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せんべいさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 115
性別 男性
自己紹介  2014年12月に投稿を始めてから8年が過ぎました。

 「映画評論家になれるのでは?!」と思える素晴らしい言葉を綴られる先輩レビュアーさん達に憧れつつも、私には、あのような文章を書けそうもありません。私の場合、少年時代に気に入り、DVDなどで観直しても好きであり続けている映画を中心に、まだピュアだった(?)少年時代の気持ちや、当時の状況を思い出しながら書きたいと思います。大人になってから観た映画も少しずつ追加しています。

 レビューの文面は長くなりがちですが…最後まで私の拙文を読んで下さる皆様に感謝申し上げます。

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1.  Little DJ 小さな恋の物語 《ネタバレ》 
 R5(2023)年5月の上旬、何となくTVのチャンネルボタンを押していたときに、たまたま某ローカル局で放送されていたのが当作品。ちょうど、主人公二人がバスに乗って出かけるところでした。  「神木隆之介君が、まだ少年じゃないか!女の子は福田麻由子ちゃんだよね…TVシリーズの【女王の教室:2005年】では、志田未来ちゃんより麻由子ちゃんのほうが、自分にとっては印象に残ったんだよな…その後、麻由子ちゃんはTVシリーズの【白夜行‐TV版:2006年】で、綾瀬はるかさんの少女時代を演じていたっけ…」と懐かしい思いが沸いたのが第一印象。  次にTVの番組表の紹介を読んだら、いわゆる“難病もの”とわかり、襟を正して二人の行く末を見守りました。けっして目新しい題材ではなかったものの、短い生涯を懸命に生きた男の子とその憧れの女の子、そして男の子のご両親、病院スタッフ、患者さん達…というように、周りの人々の姿をも誠実に描いた作品として感じ入りました。  中途半端に観ただけでは作品に対して失礼と思い、あらためてDVDをレンタルして鑑賞、投稿させていただきました。   観直したところ、自身の思春期を振り返りつつ“親目線”で感情移入している自分に気づかされました。   特に、患者さんのお一人である結城さんとその息子の周平君を交えったエピソードでは、自分の少年時代を思い出し、以下のように自戒しちゃいました。「反抗期の頃は、自分もずいぶん、両親にひどい態度をとったよな…周平君のような、ちょっと年上のお兄さんから『レコードを買ってきてくれるなんて、いいお父さんじゃないか。邪険にするな』と、こんなふうに諭されたら、ハッとして、もっと早く素直になれたかも…」。    その太郎君の父親については、息子に反抗されて「親に向かってその態度はなんだ!」と高圧的に言い返してそれっきりこじれてしまう父子関係だって現実にはあるわけなので…ちゃんと自分の態度を改めた、このお父さんはやはり『いいお父さん』さんだと思います。  また、たまきちゃんに渡せなかった太郎君の手紙に目を通したときの“同じ男だからこそわかる息子の純情”に男泣きするシーンは、観直してみて、私も父親として涙しました。  それだけに、成長したたまきちゃんが、太郎君宅を訪問するシーンでは、お母さんだけでなく、お父さんにも登場してほしかったですね。   以上、父子関係に絞って書かせていただきましたが、母子関係も同様に“物語の中で描かれるもの”としては、いずれも“ありがち”なパターンであって、他のレビュアーさん達もおっしゃるようにステレオタイプなのかもしれません。しかし、その“ありがちさ”とは、観方を変えれば“親となった身であれば、誰しも同じような態度をとるであろう”という普遍的なものを、石黒賢さんと西田尚美さんが誠実に演じておられたのでは…と私は思っています。   このように親目線で観るかどうかは別として…白血病が以前に比べれば治療法が進んでいるとはいえ、現在でも、難病を抱えて奮闘しているお子さんやそのご両親は、けっして少なくはないでしょう。こうした作品は、もっと多くの人達に観てもらえたらと思います。  それなのに6月に入って、当作品に出演していた某役者さんがマスコミで“お騒がせ状態”になってしまい、観てもらえる機会が遠退いてしまったようで残念です。上述した某ローカル局での放送が5月上旬で、観ることができた私は幸運だったのかもしれません。   さて、採点ですが…目新しい題材ではないものの、かといって“既視感の打破をめざした作品”というわけでもないでしょう。私としては“命の尊さについて誠実に描いた佳作”ということで、当サイトの採点基準である【見た後、率直に面白かったぁ…って言える作品】として8点を献上します。  ~備考~  近い将来、“お騒がせ”のほとぼりが冷めて、再び、多くの人達に観てもらえるよう願うばかりです。  ところで、ふと思ったのですが…当作品がロードショー公開されてから今年で16年。一方、劇中のたまきちゃんが大人になって、この物語を回想するのは、少女時代から15年後という設定…現在の福田麻由子さんの実年齢とほぼ合致します。いっそ、これを機に、大人の場面は、福田麻由子さんに演じ直してもらって差し替えてもいいのでは…そうすれば、再び、皆さんに観てもらえるようになるのでは…と思った次第です。ただし、後年に手直しされる大作映画の類の作品とは異なるので、それは無理なんでしょうけど…。  いずれにせよ、私にとっては、このまま埋もれさせたくない作品です。
[地上波(邦画)] 8点(2023-09-23 11:41:34)
2.  モスラ対ゴジラ 《ネタバレ》 
 元々、私が当作品を観たのは小学校のときに1回だけでした。【三大怪獣 地球最大の決戦:1964年】と【怪獣大戦争:1965年】は、フジテレビで夏休みの夕方にしょっちゅう放送されていた一方、当作品は、日本テレビの日曜の夕方に放送されたのを観たきりだったのです。  また、私にとって【モスラ:1961年】こそ、初めて(TVで)観た【東宝の怪獣映画】であり「あの大好きなモスラが死んでしまう映画だから…」と再見を敬遠していた面もありました。  しかし最近、当作品はかつての東京オリンピック(昭和39(1964)年10月開催)の間近である4月29日に公開されたと気付きました。「だからなに?」という気はしたものの、せっかくなので57年後の同日にDVDをレンタルして鑑賞した次第です。   さて、結果は…1回だけしか観ていなかったこともあり、断片的だった記憶がつながりスッキリしました。しかも以下のように、大人ならではの目線による発見・感想も加わり、観て良かったです。  まず、いつもながら、伊福部サウンドは絶好調!。関沢新一さんによる脚本は、ほど良くメッセージ性が盛り込まれ、本多監督の演出にも温かみがあり、特に漁村などのロケ場面は生活感が伝わってくる印象を受け、観やすかったです。円谷英二さん率いる特撮スタッフの皆さんについては、これは推測ですが…『キングコング対ゴジラ(1962年)では、コングについてアメリカ側から注文や制約があった。一方、今度のモスラとゴジラは国産だから自由にやれるぞ!オリンピック共々、日本の底力を見せてやる!』とでも言わんばかりの勢いが伝わってくる思いがしました。コロナ禍による閉塞感がある現状下での鑑賞だったので、なおさら、そう感じたのかもしれません。   また【亡くなった親モスラの翼で覆われていた卵から、双子の赤ちゃんモスラが顔を出す】とういうシーンは覚えていたのですが…今回の再見で、ザ・ピーナッツさん達が扮する妖精(小美人)達の「モスラは滅びません。卵から新しい命が産まれます」という台詞と共に【命のつながり】というものを、特に感じました。そのため“大好きなモスラが死んでしまう映画”という子供の頃のネガティブなイメージを払拭できました。そして赤ちゃんモスラ達がゴジラに勝ったとき、これまたコロナ禍のためもあってか「日本も、新たな若い命が次世代を担っていくんだ」といった思いが重なったりもしました。  さらに、あらためて特撮について言及すると、モスラ親子に命を吹き込んだ操演担当のスタッフさん達のチームワークは勿論、そのモスラ達を引き立てるように、ゴジラに扮した中島春雄さんが演技をしておられるのだと再認識できました。演技という意味では、特にB作戦での「よし!(ゴジラに)勝てるぞ」と自衛官に言わしめた臨場感は、中島さんの、電撃で苦しむ熱演によるところが大きかったでしょう。スローモーションでもあの動きだったわけですから、実際の撮影では、動き難いスーツの中で、どれほど速く全身を動かし、息苦しく汗だくだったことか…あらためて敬意を表します。   ところで、ラストは酒井記者(宝田明さん)と三浦博士(小泉博さん)による「お礼は、我々がいい社会をつくることだ」「うん。人間不信の無いね」という台詞で締め括られます。  しかし現在、日本国内に留まらず国際的にも【人間不信の無い社会】が実現しているかというと…当作品のように【様々な“力”を背景に、己の欲望を押し通そうとする人々】と【信頼や節度による人道的な社会を実現しようとする人々】のせめぎあいやバランスで、世の中が動いているように思います。  そのため「当作品の公開から57年も経ったのに、ちっとも変ってないじゃないか。むしろ、コロナ禍で状況が危うくなっていないか?」と言えなくもありません。しかし、ここはひとまず「57年前の作品を、当時と同じ4月29日に観られたのは、人々が最悪の事態を回避してバランスを保ってきた努力があればこそ。コロナも乗り越えられるはず」と思うことにします。   さて、採点ですが…【同じように東京オリンピックを控えている当時の日本と、現在の日本】を考える意味で、意義深い作品ではないかと…いや、ちょっと大袈裟ですね。シンプルに【昭和パワーに溢れた元気が出る映画】として楽しめればいいかと思います。大甘とは思いますが【モスラ】や【地球最大の決戦】と同様、10点を献上させていただきます。  そして最後に…今回、【コロナ禍】を意識して投稿しましたが…数年後に読み直したとき「コロナね…そんなこともあったな~」というように、良い意味で笑って振り返れる世の中になっているよう願っています。  *【モスラ】と【地球最大の決戦】は、別途、レビューを投稿しております。
