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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1879
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  すずめの戸締まり 《ネタバレ》 
人々から忘れられ廃墟となった場所にはいつしかこの世とは違う世界へと通じる扉が開くという。災いをもたらす異形の存在ミミズがその扉から現れることによって、その地は地震に見舞われるのだ。古くから日本中を旅してそんな災いをもたらす扉を閉じる作業を人知れず続けているのは、閉じ師と呼ばれる一族。ある日、そんな閉じ師の末裔である草太と知り合った平凡な女子高生すずめは、災いを封じるための要石が猫に姿を変え日本列島を北上し始めたことを知るのだった。「このままでは未曽有の大災害が日本を襲い、また多くの人たちが死んでしまう」――。要石によって小さな椅子に変えられてしまった草太とともに、そんな猫を追って旅することになったすずめは、各地で様々な人々に出会い助けられながら北を目指して旅を続けててゆく……。日本映画界を牽引する稀代のヒットメイカー、新海誠の最新作は災害列島日本という国で人知れず人々を救ってきた閉じ師と平凡な女子高生の物語をファンタジックに描いたロードムービーでした。正直この人の映画ってイマイチ好きになれなくて(特に前作『天気の子』は酷かった!)、本作も別に観る気はなかったのだけど、今回地上波でノーカット放送されるということで鑑賞。そんな期待値ゼロで観始めたのが良かったのか、感想は「あれ、意外と悪くないじゃん」でした。いやむしろけっこう好きかも!冒頭からノンストップで描かれるすずめの旅はかなりテンポが良くて、ストーリーの強引さも気にならないくらい惹き込まれて観ている自分がいました。映像が美しいのはもはや言わずもがな、それより椅子に変えられた草太と要石猫との追いかけっこがアニメならではの躍動感に満ちていて率直に楽しい。いけ好かないキャラだった草太が、ちゃちな椅子に変えられてしまったことで逆に魅力的にさせてるとこなんてなかなかいいセンスしてるやん!今回は東日本大震災をテーマにしていることで、新海作品特有の童貞男子が夢見そうな青臭い妄想臭が幾分か抑えられていたことも大変グッド。椅子にチューしちゃう主人公をどーしても入れたかったのだろう監督の意地はご愛敬だけど(笑)。旅先で出会う人々がみんな良い人過ぎるのもどーかと思ったけど、後半叔母の心のどす黒い声が溢れ出してしまうシーンでちゃんと暗い現実も描いていて上手くバランスをとっていたと思う。311をエンタメとして扱うことにネットなどで賛否が分かれているのは知っています。確かにちょっと軽く描き過ぎとは思うけれど、自分は普通に受け入れられました。何故なら本作の根底には、震災のみならずすべての災害で亡くなった人々への祈りと鎮魂の物語があると思えたから。これまでの自らの世界観を踏襲しつつも新たな地平を築いた新海誠監督の秀作だと自分は思う。
[地上波(邦画)] 7点(2024-04-10 10:13:10)
2.  月の満ち欠け 《ネタバレ》 
生まれ変わりをテーマに、愛する人を求めて時を越えて生き続けるある男女を描いたラブストーリー。直木賞を受賞した原作は既読済み。原作を読み終わった自分の率直な感想は、「これって男の気持ち悪~い妄想をなんとも気持ち悪~~く描いた、いい意味で気持ちの悪~~~い小説だな」というものでした。ホント気持ち悪い読後感に包まれながら、でもこの気持ち悪さ、けっこう好きかもなんて思ったり。そう感じたのは自分だけなのかなと後日直木賞の選評を読んでみたら、選考委員の東野圭吾さんが「読みながら自分はずっと気味の悪い話としか思えなかったのだが、作者自身も恐らく気味の悪い小説を書こうとしてこうなったのだから、本作は成功しているのだろう」という趣旨のことを書いておられていたく共感した思い出が。で、そんな気持ちの悪い小説を映画化したという本作。これが原作通りの、男の気持ち悪~い妄想を気持ち悪~~く映像化したいい意味で気持ちの悪~~~い映画でありました。男なら、恋愛絶頂期に誰もが彼女や嫁に言われたことがあるだろうこんなセリフ、「生まれ変わってもまたあなたを探して一緒になるわ」「もし私が死んでもいつまでも私のこと忘れないでね」「あなたとのこの恋は運命だったのかも」。何気なく言っただろう女性のそんな言葉を、男はいつまでもずっと憶えていたりする哀しい生き物。女性からすれば「アホちゃう?冷静に考えたらもっとええ男探すわ」と失笑されそうな、そんな男のナルシズムを前面に押し出した物語はイタさ爆発だけど、ここまで徹底的にやられちゃうともはや究極の純愛に思えてしまう。複雑な時間軸や多岐にわたる人間関係、生まれ変わりという難しいテーマを数々の技巧を駆使してここまで破綻なく描いた情熱は特筆に値します。ただ、この監督、本気でこれを美談だと思って映像化してるんじゃないの?と思えるようなクサいシーンが多すぎて自分はちょっと冷めてしまったのが残念。あと、主役を演じた大泉洋が軽すぎてミスキャストのようにも思う。ここらへんは純粋に好みの問題だけど、まぁ良かったんじゃないでしょうか。以下ネタバレ。最後に再会を果たした明と瑠璃。一見、相思相愛の2人がようやく出会えたハッピーエンドのようだけど、現実は40越えたおっさんと9歳の女の子……。いや、これって完全なる犯罪だよね…(笑)。そこをあくまで幸せな結末のように描いた原作の気持ち悪さは最後まで徹底してました。興味ある方はぜひ御一読を。
