたりにもう少し配慮があれば良かったかなと。
[DVD(邦画)] 8点(2015-09-05 17:23:23)(良:1票)
122.  名もなく貧しく美しく 《ネタバレ》 
聾唖者夫婦の十数年間の人生を描いた松山善三監督のデビュー作。こういう映画はつい身構えて見てしまうのだが、松山監督が助監督をつとめていた木下恵介監督からの影響も見られる年代記もので、聾唖者(に限らず障害者)が世の中で生きていくとはどういうことかということがよく描かれていて、最後まで素直な気持ちで見ることができた。産まれてくる子供が聾唖者だったらという不安、妊娠したことを母親(原泉)に笑顔で報告に行った秋子(高峰秀子)が母親から出産を反対される辛さ、産まれてきた子供を聾唖者であるがゆえに事故死させてしまった辛さ、次に産まれてきた子供である一郎(島津雅彦)から聾唖者であるがゆえに避けられてしまう辛さ、耳が聴こえたらという秋子の苦悩、そしていわれのない差別。そういう辛さが見ている側であるこちらにもじゅうぶんに伝わってきて主人公夫婦につい感情移入させられてしまうし、そんな中でも二人で力を合わせて生きていこうというこの夫婦の生き方は本当に美しく、勇気づけられる。「私たちは一人では生きていけません。お互い助け合って普通の人に負けないように生きていきましょう。」という秋子のセリフにも心打たれた。既に書かれている方もおられるが、弟(沼田曜一)にミシンを持っていかれ、失意のうちに自殺を考え、家を飛び出して電車に乗った秋子を道夫(小林桂樹)が追いかけ、車両の窓越しに手話で説得するシーンは本当に名シーンで、道夫が秋子に言われた言葉を今度は秋子に言って説得するのが泣けるし、このセリフにあらためて「人はひとりでは生きていけない」ということを考えさせられた。松山監督の代表作ともされている映画だが、ハンディを持っているからといってけっして特別な人間(←こういう表現は個人的にはきらいだ。)などではなくたとえハンディを持っていてもそれ以外は普通の人間と変わらないのだという松山監督のメッセージのようなものが感じ取ることができて良かった。賛否両論ある秋子が交通事故死するラストだけは安直なお涙頂戴に走った気がしないでもなく、普通にハッピーエンドでも良かったような気がするが、(でも、意図としては分からないではない。)それでも本作は紛れもない名画で、本当に見て良かったと心から思える映画だったと思う。また、昭和36年というまだ今よりも障害者への理解が進んでいないと思われる時代に作られたことも評価したい。
[DVD(邦画)] 8点(2015-07-24 01:52:31)(良:1票)
123.  競輪上人行状記 《ネタバレ》 
兄の死によって実家の寺を継ぐことになった中学教師の男(小沢昭一)が競輪にハマり、堕ちていく様を描いた作品だが、坊主になった聖職者がギャンブルにはまり込むというこの設定自体がまず面白く、原作を書いた作家が住職というのにも驚かされる。今村昌平監督が参加した脚本は下世話だが、深みがあり、味わい深く人間ドラマとしても見ごたえのある映画になっていて、ただ下世話なだけというふうにはなっていないのが見事だった。主演の小沢昭一も見事にハマっていて、こういうダメな男を演じていてもどこか愛嬌があり憎めないところがあり、こういう演技はこの人ならではだろう。それよりすごいのはやっぱり南田洋子演じる主人公の兄の妻。夫の棺の前で夫の幻影に鞭打たれて悶えたり、死んだ犬の肉を焼き鳥屋に入れてしまうという行動が強烈なインパクトを残しているし、絶対に秘密にしなければいけないような過去をサラリと主人公に告白したりするのもものすごい。葬儀の最中に主人公に葬儀屋(加藤武)が耳打ちするシーンなど、寺や葬式に対しての皮肉めいた批判がストレートに描かれるのも良いし、これと併せて父親(加藤嘉)の死で真面目に坊主になろうと決意し、本当に真面目になった主人公が兄の妻から前述の衝撃的な告白をされたことから再び競輪にのめり込むという展開もどんな聖職者や上人でも結局は一人の人間なのだということがひしひしと伝わってきて素晴らしく、本作で作り手がいちばん言いたかったのはこういうことだと思わずにはいられない。主人公が競輪の予想屋になる(ここでの小沢昭一の口上も素晴らしい。)ラストはどこか主人公に哀愁が漂い、印象に残るものとなっており、この物語を締めくくるには最高のラストシーンだったと思う。また本作は主演の小沢昭一にとって間違いなく代表作の一本といえるだろう。
[DVD(邦画)] 8点(2015-06-27 14:07:03)(良:1票)
