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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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1.  Winny 《ネタバレ》 
裁判ものとして議論の場面には引き込まれるし、その背後にあった人間ドラマも丁寧に描いてあったと思う。それでも、やっぱり本作のアプローチはいろいろ残念でした。  自分もWinny事件は同時代の出来事として経験してました(Mac使用者だったので、Win中心のWinny現象自体は横目で見てましたが)。その視点から見てみると、あの時代の空気感のようなものを本作が掴み損ねているように思える。この事件の少し前、同じP2P技術を用いた音楽ファイル交換ソフトのNapsterが、文字通りの「革命」を起こそうとしていた。Napsterもまた裁判で負けてビジネスとしては失敗したものの、CDというモノを売る音楽ビジネスのモデルの限界が示唆されるようになり、いまの配信やサブスクで音楽を聴くモデルへの一大転換点となりました(その渦中、日本では音質に問題があるコピーコントロールCD(CCCD)という珍品まで出現しました)。その時代の波のなかに、Winny事件もあったはずです。Winny事件を起こしたのは時代の変化に対する人々の不安でした。金子勇氏は、既得権益を守りたい「業界」と新たなネット社会への不安のスケープゴートとして、拘留され、法廷に立たされ、開発者としての、そして自身の身体的な生命も絶たれたのだと思っています。  CD販売店やビデオレンタル店が街から姿を消し、サブスクで映画や音楽を楽しむのが当たり前になった今の時代にWinny事件を描くのであれば、その時代の空気をどれだけ描けるかが焦点になったはずです。しかし、本作では、なぜ警察があれだけ金子氏を立件しようと躍起になったのかという問いも、警察の隠ぺい体質や自白強要といった昔ながらの捜査・立件手法の問題として描くのみで、まったくその時代の不安を描けていない。また、皆川猿時さんが演じる旧世代と、三浦貴大さん演じる新世代の弁護士のあいだの溝は、弁護団のなかにも、金子氏がやっていること、そして金子氏という人物を本当に信じていいのかをめぐる、もっと根源的な対立として描けた筈なのに、残念ながら単なる世代間の温度差として処理されてしまう。金子氏が起こした「革命」は、彼を陥れたい警察側のストーリーとしてのみ存在し、弁護側視点(そして本作の製作者も)からは開発者のオタク的な「純粋さ」の物語に収束してしまう。  しかも警察司法の問題を描きたかったのであれば、焦点は最終的に無罪を勝ち取った最高裁判決になるはずなのに、それは最後に字幕で知らされるだけで、法的にもこの事件の何が問題だったのかもわからない。愛媛県警のエピソードも、Winny事件を描くために絶対に必要なものだったのか、よくわからない(Winnyはいい側面もあるとか、警察にとって都合が悪いから目の敵にされたとか? どっちにしても表面的な矮小化だ)。90年代生まれの若い松本優作監督がこの映画に託したかったメッセージがなんだったのか、どうにもよくわからなかった。
[インターネット(邦画)] 4点(2024-05-19 10:20:45)《新規》
2.  悪は存在しない 《ネタバレ》 
序盤のゆったりした生活描写は正直退屈で睡魔に襲われ「これはハズレだったか」と思ったのですが、グランピング開発の説明会の場面から俄然面白くなりました。「開発者対ジモト」をそれぞれの視点から描くのかな、と思っていたら終盤に物語も表現も一気に抽象度がアップ。「バランスを取ること」や「自然との共生」みたいな語りにビシャッと冷や水を浴びせるような展開にポカーンとするしかない。終幕して場内が明るくなると、ほぼ満席だった観客のみなさんもみんな「え、いま私たち、何を見せられた?!」という表情。その表情を共有できただけでも、映画館でみてよかった〜と思った経験でした。  終わってから振り返ってみれば、序盤からずーーーっと劇中を満たしていた不穏な空気や破綻の予感。濱口作品に共通する登場人物の「作り物」感。素朴で信頼おけるジモトの便利屋が抱える決定的な欠落。東京から来た2人、そしてその2人の立場を相対化する社長とコンサルという凡庸と煩悩の塊のほうに気が取られているあいだに、「自然と共生してる」風の地元民たちが背負ってしまった原罪の数々が浮かび上がる。その結果、村落そのものが侵略者であったことが象徴的に示されたのだと思うけれど、映画タイトルとラスト数分の解釈はいまもぐるぐると頭のなかを回ってる。ただ、その不可解さは決して不愉快なものではなく、日々を生きることを違った角度から考えるような知的なエンタメという感じでした。