[DVD(邦画)] 10点(2021-05-05 17:17:02)
3.  女必殺拳 危機一発 《ネタバレ》 
 【日本初のアクション女優】である志穂美悦子さんの【主演作】。レンタル店から1・2・3作のDVDを一気に取り寄せてもらい鑑賞。1作目の投稿は【思い出話】のウェイトが高かったので、こちらは1作目にも言及しながら、主に【技術面】に焦点を当ててみます。   物語の骨格は1作目と同じかもしれませんが「撮影にあたり、違う挑戦をしよう」という山口監督達の意欲が感じられる場面が幾つもありました。特に【猪・鹿・蝶:本位田三兄弟】の場面が印象的です。  まず【蝶三郎による貨車の上での戦い】。高さがあるだけでも、志穂美さんら役者さんや撮影の皆さんも大変だっただろうに、映像に動きがあり、線路へ突き落そうともみ合うシーンでの菊池俊輔さんの畳みかけるようなBGMも冴えており…と序盤から好調。  次に【鹿二郎による暴風雨の中でのアパートでの戦い】。ホースによる大量の水(雨)と風が志穂美さん達の体力を奪う過酷な撮影だったと想像できます。また、生活用具である物干し竿で回転したり、モップで応戦する演出がユニーク。生意気に見えた男の子が「お姉ちゃん頑張れ!」と子どもらしく応援し、その父である大家さん(たこ八郎さんが良い味を出してます)や住民達が見守るテイストも暖かかったです。大家さん達の出番はここまでですが、それで良かったのかも。出番が長いと、巻き込まれて不幸になる映画なので…。  さらに【猪一郎によるオートレース場での戦い】。戦い自体は光学合成で表現した【幻術】が主体で、殴打・蹴りのアクションは少ないものの、早朝もしくは夕方に撮影したのでしょう、朝日(夕陽?)が逆光で差し込む瞬間を狙ったカットが美しく、違った意味で手間のかかった撮影と思いました。【日差しを効果的に活かしたカット】という意味では【大曽根(室田日出男さん)との決戦直前に対峙する、貯木場での縦の構図のカット】も印象に残りました。   猪一郎について感心したのは、アクション以上に、同じ石橋雅史さん扮する【1作目の役=犬走】より洗練されたキャラクターに思えたことです。犬走は、紅竜を吊り橋から突き落とす強さを見せるものの、紅竜と再戦することなく、響(千葉真一さん)に片腕を折られ、ボスの角崎(天津敏さん)に「役立たず」と罵られた末、結局、響に倒される…と、私には敵役として今一つでした。一方、猪一郎は【初戦で紅竜を圧倒する】→【紅竜は、猪一郎を意識した特訓で“助っ人”からアドバイスを受ける】→【紅竜は特訓の成果で、猪一郎を倒す】…とお約束に沿った【最強の敵】として私にはわかりやすく、犬走に感じたモヤモヤがスッキリしました。  また、上述の【助っ人=椿】が倉田保昭さんだったのも感慨深かったです。子供の頃、私にとって【ドラゴン】は倉田さんでした。TVシリーズ【闘え!ドラゴン:1974年】を観て、エンディングの「空手を、見よう見まねで使うのは絶対にやめましょう」というテロップとナレーションに素直に頷いていたものです。   なお、1作目に比べ、カメラを前後左右に細かく揺らして撮影しているのも特徴的と思いました。【臨場感・躍動感を高める】のなら、確かに狙い通りでしょう。一方、映画館の大画面で観ると、人によっては乗り物酔いのような感覚に陥る場合もあったかも…と想像したりもしました。   さて、採点ですが…上述のように1作目よりも工夫していると感じた本作ですが、【1作目あっての作品】でもあるので、シリーズをひとまとめに、当サイトの採点基準である【見た後、率直に面白かったぁ…って言える作品】として8点を献上します。  *備考:3作目の【帰ってきた女必殺拳:1975年】について  新規登録して投稿するまでもないかな…と思ったので、ここに記載します。当作品は多くの違和感が残りました。志穂美さん達は頑張っているのですが、【少林寺東京道院】の場面が無いし、1作目の早川絵美のように活躍しそうだったミッチーもクライマックスには出てこない。刺客を紹介するテロップも無し。映像は奥行きが乏しい印象を受けました。  鑑賞後に【クランクインから公開まで半月もあるかないか - 撮影は実質2週間ほど】と知りました。そうなると【少林寺/ミッチー/テロップ】はスケジュール上、削らざるを得なかったのかもしれません。また映像も、奥行きを際立たせるための【照明の工夫】【カメラの絞りと光のバランスによる被写界深度の調整】をする時間が無く、失敗せず無難に撮れる線でカメラを回すしかなかったのかもしれません(単にセットが狭かっただけかもしれませんが…)。  邦画は日数をかけられないとはいえ、【半月程度】はあまりにも短すぎたのかも…それでも公開にこぎつけたスタッフさん達の並々ならぬ努力に感服し、1・2作目同様、8点とさせていただきます。
[DVD(邦画)] 8点(2020-12-27 17:20:16)
4.  女必殺拳 《ネタバレ》 
 まず長い【前置き】から。【日本初のアクション女優】である志穂美悦子さんの【初主演作】ということで鑑賞。実は私が志穂美さんを【日本初の…】と知ったのは、つい1か月ほど前のこと。そもそも私が志穂美さんを認識したのは、小学校高学年の頃、迷作【宇宙からのメッセージ:1978年】のエメラリーダ姫からです。TVで宣伝番組を観ていたとき、傍らで母が「あの志穂美さんがお姫さま?」と苦笑したのが、当時は腑に落ちませんでした。私はそれ以前にTVシリーズ【キカイダー01:1973~74年】で、ビジンダーの人間態・マリ役を観ていたはずなのですが、当時の夜8時からは、他局の某お笑い番組のほうをつい観てしまっていたからか?【マリ=志穂美さん】と認識できていなかったのです。その後も数年間、志穂美さんの【アクション女優】の面は観ないままでした。  そして20歳頃、たまたま眠れず深夜にTVをつけたら【胸に弓矢が刺さり、血まみれで倒れている男性のカット】が一瞬。次に「兄さん…」と悲しそうに見つめる女性のアップが…兄役の俳優さんは識別できなかったものの、女優は志穂美さんとわかりました。そして落とし穴に…の直後、いったんTVを消しました。私の苦手なバイオレンス系の作品と思ったからです。新聞欄で映画作品だと確認し寝ようとしたものの眠れず…十数分して再びTVをつけたら、悪の首領との最終決戦の場面。青空をバックに如何にもワイヤーアクションっぽく空中高く舞い上がり、白い服を真っ赤に染めながら勝利!しかしお兄さんを救えなかったからでしょう、涙を流しながら夕陽を見つめてエンド…「お袋がこの映画を観たとは思えないが、こうした作品に出ていると知っていれば、お姫様役に苦笑するのは無理ないな」と実感したものです。  当時、我が家にはビデオデッキが無く(レンタルしていたら観ていたかも…)、その後も志穂美さんをTVドラマ等でお見かけしたものの、アクション主体の内容ではありませんでした。要は、私が【アクション映画・ドラマ】を観ていなかったということのようです。  あれから30年近く。たまたま私の中で【宇宙からのメッセージ】のブームが来まして…インターネットで調べるうちに、志穂美さんが【日本初の…】であり当作品が【初主演作】と知って「おお!あの映画か!」とつながりました。昭和に生きながら、志穂美さんの功績を知らないままでは申し訳なく、レンタル店で取り寄せ可能とわかり、やっと鑑賞したわけです。   感想は、率直に面白かったです!足蹴りの高さといい、壁を両手両足で昇ってしまう身のこなしといい、志穂美さんの体術・身体能力には惚れ惚れするばかり。当時19歳だったのに、まさに【日本初のアクション女優】に相応しいオーラを感じました。  ハッタリじみたテロップ付きで紹介される刺客達が、次々と倒されていくのも痛快。ただし【南半球空手チャンピオン:エバ・パリッシュ】は、結局、後半は登場せず。