[DVD(邦画)] 6点(2024-04-06 10:00:29)
3.  ウェディング・ハイ 《ネタバレ》 
タイトル通り、結婚式をテーマにした直球ドタバタコメディ。結婚式あるあるを随所に織り込んだネタはけっこう共感(と言っても自分は一度も結婚したことないんですけど…笑)できて、全編ニヤニヤしながら観ることが出来ました。彼女が披露宴でテーブルに飾るキャンドルの色や形をどれにするかとしつこく訊いてくるシーンとか、男としてはあるある過ぎておもわず苦笑い。「そんなんどっちでもいいし!!」と彼女との買い物デートで何度も叫びたくなっちゃった過去を思い出しましたわ。披露宴に突然乱入して元カノを取り戻そうと暴走しちゃう元カレ君のイタい感じも男の都合の良い妄想爆発で大変グッド。ただ、そーゆー細かいネタは確かに面白かったんですけど、映画全体の感想としては正直「ちょっとビミョー」。脚本がバカリズムということで、良くも悪くもコント感が強い。5分10分くらいの尺だときっと最高に笑えたんだろうけど、2時間弱これを続けられるとさすがに間延び感が半端なかったです。スピーチが長くなりすぎて時間が無くなった後半、予定してた余興をまとめてやっちゃうシーンとか、新郎新婦を巻き込んでもっと無茶苦茶にはじけ切ってほしかった。披露宴が終わった後に時間を巻き戻して、祝儀ドロと元カレがいろいろ攻防してましたというエピソードを見せるのも蛇足感があっていまいち。うーん、大九明子監督て自分はけっこう好きなんですけど、今回はあと一歩って感じですかね。次作に期待ってことで!
[DVD(邦画)] 6点(2024-03-30 08:00:16)
4.  子宮に沈める 《ネタバレ》 
「実際に起きた「大阪二児餓死事件」を基に、家庭という密室の悲劇を描いた衝撃作」という前提を取り除いたら、後に残るのはさして中身のないただただ悲惨な事実を再現しただけの映画。自分の率直な感想を述べさせてもらうと、それ以上でもそれ以下でもありません。幼い子供がこの状況に置かれたら必ず母親を求めて泣き喚き、声を枯らせて助けを求めると思う。ゴミにまみれた小さな部屋の中でドアも窓も全てふさがれ、面倒を見てくれる大人も食べるものもない状況に置かれた子供は、きっと極限の不安感から悲鳴に近い声を上げ続けるはず。でも、この映画にそんなシーンは一切ありません。ただ淡々と静かに「お母さん、お母さん」と呼び続けるだけ。今の時代、3、4歳の子役にそこまでの演技をさせるとコンプライアンス的にまずいと言うことで恐らくそのようなシーンを撮らなかったのだろうけど、そういったシーンが撮れないのであればこの映画は作るべきではなかったし、実際に起きた事件を基にしたと謡うのであればやはり子供が泣き喚くシーンは絶対に入れなければならなかったと思う。これは社会を震撼させた衝撃的な事件をただ表面的になぞっているだけで、メッセージ性もテーマとしての深みも非常に浅いと自分は感じてしまった。実際にあった悲痛極まりない事件を基にしたという誰も正当な評価をしづらい前提を建前に、これは監督の自己顕示欲を満たすため、なおかつ幾ばくかの金儲けのために撮られた映画だと思う。邦画でよくある難病系のお涙頂戴映画よりも、とてもいらやしい下劣なものを感じ取ってしまった。正直、この監督の人間性は下劣だと思う。
[DVD(邦画)] 4点(2024-03-01 09:01:50)(良:1票)
5.  ドライブ・マイ・カー 《ネタバレ》 
妻と娘を失い孤独に生きてきた舞台俳優と彼にドライバーとして雇われることになった若い女性。ともに生きづらさを抱えていた2人の交流を終始淡々と描いたヒューマン・ドラマ。原作は泣く子も黙る世界的大作家、村上春樹。基となった短編集はまだ読んでないんですけど、主人公たちが交わすセリフをちょっと聞くだけで「あぁ、これはもう完全に村上春樹だなぁ」と思わせるところが凄い。妻が亡くなる前の長いプロローグとも呼べるシーンで、主人公が妻とセックスしながらひたすら意味不明な会話を交わすところなんてまさにそう。片想い中の女子高生が好きな男の子の家にたびたび空き巣に入って最終的には人を殺す話をしながらエッチするってどんな夫婦やねん(笑)。その後、本編が始まってからも登場人物が交わす会話も全く同じ。よく言えば哲学的で深いのにどこかお洒落、悪く言えば空疎で薄っぺらく全編気持ちの悪いナルシズムに満ちている。やはり村上春樹の小説は映像化には不向きなんじゃないかと思わせたものの、中盤からは不思議とこのわざとらしいセリフ回しに心地良さを感じている自分がいました。それはおそらく、主人公たちが現在取り組んでいる多言語舞台という前衛的な劇中劇が功を奏しているからなんでしょうね。舞台稽古をしている俳優たちがそのまま私生活にまで影響を引きずっているというこのメタ構造が、この不自然なセリフ回しを巧く中和している。なかなか考えられた演出と言っていい。内容の方も、村上文学の主要テーマである喪失感からの再生が多面的に描かれており、深い。前述した、さまざまな言語が入り乱れる演出でチェーホフの戯曲を再演しようという舞台の稽古と、心に傷を負った若いドライバーとの繊細な交流を二重写しのように描いたところは称賛に値すると思います。同じテーマをそれぞれ違うアプローチで描いていたものがラストでぴったり重なったのが感動的ですらありました。喪失感を抱えて生きている自分たちの苦悩がほんの少しだけ浄化された、それだけでこの先も生きていける――。心地良いラストの余韻に自分は観てよかったと思えました。カセットに録音された今は亡き妻ともう不可能となってしまった会話を交わす主人公の声を、ただ静かに聞き続ける若い女性とか、なんて切ない構図なんだろう。ただ、不満点も幾つか。まず冒頭、妻が亡くなるまでのあの長いプロローグは正直いらない。中盤の高槻との会話への伏線として必要だったのでしょうけど、それも回想シーンなりの別の描き方があったはず。あの40分はばっさりカットしても良かったのでは。とは言え、人と人とが永遠に分かり合えないことの切なさを美しく描いた上質の物語でした。