[映画館(邦画)] 8点(2024-05-18 08:17:38)《新規》
3.  ゴジラ-1.0 《ネタバレ》 
アカデミー賞効果で平日朝9時上映の回なのに劇場はほぼ満員。観客も春休み中の学生さんたちからシニアまで幅広い。公開半年過ぎても熱気というか活気がある映画館というのはやっぱりいい。  そして、それなりに日本映画を見てきた自分としては、オスカー受賞の特殊効果はやっぱり映画館で見て良かった。冒頭のジュラシック・パークもどきに「大丈夫か?」と心配になるも、巨大化した後の「見上げるショット」がものすごく効果的で、そして満を持しての「熱線」炸裂、そしてその爆風。かつて何度「ハリウッド顔負け」といううたい文句の日本製VFXにがっかりさせられてきたか。それが、今回はなんとオスカー視覚効果賞ですよ。なんと痛快なことか。  ただ、懸念だったドラマ部分はやっぱり自分はダメでした。「しゃべりすぎ」は山崎監督作品なので、やっぱりといったところでしたが、今作の主要人物「死ななさすぎ」はかなり気になりました。「生きろ」が本作のメッセージなんだとしても、「生きろ」と願った人は「死なない」というのは本末転倒というか。人ってほんとうに簡単に死んじゃうんです。びっくりするくらい簡単に。それを学んだのが戦時中の日本だったと思うし、震災を何度も経験した今の日本もそうでしょう。なのに、今作の主要人物は「死なない」。島で海で目の前でゴジラに遭遇しても、電車で宙づりになって落下しても、爆風に吹き飛ばされても、放射能を大量に浴びても、死なない。死ぬのは名無しのモブキャラばっかり。そんな設定のなかで「生きろ」って言われたって・・・・。主人公もその仲間もモブキャラも、みんな等しく生きて死ぬんです。その緊張感を欠いたまま、言葉ばかりが上滑りのまま語られる「命」の物語のどこに感動しろというのか。  あと連合軍占領期という時代設定がまったく生きていないのが残念。「国家主権がない」ってどういうことか。じゃあ「民間でやればいい」という単純な話ではないはず。でも「核」に頼らない「わだつみ」作戦のアイデアは評価したい。
[映画館(邦画)] 4点(2024-03-19 16:38:13)(良:1票)
4.  ウェディング・ハイ 《ネタバレ》 
こうゆう「悪人」がいないコメディは好きなので、しっかり楽しめました。結婚式あるある、自分はもう20年近く前の話になりますが、それでも思い出して微笑ましい気分になったり。フツーの人びとが非日常で輝く瞬間の楽しさというか、一緒に式に出て「あー、いい式だったね」と感想言い合っている気分になるだけでも、この映画としては大成功でしょう。篠原さんはいつもの篠原さんですが、脇で輝く臼田さん、自意識過剰ぶりが笑える中尾君など、キャスティングもいい。いままで苦手だと思っていた中村倫也さん・関水渚さんのカップルも、この作品では二人の魅力が見事に表現できていたと思います。このあたりは、大九明子監督の演出力でしょうね。  去年『ブラッシュアップ・ライフ』にはまって期待していたバカリズムさんの脚本はいまいち。「縄抜け」をやりたがる義理の兄と「投げ縄」が特技というバーテン、というあまりにも不自然な設定は、きっと伏線として回収されるんだろうなあと思ったら、やっぱり。これは伏線の張り方が不自然過ぎて、逆に興ざめでした。最後30分を岩田さんのパートにする構成も、『カメラを止めるな』的なカタルシスを期待したのかもしれないけど、「結婚式」という本作のテーマからすると逆効果だったような。やっぱり式が終わってよかったねー、お疲れー、幸せにねーという流れが途切れてしまったのが残念。しかも、その30分も基本は下ネタだし、これもカキの伏線がわかりやすすぎて・・・。このあたりのさじ加減は難しい。
[インターネット(邦画)] 5点(2024-03-02 08:59:48)
5.  愛なのに 《ネタバレ》 