124.  WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~ 《ネタバレ》 
これまでオリジナル脚本で個性的な映画を次々と世に送り出してきた矢口史靖監督が初めて手掛けた原作モノということで若干の不安はあったが、最後まで明るく楽しめる映画という矢口監督らしさを損なうことなく、青春ドラマとして締める部分はしっかりと押さえてあって面白かった。主人公の平野(今回は主人公の名字が鈴木ではないのね。)勇気(染谷将太)が最初はいかにも現代的な若者(ゆとり世代と言うのか。)に描かれていて、最初は好感が持ちづらいのだが、そんな彼が新しい環境の中で次第に林業という未知の世界を知っていく過程を見ていくうちにだんだんとこちらも引き込まれた。目隠シストさんが仰るように新しいことを知った人が周囲にひとりもいないという状況の中ではじめるのは相当に勇気のいることで、新しい場所でうまく信頼関係が築けるかが本当に重要になってくる。本作は勇気とヨキ(伊藤英明)の関係を通してそれをうまく描いていたと思うし、これがあるから見ているうちに勇気に対する印象が変わり、ぐっと好感度も増すのだと思う。勇気とヒロイン・直紀(長澤まさみ)とのロマンスもあざとさを感じさせず自然なさわやかさがあり、良かった。(「愛羅武勇」と書かれたタオルを使った告白シーンは強烈。)ラストの別れのシーンは勇気とヨキの抱擁もそうだが、やはり電車に乗った勇気とバイクに乗った直紀がお互いに向かって「さようなら。」「さよなら。」と連呼するところには思わず感動してしまった。でも、この後、勇気が再び村へ向かうというエピローグが存在していたのは「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」でラストにエピローグを描かずにパッと終わらせていた矢口監督だけにこの別れのシーンで終わってほしかったと少々残念な気がする。クライマックスの祭りの躍動感がものすごくここだけでも映画館で見ておけば良かった。ヨキ役の伊藤英明は(「海猿」は見たことがないので比べられないが。)いかにも野性的な感じで山男役が見事にハマっている。
[DVD(邦画)] 8点(2015-06-13 00:49:28)(良:1票)
125.  トラック野郎 御意見無用 《ネタバレ》 
「仁義なき戦い」と並ぶ菅原文太の代表作となるシリーズの1作目。今回シリーズ自体を初めて見たが、得体の知れない勢いとパワー、そして全体からほとばしる熱さにひたすら圧倒されまくりの約1時間40分だった。桃さんが単純バカなのだが、とにかく熱い男で、演じている菅原文太にもヤクザ役とは一味違う良さがあり、賛否は分かれるかもしれないが、個人的にはこういう菅原文太もいいなあと思うし、見事にはまっている。(むしろ「仁義なき戦い」の広能よりも個人的には桃さんのほうが好きかもしれない。)それに愛川欽也演じるやもめのジョナサンとのコンビぶりも1作目というのに既に出来上がっているのがすごい。桃さんとジョナサンの二人を見ていると元気が出るというだけでなく、もう「惚れる」の一言で一気に映画に引き込まれた。脚本の筋書きとしては「男はつらいよ」シリーズのパターンを踏襲しているが、寅さんシリーズにはない派手な大立ち回りが見どころになっているのが東映らしいし、中でもドライブインの食堂を舞台にした関門のドラゴン(佐藤允)と桃さんのバトルはコントのように店が無茶苦茶になるという凄まじさでとくに印象に残る。それに今回のマドンナ 洋子(中島ゆたか)の初登場シーンが汚いトイレから出てくるというのも強烈だった。(この汚いトイレから美人が出てくるというのがギャップがものすごくあって笑える。)ラストは洋子に好きな男(夏夕介)がいることが分かって二人を会わせるために11㌧トラックを爆走させる桃さん。惚れた女のためならばたとえ自分の気持ちがどうであれ、その人のことを考えて行動する姿に男気を感じずにはいられないし、そんな桃さんがとてもカッコ良かった。はっきり言って映画としての完成度は低いのだが、そんなことは関係ない。久しぶりに心底惚れられる映画を見た、もうそれだけでこの映画を見て良かったと思えたし、このシリーズにもはまれそうだ。
[DVD(邦画)] 8点(2015-05-28 23:57:30)
126.  鍵泥棒のメソッド 《ネタバレ》 