[DVD(字幕)] 7点(2023-07-10 09:11:19)(良:1票)
6.  ひらいて 《ネタバレ》 
彼女の名は、木村愛。何処にでもいるような普通の女子高生だ。いや、普通より少し上のクラスにいると言った方が正しい。成績優秀で推薦で早々に進路も決めてしまった彼女は、誰もが忙しく過ごす高校3年生となった今も文化祭の準備に精を出している。見た目も可愛く、ファッションセンスも悪くない。明るく実行力もある愛は、自他ともに認めるクラスの人気者。ところが彼女には誰も知らない秘密が一つだけ。それはクラスメイトの地味で目立たない男の子、たとえくんに密かに想いを寄せていることだった。2年前の高校1年生だったころから、愛は彼のことが気になって仕方ない。でも、何処か他人を避け自分だけの世界に生きているような彼に愛は近づくことが出来ない。そんなある日、愛はふとしたきっかけでたとえくんと密かに交際している彼女がいるのを知ってしまうのだった。美雪。同じく3年生で糖尿病を患う地味で目立たない女の子。そんなの、絶対ありえない――。好きな人にまっすぐで全てが自分の思い通りにならなければ許せない女子高生、愛の暴走がいま始まる……。原作は、自分が長年愛読する芥川賞作家、綿矢りさ。本作は彼女の小説の中でも一、二を争うくらい好きな作品なので今回期待して鑑賞してみました。綿矢りさ原作と言えば大九明子によるポップでキュートなミュージカル風映画が見事な出来栄えだったので、こういう淡々とした青春ドラマぽい感じに最初は若干違和感。それでもちゃんと見応えのある作品に仕上がっていたのは、やはり原作の素晴らしさの賜物。大九監督だと、恐らくもっとぶっ飛んだ内容になるはずだろうけど、こういう淡々とした雰囲気も良いですね。そんな静かな世界で繰り広げられる、この愛ちゃんの暴走っぷりが最高でした。好きな彼と相思相愛になりたいが余り、その彼女を寝取っちゃうってどんな発想やねん(笑)。でもこの愛ちゃんならそーゆ―こともしかねないと思わせるところが巧い。対するたとえくんの彼女、美雪ちゃんのいかにも大人しいキャラ造形も見事で、彼のことが好きなのに自分に触れてこないことへの不満から愛ちゃんに押し切られちゃう心理も非常に丁寧に描かれていて大変グッド。2人が身体を重ね合わせるシーンは、お互いの複雑な想いがエロティックに交錯する出色の名場面でした。終わったあと、美雪の身体に触れた手を石鹸で念入りに洗う愛ちゃんが何気に好き。青春の美しさと危うさ、そして残酷さをリアルかつリリカルに綴ったなかなかの良作と言っていいんじゃないでしょうか。ただ後半、愛ちゃんがたとえくんの家に乗り込んじゃうシーンからは何となく蛇足感がありました。特に折り鶴の木の下で愛ちゃんがたとえくんに告白するシーンは、撮り方とかピンクの色の感じ、そして風の使い方などかなり岩井俊二色が出過ぎていて、せっかくここまでオリジナリティあったのにと勿体ないです。とは言え、将来が楽しみな才能にまた一つ出会うことが出来ました。8点!
[DVD(字幕)] 8点(2023-04-13 09:35:01)(良:1票)
7.  ブレット・トレイン 《ネタバレ》 
東京から京都へと猛スピードで運行する超高速車両を舞台に、偶然乗り合わせた殺し屋たちの壮絶バトルを終始ノンストップで描いたエンタメ・アクション。原作は、日本のベストセラー作家伊坂幸太郎。監督は、この手の分野を得意とするデビッド・リーチ。いかにもこの監督らしいごちゃごちゃわちゃわちゃとしたストーリーに、「あ、またか…」と前半は少々げんなり。大量の登場人物が入り乱れるお話は脱線につぐ脱線でとにかく分かりづらい!!アクションシーンは凄くキレがあっていいし、キャラクターもみな魅力的なのにどうして毎回こんな分かりにくいアプローチをしてくるんでしょう。すんごく勿体ないです。あまりの観客置いてけぼり具合に前半で観るの止めようかと思ったんですが、でも、後半のぶっ飛び具合はさすがにお金を掛けただけあってなかなか楽しかった。伊坂幸太郎らしい、伏線を最後に全て回収する練られたプロットも見事。とにかく殺し屋たちが全員キャラ立ちまくりなのが良いですね~~。自分は、可愛い着ぐるみにずっと潜んでいた毒ヘビ女アサシンが好きでした。レモンに殴られた時もじっと耐えてたのね(笑)。ドSな小悪魔少女アサシン〝プリンス〟も超可愛くて、自分もこんな女の子に徹底的に振り回されたいと思っちゃいました(ドM)。彼らが電車をガンガン破壊しながらバトルするクライマックスはもはやリアリティのリミットを3回くらい振り切ってます。到着が1分遅れただけで丁重に謝罪する日本の鉄道会社はこれ観てどー思うんだ??でも、そんな日本を徹底的に茶化したトンデモシーンも根底には凄く愛を感じたし、後半はけっこうスカッとしたので、ちょっぴりおまけの7点!