今泉脚本らしい、書店主と女子高生の微笑ましいやりとりでほのぼの進んでいくのかと思いきや、当然放り込まれる城定印の大人男女の激しい濡れ場。このなんともアンバランスな構成が妙にはまっている。そして、結婚直前のカップルが抱えていた問題の、まさかまさかの真相には大爆笑。とくに終盤、中島歩さんと向里祐香さんの情事の後の会話のなんともいえないユーモア。適度にエッチ(死語)でクスクス笑えて、少しほっこりする。いろいろ見れば「7点」くらいの映画ではあるのだけれども、そうであること自体を愛したくなる小品。世界も世間も重苦しい昨今だからこそ、この映画の軽さは自分にとっての「救い」でした。
[インターネット(邦画)] 7点(2024-01-25 20:27:59)
6.  すばらしき世界 《ネタバレ》 
これぞ西川映画と呼べるような、ソリッドだけども多面的な描写が続く。序盤は、役所広司さん演じる三上の社会復帰への奮闘をコメディタッチの描写も含めて描く。下の階のチンピラとの喧嘩やら自動車教習所での悪戦苦闘にはブラックユーモアもたっぷりで苦笑いしながら見てきたのだけれど、後半のあの暴力沙汰から物語がピリリと引き締まり、そもそも「社会復帰とは何か」「まっとうに生きるとは何か」という深みに達していく構成は本当に見事。そのなかで、出てくる登場人物もくせ者ぞろい。身元引き受け人の弁護士夫婦、取材するテレビ局ディレクター、市役所のケースワーカー、スーパーの店主、そして元暴力団の兄貴分まで、みんな「いい人」ではあるんだけれど、でもそれぞれが必死で「まっとうに」生きるためにどこかで三上を突き放している部分を持ってる。「善良」であっても、それぞれの自分勝手な言い分やら事情のうえのことなので、タイミングが悪ければ容易に三上の「敵」にもなるだろうという、そういう危うさを常に感じるのはいい。「無償の善意」などありえないのだ。このあたりの突き放した世界観があるからこそ、一瞬心が通ったと思える瞬間が美しく「すばらしい」。ただ、本作が凄いのは、その「善意の助言」が最後は三村を追い詰めてしまうことだ。その先にあった死は、悲劇というべきなのかどうかはわからないけれど、この「すばらしき世界」の苦みを十分に描いてくれたことは間違いないと思います。余計な部分をそぎ落とした久々の西川節を堪能しました。
[インターネット(邦画)] 8点(2024-01-06 09:36:13)
7.  台風クラブ 《ネタバレ》 
今だったら「コンプライアンス」的にはヤバい描写が満載で、正直「引いて」しまう部分もあるのだけれど、1980年代に中学生だった自分としては、その時代・年代の「危うさ」の表現に唸るしかない。冒頭のプールでの「イジメ」にしか見えないシーンやら職員室で女子生徒が襲撃されるシーンは今の感覚ではかなり見るのが辛いし、あれを「ノスタルジック」に「あんな無茶なことしたよな」と見る人とは、たとえ同世代でもたぶん友達にはなれないと思う。ただそんな嫌悪感を抱きながらも、この映画からはどうにも目を離せない。  どっちかというと、自分としては、できたらもう二度と戻りたいとは思わない中学生の感覚を、ここまで生々しく詰め込んだ映画はなかったように思う。人間として自分がどうなってしまうのかわからない、明日になったら「普通」でいられるかどうかわからない(だからベタ歌謡曲の「もしも明日が」の選曲には恐ろしさすら感じる)、そういう危うい感覚に満ち満ちている。なのに、周囲の「大人」はなんの助けにもならないどころか、問題の根っこになるような存在。そんな状況を、一人「真面目に」観察していた三上君の最期。長尺での椅子を積み上げるシーンから中二病爆発の台詞の後の「アレ」は、「個だ、種だ」なんて大きなことを言ってみたり、大人たちに「お前のようにはならない」と宣言してみたところで、その顛末は喜劇にしかならない、という大人なメッセージにも見える。自分の思い出したくない部分をえぐられるような2時間。嫌いだけど目が離せない。やっぱり傑作なんだと思う。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-11-02 07:10:59)
8.  Arc アーク 《ネタバレ》 