正直に言ってほとんど期待してなかったのだが、とにかく笑える映画で面白く、時間の経つのを忘れて最後まで見入ってしまった。堺雅人と香川照之の二人がいい味を出していて笑わせてくれる。とくに前半の二人が入れ替わったあとからがもう笑えて笑えて。中でも車の中での香苗(広末涼子)と記憶喪失になったコンドウ(香川照之)との「35歳」のやりとり、自分を桜井だと思っているコンドウが、本物の桜井(堺雅人)の前で桜井が書いた遺書を読み、「35歳にもなって仕事もしてなくてこんな汚い部屋に住んでいたら自殺もしたくなります。」と言うシーンは思わず大声で笑ってしまった。内田けんじ監督の映画は本作で初めて見たのだが、いちばん最初のシーンが香苗の唐突かつ突拍子もない結婚宣言というのが意表をついていて、この冒頭から映画を見ている人を引き込むのがうまいし、畳み掛けるような演出もよく、非常にテンポのいい娯楽作になっている。そしてなにより脚本が面白く、最近の邦画の話題作は原作モノが多い中で、オリジナルでこんなに面白いストーリーを書ける監督がいるんだと思うとなんだかとても安心できるし、やっぱり面白い作品を作るには脚本がいちばん大事ということを実感させられた。また、この映画には人生の入れ替わりというなにかメッセージ性のありそうなテーマながらそういうのが一切ないが、それが却って内田監督の潔さというものを感じる。本当に肩の力を抜いて気楽に楽しめて、素直に見て良かったと思える映画でとても気に入った。内田監督のほかの映画も見てみたい。
[DVD(邦画)] 8点(2014-12-25 18:34:10)(良:2票)
127.  風立ちぬ(2013) 《ネタバレ》 
本作をもっての宮崎駿監督の長編作品からの引退宣言が話題になった本作であるが、宮崎監督が自分の趣味だけで作ってしまったような開き直りぶりが潔い映画で、堀越二郎という実在の零戦設計技師を描いた年代記ものとなっているが、そこに感じるのは宮崎監督自身の飛行機への思い入れの深さで、まさに主人公の堀越二郎は宮崎監督自身の分身ととらえることもできる。映画としても極めて大人向けであり、今までの宮崎アニメとずいぶん毛色の違う作品になっている(子供と一緒に見てはいけない映画のような気がする。)が、ドラマとしても見ごたえのある作品で、地味なストーリーながら引き込まれる部分も多く、とくにラストシーンには感動してしまった。見る前にはまったく期待してなかったのだが久しぶりに心に残る宮崎アニメ、ジブリ作品で本当に見て良かったと思える映画だった。(ジブリのアニメでこういう感覚何年振りだろうか。)宮崎監督は「もののけ姫」の頃から引退宣言をしているが、それでも客の呼べる監督ということもあってか、なかなか引退できない状態が続いていたように思うのだが、本作からはもうこれで本当に引退するぞという強い決意のようなものも感じられる。そして、本作はそんな宮崎監督の引退作に相応しい佳作で、長い監督人生をこの映画で終わらせるのはいかにも宮崎監督らしい。思えば、自分が宮崎監督の映画で最初に見たのは小学校低学年の頃にはじめて見た「となりのトトロ」で、それからもうずいぶん経ったのだが、今でも作品を見ている監督というのは宮崎監督ぐらいしかいない。その最後の作品というのはやはり感慨深いものがあり、さびしくもあるが、これだけは言いたい。ありがとう、そしてお疲れ様でした。宮崎駿に敬意を込めて。
[DVD(邦画)] 8点(2014-11-07 00:51:57)(良:1票)
128.  今年の恋 《ネタバレ》 
今年になって何本か木下恵介監督の映画を見ているが、シリアスな作品が続いたせいか喜劇映画はかなり久しぶりに見る気がするのだが、これがまた面白く、肩の力を抜いて気楽に見られる楽しい作品だった。「永遠の人」に続いての木下作品出演である田村正和が「永遠の人」の息子役とは違うちゃらい学生を演じているが、やはり「永遠の人」の役柄とは別人に見える。(近年の彼は何を演じているのを見ても古畑任三郎にしか見えない。)映画はこの田村正和の兄である吉田輝雄と悪友の姉であり、料亭の娘である岡田茉莉子が主演のラブコメなのだが、印象に残るのはやはりこの二人が車を走りながらの掛け合いのシーンで、その掛け合いが面白く、なんとも爽やかでロマンチックだ。ほかにも思わず爆笑してしまうようなシーンが多く、岡田茉莉子が弟を説教しているところへ両親がいちいち割って入るシーンは両親の配役の妙もありかなり笑えるし、弟たちの担任を演じる三木のり平もいい味を出している。とくに弟たちの素行の悪さについて話しているうちにいつの間にか自分の風邪が大変と言い出してしまうところなどは最高だった。それにベタではあるが、電話を使ったギャグも面白い。東山千栄子演じるばあやがこれまたいい味を出していて、雨の夜中に吉田輝雄と田村正和が寝ている寝室に入ってくるシーンには思わず笑ってしまった。ラストは大晦日の除夜の鐘をつくシーンで終わっているのがいかにも正月映画らしく、今度本作を見るときはできれば大晦日に見てみたいと思う。木下監督は一般的にはシリアスな映画で評価されることの多い監督だと思うのだけど、それだけではなくこういった軽めの喜劇もうまく、喜劇でももっと評価されていい監督だと本当に思う。とくに本作は監督自身が楽しみながら撮っている姿が想像できるような映画だった。