[DVD(字幕)] 7点(2023-02-23 08:25:30)
8.  三島由紀夫VS東大全共闘 50年の真実 《ネタバレ》 
1969年5月、その日、東京大学駒場キャンパスのある教室は異様な熱気に包まれていた。何故なら、反体制を掲げ時に過激な行動で世間を騒がせた東大全共闘と世界的ベストセラー作家として名声を欲しいままにする三島由紀夫との討論会が行われたからだ。観衆も含め1000人を超える学生グループとたった一人敵地ともいえる教室へとやって来た大作家。片や共産革命を掲げる左翼思想グループ、片や天皇崇拝を主張し国家主義を是とする右翼的作家。真っ向から主義主張の異なる両者の対決は、文字通り命を掛けた激しい激論となった――。本作は、長い間テレビ局の倉庫に眠っていたそんな貴重な映像を再編集して50年目の今日、新たに世間に公表しようと試みた挑戦的ドキュメンタリーだ。中学生だった頃に三島由紀夫の傑作『仮面の告白』を読んで衝撃を受けた自分としては、感慨深いものを感じながらの鑑賞となった。当時の異様な熱気を生々しく写し取った映像は最後まで緊張感が途切れず、両者の激しい舌戦はまるで激しい格闘技を見ているかのような感覚にさせられる。特に、三島由紀夫の生涯のテーマとも言える「世界を変えるのは認識か行動か」という重要な思想が時折垣間見えるのが興味深い。高度な知性によって世界を変革しようという三島氏と文字通り暴力も辞さない行動によって世界を変えようという学生たちとの討論が最後まで噛み合わないのは当然だが、三島がそんな学生たちに理解を持って接していたのが印象的だった。もしかすると氏は、学生たちに深い羨望のようなものを感じていたのではないか。あくまで文筆活動で戦後のぬるま湯に浸かり切ったような日本を変えようとした三島氏が最期、あのような暴挙に出たのはもしかするとこの討論会で学生たちが見せた清々しいまでの若さに影響されたのかもしれない。もちろんかなり穿った見方であることは承知の上だが。ただ、討論会の途中から急に登場する、この時代のひろゆきみたいな芥氏という人物。この人の存在が自分は最後まで不快で仕方なかった。ずっとへらへらしながら自分以外の人間を小馬鹿にしているようなその態度が終始鬱陶しい。幼い娘を抱えながらこの討論会に参加しているのだが、それも「娘の子育てに忙しい自分が、ここで面白そうなことをしているみたいなのでなんとなく参加しただけだし」という言い訳を最初から用意している感じがしてなんとも不愉快。現在の年老いた芥氏にインタビューしているシーンもあるのだが、ここでも変わらず人を小馬鹿にしたような態度で「人ってどれだけ年取っても変わらないものだ」と思わず笑ってしまった。こんな男に最後まで真摯に対応した三島氏の度量の深さには改めて尊敬の念を抱かずにはいられない。反対に、悔恨を感じながらもあの頃の自分たちを肯定せざるを得ない心境で滔々と告白する全共闘の当事者たち。行動を起こしながらも結局世界を変えられなかった彼らには、三島の最後の長編『豊饒の海』にも通じる無常感すら感じる。この貴重な映像を50年後の今日、公開してくれた制作陣に改めて敬意を表したい。
[DVD(邦画)] 8点(2023-02-13 09:13:15)
9.  ナラタージュ 《ネタバレ》 
演劇部に所属する真面目な女子高生が、顧問だった教師への片思いに何年も悩まされる姿を描いたラブストーリー。自分、原作者である島本理生さんはデビュー当時からの大ファンでして、若い女性の恋心を瑞々しい文体で描写するその繊細な世界に魅了されておりました。で、当時「島本理生が新境地を拓いた新たなる代表作」と宣伝されていた本作、もちろん期待して読んだんですが……、その余りにもそれまでの作風と違う内容に大いに落胆させられた記憶があります。だってこれ、「思わせぶりなキザ教師にひたすら振り回される根暗女子」の話としか思えず、その最後までウジウジクヨクヨした後ろ向きな内容に読めば読むほどげんなりさせられちゃいました。でもたまたまネットの観放題にこの映画化作品があったので今回鑑賞してみました。だって監督によって、まったく違う内容になることもあるしね。