これはなんとも評価に困る作品。そもそも、題材というかテーマが難しすぎたのかもしれない。ケン・リュウ原作で不老不死を扱っているとはいえ石川慶監督の作品でもあるので主体は人間ドラマなのだろうなと思ってたのですが、ドラマ主体にするには時間が足りず、個々のエピソードがどうしても描き込み不足だったのかも。内容的には1時間×5話くらいのミニシリーズ向けだったのかもしれません。ストーリーも、石川監督の『愚行録』や『ある男』を思いおこせば、もっともっと不穏な話を予想しました(とくに序盤)が、思った以上にシンプルかつさわやか風味に仕上がってて、そっちはちょっと思ってたのと違ってたかな、という感じ。でも、考えようによっては、終盤の展開、とくに小林薫さんの最期は、実はめちゃくちゃ残酷な話でもあって、それをさらっとナレーションですましてしまう監督の非情さにちょっと感心しました(だって、あれってリナに言われたからでしょ。最後まで最低の母親だったということでもある)。  外見は変わらないのにどんどん歳を取ってるはずのリナ役の芳根京子さんはがんばっていたのでは。もっと技巧的な俳優さんなら、老齢感みたいなのを入れてこようとすると思うけど、今作のように非現実的な浮遊感で表現するのもアリでしょう。むしろ難点は、そのほかのキャスティング。「怪しいスゴイ人」枠の寺島しのぶさんと岡田将生さん、「(過去になにかあるっぽい)いい人枠」に風吹ジュンさんと小林薫さんなどは、全員キャラがステレオタイプ過ぎてどれも掘り下げ不足。そして、ストーリーの肝になるリナの「過去」の話は、老人ホームの話が出てきた時点で先が読めてしまうので物語的なカタルシスも弱い。ドラマ的な見所も、芳根さんが浮遊する周りで、ステレオタイプなキャラたちがいつもの話を繰り返しているだけなので、どうしても物足りなさが残ってしまう。ただ、全体のパッケージとしては、石川監督らしい奥行きと質感のある映像(ただ90歳パートをモノクロにした意図はちょっとわかりにくかった)、終盤の瀬戸内と思われるロケーションの素晴らしさ、邪魔にならないけどちゃんとドラマをつくる音楽、オリジナリティのある美術など、ちゃんとワンランク上の映画を感じさせてくれる出来でした。結論としては、この話を2時間におさめるにはこのくらいが落とし所だったのかな、けどもう少し人間関係を描き込んだものも見たかったかな、というところ。
[インターネット(邦画)] 6点(2023-10-30 07:11:51)
9.  ファミリア 《ネタバレ》 
在日ブラジル人の若者が直面する問題を正面から扱ったものとしては、おそらくはじめてのメジャーな映画作品ということで期待していただけれど、実際には失望のほうが多い内容でした。この作品の残念な点は、不必要なセンセーショナリズム。ブラジル人の若者を追いかけ回す日本人ギャングの暴力もアルジェリアのテロ占拠事件も、本作のテーマを語る上で絶対に必要だったのか、製作者は自問してほしい。むしろ、日本の外国ルーツの若者が直面するのは、そんな極端でベタな暴力ではなく、ほんとうにちょっとした些細なことで、あるいは時代の変化によって、突然に生きる基盤を簡単に失ってしまう可能性があること。それは、リーマンショックのときに多くのブラジル人労働者が経験したことであり、近いテーマを扱った傑作『マイスモールランド』で主人公家族が陥った苦難だってそうだ。近年注目されたウィシュマさんの死亡事件だってそう。その「脆弱性」を描くうえでは、本作のギャングの暴力もテロもただただ「過剰」で、まるで彼らが私たちの隣人ではなく別世界を生きる人たちであるかのように描かれてしまう。それだけでなく、暴力やテロと「外国人」を結びつける不必要な偏見を増幅させる可能性もある。マルコス役のサガエルカスをはじめ海外ルーツの俳優の起用などは高く評価したいけれど、その意識がなぜ物語・脚本へと結びつかなかったのか。ただ残念。
[インターネット(邦画)] 3点(2023-08-10 22:31:10)
10.  ヴィレッジ(2023) 《ネタバレ》 
多くの人が抱くであろう「思ってたのと違う」という感想は、M・ナイト・シャマランの作品と同タイトルであることから仕方がないのでしょう。しかもあっちは、閉鎖的な共同体を奇抜な方法ながらも真正面から描いていたので、同じようなモチーフを藤井監督がどう描くのか、そんな期待で見始めた人も少なくないはず。ただ、結果としては新しさも深さも感じない、表面的な描写に終始した一作でした。思わせぶりな能のシーンや祭りはあるものの、本編にうまく絡んでいるともいえず、結局は「ボス一家と搾取される若者たち」という都会のヤクザものでも描かれるような人間関係のほうに焦点は当たってしまう。