[DVD(邦画)] 8点(2014-10-02 16:35:41)
129.  ひとり狼 《ネタバレ》 
村上元三がなかなか映画化の許可を出さなかった原作を雷蔵主演で映画化した股旅時代劇。雷蔵の股旅ものはあまり見た記憶がないが、こういうアウトローな役柄を演じていてもピッタリとハマっているし、カッコいい。それに雷蔵念願の企画だけあって、本作の雷蔵がそうとうこの役に入れ込んでいるのが分かり、その演技は素晴らしいの一言で、この前見た「眠狂四郎 女地獄」と同じく雷蔵にとって晩年の主演作だが、本作はその雷蔵晩年の代表作とも言っていいのではないかと思う。映画としても見ごたえじゅうぶんで長門勇演じる渡世人(これがいい味出してる。)の回想形式でストーリーが展開していくという構成がいいし、主人公 伊三蔵の渡世人としての悲しみや孤独がうまく描かれていてドラマ性も高く、作り手の良い映画を作ろうという意気込みがよく感じられる傑作である。前半で渡世人の作法を細かく描いていたのも新鮮だった。(ほかに今まで見た時代劇では市川崑監督の「股旅」くらいしか思い浮かばない。)印象に残るのはやはり伊三蔵が自分の息子と話すシーン、実子を前に父親と名乗ることのできない伊三蔵の辛さには思わず感情移入せざるを得ない。それにラスト、伊三蔵が息子にいう「見ろ!人間の屑のすることを。」というセリフがなんとも切なく、心に残る。
[DVD(邦画)] 8点(2014-08-08 00:04:31)(良:1票)
130.  野火(1959) 《ネタバレ》 
第二次大戦末期のフィリピン戦線を舞台に敗残兵となった日本兵たちの末路を描いた市川崑監督による戦争映画。市川監督の戦争映画といえばこの映画の数年前に日活で手がけ、後年自身によってリメイクもされた「ビルマの竪琴」が知られていて、そこでも捕虜となった敗残兵が描かれていたのだが、どちらかと言えば謳歌的で情感たっぷりに描かれていたあちらとは対照的に、この映画はかなり生々しく、より戦場における敗残兵となった日本兵の過酷な状況がリアリティを持って描かれていて衝撃的であり、怖い。飢えに飢え、極限状態に陥った敗残兵たちが人間を殺してその肉を食べるということがこの映画の大きなテーマとなっているが、きっと実際の敗残兵たちも同じようなことをしていたのだろうと考えさせられるし、見ていて非常に重苦しいなんとも言えない気持ちになるのだが、一方で見ているうちにだんだんと引き込まれていき、目が離せなくなった。白黒の映像も効果的で、極限状態の人間の異常さ、恐ろしさといったものがこれでもか、これでもかと伝わってくる。そんな異様な状況の中でラスト、野火の上がる方向へ向かう主人公の「普通の暮らしをしている人間に会いたい。」というモノローグは、それでも人間らしく生きていたいという悲痛な叫びであり、ここに市川監督がこの映画にこめたメッセージというものを感じ取ることができた。主演の船越英二は撮影前に体重を減らして臨んだそうだが、一見すると船越英二とは分からないような風貌でまさに田村一等兵という役柄になりきって演じており、その鬼気迫るリアルな演技が見事で、彼の代表作と言われている映画だが、まさにその通りだと思う。また、「ビルマの竪琴」で描けなかった戦争の狂気的な部分を見事に描き切った傑作で、市川監督にとってもそれに並ぶ戦争映画の代表作だろう。あまり知られていないのは残念だが、是非とも2本セットでご覧になることをお勧めしたい。
[DVD(邦画)] 8点(2014-06-28 15:55:45)
131.  つむじ風 《ネタバレ》 
久しぶりに見る渥美清主演の喜劇映画。つむじ風のごとく突然現れた風来坊の男の起こす騒動を描いているが、やはり演じるのが渥美清だけあってこの主人公のキャラクターは寅さんそのもので、やはり渥美清にはこういうキャラクターが似合っているし、喜劇俳優としての面白さや魅力も出ている。桂小金治や伴淳、さらには伊藤雄之助とのやりとりも面白く、彼らと渥美清のやりとりを見ているだけで楽しい映画である。桂小金治は女房(沢村貞子)の尻に敷かれた失業者を演じているのだが、希望を持った明るいキャラクターに描かれていて、失業者であることを全く感じさせていないのがいいし、そのことによって見ているこちら側も元気になれる。