んで観終わった感想は……、やっぱり「思わせぶりなキザ教師にひたすら振り回される根暗女子の話」でした(笑)。こんな可愛い女子高生に迫られてるのに手を出すでもきっぱり振るでもなくただただ思わせぶりな態度を取る葉山先生は男として理解できないし、そんな身勝手な男に何年も片思いを寄せるこの主人公も意味不明だし、彼女に想いを寄せる同級生の男も愛情表現がひたすら気持ち悪いし、僕が「ムリ!!」と思った要素がここまで揃ってるというのはある意味、原作に忠実な映画化だったんじゃないでしょうか。こればっかりはもう生理的な好みの問題なので如何ともしがたいですね。あと、僕の大好きな名作『ダンサー・イン・ザ・ダーク』をメンヘラ女子のバイブルみたいな雑な扱いするんじゃねー!!と、好みの問題で自分的には低評価となりましたが、それでも映像はキレイだったのと音楽の使い方も品があって心地良かったので、総評としては5点ってところですかね。ちなみに自分はこの『ナラタージュ』という本が嫌いなだけで島本理生さんは今でも好きですよ。特に『七緒のために』という作品は傑作なので機会があれば是非読んでみてください。
[インターネット(字幕)] 5点(2023-01-10 18:05:09)
10.  天気の子 《ネタバレ》 
わしみたいなおっさんには、これの良さが分かりまへんわーー。
[地上波(邦画)] 4点(2022-11-13 06:18:27)
11.  竜とそばかすの姫 《ネタバレ》 
世界中のほとんどの人が利用しているというネット上の仮想現実空間「U(ユー)」。そこである日、その唯一無二の歌声で新世代の歌姫として人気を博してしまった平凡な女子高生すずの恋と冒険を独創的な映像で描いたアニメーション。監督は、昔から僕とはどうにも相性の良くない細田守。と言う訳で、自分は全然観る気はなかったのですが、何故か海外でそこそこ評判がいいのと今回地上波でノーカット放送されると言うことで、「まぁただで観れるならいいか」と今回鑑賞。ただで観ておいてこんなこと言うのもなんですが、正直さっぱり面白くなかったです。映像はとてもシャープでポップで充分に洗練されていて劇中歌もそこそこ耳に残るし、このきれいな映像に引っ張られて最後まで観ましたが、肝心の脚本の方はかなり独りよがりでつまらない。監督の頭の中だけで成立しているのだろうストーリーがひたすら強引に展開してゆくので、観客は最後まで置いてけぼりを喰らったような感じになります。主人公のお母さんが亡くなるシーンも具体的な状況が全く分からないので説得力が欠片も感じられない(子供が溺れてるのに、周りの大人たちがボーッと見てるだけってさすがに不自然すぎるでしょ!)。伏線もなにもあったもんじゃない竜の正体なんて、「は、なにそれ?」ってもはや頭ポカーン状態。あと、好きな男の子に見つめられて顔が真っ赤になる女の子という、昭和のおっさんが妄想しそうなステレオタイプな女子高生とか見ていて痛々しいので止めていただきたい。まあ映像と音楽はそこそこ良かったのでギリ5点。
[地上波(邦画)] 5点(2022-10-03 05:36:48)(良:1票)
12.  プリズナーズ・オブ・ゴーストランド 《ネタバレ》 
最近見た、ニコラス・ケイジ主演のB級ホラーコメディ「ウィリーズ・ワンダーランド」がすこぶる面白かったので、同じニコジーの何とかランド繋がりで今回鑑賞。監督は、僕とは昔からあまり相性の良くない園子温。率直に言ってさっぱり面白くなかったです、これ。このオリエンタルとアメリカの西部劇っぽい感じを強引に同居させたような、いかにも無国籍でいかがわしい世界観もさっぱり嵌まらず。「ウィリーズ~」が、あの超絶バカバカしい内容にもかかわらずあれだけ面白かったのは監督のセンスと勢いとテクニックがあったからこそ。でも、本作にあるのは勢いのみ。センスはちょこっとだけ感じましたが、テクニックは欠片もありません。タマタマ爆弾やママチャリで荒野を行くニコジーとか、ところどころのネタが完全にすべってましたし。最後のグダグダ感なんて観ていて痛々しいほどでした。「ウィリーズ~」が余りにも面白かっただけに、残念!!