終わってみれば「村」は主役というよりは舞台設定に過ぎず、そこで先が簡単に読めてしまう安直なドロドロ劇が展開しているだけの映画でした。ゴミ処理場が「SDGs時代の人気観光地」っぽくなったり、朴訥と解説するだけのイケメンがローカルヒーローになる展開は、「習俗」「伝奇」的な共同体ものというよりは、某民放番組の「ダーツの旅」が描くような「素朴で明るい」田舎観といったほうがいいのかも。でもその表層性を批判的に掘り下げるわけでもなく、物語上「ありえた未来」のように描かれてしまうのもいかがなものか。藤井道人監督作品、毎回興味深い題材を選んでくる眼は確かだと思うのですが、人間関係観(とくに男女観・家族観)もメディア観も微妙に古く、テーマも上っ面を走るのみで脚本が練り上げられてるように思えないのが残念。人気監督となって企画も満載で忙しいのだと思いますが、ここらでじっくり取り組んだ一作を観てみたいと思ってしまいます。
[インターネット(邦画)] 4点(2023-06-18 09:00:10)(良:1票)
11.  ドライブ・マイ・カー 《ネタバレ》 
「劇中劇」映画は正直あまり得意ではない。どうしても演劇の不自然さが強調されるので、結果的に映画全編が不自然に感じてうまく感情移入できなくなる。劇の台詞に過剰な意味を見出したくなってしまい、映画を観るというよりも、本を読んでる感覚に近くなる。いつでも読み返したりスピードを調整できる本とは違い、映画だとそのまま流れていってしまうので、どうしても物語を咀嚼できず、消化不良感に襲われる。なので途中で、演劇がテーマと気づいた時に「これはまずい映画に手を出した」と後悔した。  しかし、本作の特異な作りは、そんな私にも十分に堪能できるものでした。メインの西島、霧島、岡田の3人は動きも台詞回しも過度に演劇的で実在感がない。一方で他の登場人物の大半は素人を集めたかのような棒読みぞろいか、日本語が限定的な外国人。そのなかで唯一「自然に」演技してるのが三浦透子さんで、彼女が口を開くときに物語が動き始めるのがなぜだか妙に心地よい。正直、西島さんと霧島さんの演技過剰な序盤でリタイア寸前だったのですが、三浦さんの登場で一気に「映画」になったと思う。そうなると三浦さんの運転シーンのプロフェッショナルな所作、棒読みの読み合わせのシーンのリズム、その秩序とリズムをかき乱そうとするトラブルメーカーの岡田さんの絡みががぜん面白くなり、「生きる」ことへの主人公の問いかけが、急に切実さを帯びるのだから面白い。濱口竜介監督のただ者ではない感じを楽しむ事ができました。  村上春樹作品の映画化といえば、イ・チャンドンの傑作『バーニング』がありますが、それに匹敵する作品。ただ、西島さんは、自分が村上作品を読んだときに描く主人公のイメージとはやっぱりギャップが・・・。もっと「空っぽ」感がほしいのです。じゃあ誰がいいのか、と言われてもちょっと浮かばないのですが。
[インターネット(邦画)] 7点(2023-06-17 15:30:49)
12.  はりぼて 《ネタバレ》 
ドキュメンタリーって面白い、というのを堪能できる100分。地方議会のフツーのおじさん議員たちのキャラ立ちの見事さ。みんな「巨悪」というよりはちょっとした「小悪党」で、政務活動費の不正使用も「そうやって回ってきた」市議会や市役所のなかで「そういうもの」として享受してきたのだろう。その矛盾を突然突かれて動揺してうろたえる様には、人間喜劇のすべてが詰まってる。しかし、物語が「小さな悪」への一方的な追及で終わらない点も本作の優れたところ。長く追及する側だった地方テレビ局自体もまたその一部であったことがほのめかされ、追及側の中心だったキャスターと記者の2人は結局その現場を去る事になってしまう。その経緯をもう少し詳しく知りたいとは思うものの、本作が描いていたのは「誰が悪いのか」という話ではなく、「そういうもの」で流して放置されてきて行き詰まったシステムにあるのだろうから、それでいいのだろう。もちろん、そのシステムの延長にあるのが「モリカケ」やら「桜」なのは明らかだけれど(だからあれもやっぱり「巨悪」の問題ではなく「小悪党」と「小市民」が作ってきたシステムの問題なのだ)。そんな意味での日本社会の縮図としての地方政治には、まだまだ面白いネタがいっぱい詰まってるように思う。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-05-21 08:34:59)