何故…?  なお、兄役が宮内洋さんとわかり複雑な気持ちにも…。前半の囚われの身になる場面では、音楽が菊池俊輔さんだけに【仮面ライダーⅤ3:1973~74年】と重なりました。結末はわかっていても「頑張れ、士郎さん!こんなヌンチャク男に、僕らのV3が負けるはずがない!」と、子供の頃の気持ちに戻って応援しちゃいました。そして開始68分後に、約30年前に観たあの血まみれのカットが…「宮内さんは、V3の頃から満身創痍の演技は上手だったと思う。それでもV3なら怪人をやっつけるんだけど…この作品でも、妹をかばって闘い、華々しく散ってほしかったな…でも違う役だもんな。見事な最期なのかもな…」と自分を納得させました。  そして悪の首領・角崎との最終決戦。【怯えながら追い詰められる姿】は、30年前に観たときは気づかず、それまでの振る舞いとのギャップに「さすが天津敏さん。悪役らしい見事な演技だ」と感じ入りました。   ところで、当時の東映にありがちな【エロ・グロ場面】は承知の上で観たものの…「アクション女優のパイオニアの雄姿を、現在の若い人達にも観てもらいたい」と考えたとき、特に女性の皆さんには、エロい場面はネックとなり勧め難いかな…と思います。まあ、観る人はいないかもしれませんが(笑)。   さて、採点ですが…いわゆるB級映画なのでしょうが「皆で悦ちゃんをスターにしようぜ!」といった山口監督を始めとするスタッフさん達の熱意が伝わってきましたし、個人的には【キカイダー01/仮面ライダーV3】の放送は同時期で、その終了後に志穂美さんと宮内さんが当作品に出演されたことも感慨深いです。【エロ・グロ場面】で好みが分かれるとは思いますが、当サイトの採点基準である【見た後、率直に面白かったぁ…って言える作品】として8点を献上します。
[DVD(邦画)] 8点(2020-12-27 17:14:39)
5.  キングコングの逆襲 《ネタバレ》 
 昭和パワー満載の【キングコング対ゴジラ:1962年/以下、対ゴジラと表記します】に続けて鑑賞。左記作品と同様、当作品は見損ねていました。  今回、予備知識として【TVアニメ版キングコング:1967年放送】とリンクした日米合作映画だと知りました。「♪ウッホ・ウホ・ウホ・ウッホッホ~!ウッホ・ウホ・ウホ・ウッホッホー!大きな山をひとまたぎ、キングコングがやってくる。怖くなんかないんだよ。キングコングは友達さ」…これは【アニメ版】の主題歌の一節です。実は、私にとってコングとの出会いは、このアニメ版(再放送)でした。当時は幼少で、しかも後年、再放送されなくなったため、細かいことは覚えていませんが、アニメ版のコングは、アメリカ人の男の子と友達であり、気が優しくて力持ち。最終回ではニューヨークで暴れてしまいますが、男の子の活躍で周りの人達に優しさを理解されてハッピーエンド…子供心に「コングさん」と親しみを込めて呼んでいたものです。  そのため、小学生のとき映画館で観た【1976年版】はショックでした。頭では「アニメ版とは別物」とわかっていても、血みどろで死んでしまう結末は、私の心の中のコングさんをズタズタにしてしまったのです。後年【キングコング2:1986年】が公開されましたが【興行上の理由で、無理やり製作した】という印象をぬぐえず、鑑賞の対象外。大人になり【猿人ジョーヤング:1949年】を観て、心は救われたものの「ジョーはコングさんではない…」という思いは残っていました。   そして今回、当作品を観たわけですが、さて、結果は…  まず、テーマ曲が終わった後の【前置きとしての潜水艦内での場面】がとても短い(後で計測したら約2分)。すぐ北極の秘密基地に場面が変わりメカニコング登場。さらに南の島へ…とテンポ良く展開し、キングコング登場!。しかも気が優しくて力持ちのコングさんではありませんか!。ヒロインのスーザンともすぐ理解し合えて、私は一安心。それだけに、メカニコングとの決戦前の「戦っちゃダメ。あれは生き物じゃない、機械なの。勝てないわ」というスーザンの台詞には、内心『このコングさんも、結局、死んじゃうの?』と不安になり…ラストでは『やっぱりコングさんは、僕らの王者・世界の王者(主題歌のフレーズです)だ!』と大喜び…と、すっかり幼少時の気持ちに戻って熱中してしまいました。   さて、このままでは、あまりにもお子様の感想のため【大人目線】で観直しました。  まず、特撮は、現在は【作り物という前提で、良く出来ているかどうか】という視点で観る必要があるでしょう。その意味で、コング(“さん付け”は控えます)の造形は、今となってはチープですが、それでも顔立ちは【対ゴジラ】を挽回するかのようにバージョンアップ。かつ、当時の技術なりに表情を変化させ、コングの喜怒哀楽を表現していたと思います。勿論、表現には、スーツアクター中島春雄さんの演技によるものも大きいと思われます。  次に、本編(ドラマ)は【対ゴジラ】と異なりコミカルではないものの、けっして暗くもなく、重苦しくもなく、とても観やすかったですし、他のレビュアーさん達もおっしゃる通り、ドクター・フーとマダム・ピラニアは魅力的でした。なお、当時の女性悪役について、私は『男性悪役の行動に疑問を感じ始め、主人公達に味方をして命を落とす』というイメージを持っていました。ちょうどTVシリーズ【仮面の忍者赤影:1967~68年】の【金目教編】に登場する“闇姫”がそうだったように…そのため、ピラニアの最後は【定石通り】とはいえ、切なかったですね。  さらに、ゴロザウルスが泡を吹いて絶命するシーンには「確か円谷英二さんは、子供達に配慮して、怪獣の流血を避けていたんだよな…」と思ったのですが…後でコメンタリーを聴くと「アメリカの製作サイドから血を流すよう要求されたが、円谷さんは信念を貫き、泡にした」と知り、感動しました。一方、本編のドクター・フーの最後は、口から血を吐くシーンになっています。コメンタリーでは解説されませんでしたが、本多監督がアメリカ側に譲歩したのかもしれません。それでも【白い波を被せて映像を和らげるよう配慮している】と、私は感じました。これらは【新しい表現を追求するあまり、残酷描写にエスカレートする】よりも【良識ある作家性】が反映されているのでは…と思います。   さて、採点ですが…一般には6~7点でしょうが、私にとって【コングさんを生き返らせてくれた作品】です。大甘ですが【オリジナル版あっての…】という1点のみを差し引き、本多・円谷コンビの【コングへの愛情】に溢れた良作として9点を献上させて下さい。  *【キングコング対ゴジラ:1962年】は、別途、レビューを投稿しています。
[DVD(邦画)] 9点(2020-10-11 19:16:20)(良:1票)
6.  キングコング対ゴジラ 《ネタバレ》 
 私は、これまで当作品を観たことがありませんでした。子供の頃、頻繁に東宝特撮映画をTVで放送していたにもかかわらず、何故か、当作品は見損ねていたのです。さらに、その後、特撮の専門誌を読むようになって「元祖キング・コング(1933年)の生みの親であるウィリス・オブライエン氏は、フランケンシュタインが創造した怪物とコングが戦う企画をRKOに持ち込んだのだが、いつのまにか日本に渡って当作品になったことを知り、落胆した」という情報を知ってしまったことも影響しました。  ところが【東京おにぎり娘:1961年(昭和35年)】を観たら、無性に「同時期の作品を観たい!」という衝動に駆られて、遂にDVDをレンタルし鑑賞させていただきました。   基本的には、素晴らしい作品だと思います。  まず【モスラ:1961年】も担当した関沢新一さんによるコミカルな味付けの脚本と、それをテンポよく演出した本多猪四郎監督の本編(ドラマ)パートからは「これは世紀の対決だよ!娯楽映画として気楽に楽しんで!」というエネルギーが伝わってきました。  そして、他のレビュアーさん達もおっしゃっている通り、有島一郎さんが素晴らしいですね。私にとって有島さんは、TBSの子供向けドラマ【ケンちゃんシリーズ】のお爺ちゃん役や、TV時代劇【暴れん坊将軍】の初代の爺の印象が強かったので「昭和を代表する名俳優さんだったんだ!」と感激しました。  一方、特撮も素晴らしく、しかも、上述した本編(ドラマ)と違和感なくテンポ良くつながり合っているのは、本多監督と円谷英二さんとの信頼関係の賜物では…と思いました。   ただ、肝心のゴジラとコングについては…まず、ゴジラは良いとしても、コングの造形がどうも…私から見てもお世辞にも良いという印象は受けませんでした。鑑賞後、あらためて特典のコメンタリーを聴くと「アメリカ側から、コングの顔はオリジナル版とは違うものにしてくれ、と注文をつけられてしまった」と知り、相当、作り難かったんだろうな…と、納得しましたけど…。  また、闘いについても、最後の最後でコングも【落雷のパワー】で互角になるものの、それまでは常にゴジラ側が優勢の展開であり、【ゴジラ映画】としては良くても【コングの作品】という意味ではどうなんだろう…と微妙な気持ちになりました。   さて、採点ですが…このようなわけで【昭和パワーに溢れた元気な娯楽作品】としては申し分なく、【ゴジラ映画】としては10点にしたいところですけれど…【コングの作品】としては引っかかるものが残りました。このモヤモヤは、この後に観た【キングコングの逆襲:1967年】で解消されるのですが…その【キングコングの逆襲】と比較して8点とさせていただきます。ゴジラごめんね…  *【キングコングの逆襲:1967年】は、別途、レビューを投稿しております。