[DVD(字幕)] 4点(2022-10-01 04:06:34)
13.  すばらしき世界 《ネタバレ》 
その日、殺人の罪を犯し、13年ものあいだ刑務所へと服役していた男が出所する。彼の名は、三上正夫。10代の頃から何度も罪を犯し、そのたびに刑務所へと投獄され、積み重なった前科は十犯。これまでの人生の28年間を鉄格子の内側で過ごしてきた彼の人生とはいったい何であったのか――。人生の終盤を迎えつつあるそんな三上の再出発の日々を、彼を題材にドキュメンタリーを制作しようというテレビ局のスタッフの視点を交えて描いたヒューマン・ドラマ。監督は、うまくいかない人生にもがく人々の苦悩を終始一貫して見つめ続ける西川美和。いかにも彼女らしい丁寧な演出は相変わらず健在で、特別なことは何も起こらないこの三上という元犯罪者の日常を淡々と描いているのに、最後まで観客を惹き付けてやまないのは見事としか言いようがない。短絡的で何かというと暴力に走るこの粗暴な男が主人公なのだが、そこまで嫌悪感を抱かせないのはやはりこの監督の慈愛にも似た優しいまなざしによる部分が大きいのだろう。不器用で身勝手で社会性が皆無に等しい元犯罪者の人生を否定も肯定もせず、ただ淡々と見つめている。やがて明らかとなる、過去にこの男が心から愛していた女性の存在、今度こそ真人間になろうと誓った経緯、そして彼を子供のころに捨てて失踪した母親……。一般的な人々からすればやくざ者で人生の落伍者である彼にも、当然、人間としての苦悩や後悔、弱い部分や魅力的な部分、そして深い愛もあるという当たり前の事実を改めて気づかさせてくれる。そんな彼をそれぞれの立場から優しく見守る周りの人々の存在も素晴らしい。弁護士やその妻をはじめ、途中で出てくる何気ないキャラクターまでちゃんと血の通った人間として描くことに成功している。特に、六角精児演じるスーパーの店長が印象的だった。ただ、意図してそうしているのだろうが、三上を取り巻く人々がどこまでも良い人ばかりというのは、自分としては少々違和感があった。三上の古い友人であるやくざの組長の妻までが主人公に献身的なまでの優しさを見せるというのはちょっとやり過ぎと言えなくもない。とは言え、それも好みの問題なのだろう。社会という枠からはみ出し、今にも溺れそうになっている人々の悲哀を掬い取ろうという今作のテーマは充分に胸を打つ。血の気の多い元やくざ者をナチュラルに演じた役所広司をはじめ、キャスト陣も皆いい仕事をしている。どんな人間でも、心の持ちようによって、この世界はいくらでも素晴らしいものになる――。そう思わせてくれる、ヒューマン・ドラマの秀作と言っていい。
[DVD(邦画)] 7点(2022-08-19 08:04:43)
14.  Mr.ノーバディ 《ネタバレ》 
彼の名は、Mr.ノーバディ(誰でもない男)。毎日同じ時間に起きて同じ時間にゴミを出し、同じ時間にバスに乗って会社に行き、そして仕事を終えると同じ時間に帰宅してご飯を食べ、同じ時間にベッドに入る。そんな単調で平凡な毎日を過ごす、何処にでもいるような普通の男だ。妻との関係もマンネリ気味で長いこと夜の営みもなく、高校生の一人息子からも疎んじられている。そんな鬱屈した毎日を過ごしていたある日、彼の家に強盗が入る。ゴルフクラブで犯人を倒す機会があったのに、彼は反撃を恐れその場で立ち尽くすのみだった。さすがに息子からも失望のまなざしを向けられる彼。だが、そのことが彼の中に眠っていた過去を目覚めさせるのだった――。そう、彼はアメリカ諜報機関の元凄腕工作員だったのだ!!すぐに強盗の住処を割り出した彼はすぐさま反撃に向かう。そればかりか、彼は偶然バスに乗り合わせたロシアンマフィアのボスの息子を半殺しの目に遭わせるのだった。当然、そのことを知ったマフィアのボスが黙っていない。ぶちギレした平凡な親父と凶悪なマフィアとの血で血を洗う抗争の火蓋が今、切って落とされる……。ごく普通の平凡な中年男のそんな怒りの暴走を終始ハイテンションで描いたエンタメ・アクション。と、もう潔いくらいベッタベタな内容なのですが、その分安定して観てられますね。家族から舐められまくりのお父さんも実はキレたら怖いんだぞ!という世の中年オヤジの皆様の願望をものの見事に叶えてくれる内容でございました。本作のちょっと新しい点は、そんな覚醒したぶちギレ親父が完全無双ってわけではなく、マフィアからけっこう反撃を喰らうところ。バスの中のアクションシーンなんかだいぶボコボコにされた後に、ぎりぎりで勝利するとか今までにない感じでした。クライマックスの畳み掛けるようなアクションシーンもけっこうキレがあって大変グッド。ただ、それに対して脚本がイマイチ。ちょっとこの主人公が行き当たりばったり過ぎて僕はそこまで嵌まれませんでした。肝心のロシアンマフィアとのいざこざに巻き込まれるきっかけが、偶然乗り合わせたボスの息子とトラブったからというのは弱い。やぱ過去の因縁やら現役時代のアレコレが絡んできた方が絶対盛り上がると思うんですけどね。ここらへん、もっと頑張ってほしかったです。あと、冒頭の取り調べのシーンで出てきた猫も何処で登場するんだろうと思ったら、まさかの一番最後にちょこっと出てくるだけって、「ここまで引っ張っといてそれかよ!」と思わずずっこけそうになっちゃいました。うーん、アクションシーンとかは普通に良かっただけに、ストーリーの方でももっとカタルシスが欲しかったです。惜しい!