13.  東京2020オリンピック SIDE:B 《ネタバレ》 
『SIDE A』に続いて鑑賞。今回の主役はバッハ会長と森喜朗氏でした。『SIDE A』のノリでいけば、もっと「無名」のスタッフや裏方の話かと思ったけど、今回はどちらかといえば組織委員会内部のゴタゴタやニュースでも観たアレコレを河瀬監督的切り口で編集、という感じでした。期待していたのは、バッハ氏、森氏、各競技団体の無茶な要求のもとで右往左往する裏方スタッフの1年・・・みたいなの。でも結局は、演出チーム交代のゴタゴタ、森氏降板前後のやや森氏に同情的な立場の人たちの描写など以外は新鮮味や緊張感もあまりない、正直なところ退屈な一作でした。それから『SIDE A』から気になっていたのですが、画面からはみ出すくらいの顔アップ構図の多さ。『SIDE A』はまだ競技シーンとのバランスでまだ観られたけれど、競技画像少なめでオジサンたちのアップ画像が続く本作は結構きつい。さらに(冒頭で予告されているとはいえ)本当に唐突に挿入される東日本大震災の津波の映像。被災者ではない自分でも一瞬体が膠着するのがわかりました。抗議運動の描写、バッハ氏・森氏・山下氏のやたら多いアップ映像を含め、全体的に「悪趣味」映画の趣が強いです。この映画の「ルック」を含めた醜悪な「悪趣味」感こそが東京2020の「実像」であるとするなら、そこには賛同しますが、それをわざわざ観たいのかと言われれば・・・というのが正直な感想です。あと、どうしても気になったのは、『SIDE A』『SIDE B』ともにパラリンピック関係の映像がほとんどなかったこと。これは別に「公式記録映画」が作られているということ? それとも・・・? 
[インターネット(邦画)] 3点(2023-01-06 08:53:03)
14.  東京2020オリンピック SIDE:A 《ネタバレ》 
自分はもともと東京でのオリンピックの開催には反対だったし、それでもいくつかの競技をみて、それなりに楽しんだり感動したりして、そして開催後は(感動した選手の名前でさえも)きれいさっぱり忘れてしまった、たぶん「一般的な」視聴者の一人だったろう。そんな自分にとっては、「公式記録映画」が何を残そうとしているのか気になって本作を観たのだけれど、観たところで何かに納得できるわけでもなく、なんとも評価に困る一作となった。ナレーションなし、音楽も最小限で、アンチクライマックスな演出。登場する選手たちはオリンピックが何らかの人生の転機と重なっているものの、全体で見えてくるのはそれぞれの人生がオリンピックの後も続いていくということ。選手としては男性も女性も登場するが、印象的なのはやはり女性の選手、とくに子どもを持つ「母親」でもある選手たちだ。赤ちゃんへの授乳を求めるカナダ代表バスケ選手、子どものために人種差別に抗議する米国代表選手、子連れで日本に来たのに子どもと離ればなれの生活を余儀なくされる米国マラソン選手、そして、出産後のオリンピック延期で引退した元日本バスケ代表など。「公式記録」として後世に残したいと思ったのは、女性スポーツ選手が育児と競技とどう向かい合っているかというテーマだったのではないかとさえ思える。この関心には共感するけれど、正直劇中での描き方、とくに元バスケ日本代表の大崎佑圭選手が赤ちゃん連れで競技を続けるカナダの選手と対面する場面はなかなか残酷で、少しイヤな気持ちになった。映画全体としては、河瀬監督は、オリンピックを心から楽しんだ人もやっぱりやるべきじゃなかったと思ってる人も、誰もかれも突き放したところにボールを投げてきた。この映画を「公式記録映画」として出してきた河瀬監督の胆力には感心するけど、これが「公式記録映画」でよかったのだろうかという疑問はますます大きくなっている。
[インターネット(邦画)] 5点(2023-01-03 16:36:47)
15.  機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 《ネタバレ》 