[DVD(邦画)] 8点(2020-10-11 19:06:49)(良:1票)
7.  東京おにぎり娘 《ネタバレ》 
 私は今年の8月に【火垂るの墓:1988年】【クォ・ヴァディス:1955年】と、立て続けに【死】がつきまとう作品の投稿をして、ちょっと気持ちが滅入っていたとき、ちょうど、当作品のレビューを拝読しました。  私はこれまで、当作品の存在を全く知らず「なんだ??この“東京キッド”や“銀座カンカン娘”のような昭和の香りがプンプンする題名は…」という興味からレビュー欄を開くと…投稿数は僅か5つでしたが、全て肯定的な文面ばかり!。↓の【はあさん】も「凡作」と結論付けているわりには、その前段でとても懇切丁寧な解説をして下さっており「これは是非、観てみたい」と決心。なんとかDVDを取り寄せて鑑賞しました。   率直な感想は、観て良かったです!。   まず、他のレビュアーさん達もおっしゃる通り、作り物ではない、まさに当時の本物の昭和30年代の街並みが見られるだけでも、歴史的な資料としての価値があると思います。  そして、こうした街並みを背景に【商売も気概も衰えて気弱になり始めた頑固親父さん】と【生きるエネルギーに満ち溢れたしっかり者の娘さん】を軸に繰り広げられる人間模様の数々…けっして、劇的にどうこうというわけではありませんが、登場人物が多いわりに展開がとてもわかりやすく、きちんとまとまっていく人情ドラマに感心、というより安心しました。   一つ一つの役者さん達の演技にも感じ入りました。  カメラを固定した中で紡ぎ出される会話の妙…脚本を活かす役者さんの達の演技があってこその味わい深さでしょう。映像表現やカメラワークで魅せるタイプの作品とは対極にある印象を受けました。  若尾文子さんは、私が物心ついた頃、すでに【落着いた物腰のご婦人】という印象が強かったので「こんな元気な娘さんを演じていたこともあったんだな~」と新鮮。でも、たとえ酔っぱらった演技をしても、品の良さを失わないのは、さすが名女優さん!といったところ。  また、何よりも鶴吉さんを演じた中村鴈治郎さんが素晴らしい。特に【まり子/みどり】という、娘ふたりへのそれぞれの愛おしさがにじみ出る演技に対し、私も“人の親”となり歳を重ねたせいか、妙に共感してしましました。   余談ですが、昭和31年当時は、私の両親も青春真っ盛り(若尾さん達より少し年下かな…)。まり子さんら若い登場人物達には「親父もお袋も、東京でなく地方育ちだったけど、こういう時代を歩んできたんだな…」、一方、鶴吉さんら年配の登場人物達には「お爺ちゃんやお婆ちゃん達も、お袋を嫁に出す・出さないでは、ご近所さん達が見合い話を次々に持ってきて、随分、葛藤したらしいしよな…」といった個人的な思いも重ね合わせたぶん、味わい深さが倍増しました。   それにしても、若尾文子さんら役者さん達は勿論、田中監督を始めとする作り手の皆さん達も、現在、まさか、このようなレトロ感覚の眼差しで鑑賞されるとは考えもしなかったでしょう。でも、根底に流れる【親子の情愛】【昔は良かったと振り返る世代/新しく時代を謳歌する世代】【人と人とのつながり】といったテーマは普遍だと思います。なお、テレビドラマの世界だって、例えば、TBSの【日曜劇場】も、現在のような【劇的な展開を売りにした連続ドラマ系】になる以前(平成5(1993)年3月まで)は、こういった【一話完結のほのぼのとした人情ドラマ】を、ときどき放送していたように思います。【作品の多様性】という意味で、再び、こうした人情ドラマが復活しないものだろうか…といったことも思ったりしました。   いずれにせよ、当サイトが無ければ、私は永遠にこの作品に出合うことは無かったでしょう。ありがとうシネマレビュー!   さて、採点ですが…私も、いわゆる【不朽の名作】というよりは【佳作】という位置づけの作品だと思います。でも今回の鑑賞で、ささやかながら、生きる力が湧いてきました。私はかつて、同時期の作品である【日活版の青い山脈:1963年】に8点を献上したことがあります。同じように、大甘とは思いますが8点を献上させていただきます。
[DVD(邦画)] 8点(2020-10-03 17:36:54)(良:1票)
8.  火垂るの墓(1988) 《ネタバレ》 
 終戦の日が巡ってきました。今年は日テレで放送しないようなので、今さらですが投稿します。   まず初見時のインパクトから。私が最初に当作品を観たのは、父と共に、叔父(父は末っ子だったので、叔父とは、かなりの年の差がありました)の家に泊めてもらったときです。  それまでも、戦時中を舞台にした実写の映画やTVドラマは観ていたものの…【現在、活躍中の役者さん達が、戦時中の衣装を身につけ、すすけたメイクをしての再現】では、私にはどうしても【表面的な作り物】という印象を否めませんでした。  一方、当作品は【絵】のはずなのに、否、【絵】だからこそ、私には描写が非常に生々しく感じられ、没入できました。  没入できたのは、徴兵経験のある叔父と観た体験も大きかったかもしれません。叔父は、真剣な眼差しで、ただひたすら黙って観ており、そこには【無言の説得力】がありました。   次に、当作品が【となりのトトロ】と同時上映だったことに鑑み、次第に思うようになったことについて。それは「もし、サツキとメイも、生まれた時代が、清太や節子と同じで、同じ境遇になったら…」ということです。  もちろん、サツキなら、叔母さんの手伝いを頑張りつつ、次第に「これ以上、迷惑をかけられない」というように、家を出るまでの過程は、清太達と違うものになるでしょうが、最後はきっと同じ運命が待ちうけていることでしょう。そして事情を知らない通りすがりの女や男から「汚いなあ」「アメリカ軍がもうすぐ来るちゅうのに、恥やで、駅にこんなんおったら」と言われてしまうことでしょう。そう思うと、私は冷静ではいれません。「親を亡くしたのは、子ども達の責任ではない!事情を知らずに、ゴミ呼ばわりするな!」というように…。   最後は、皆さんのレビューを拝読してみて、賛否両論、様々な意見があるにせよ「観る者を、冷静にしておけない“激しい感情を触発する”作品だな…」ということです。  冷静に考えれば、野坂昭如氏の体験に基づいているとはいえ、これは【作り話】です。観客受けしやすいように清太をサツキのようなキャラクターに変更し、叔母さんを【最初から二人を厄介者扱いする徹底的に憎たらしい人物】に脚色すれば、少なくとも私の場合、もっと勧善懲悪的に感情をシンプルに処理できるはずなのに、当作品は、そうではありません。次第に関係がこじれていく展開になっており、私には複雑な気持ちが募ります。ましてや、私が激昂する「汚いなあ/恥やで」という女や男だって、脚本に書かなければ済むはずです。  その意味で、観客受けする脚色に成功した典型は、TVアニメの【フランダースの犬:1975年】でしょう。主人公のネロ一人を取り上げても、年齢を原作の15歳から10歳へ引き下げ【周りからひどい仕打ちを受けても、悲しみこそすれ、恨んだりしない、心優しい少年】というように、アニメ独自に脚色しています。その結果、誰もが涙を注ぐキャラクターになったと思います。あのアニメを見て「絵が落選する場合だってあり得るのに、その場合の対策を講じなかったネロの見通しの甘さ・生活力の無さが、パトラッシュを巻き添えに死を招くことになった。まさに自業自得」という感想を抱く人は、誰もいないでしょう。しかし原作は、このような感想が少なからず寄せられるような内容になっていると思いますし、だからこそ、原作しか知らない海外の人達は【日本人が当アニメ版に寄せる愛着】を、理解し難いのでは…と思われます。  したがって、清太だって、アニメ版のネロのようなキャラクターに脚色していれば、観客の皆さんから非難されることはなかったでしょう。高畑監督は、フランダースの犬の製作にタッチしていなかったとはいえ、当然、この【観客受けする脚色】は知っていたはず。敢えて、こうした脚色をしなかったのは、高畑監督の目指したリアリズムなのかな…と思ったりしています。  …というように、私自身、何とかニュートラルな立場で文面を書いてみましたが、やはり冷静ではいられません。それは、どうしても幼い節子が、あまりにもいたたまれないからでしょう。それほどまでに節子の描写はリアルなものとして、私の胸に刺さっています。  「アニメ、恐るべし」…この言葉は、当アニメを観た野坂昭如氏が発したお言葉だそうですが、私にとっては「高畑監督、恐るべし」 です。   さて、採点ですが…①「アニメは子どもが見るもの」という意見がまだ根深かった時代に、【映像表現】としてのアニメーションの可能性を具現化した高畑監督及びスタッフの皆さんへ敬意を表し、また、②清太と節子は架空の存在とはいえ、現実には、この二人のように、戦争によって両親を失い、生きることが出来なかったあまたの子供達への鎮魂を込めて、10点を献上します。