[DVD(字幕)] 5点(2022-06-22 08:48:29)
15.  JUNK HEAD 《ネタバレ》 
たった一人で脚本から美術から撮影から編集から果ては声まで手掛けた孤高のクリエーターが、7年もの歳月を掛けて創り上げたというストップモーション・アニメ。この常人にはおおよそ思いつけないだろうぶっ飛んだ世界観や、キモさと可愛さが絶妙に同居するキャラデザインなどは何だか癖になる魅力があり大変良かったです。特にクスコという謎の食べ物をもらうシーンなんか絶妙に気持ち悪い!!でも最後まで魅入っちゃうのは、この監督のユーモアセンスがよく分からないなりにクスリとさせられてしまうからなのかな。まあ自分はそこまで熱狂的に嵌まるほどでもなかったですが、充分楽しめました。三部作みたいなので、もちろん全部観ますぞー!!でも、本作完成までに7年、単純に計算して完結編完成まではあと14年かかるってことですな…。そのころまで生きてられるかな……(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2022-05-08 04:08:59)
16.  甘いお酒でうがい 《ネタバレ》 
これは私の日記、誰が読むわけでも自分で読み返すわけでもない、ただの日記――。彼女の名は、川嶋佳子。お酒が大好きな40代の独身OL。取り立ててモテないわけではないのにタイミングが合わなかったのと自分自身への拘りが強すぎて一度も結婚したことがない。彼氏はもう長いこと居ないが、たまに出会う若い男の子との恋愛を妄想するだけで充分だった。最近の一番の楽しみは、何故かこんな自分を慕ってくれる会社の後輩の女の子、ワカバヤシちゃんとランチに行くこと。そんな日々の些細な出来事を思い出しては、それを日記へと書き綴ることを密かな趣味にしている。ある日、そんな空しい毎日を過ごしていた彼女の前に本気で想いを寄せてくれる若い男の子が現れて……。おひとり様アラフォー女子の生態をリアル&リリカルに綴ったラブストーリー。最近僕が嵌まっている、おひとり様女子の現実をポップに描かせたら右に出るものの居ない大九明子監督の作品ということで今回鑑賞してみました。『勝手にふるえてろ』では20代、『私をくいとめて』では30代の拗らせ独身女子の現実を描いてきた監督が今回挑むのは、なんと40代。さすがにここまでくるともはやエネルギーも使い果たしてしまったのか、この主人公、もう物凄く枯れてます(笑)。元気な子供たちを見て切なくなってみたり、気分転換でベッドを買って届けてもらったらそんなに寝心地良くなくてがっかりしたり、初めて真剣にお付き合いした昔の彼氏を思い出して「向こうも私のこと覚えてるかな」なんてセンチメンタルになってみたり…。そこに時おり主人公のポエムのような日記の文章がナレーションされます。雨が強く降る日に敢えて新しい靴を穿いて人生の厳しさを(靴に)教えてあげるの、やら、普段昇ったことのない歩道橋の上から見る景色は見たことのないものだった(泣きそう…)、など。途中、いったい自分は何を見せられているんだろう…ってなります(笑)。いやー、なんか本当に変な映画でしたね、これ。でも、この変さ加減が徐々に心地良くなってきて、最後の方は好きになっている自分が居ました。若い男の子といい感じになって年甲斐もなくウキウキしたり落ち込んだりするこの佳子さんが、なんか可愛くて無性に抱きしめたくなりますわ。そのルックスやファッションから、若いころはさぞやモテたんだろうなってのが分かるんで、もうそういう面倒臭いのはいいやってなったんでしょうね。でも、何処かでまだ若いころのプライドを引きずってて「自分はまだ女としてギリギリ現役」だと思い込んでる感じが絶妙に痛々しい。彼女とは対照的な、天真爛漫後輩を演じた黒木華も何気にいい味出してました。うん、なかなか面白かったです。めっちゃ変な映画でしたけど(笑)。
[DVD(邦画)] 7点(2022-01-29 03:51:18)
17.  永い言い訳 《ネタバレ》 
突然のバス事故により、同時に妻を失ってしまった二人の男。ベストセラー作家として名の知れた衣笠幸夫は冷めきった夫婦関係から逃れるかのようにずるずると続けていた浮気の真っ最中に、一方のトラック運転手大宮陽一は可愛い盛りの二人の子供たちのために身を粉にして働いていたときに、そのことを知らされるのだった。突然のことに混乱し動揺を隠しきれない彼らは、バス会社が行った遺族説明会の帰りに連絡先を交換する。その後、陽一の子供たちを含めた食事の席で幸夫は彼らがギリギリの生活を余儀なくされていることを知るのだった。仕事に出れば2、3日は家を空けざるを得ない陽一のために、幸夫は何とはなしに子供たちの世話をしてもいいと申し出る。その日から幸男は週二日の約束で彼らの住む団地へと足を運ぶことに。中学受験を控えた思春期真っ盛りのお兄ちゃんとまだまだ甘えたい盛りの小さな妹、幸夫は手探りながらも徐々に子供たちと心を通わせてゆく。それでも大切な人を失ったという事実は彼らの心に重くのしかかってきて……。不幸な事故によって妻を突然失ってしまった対照的な二人の男の交流を静かに見つめたヒューマンドラマ。以前観た、この監督の代表作『ゆれる』がなかなか良かったので今回鑑賞してみました。一見仲の良さそうな二人の兄弟が抱え込んだ心の闇を冷徹に見つめた『ゆれる』と同じく、今回も描かれるのは対照的な二人の男の繊細な心の機微。作家として成功しつつも何処か満たされないものを抱えた主人公と地に足つけて子供たちのために頑張る平凡な男の微妙に擦れ違ってゆく心理描写は非常に丁寧で惹き込ませます。大好きなお母さんを失ってしまった子供たちのとても演技とは思えない自然な振る舞いも素晴らしく、哀しみを抱えながらも気丈に振る舞う彼らの表情には何とも切なくさせられます。