『閃光のハサウェイ』が新世代のガンダム的でとても出来がよかったので、あのTVシリーズの1エピソードをどんなふうに広げて/深めているのか、期待高めで見たけど、それが裏目だったようです。安彦さんの「オリジン」はコミック版を愛読しているので、どちらかといえば連邦軍、ジオン軍、ホワイトベースのそれぞれの思惑が「ククルス・ドアンの島」で交差するような政治劇・サスペンスドラマ部分での掘り下げを期待してしまったのですが、残念ながらそっちはTVシリーズ版からあまり発展は見られず、物語的にはスパイス程度でした。むしろメインは、ドアン、島の子どもたち、アムロの交流。ただ、この点では正直言って定型以上のものは一切なく、予定調和的に流れていくだけでした。一人一人に個性をもたせる子ども描写はハウス名作劇場というよりは『約束のネバーランド』的で、それが映画全体でうまく活かされている感じはしない。終盤にガンダムで敵兵士を踏み潰す描写は、ドアンや子どもたちとの交流を通して、アムロが「兵士」としての覚悟を示す(彼らの世界と決別する)描写にもできたと思うけど、そうゆう雰囲気もあまりない。見所は最新技術で動くファーストガンダムと懐かしいBGM! ただ絵として一番ケレン味があって印象に残ったのが、山羊vsホワイトベースの面々というのがなんとも・・・。
[インターネット(邦画)] 4点(2022-10-08 09:29:09)
16.  リップヴァンウィンクルの花嫁 《ネタバレ》 
岩井俊二は妄想系雰囲気映像を楽しむべし、という過去作の教えは十分に活かされました。ストーリー自体はなかなか酷い内容ですが、一つ一つの場面の美しさや即興的な楽しさはピカイチ。ただ、ちょっと趣味押し出し過ぎではないか、という場面もちらほら。(物語上は綾野剛さんに操られる)黒木華さんがなんというか、映画全体を通して監督の道具にされているようで、正直なところあまりいい気がしなかった。序盤の残念な黒木華、スーツケース2つで突然世の中に放り出される黒木華、メイド服でCoccoと絡む黒木華、そしてウェディング・ドレス姿、ラストの溌剌とした表情まで。さすがに3時間詰め込まれると、なんだかおかしな趣味に付き合わされているような気分になる。また、Coccoも彼女のパブリックイメージに頼りすぎじゃねーかというキャラ設定。もちろん、のびのびやることは大切ですが、そこにいるのは「真白」ではなく「Cocco」にしか見えない。とくに、歌声聞きたくなるのは当然だけど、やっぱり歌わせるべきじゃなかったように思う。綾野剛さんはうまいよね。いつもの綾野剛でした。というわけで、物語上の人物や心情よりも、黒木華とCoccoと綾野剛を見た、という3時間でした。ただ、その甘ったるいアンサンブルに肉弾で飛び込んできたりりイさんはすごかった。あの笑っていいのか泣いていいのかわからない酒宴のシーンは、本作の白眉でした。
[インターネット(邦画)] 5点(2022-09-16 13:28:13)
17.  シン・ウルトラマン 《ネタバレ》 
ウルトラマンって怖いよね。っていうか、あらゆるヒーローは「異形の存在」であり、その不気味さを見事に映像化した序盤、とくに最初のウルトラマン登場シーンは秀逸でした。さっと延ばされた左腕・・・のへんな姿勢からのスペシウム光線の恐ろしさ。もうこれ見ただけで満足。ただ、そこからは徐々に失速。ザラブやメフィラスとの頭脳戦は面白いが、やっぱりラスト、ウルトラマンがなぜそこまでして地球を守ろうと思ったのか、何を何から「学んだのか」がまったくわからないので、カタルシスもない。美女を巨人化してる暇があったら、そっちをちゃんと描けよって、制作陣もわかっているとは思うし野暮だとも思うが、やっぱり思ってしまう。自分も幼少期に夢中になった1人なので「わかる」ことも多かったけれど、結局のところ、制作陣の「思い入れ」を観客がある意味読み取りながら見なきゃいけないのって、なんだかんだいって苦痛なんですよね。「さすが○○、わかってるー」っていうのにあふれてる現在、そろそろそういうの抜きで楽しめるカイジュー映画も見てみたいかなあ。
[映画館(邦画)] 5点(2022-09-08 14:42:32)(良:4票)
18.  先生、私の隣に座っていただけませんか? 《ネタバレ》 