些細なことから家族を巻き込んでいがみ合いを続ける伴淳と殿山泰司もどこか愛らしい。でも、やっぱり渥美清の面白さがよく出た映画になっていて、渥美清の演技を見ているだけでなにかこう、癒されるし、渥美清という俳優はやはり最高の喜劇役者の一人だと改めて思わずにはいられない。その渥美清のほか、個性的な出演者たちの魅力を引き出す中村登監督の職人監督としての演出も手堅い。はっきり言ってこの映画自体は傑作や名作ではない。それでも渥美清の喜劇俳優としての魅力はじゅうぶんに感じられる。それだけであゝ見て良かったと思える映画だった。この映画で渥美清は主題歌も歌っている。渥美清が「男はつらいよ」シリーズ以外で主題歌を歌っているのを初めて見た(珍しいなあ。)が、これが新鮮で、その歌声も印象に残る。
[DVD(邦画)] 8点(2014-05-22 16:23:23)(良:1票)
132.  野獣死すべし(1959) 《ネタバレ》 
仲代達矢が主人公 伊達邦彦を演じる東宝の「野獣死すべし」。やはり以前に見た松田優作主演の角川映画とは印象がだいぶ違うのだが、本作のほうがシンプルなつくりで、分かりやすく、かつ当時は日本映画ではまだ珍しいハードボイルド映画の雰囲気も角川版よりもあり、こちらのほうが自分としては好み。本作の伊達邦彦は角川版以上にギラギラしていて、演じる仲代達矢の癖の強さもあって、何を考えているか分からない怖さがよく出ている。それをいちばん感じるのは花売りの老婆(三好栄子)とのやり取り。伊達から強要されて踊り続ける老婆を見つめるあの眼の演技は仲代達矢ならではで、これだけで伊達邦彦という男の怖さや冷酷さをすごく感じられた。それにこのシーンはこれが最後の出演作となる三好栄子も迫真の演技を見せていてとても見ごたえがある。予告編で20代スタッフを中心に制作というのを強調していたが、まだデビュー間もない須川栄三監督は白黒画面をフルに活かしていて、さきほど書いた映画のハードボイルドな雰囲気をうまく映えさせているのがうまい。それに、犯罪映画としてだけではなく、刑事映画としての面白さもあると思う。ただラストが尻切れトンボのような感じになってしまっているのはちょっと残念だった。
[DVD(邦画)] 8点(2014-05-15 18:36:39)
133.  けものみち 《ネタバレ》 
数年前に放送された米倉涼子主演の連続ドラマ(未見)が有名な松本清張サスペンスの映画化作品。いわゆる悪女を描いた映画で、主演は池内淳子。庶民的で地味な印象がある女優なだけにどんなものかと思っていたが、この頃の東宝の喜劇映画や後年のテレビドラマの脇役、そして「男はつらいよ 寅次郎恋歌」のマドンナ役で見せる姿とは全く違う演技でこの民子という悪女を熱演していて、表情もきつくて怖い。増村保造監督作品の若尾文子・・・とまではいかないものの、(ちなみに本作の脚本家は増村作品常連の白坂依志夫だったりする。)見ていて違和感はないし、印象にも残り、この民子という役は池内淳子の数少ない映画で代表作と言ってしまってもいいのではないだろうか。この民子をあくまでクールに傍観的に描く須川栄三監督の演出がよく、独特のカメラワークも印象的だ。「寒流」でもそうだったが、本作でも金と色と欲に執着する人間が描かれているのが松本清張原作作品らしいところで、何か裏の考えを持った登場人物たちが次々と出て来て、人間の本質を見せていくが、それを演じるのが池部良や小林桂樹など普段は実直な役柄の多い俳優という見る人の裏をかいたキャスティングなのも見事。中でも池部良がこういう卑劣な役柄を演じているのが本当に珍しく、ラストの燃え盛る風呂場を見ながらの高笑いは本当に怖かった。そんな中、病気で寝たきりでありながら色欲エロ爺なフィクサーを演じる小沢栄太郎はイメージ通りのキャスティング。見ていてものすごくいやらしい爺で、この人がこういう役を演じると本当に怖いくらいにハマる。それに大塚道子。「上意討ち 拝領妻始末」の三船の妻役も怖かったが、この女中頭の役も存在感がありやっぱり怖い。そうそう、先週まで「黒い画集」シリーズを見ていたのだが、三部作それぞれに主要人物として出演していた小林桂樹、池部良、土屋嘉男の三人が共演しているのも見どころの一つだ。
[DVD(邦画)] 8点(2014-05-08 18:40:43)(良:2票)
134.  黒い画集 第二話 寒流 《ネタバレ》 