ただ、『ゆれる』と比べるとどうしても物語に入り込めない自分が居ました。なんだかこれって世間一般にはびこる、あまりに凡庸な道徳観に縛られすぎていやしませんか。過去よりも未来の方が大事、親にとって子供たちは人生の糧、人は一人では生きていけない……。この作品に通底するそんな道徳の教科書のような価値観に、見れば見るほど僕は心が離れていってしまいました。確かにそれが正しいのかもしれませんが、自分はわざわざそんな凡庸な価値観を映画にまで押し付けられたくはありません。社会を緩やかに支配する、そんな常識という名の牢獄の先にある人間の真実を僕は知りたいと思うのです。『ゆれる』でこの監督との相性はいいかもと思ったのですが、もしかしたらそれはあの作品だけのものだったのかな。もう一本この監督の映画を観て、改めて判断したいと思います。
[DVD(邦画)] 6点(2022-01-23 02:43:28)
18.  私をくいとめて 《ネタバレ》 
彼女の名は、黒田みつ子。今年で31歳になる、どこにでもいるような平凡なOLだ。何年も恋人と呼べるような人はおらず、都内のワンルームマンションでずっと独り暮らし、唯一の楽しみは週末ごとに一人で焼き肉やスイーツを満喫すること。そんなおひとりさま生活を送る彼女だったが、それでも全然寂しくはなかった。何故なら、みつ子の脳内には人生の指南役でもあり親友とも呼べる「A」が居るから――。一人でいるときは、ずっとその「A」との会話を楽しむみつ子。時には辛辣な言葉を言われたりもするけど、それでも彼女はそんな「A」との生活に満足していた。だが、ある日、彼女は重大な事実に気づいてしまう。それは会社の取引先の営業マンで近くに住む多田という青年が、もしかしたら好きかもしれないということ。これまでの平穏な生活が徐々に乱されてゆくのを感じたみつ子は「A」へと相談するもののどうにも埒が明かない。平和だけどどこか物足りないこれまでの生活か、傷つくかもしれないけれどそれでも新たな世界へ飛び込んでみるか。誰かこんな私をくいとめてと願いながらも、みつ子は徐々に暴走してゆく……。拗らせ女子の生態をポップ&キュートに描いた傑作『勝手にふるえてろ』の監督・原作コンビが再びタッグを組んで挑んだという本作、いやー、これが期待にたがわぬ素晴らしい出来でした。この監督のファンシーでポップでありながら、ちゃんと細部のリアルさにも手を抜かない拘りは相変わらずグッド!全編通じてあり得ない非日常な世界なのに、どこかリアルな日常を感じさせ、この主人公がとても身近な存在に思えてくるから不思議です。とはいえ、冷静に考えたらこの主人公はいわゆる統合失調症で専門医の診断を受けた方がいいんじゃないかとも思わせる絶妙な毒の効かせ方も、原作・綿矢りさならではの世界観。やはりこの二人のタッグは最強ですね!!それまでずっと声だけの存在だった「A」がみつ子の前に姿を現したときの、「ちょうどいい…」という彼女のセリフが個人的にめっちゃツボでした。階下の遊牧民のホーミーが最後、あんな形で活かされるとは思いもしなかったし(笑)。ただ『勝手にふるえてろ』と比べるとやはり長すぎて、中盤ちょっとだれてしまう部分もなきにしもあらずでしたが、僕は充分楽しめました。以下余談。段ボールで作った彼氏と妄想でいちゃいちゃする吉住のネタは、自分も最初見たときは衝撃的なくらい面白くて、さすがこの監督いいセンスしてると嬉しくなっちゃいました。ただ、あんな温泉の余興で老若男女にウケるようなネタじゃないと思うぞ(笑)。
[DVD(邦画)] 8点(2022-01-20 05:47:35)
19.  ゴジラvsコング 《ネタバレ》 
監督が変わるとここまで違うかというくらい、さっぱり面白くなかったでしゅ。
[DVD(字幕)] 4点(2022-01-07 00:45:19)
20.  トゥルーノース 《ネタバレ》 
実話を元に、今世紀初頭の北朝鮮で政治犯強制収容所に送られたとある少年の過酷な半生をフルCGで描いたアニメーション。監督が多くの脱北者から実際に聞いた話を元にしているため、非常に重く全編にわたって生々しいリアリティに溢れている。それまで普通に生活していた平凡な家族がある日突然、理由もわからぬまま捕らえられ極寒の地へと送られる。来る日も来る日も重労働を課せられ、配給される食料もごく僅か、しかも何か問題を起こせば過酷な拷問が待っている……。こんな酷いことが今もこの世界で続いていることに戦慄せざるをえません。それがピクサーのような明るいCGアニメで描かれているため、その重さが良い感じに中和され最後まで見やすくなっているのも新しい手法なのかもしれません。ただ、映画としての出来は正直「微妙」と言うのが僕の率直な感想。誤解を恐れずに言えば、そんな事実の重みに対してフィクションとしての物語が完全に負けてしまっている。お話がシンプルすぎるうえに演出もきわめてオーソドックスなため、物語としてはいまいち印象に残りにくいのだ。北朝鮮の強制収容所の実態を暴くのであればドキュメンタリーや再現VTRでいいわけだし、フィクションで勝負するならもっと見せ方を考えてほしかった。またCGアニメとして見ても、そのクオリティは恐ろしく低いと言わざるをえません。人物の顔などどれもモデリングで継ぎ接ぎしたのが丸わかりだし、その動きもカクカクしていてまるでCGが登場したころの初代プレステレベルでちょっとこれはきつい。今もなお苦しむ北朝鮮の人々の実態を世界に知らしめたいという、この監督の熱意には素直にエールを送りたいのですけどね。
[インターネット(字幕)] 5点(2021-11-11 10:02:58)(良:1票)
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