これはなかなかの掘り出しものでした。序盤からどこかずれている夫婦のコミュニケーション、あの原稿を見てしまってからの夫の狼狽ぶり。その後は、コメディとしてもホラーとしても楽しめるし、虚実入り交じったサスペンスとしても面白く、平凡な素材でもまだまだ面白くできる、ということを実感できました。不倫ものだけどジメッとした「三角関係」に持って行かなかったのは、柄本佑さんのダメ男ぶりに加えて、カラっとした奈緒さんの好演が大きい(ただ、若干物語的に都合が良すぎるようにも見えてしまうけど)。ラストの復讐劇ですが、俊夫はただ単に佐和子に「捨てられた」のではなく、「救われた」のだと思っています。少なくとも佐和子と千佳の2人にとっては、俊夫は「才能あふれる漫画家」だったわけで、やっと「筆」を再び取る決意を導いたのは、間違いなく佐和子です(→そこで、はじめてこのタイトルの意味がわかる構造もすごい)。だから、これは夫の「自立」の物語でもあり、その結果、妻もまた「自立」への道を歩んだラストだろうと思います。車の免許は、妻の自立を象徴する要素だし、だからラスト、私は、妻は1人だったという解釈です。「新谷先生」は最初から最後まで虚構のなかの存在であり、あの人のよさそうな青年は本当にただの教習所教官だったのでしょう。夫婦それぞれが「成長」した先に「別れ」があるという、たいへんよくできた夫婦もの映画であったと思います。
[インターネット(邦画)] 7点(2022-06-27 10:01:00)
19.  佐々木、イン、マイマイン 《ネタバレ》 
序盤は、主人公の悠二の類型的っぽい、いじけキャラがうっとうしかったのと、高校時代の「佐々木」の全裸踊りみたいなノリについて行けなかった(自分はあれを教室の隅でうるさいなあと思いながら見ているタイプだった)のもあって「え、これが青春時代の美しい思い出なの?」「評判高かったけど失敗したかなあ」と思っていたくらいでしたが、むしろ僕のような観客が先入観から見ようとしなかった、青春時代のひとつの姿をみせてくれたという点で、とても優れた作品だと思います。悠二の何事も決められない状態も、佐々木のいつまでも変わらない哀しさも、そして、ちゃっかり人生を前に進めている同級生「木村」の存在も、すべてが青春時代から大人への過渡期の真実の姿であり、どの生き方にも心当たりと共感を抱かずにはいられず、終幕のころには自分もまるで彼らの「友達」の1人になった気分で見てました。ただなあ、ラストの唖然とするシーン、佐々木の象徴はやっぱり「全裸踊り」と「佐々木コール」なんですよね。そのノスタルジーに「帰る」のではなく、そこから前に進んだところをラストでは見せてほしかったかなあと思いました。
[インターネット(邦画)] 7点(2022-05-23 13:52:59)
20.  騙し絵の牙 《ネタバレ》 
吉田大八監督×原作塩田武士×主演大泉洋なんて、そりゃ期待するなというのが無理な話で、映画館で観たかったけれどかなわなかったものが配信開始されたので、さっそく拝見しました。面白かった、のだけれど、期待が大きすぎたかもしれない。物語の終盤まで、敵味方というよりも登場人物の目的がよくわからず、宙ぶらりんな状態で進んでいくサスペンスは出色だったと思う。ネタについても、完全に隠し切ってラストにドカンではなく、(とくにイケメン作家をめぐるアレコレなどは)あえてネタばらしを小出しにしながら、物語への居心地を悪くするあたりは、とても巧いなあと感じた。  ただ、そこに絡んでくるオールスターなキャストが自分的にはマイナス。佐藤浩市、佐野史郎、木村佳乃、中村倫也、斎藤工あたりの皆さんは、それぞれワンパターンに得意そうなキャラクターを演じてるだけで、ぜんぜん「面白くない!」のだ。そして、「あて書き」だからしょうがないのかも知れないが、もはや日本映画の救世主と個人的には思ってる大泉洋すら、物語の中盤くらいには「もう、大泉洋成分にお腹いっぱい」になっていた。劇中の台詞にもあるように、類型的なキャラへの批評的な視線が欲しかった。とくに、佐藤浩市さんは物語上も重要な役だっただけに、「ザ・佐藤浩市」に批評的に突っ込むような演出や展開があったらよかったなあと感じます。まあ、このあたりは、吉田監督自身が「桐島」の時代とは違って、日本映画を代表する「次作を待望される」監督になってしまったがゆえに、作品づくりのうえで調整しなきゃいけないことが増えた結果だろうなあと余計な推測までしてしまいます。とはいえ、小気味よい展開と松岡茉優さんのキャラに感情移入させるつくりに、吉田大八監督らしい良品感を楽しむことはできました。そして、主題歌なしの音楽とか、TRINITY編集部の面々のアンサンブルとか、スター抜きでも(抜きだからこそ)楽しめる要素もあって、オールスター映画ゆえの食傷気味な感覚がもったいないなあ、と感じた次第です。
[インターネット(邦画)] 6点(2021-11-28 17:44:46)
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