松本清張の連作「黒い画集」シリーズを東宝が同じく連作ものとして映画化したうちの一本。このシリーズを見るのは堀川弘通監督の「黒い画集 あるサラリーマンの証言」に続いて二本目だったのだが、鈴木英夫監督による本作も非常に面白かった。ストーリーは不倫関係に陥った銀行支店長(池部良)と得意先の女将(新珠三千代)に、女将に横恋慕した常務(平田昭彦)が絡んでくるというものだが、この三人の色と欲にまみれたドロドロの人間模様が実にうまく描かれていて見ごたえがあるのはもちろん、金や地位と言ったものを前にした人間の醜さがこれでもかと言わんばかりにリアルに描かれているところが本作の凄いところで、人物描写も見事。展開が二転三転する脚本もうまく、飽きさせない構成も良かった。ラストがバッドエンドなのもリアルで、社会派映画として銀行の暗部をもしっかりと描いていて単なる娯楽作にしていないところに本作の肝があるような気がする。主人公を演じる池部良は不倫に走ったばっかりに社会の寒流に飲み込まれるという役柄を演じていて、「青い山脈」などで見せる爽やかなイメージとは少し違う印象もあるが、なかなかのハマリ役だった。そんな主人公と一度は結婚をしたいと言いながら後に本心をむき出しにしてあっさりと主人公を捨ててしまう女を演じる新珠三千代。「人間の条件」の美千子のような献身的な役柄もハマる人だが、こういう二面性のある役をやらせてもピッタリとハマるところがこの女優の魅力だと思う。そして、平田昭彦扮する常務のいやらしいこと。この俳優は怪獣映画などで子供のころから見ているが、ここまでいやらしい悪役を見るのは初めてかもしれない。そんなキャスト陣の演技もさることながら、やはり本作を見ていちばん感じるのは人間というもののだらしなさと怖さが痛いほど伝わってくる映画であること。事件らしい事件は描かれず、人死にもないのにここがしっかりと描かれていることによって、サスペンスとしての面白さがじゅうぶんにあるだけでなく、人間ドラマとしても一級のものになっていて、まさに傑作と言える、自信を持って他人に薦めることのできる映画だ。 本当に見て良かったと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2014-04-24 23:41:46)(良:1票)
135.  にっぽん泥棒物語 《ネタバレ》 
山本薩夫監督が実際に起きた冤罪事件をもとにフィクションとして手がけた社会派喜劇。三國連太郎扮する主人公 林田儀助の泥棒時代のエピソードがかなりコミカルに描かれていて思った以上に喜劇要素が強く、どこかすっとぼけた味わいがあり、山本監督の社会派監督としてだけではない一面が感じられた。でもやはり、この主人公が列車転覆事件が起きる直前に線路を歩いていて怪しい9人の男とすれ違ったあたりからが山本監督の本領発揮といえる社会派ドラマになる。この事件で捕まった人たちの冤罪を証明するように周りから言われても、今は泥棒稼業を辞め、結婚して子供もできて、泥棒だった過去を隠して平穏な生活を手に入れている身では家族のことを思うととてもできないという林田の心の葛藤が胸を打つ。そんな林田が証言を決意するシーンはとても感動してしまった。ここまででもじゅうぶんドラマとして見ごたえあるのだが、ラストの証言シーンもみどころで、ここはもう三國連太郎の独演会といってよく、皮肉めいたことを次々と言うのだが、それが物凄く笑える。中でも「警察は自分よりも嘘をつく。嘘つきは泥棒の始まりというが。」というセリフ。元泥棒である主人公が言うからこその皮肉がこめられていて、笑えると同時にこのセリフにはそれ以上の底知れぬ凄さを感じた。喜劇映画のなかに冤罪という重いテーマを入れてしまうといつの間にかシリアスになりすぎ、喜劇的な部分がおなざりになってしまうのではと心配だった面もあったが、この証言シーンのおかげで最後まで喜劇映画であることを忘れない映画になっているのがいい。林田と腐れ縁の刑事を演じる伊藤雄之助のネチネチとした演技もやはり印象に残るし、妻を演じる佐久間良子や、冤罪被害者の一人を演じる鈴木瑞穂も良かった。でもこの映画はやはりなんといっても主演の三國連太郎に尽きる映画で、出演作の中ではあまり知られていないようではあるが、間違いなく本作も代表作の一本だろう。三國連太郎の喜劇といえば「釣りバカ日誌」シリーズをどうしても思い浮かべてしまいがちだが、やはりそれだけではないということを本作を見ると感じることができる。
[DVD(邦画)] 8点(2014-04-17 17:50:24)(良:1票)
136.  どぶ鼠作戦 《ネタバレ》 