[地上波(邦画)] 10点(2020-08-15 16:27:06)(良:1票)
9.  あらしのよるに 《ネタバレ》 
 【チリンの鈴】を投稿したら、その2日前に、当作品が投稿されていました。「確か【あらしの…】は【チリンの…】と違い、ヒツジでなくヤギだったけど、オオカミが絡む物語だった」と思い、皆さんのレビューを拝読させていただきました。  皆さんのレビューを拝読するまで、私は漠然と【ベストセラーの絵本のアニメ化。“対立や支配・被支配”の関係にある所属集団を“オオカミとヤギ”に置き換え、異なる立場の垣根を越えて育まれる友情の物語】と思っていました。しかしレビューの拝読で「え?同性愛を意図したお話なの?…メイをメスにして異性愛のお話にしたほうがシックリくる?そうなの?」と戸惑いました。  そこで「原点に帰って観賞しよう」と決意。絵本(講談社の大型版‐第1~7巻)を図書館でかりてから、DVDをレンタルしました。    まず、絵本を読んだ感想から。  【第1巻:あらしのよるに】は【①互いに異なる立場にあり、②同じフレーズに対して別々のイメージを抱いているにもかかわらず、③絶妙に会話が成立する面白さ】を軸にしたシチュエーション・コメディという印象。勿論、聞き手である子供達には「正体がばれて、ヤギさんが食べられたらどうしよう…」といったハラハラドキドキはあるでしょうが、少なくともこの時点では、奇妙な【友情もの】であっても【感動の物語】ではないな…と思いました。本来、この1巻だけで終わるはずだったとか…。  【第2巻:あるはれたひに】は、子供達には「食べちゃうの?/食べられちゃうの?」とハラハラドキドキの要素は増すでしょうが、ユーモラスな語り口はそのまま。これもシチュエーション・コメディの一種という印象。  【第3巻:くものきれまに】もコメディの印象。特に【ヤギの友人・タプが、去ったかと思ったら再び現れ、慌てふためくメイ】のシチュエーションの繰返しは、吉本新喜劇やドリフのようなドタバタ場面を連想しました。  しかし【第4巻:きりのなかで/第5巻:どしゃぶりのひに/第6巻:ふぶきのあした/第7巻:まんげつのよるに】は、シリアス路線へ…。しかも【性愛的】なニュアンスが目立ち始め、巻が進むほど【目を合わせる/濡れて冷たくなった身体に、温もりを感じた】【いつも一緒にいられることが楽しかった/二匹の心はもう一つになっていた/今夜は、あんたと、こんな綺麗な月が観られて最高の夜/ええ、ガブと一緒なら】【ああ、あの身体、あの歩き方、大好きな相手だから、すぐにわかる/もう、二度と、あの優しい眼でこの私を見てはくれない】…これらのフレーズ(絵本は仮名文字ですが、私なりに漢字に変換)は【恋愛もの】の常套句のような気がしました。さらに【これ以上、一緒にいたら、おいら、何をするかわからねえ/早くどっかに行ってくれ、おいらが我慢している間に…】も、好きな女の子の前で、性的衝動を抑えている健気な男の子のセリフでは?と思ってしまいました…ただ、少なくとも最後の【健気な男の子のセリフ】という感想は、私が【大人】だから連想するものであり【絵本が想定している読み手・聞き手である子供達】なら、このようには感じないでしょうが…。  最終的には、ストーリー以上に【当初の製作意図を越えた反響により、おそらく様々なプレッシャーにさいなまれながらも、足掛け11年間で見事に物語を完結させた、きむらゆういち先生の努力】に感動しました。   次に、アニメ版の感想は…絵本なら、読み手・聞き手による想像力によって補えるような【曖昧な面】も、映像作品となると具体的にきっちり描写しなければならず、杉井ギサブロー監督を始めとするスタッフの皆さんの多大な苦労が伝わってきました。  ただ、キャラクター達の容姿にしろ、声(性別)にしろ【作り手の一解釈として、具体的に既定せざるを得なかったこと】が、逆に、絵本ならではの【読み手・聞き手なりの自由なイメージや解釈の広がり】を奪ってしまったとも言えるかな…と思いました。そのあたりが、当サイトでの様々な批判的な意見につながっているのでは…という気がしています。   さて、採点ですが…杉井ギサブロー監督には申し訳ないですが「あくまで“一解釈”であって、絵本で読んだほうが…」という意味で、基本は「可もなく不可も無し」の5点。ただし、きむら先生・作の【あかちゃんのあそびえほんシリーズ:偕成社】で、一時期、個人的に大変お世話になったこともあり、先生への感謝を加味して6点とさせていただきます。  いずれにせよ、当アニメはファミリー映画であり、一人でも多くのお子さんが、観終わったとき「これからも友達と仲良くしよう」という気持ちが残れば、成功なんじゃないかな…と思います。   *備考:【チリンの鈴】は、別途、レビューを投稿しています。
[DVD(邦画)] 6点(2020-07-23 14:02:55)
10.  チリンの鈴 《ネタバレ》 
 公開当時、私は小学校高学年。低学年の妹も一緒に、家族一同で映画館にて鑑賞。実は、お目当ての映画は当作品でなく【親子ねずみの不思議な旅】でした。当作品のことを知ったのは、映画館に足を運んだ当日、入場を待つ間にロビーに貼られていたポスターを見たときです。ポスターは【手前に、笑顔でこちらを見ている子羊のチリン/奥に、オオカミがいる】という構図で、私は「何だかアメリカのアニメの【ラムヂーちゃん:1971年にNHKで放送。その後、東京12チャンネル(現:テレビ東京)の夕方に再放送】みたいだ。きっと可愛くて笑いに溢れたギャグアニメなんだろうな」と連想しました。  さて、上映の順番は、この【チリンの鈴】が先でした。観始めると…「ラムヂーちゃんと違って、ずいぶん、もの悲しい感じの歌で始まったぞ…あ!チリンが出てきた!やっぱりラムヂーちゃんと同じで可愛いな。ナレーションも、ラムヂーちゃんをオオカミから守る“犬のおじさん”の声の人だ(注:当時、高木均さんのお名前は知りませんでした…)。きっと、これから楽しい場面になるんだろうな…」と頭を巡らせていたのですが…その後、あまりにもラムヂーちゃんと【落差】のある展開にビックリ。子供心にも「ディズニーとは違う、日本だからこそ創れた作品だ」と誇らしく思ったものです。一方【親子ねずみの不思議な旅】は「ふ~ん…」という程度でした。  月曜日になり、早速、私は、クラスで、その素晴らしさを伝えたのですが「サンリオって小さい女の子向けでしょ。しかもアニメ映画なんて観に行って恥ずかくない?」とからかわれただけでした。   しかし、その後も、私の心の中から【チリンの鈴】が消えることはありませんでした。公開当時、他のクラスメートに比べ、腕力に恵まれなかった私は【強さ】について葛藤していた時期であり、当作品を観たことで、少なからず“人生を誤らずに済んだ”という一面があるからです。一方【親子ねずみの…】は、すぐ忘れてしまいました。   大人になって、やなせたかしさんの同名の絵本が原作だと知って読みました。さらにDVDもあるとわかり再鑑賞。映画の脚色は「原作を上手に膨らませている」とあらためて感心しました。唯一、残念だったのは、絵柄や自然の風景描写(の一部)が、ディズニーの、特に【バンビ:1942年】に似ている印象を受けたことです。よく言えば「バンビへのオマージュ」「ディズニーをお手本にしている」「ディズニーに追いつき、追い越せの気概の現れ」であるのでしょうが、当時の日本のアニメ業界における“ディズニー映画へのコンプレックス”と言えなくもありません。しかし、今のディズニーでも、絶対に取り扱わないストーリー(少なくとも、このような結末にはしない…)だと思います。   現在でも【日本での暴力事件/世界の様々な地域での紛争】をニュースで目の当たりにするたびに「暴力や紛争を起こす人達も、かつてはチリンのように、可愛らしく無邪気な子供だったはずなのに…」と、やるせない思いで一杯になります。私にとって、当作品が心の中から消えることは、無さそうです…。   さて、採点ですが…上記の通り【残念だった面】はあるものの、私の人生に示唆を与えてくれた作品です。原作者のやなせたかしさん、アニメ化に踏み切ったサンリオ創始者の辻信太郎さん、波多正美監督を始めとするスタッフの皆さんの【心意気】に敬意を表して10点を献上します。できれば【強さ】に憧れがちな男の子や、そのご家族に、お子さんが思春期に入る前に、是非、観てほしい作品です。  また、当作品とDVDでカップリングされた、やなせたかしさん原作の短編アニメ【ちいさなジャンボ】【バラの花とジョー】もお勧めです。やなせさんの世界を堪能できると思います。  *令和2(2020)年7月23日(木)~26日(日) 追記  【あらしのよるに:2005年】の投稿を機に、誤字があると気付いたので、誤字を修正の上、以下の文面も追加しておきます。  上述の通り、当アニメ版の内容は、絵本を脚色しており、強調されているメッセージが違う印象を受けます。絵本の場合は【復讐と、その果てに残るもの】という感じでしょうか…。私にとっては、その違いが重なり合って、一層、味わい深く、絵本もアニメ版も、両方とも好き、というか、胸にズシリと残ります。  【あらしのよるに】と同様、【オオカミと草食動物】になぞらえた寓話ですが、全く違う内容です。人によって【チリンの…】か【あらしの…】で、好みが分かれる場合がある…かもしれません。