「独立愚連隊西へ」に続き、岡本喜八監督が再び佐藤允と加山雄三を主役に起用した戦争映画で、タイトルからは分からないが「独立愚連隊」シリーズの3作目にあたる作品になる。今回は前2作に比べてやや複雑なきらいがあるのだが、それでも雰囲気的には完全に前2作を踏襲しているのが嬉しいし、喜八監督の演出もこの人らしいテンポのいい見せ方で見ていて飽きさせないし、やっぱり痛快さがあるのがなによりいい。ストーリーは敵の捕虜になった関大尉(夏木陽介)を佐藤允扮する百虎に集められた特務隊が救出に向かうというものなのだが、このメンバーが一癖もふたくせもあるような個性的な連中なのも面白く、中でも忍術を研究しているという砂塚秀夫演じる佐々木二等兵が脱出のためにパントマイムを使うシーンなどは傑作で思わず笑ってしまった。(この人は同じ喜八監督の「戦国野郎」でもコミカルな演技が印象に残っている。)喜八監督らしさは戦争そのものについてもよく出ていて、関大尉が自分の命令で銃殺になった捕虜の幻影に苦しめられるところはリアルだし、自らが捕虜になった後に主治医としてやってきた軍医がその銃殺された捕虜にうり二つというのも皮肉が利いていて印象に残る。それに日本軍についてもちくりと批判をやってみせるのも喜八監督らしいところである。関大尉や正宗大尉(藤田進)が独立愚連隊となった特務隊に加わり、日本軍に反旗を翻すラストシーンが爽快で好きなのだが、このシーンの正宗大尉のセリフが黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」での藤田進の「裏切り御免」を意識したものになっているのが笑えるし、特務隊が結婚式に紛れてという展開も「隠し砦の三悪人」を思わせている。思えば、喜八監督が本作の翌年に手がけた時代劇「戦国野郎」も「隠し砦の三悪人」に似た雰囲気の映画になっていたので、やはり喜八監督は「隠し砦の三悪人」が好きなんだろうなあと思わずにはいられない。
[DVD(邦画)] 8点(2014-03-20 17:32:39)
137.  暗黒街の弾痕(1961)
岡本喜八監督の暗黒街シリーズ3作目。ヤクザ映画という印象が強かった前2作と違い、自動車業界を舞台に産業スパイを描いていて、主演も鶴田浩二や三船敏郎に代わって「独立愚連隊西へ」や「戦国野郎」などで息の合ったところを見せていた加山雄三と佐藤允のコンビが担当し、前2作とは毛色の違う作品になっている。同じく自動車業界の産業スパイものといえば増村保造監督の「黒の試走車」が思い浮かぶが、本作はサスペンスよりもアクション映画としての色合いが濃く、同じ題材でありながら受ける印象はまったく違う。しかしあくまで娯楽アクション映画に徹したことと主演ふたりの対照的なキャラクターが喜八監督の作風に見事にマッチし、喜八監督の持ち味がじゅうぶんに発揮されていて、演出も前2作と比べると明らかにイキイキとしているのが嬉しい。結果、喜八監督が手がけた暗黒街シリーズの中ではいちばんこの監督らしさが出ていて面白かった。それに加山雄三と佐藤允のコンビがやはり本作でも息の合ったところを見せていて、このコンビの良さもしっかりと出ている。喜八監督の暗黒街シリーズとしては最後の作品になるのかもしれないが、その中ではぼくも本作がいちばん好きだ。
[DVD(邦画)] 8点(2014-03-13 18:26:49)(良:1票)
138.  ジャズ大名 《ネタバレ》 
江戸時代の日本に外国人が漂流というと「おろしや国酔夢譚」の逆パターンのような話になってしまいそうなところを、それがきっかけである潘の殿様(古谷一行)と家来たちがジャズにはまっていく姿を勢いよく描いていて、岡本喜八監督らしい実に軽快な映画に仕上がっていて面白かった。とにかくひたすら陽気でテンションが高くエネルギーに満ち溢れていて、1986年制作と喜八監督の映画としてはけっこう後年の作品にもかかわらず、衰えというものをまったく感じさせないようなパワーがあるのはすごい。そして何よりもこの映画を喜八監督本人が楽しんで演出しているのがよく分かるし、見ている人に対しても肩の凝らない映画をという思いもよく伝わってきて本当に何も考えずに気楽に見ていられる映画だ。ラスト20分の狂乱のジャズセッションのシーンはなんとも強烈で印象に残る。その狂乱の中でいつの間にか明治になっても「俺たちにはそんなこと関係ないぜ」とばかりに狂乱のセッションを続けるエンディングに喜八監督らしい反骨精神のようなものを感じることができた。「ああ爆弾」ほどではないがシュールなシーンも多く、中でもそろばんをスケボー代わりにして城の中を移動する姫には笑わされたし、ほかにも殿様をはじめとしておかしくて個性的な登場人物たちも面白い。喜八監督の映画を見るのはかなり久しぶりで、それもあってか見る前はちょっと不安な面もあったが、そんな不安は見ているうちに吹き飛び最後まで楽しく見ることができて良かったと思う。最後にもう一言、矢口史靖監督の「スウィング・ガールズ」はあんがいこの映画の影響を受けてる部分もあるのかもしれないと少し思った。