[映画館(邦画)] 10点(2020-06-20 20:46:25)
11.  くるみ割り人形(2014) 《ネタバレ》 
 ↓の【movie海馬さん】のレビューを拝読し、レンタル店でDVDの【1979年:HDリマスター版】及び【21014年版】の両方を取り寄せて鑑賞。  実は、2014年当時、仕事に忙殺されていたからなのか?このリニューアル版のことは全く知りませんでした。これを機会に観ることができ、良かったです。このレビューでは【1979年版】で書ききれなかったことも含めてお伝えします。映画での【用語】も、【1979年版】のものを使いますが、悪しからず…。   まず【1979年版】を鑑賞し、感激した上での【21014年版】だったわけですが…リニューアルにあたっての【変更点】を、以下のように予想してから鑑賞に臨みました。  「声の出演は仕方ないとして、おそらくBGMも総入れ替えだろうな…。70年代のポップス調を加味した音楽は、当時は最先端でも、映像に比べ、観客からは急激に古びた印象を与えてしまうだろうから…」  「森下洋子さんによる【バレエのシーン】や、昭和の芸能界を彩った有名人の方々の“声の応援出演”による【名士達のシーン】は、カットだろうな…。現在の子供やその親御さん達が観ても『あの森下洋子さんが出演してくれたんだ!くるみ割り人形と言えばバレエとは切り離せないものね』『あの大橋巨泉さんが!この声はひょっとして坂上二郎さん?!…そうそうたるメンバーが声をあてているな~。しかも、ぞれぞれの話術と人形の動きがよく合ってるじゃないか!』といった感激や面白さは、沸いてこないだろうから…」  「お菓子や果物の妖精達が、チャイコフスキーの音楽に見事にシンクロして踊る【マルチパン城へ向かう道のりのシーン】は、約6分間もある力のこもった場面だったけど、途中に出てくる【ハロー・キティ】のデザインが、現在とは違うから、ここもカットかな…少しは残してほしいけど…」   実際に観て、あまりにも予想通りでちょっとビックリ。率直な感想は、サンリオ創始者・辻信太郎氏の「これだけの力作を忘れさせてなるものか!何としても若い世代に伝えたい」とでもいうような【執念】を感じたことです。増田セバスチャン監督は「現在のお客さん達に観てもらうには、どこを削り、どこを補正するか」という観点で、辻信太郎氏の期待に十分、応えたのでは…と思います。  また、クララを始めとするキャラクター達の【声の出演】は、思ったほどには【1979年版】のイメージを損なっていないように私は感じ、とりあえず一安心。まあ、広末涼子さんの【マウゼリンクス夫人】は、この際“脇”に置いておくとして、配役について個人的な思いを加えると…【ドロッセルマイヤーおじさん】の顔立ちは【1979年版】の【西村晃】さん、【フランツ】の特に目元や口元が引き締まったときの顔つきは、同年版の【志垣太郎】さんそのもののようだと、あらためて実感しております。【市村正親さん/松坂桃季さん】には申し訳ないですけど…。  なお、【マルチパン城へ向かう道のりのシーン】の前振りでもある【森下洋子さんと清水哲太郎さんのバレエシーン】はどのように補うのだろうと思ったら、代わりに【一対の雌雄の蝶々から始まって様々な生き物に“愛”がつながっていく】というものでした。映像の雰囲気は、NHK【みんなのうた】に流れそうな印象を受けましたが、まあ、こんなもんなんでしょうかね…。その後【マルチパン城へ向かう道のりのシーン】が、幾分かですが流れたことに安堵しました。  ところで、これは観終わってからですが…DVD特典の宣伝映像では「極彩色ミュージカルファンタジー」と銘打っていましたけど、これってミュージカルでしょうか?【ミュージカル】の厳密な定義は知りませんが、少なくとも【歌】が少なすぎなような…きゃりーぱみゅぱみゅさんの歌は、あくまで【エンディングソング】なので、別扱いでしょう。もっとも、“商業的な都合”で、このように宣伝せざるを得なかったのかもしれませんが…。   さて、採点ですが…上述の通り、辻信太郎氏の【執念】と、その期待に応えた増田セバスチャン監督を始めとするスタッフの皆さんへの敬意を表する一方、あくまで【1979年版】があってこその作品という意味で9点とさせていただきます。ただし限りなく10点に近い9点ですので、監督さん・スタッフの皆さん、ご容赦ください…。  この【2014年版】を観て、少しでも【1979年版】を観て下さる方々がいらっしゃれば幸いです。因みに、私が観た【1979年版】のHDリマスター版の画質は、十分、鮮明でした。【2014年版】は「極彩色」と銘打っていたこともあり、色彩の“彩度”を強調加工していましたが、見比べさえしなけば、【1979年版】も、十分、色鮮やかだと思います。
[DVD(邦画)] 9点(2020-06-07 17:40:29)
12.  くるみ割り人形(1979) 《ネタバレ》 
 ↓の【movie海馬さん】のレビューを拝読し、レンタル店でDVDの【1979年:HDリマスター版】及び【21014年版】の両方を取り寄せて鑑賞しました。   まず前置きから。私にとって公開当時は、観たくても観られなかった作品です。  その前年、サンリオ製作の【親子ねずみの不思議な旅/チリンの鈴:1978年‐同時上映】は映画館で観ました。特に【チリンの鈴】は「ディズニーとは違う、日本だからこそ創れた作品だ」と子供心にも誇らしく思ったものです。しかし当時、私は小学校高学年。低学年の妹も一緒の家族での鑑賞でしたが、クラスで素晴らしさを伝えても「サンリオって小さい女の子向けでしょ。しかもアニメ映画なんて観に行って恥ずかくない?」とからかわれただけでした。  一方、当作品は、人形アニメ作品。当時から子供心に【人形アニメが、どれほど手間がかかるか。セルアニメと違い大量人員による分業には限界があり、コマ撮りは極めてパーソナルな作業になる:注…大人になってからの言葉に変換しています】と知っていました。「きっとサンリオは素晴らしい作品に仕上げたに違いない」…しかしCMの映像には【主役の二人を乗せて飛んでいく馬車を“キキとララ”が見送る場面】が映っていました。私は「映画館へ観に行ったら“あのお兄さん、おかしいんじゃない?”と、自分より年下の女の子やそのお母さんに、白い眼で見られるかも…」と腰が引け、観るのを諦めました。  その後、TV放送されたようですが、機会を逸してしまい…さらに歳月が流れて我が子とサンリオ・ピューロランドへ行ったときには、園内の劇場ロビーに、クララ達の人形が飾ってあり「サンリオにとって、今でも大切にしている作品なんだ。それなのに、未だに観ていないなんて…」と後ろめたさが、ずっと残っていたのです。   こうして41年の歳月を経ての初鑑賞でしたが、感動しました。可愛らしい人形達が、見事に創り込まれたセットの中で、美しい光の演出と凝ったカメラワークで動く!動く!…と、ワンカットワンカットから目が離せませんでした。  特に闇を基調とした【時計の中/ネズミたちの根城/森】といった場面は、当時のフィルムの感度を考慮すると【挑戦的】だったのでは…と推察しています。現在の人形アニメはデジタル技術により、撮影のたびに一コマ単位で再生し直し、動きを確認・補正(撮り直し)しながら作業を進めることできます。しかし、この時代はフィルムの一発撮り。現像しなければ、仕上がりはわからない。テスト撮影をして臨んだでしょうが「背景はうまく感光したけど、クララが黒ずんだ/くるみ割り人形の赤い色が上手く発色していない」といったことで撮り直しに…といったこともあったかもしれません(的外れならスイマセン…)。  一方、ジプシー占いのおばさんは、文楽人形をアレンジしたものでしょうか?…コマ撮りとは異なるゆったりした動きが、異様な存在感を醸し出して迫力があると感じました。   また【マリー姫の呪いを解くために国中から集められた名士達が、アピールするシーン】も印象深かったです。当時の芸能界を彩った有名人の方々が【声の応援出演】として声をあてておられます。しかも、姫の父親である皇帝に「名士と言われる人達も、結局は独りよがりの者ばかり…」と言わしめるためだけに7分間も費やして…。場面の位置づけは【お遊び的】なものですが、録音した出演者達の言いまわしに合わせたアニメートは大変だったと思います。しかもこの場面の人形達に、私はとても親しみが沸きました。それもそのはず。観終わった後、DVDの解説で、監督の中村武雄さんやアニメーターの真賀里文子さんは、私が小学校の低学年時代に、学校や公民館で上映された短編作品【花ともぐら:1970年/てんまのとらやん:1971年】に携わった方々だと知りました。地道に人形アニメをつくり、私達を楽しませて下さったお二人を始めとする数多くの方々に感謝しないではいられませんでした。    さらに、クララが、今どきの「自ら運命を切り開く戦うヒロイン」でなかったのも新鮮でした。傑出した力は無くても、懸命にくるみ割り人形を思いやり、守り抜こうとする…こうした“内なる強さ”を秘めたヒロインだって、私はまだ現在でも“あり”だと思います。   さて、採点ですが…当時の人形アニメの技術の粋を結集した力作でしょうし【夢のようで夢ではないような…】というこの物語のシチュエーションにも人形アニメはピッタリで、現在でも色あせたものではないと思います。スタッフの皆さんへの敬意を込め10点を献上します。  おそらく「CGでやれば簡単じゃん」という方々もおられるでしょうが…是非、【手作り】の情熱を感じていただける方々にご覧いただきたいです。
[DVD(邦画)] 10点(2020-06-07 17:36:21)
13.  今夜、ロマンス劇場で 《ネタバレ》 
 加藤剛さんが出演された最後の映画作品ということで、TV放送を機に今さらながら鑑賞。     まず【表面的な感想】は「手を触れる・触れないだけでもドキドキして“一緒に居られるだけで幸せ”を感じることのできる若い年代の人達向きの作品だな…ただし、目の肥えた当サイトのレビュアーさん達の評価は、きっと辛口が多いだろうな」…いやはや、レビューを拝読したら、予想通りでした…(^_^;     次に、【個人的に印象に残ったこと】は、以下の三つです。      一つ目は、加藤剛さんの存在感です。加藤さんは、若かりし頃から一貫して、誠実で真っ直ぐな役柄を演じてこられました。詳細は割愛しますが、私は子供の頃に、加藤さんが演じた役柄に感銘を受け、今でも折に触れ、影響を受けていることに気づかされます。  そして当作品については、ご自身の病を押して撮影現場に臨まれたことが察せられ、演技の一挙手一投足に、加藤さんのお人柄がにじみ出てくるような説得力を感じました。あらためて、ご冥福をお祈りします。    二つ目は、そんな加藤さんによる冒頭のナレーションです。「名画たちの陰で、忘れられていく映画も、また星の数ほど存在する。誰にも観られず、必要とされず、忘れられていく映画たち…彼らには、もう、価値など無いのだろうか?…いや、そんなことはない。忘れられた映画にだってあるはずだ。誰かの心を鮮やかに染める、奇跡のような不思議な力が…」。この言葉は【映画】に留まらず【傑出した業績を誇る偉人】と【星の数ほど存在する市井の人々】にも重ね合わせることが出来るのでは…と思ったのです。  実際、モノクロからカラーに替わる設定には、特段、凝ったエピソードが用意されているわけではなく、「ちょっと作為的かな」とも思える【色彩の演出】も含めて、ひとえに「心を鮮やかに染める」の一点に特化している印象を受けました。その意味で、ナレーションを背景にしたミユキの「見つけてくれて、ありがとう…」という言葉に対し、私は『偉業を成し遂げていなくったって、一人でもいい、誰かの心を幸せに染める力があれば、それだけでも、その人には十分、存在価値があるのだ。そのような出会いに巡り会えることこそ、この上なく幸せなことなのだ』…そんな連想をしました。  そして公開当時は、観終わった後に「見つけてくれてありがとう」「こちらこそ、見つけてくれて…」と肩を寄せ合い、手を握り合うカップルが散見したのでは…と想像したりもしました。    三つ目は、【記念写真】や【病院ロビーでの会話】での【ケンジとミユキの距離】は、新型コロナウィルス対策としての【ソーシャルディスタンス】と合致しているように思ったことです。  【ステイホーム】により家族内でのイライラが募りがちな状況下にあって「最後に家族と触れ合えないまま、コロナで亡くなってしまっている人達が大勢いるね」「お互いに相手を思いやるための距離感を考えながら、仲良く乗りきっていこうよ」…今回の放送を観て、このようなことを考えたり、話し合ったりしたご家族が、少なからずおいでになるのではないでしょうか…。  このタイミングで放送したのが、たまたまでなく、もし、上記のような【見つめ直しの会話】を引き出す意図があったのだとしたら…フジテレビの担当者さんに敬意を表したいです。    さて、採点ですが…まずは、無難につくられた作品ということで“可も無く不可も無く”の5点を基準に、上記の三つの点を1点ずつ加算して8点を献上します。コロナの騒ぎが収まれば、7点ということになってしまうのかもしれませんが…   果たして、当作品は、今後、【名画】になっていくのか、それとも、その場限りのヒット作として忘れられていくのか…今後の動向を見守りたいと思います。
[地上波(邦画)] 8点(2020-05-21 21:53:11)
14.  電人ザボーガー 《ネタバレ》 
 熱血漢の主人公が、パートナー(番組名のキャラクター)と二人三脚で悪を打ち砕く…私にとってザボーガーは【ダイヤモンド・アイ:後述します】と並ぶ異色の二大ヒーローもの。  この映画版の劇場公開当時「糖尿病を患う中年男になった大門は…」という某TVの宣伝コーナーを見た瞬間、私は悲しみのあまりチャンネルを変えました。「ザボーガーはそんな物語ではないだろう?!どうせ、往年の作品を【素材】としてだけ取りあげ、後は監督の【作家性】とやらで全くの【別物】にしてしまったのだろう…ザボーガーは、ウルトラマンなどに比べてマイナーかもしれないけど、約1年続いた作品であり、当時、一定の支持があったからこそ残っている作品のはず。もう少し、当時、子供だった私達の世代の気持ちも大切にしてほしい。せめて、当時の主題歌をバックに、現在のセンスを活かしてオープニングを再現するなど、オリジナルをリスペクトした場面を盛り込んでほしい」と思い、それっきりになっていました。  これが早合点と知ったのは8年後の2019年の年末。偶然、映画版のオープニングを観る機会があったのですが感激しました!「電人ザボーガー、GO!」と命令する大門のポーズや口調を目の当たりにした瞬間「今は亡き、山口暁さんが生き返ったの??」と思うほどの再現度!主題歌は新録のようでしたが変にアレンジせず、子門真人さんに負けず劣らずの正攻法の歌いっぷり!まさに私が上述した【オリジナルをリスペクトしたオープニングの再現】に他ならなかったからです。  これは観よう!…と思いつつ、レンタル店で借りられたのは2月になってからでした…以下、他のレビュアーさん達の文面に目を通した上で投稿します。   特に第1部ですが…TVをリアルタイムに観た世代か否かで、印象がだいぶ変わるんだな…と思いました。エンディングにTVのオリジナル映像が流れますが、我々リアルタイムに観た人達は「おお!この映画では、当時のテイストを本当に見事に再現していたんだな!」と感激するでしょうし、一方、若い世代の人達には「何?これ…元々がこれか…」と失笑ものかも…井口監督は、それらを見越して、昭和40年代の生真面目・熱血テイストを誠実に再現しつつも、微妙にコミカルな演出を加えたのかな…と思いました。何故なら、純粋に生真面目に演出したとして、若い人達に「これはギャグだよね」と笑われてしまったら、井口監督は勿論、我々の世代にとっても、とても悲しいですから…。結果としては、真面目に観て下さった若い方々には(否、リアルタイムの方々にも…)色々な反響があるようですけど…。  第2部は、まさに井口監督の真骨頂。「我々も歳を重ね、大門同様、身体にガタが来ちまったよ…理想と現実の違いも思い知らされてるよ…それでも根っこは腐っちゃいないんだぜ!」という熱い思いが私にも蘇りました!おそらく井口監督の狙い通りでしょう。なお、アキコがサイボーグとしての宿命から解き放たれるコンセプトは映画版のオリジナルですが…【ダイヤモンド・アイ】の最終回に似ている気がしました。単なる偶然なのか、井口監督も観ていて意図的?無意識?に取り入れたのかも…と思ったりしました。    さて採点ですが…感激ぶりだけなら10点ですが、観る人により印象が大きく変わるようなので、当サイトの採点基準である【見た後、率直に面白かったぁ…って言える作品】として8点を献上します。なお、私は当作品を【リメイク作品のお手本】と感じましたが…後続作品は「往年の再現をした後は、自分の作家性で、幾らでも別物にして良い」と形骸化しそうな気がします。アニメも含めて昭和の子供番組のリメイクは、今後、控えてほしいな…と思います。  *備考 ダイヤモンド・アイについて *以下、【アイ】と表記。DVDを再見して明記します  放送期間は 昭和48(1973)年10月~同49(1974)年3月。一方、ザボーガーの放送開始はアイの終了直後の昭和49(1974)年4月。小学生だった私は「アイは終わって残念だけど、他のチャンネルで似た番組が始まったぞ」と嬉しくなったものです。主人公は正義感に溢れるルポライター。パートナーのアイは、主人公がはめている魔法の指輪から召喚される精霊。敵は、前世で欲望に執着するあまり怪物化し現世で悪事をはたらく【前世魔人】。主人公とアイは主従関係でなく、愛と正義の思いで結ばれた友人として描かれています。また精霊といっても万能ではなく、主人公がアイを助ける場面もあり【共に戦う】というコンセプトが好きでした。ただ子供心に「オイルショックで、作るお金が足りないんじゃ…」と心配したことも…。現在、再見しても私は好きですが、若い方々には、ザボーガー以上のインパクトがあるかもしれません。ただしリメイクは控えて…