[DVD(邦画)] 8点(2014-02-13 18:29:13)
139.  日本一の男の中の男
古澤憲吾監督による植木等映画、かなり久しぶりに見たが、やっぱりものすごい勢いがあって面白い。昇進できると張り切っていた植木等演じる主人公 小野子等がストッキング会社の会長(東野英治郎)の一声で転勤することになり、最初は落ち込むが、すぐにポジティブな考えに転換するところはこのシリーズらしい展開でこれだけで見ていて前向きになれるし、このシリーズの植木等を見ていていつも思うが、人生何があっても明るく生きていこうというのが感じられ、見た後にとても元気になれるのがこのシリーズの魅力だとあらためて思う。既に青観さんが書かれているとおり、本作でも植木等演じる主人公は頭の回転が異様に早く、行動力があり、言いたいことは相手が目上の存在だろうがズバズバ言う。これが見ていて非常に気持ちよく、この主人公にある種、憧れのようなものも感じることができるし、本当に嫌なことなどきれいさっぱり忘れさせてくれる不思議な魅力がある。そして勢いのある古澤監督の独特の演出も面白さに拍車をかけていて飽きさせない。とくに軍艦マーチをバックに女子社員たちが屋上で行進するシーンはいかにもこの監督らしいシーンで印象に残る。これまでのシリーズで浜美枝が演じていたヒロインを本作では浅丘ルリ子が演じている(日活を辞める前後の頃だそう。)が、とくに違和感はなく、むしろどこかクールな感じで新鮮に感じられた。浅丘ルリ子といえばなんといってもリリーであるが、このシリーズには寅さんシリーズと違い、ペーソスとかそういうものは基本的になくひたすらお笑いに徹しているところが潔く、そこも魅力的で好きだ。(もちろん、寅さんシリーズも好きなんだけどね。) 本作を見終わってクレージー映画や、植木等主演の喜劇映画をまたもっと見たいと思ったし、また、今の日本映画にはもっとこういうあっけらかんとした前向きな映画が必要なのではないかとも感じた。 やっぱり植木等、好きだ。
[DVD(邦画)] 8点(2014-02-06 18:40:17)(良:1票)
140.  あの夏、いちばん静かな海。
北野武監督の第3作は暴力的な世界を描いた前2作とは趣を変え、サーフィンに次第にのめりこんでいく若者とその恋人を描いたラブストーリーとなっているが、自身は出演しておらず、企画としてもクレジットされているあたりにたけしの本作に対する本気度がうかがえるし、実際に映画としての完成度も非常に高い。「その男、凶暴につき」や「3-4X10月」で既にセリフに頼らず映像で見せていくというたけしの作風は確立されていたが、本作では主役のカップルを2人とも聾唖者に設定することで、セリフを排除し、2人の関係は映像のみで語られていくというのがいかにもたけしらしく、「その男、凶暴につき」から本作までの3本でたけしの映画監督としてのスタイルは完成されたものになったのだろうと思わずにはいられない。本作は主役2人のセリフがない分、ものすごく淡々とした映画にはなっているが、言葉で語る以上にこの二人がお互いを思う気持ちや切なさがじゅうぶんに伝わってきて、まさにサイレント映画の手法だが、あらためて映画というのはこういうものなんだと気づかされるし、その映画を演出しているのが普段はテレビでバカをやっているタレントであることにもやっぱり驚かされ、本作を見るとたけしという人は本当は才能のある人なんだと感じさせられる。主役のふたりを演じた真木蔵人と大島弘子もよく、いかついイメージのある真木蔵人はさわやかに好演していても違和感がないし、なによりもサーフィンに熱中する彼を見つめる大島弘子がすごく印象に残り、これ一本で引退したみたいだが、だからこそよけいに鮮烈なものがあるのかもしれない。夏の海が舞台だが、たけしらしい空と海の美しさも印象に残る。これがたけし映画初参加となる久石譲の音楽も映画の雰囲気にとても合っていて、美しくいつまでも耳に残り、これも映像とともに二人のドラマを描くのに効果をあげている。賛否両論ある映画のようだが、見終わってなんとも言えない気持ちになり、素直に良い映画だ、見て良かったと思えた。最近の「アウトレイジ」のようなたけし映画も悪くはないが、やはり本来のたけし映画の良さは本作のような独特の静けさを持った映画にこそあるような気がする。
[DVD(邦画)] 8点(2014-01-25 01:09:00)(良:1票)
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