[DVD(邦画)] 8点(2020-02-24 11:59:46)(良:1票)
15.  ちいさな英雄―カニとタマゴと透明人間― 《ネタバレ》 
 私はかつて【ぴあ・フィルムフェスティバル】や【イメージ・フォーラム】で、自主映画や実験映像を数多く観ました。その結果、これら【映像作家志向の人】と、【一般の人=役者さんの演技・ストーリー・脚本・キャラクターなどに焦点を当て、“劇”映画として観る人】とでは「面白い・優れている」の視点が全く違うことを思い知らされました。  その意味で、当短編劇場は【劇映画】と【実験映像】の中間的な印象。起承転結があって観やすかったです。物語の展開は、皆、予想がつきましたが、それぞれ映像表現が素晴らしく、没入できました。特に「サムライエッグ」は“個人的な事情”から、感情を揺さぶられました。以下、各作品の感想を明記します。   ●「カニーニとカニーノ」は、宮崎監督から継承した画風による王道アニメ調。【借りぐらしのアリエッティ:2010年】を彷彿とさせる【小さな生き物たちの視点からの世界】をはじめ【水面及び水中を漂う浮遊物】など、ディテイールの表現の豊かさが素晴らしかったです。映像化にあたって、おそらく実際に沢へ出向き、ときに水中を覗き込み、ときに水槽で生き物たちの生息場所を再現して…というような、米林監督らスタッフの皆さんの試行錯誤が目に見えるようでした。そしてクライマックス。モンスターのように描かれた川魚(多分、イワナ?)、絶体絶命の危機、そして「やっぱり鳥って“恐竜の生き残り”なんだな」と思えるサギの描写は、劇場の大画面で観たかったかも…。それにしても、アリエッティの発表当時から感じていましたが、米林監督は、まさに“ディティール表現の作家さん”であり、長編よりも、こうした短編でこそ、本領を発揮できるのでは…と、思いました。   ●「サムライエッグ」は、【食物アレルギー ━ アナフィラキシーショック】に関するもの。この【食物アレルギー】の題材にふれるたびに、私は、1980年代後半に報道された【給食のおそばを食べた結果、そばアレルギーによるアナフィラキシーショックで亡くなった小学生の男の子】のことが頭をよぎります。そのため、冒頭の病院のシーンから、胸が苦しくなりました。しかも、その後に描かれるのは、主人公・シュン君の学校生活とお母さんを中心としたご家族の心遣いの日々。楽しいはずのお誕生会やお祭りが常に死と隣り合わせ…因みに、私の子供の同級生の男の子も、様々なアレルギーのため、給食とは別に、お母さんが毎日、お弁当を届けていました。その男の子は今、立派に成長していますが、本人やご家族の日々のお気持ちはどのようなものだったか…そのため、高畑勲監督から継承したであろう、百瀬監督による【水彩画タッチのしっとりやわらかい映像で、リアルに淡々と紡ぎ出される日常描写】の一つ一つに対し、私は、上記の同級生の男の子のことが重なり「シュン君、そうだよね…お母さん、そしてお父さん、そうだよね…」と、込み上げてくる感情を必死でこらえながら観るはめになりました。そして、突然、襲ってくるアナフィラキシーショック…次々と沸き上がってくる身体の変化の表現は、シュン君の心までも映し出しており、まさにアニメならではと感じると同時に、非常に怖かったです。シュン君が助かり、立ち向かう決意をし、無事に同級生たちと自然教室(河口湖)へ行けたエンディングに至り、ようやく私の気持ちも晴れました。   ●「透明人間」は【周りから見えないことで、反社会的な行動をエスカレートさせていった2000年発表の某アメリカ映画】とは対照的な作品。周りから存在を認識されない孤独・空虚さ、そして【上下左右・天地の高低差の移動を通じ、この世から消えそうな状況から必死でもがくように留まろうとする心像風景】を描写した、山下監督による映像表現は、これまたアニメならはでしょう。赤ちゃんの救出を機に、【実験映像】的な暗く歪んだ映像から、ジブリやポノックらしい色彩豊かな映像へと転換した演出には、ホッとしました。比べるのは野暮でしょうが、上記の某アメリカ映画のように【何かというと“アクション”の名のもと、暴力・殺人・流血シーンを“迫力ある映像”として売りにする作品】に懐疑的な私は、ポノックの皆さんには、是非、暴力路線に堕さないよう、否、これらを浄化するような映像作品を作り続けてほしいと思います。   さて、採点ですが…3話とも15分程度だから良かったのであって、長編なら中だるみしてしまったことでしょう。短編だからこそ可能な映像表現の強みがあると思います。他のレビュアーさん達と同様、是非、この【短編劇場】はシリーズ化してほしいです。個人的には10点にしたいところですが…【起承転結のある“劇”映画の体裁をとる以上、観る人によっては、物足りなさを拭えない】という点を差し引き(それでも大甘で)、9点とさせていただきます。
[地上波(邦画)] 9点(2019-09-23 18:17:26)(良:1票)
16.  プロジェクトA子 《ネタバレ》 
 私が当作品を観たのは、約30年前。フジテレビでの夕方の放送(当作品の終わりに流れたテロップ:スーパータイム ‐ クェート機ハイジャック事件など ‐ から、1988年4月の放送と思われます)を機に鑑賞。何となく観始めたのですが「北斗の拳をはじめ、様々なアニメのオマージュ・パロディに溢れている!何故、A子が馬鹿力なのか、いちいち説明せず、漫画チックなアクションで押しまくるパワーが素晴らしい!」と、すっかり気に入り、途中(クレヨン画風の映像で、幼稚園時代の因縁を回想する場面)からビデオ録画しました。録画開始後は、巨大宇宙船を交えたメカアクションに、A子とB子のアクションを融合させる…というセンスにも感動しました。放送後、録画を繰返し観たのは勿論、レンタルビデオでノーカット版を観たり、レンタルCDを聴いたり…と、しばらく熱中したものです。  そのため、他の皆さんのレビューを拝読している間、挿入曲の【Dance Away/Follow your Dream】、さらに、A子「スクリュー・キーック!ドォーッ!」→B子「赤城山ミサイル!」といった台詞・場面の数々が頭の中を駆け巡り、テンションが上がりました。  早速、私もレビューを書こうと、レンタル店でDVDを…と思ったら、取り寄せ不可能とわかり…このたび、当時録画したビデオを発掘・再鑑賞した上で、投稿しました。   さて、再鑑賞(録画した、後半の約40分間の範囲)の感想ですが…やっぱり面白かったです!。以下、皆さんのレビューを通じて初めて知った事実も交えて書きます。  まず、今更ながら【くりぃむレモンシリーズとして製作されたのが発端/同時上映が、旅立ち‐亜美・終章】と知りました。「30年前の自分の熱中ぶりが、如何に表面的で知識に乏しいものだったか」を痛感したのと同時に「それまでエロに向けていたエネルギーを、創造的に発散させたことで、これほどのパワー溢れる力作になり得たのかも!」と思いました。いずれにせよ、良い意味で「男子向けの作品だな!」と再認識しました。また、ここまで底抜けに単純明快な作品として完遂するまでに、企画段階でも相当な押し問答があったはずであり、西島克彦監督達が、どれほどのエネルギーを注いだかを、察して余りあるものがありました。  もう一つは【M監督が「こんな映画は作ってはいけない」とおっしゃっていた】ということ。何となく私も感じてはいましたが、やはりそうだんたんですね…。確かに、東映アニメーションが【東映動画】という名称の時代から製作に携わっていたM監督にとって、【アニメブーム】以降に現れた当作品の【80年代テイスト】は、堕落のように映っても無理ないかもしれません。しかし【A子が、ミサイルを飛び石のように踏み越え、巨大宇宙船に向かっていくシーン】をはじめとする漫画チックな演出の数々は、十分、M監督の演出に通じるものがあるような…。それに当時のアニメ界が、ある種の閉塞感に満ちていたことは確かだったと思います。その閉塞感を打ち破るべく、西島監督は【A子】を、M監督は王道の【漫画映画】の復活をめざして【天空の城ラピュタ】を創ったのでは…とも思っています。そして奇しくも【A子】と【ラピュタ】が公開されたのは、共に1986年。この【昭和末=3年後から平成】という時期に、根底では共通する面がある(と私は思うんですけど…)2作品が発表されたことは、偶然を越えた【日本アニメ界の節目】のようなものを感じずにはいられません。  公開から30余年…【ラピュタ】に対し、当サイトでの【A子】のレビュー数は非常に少ないものの、平均点は決して負けていないことを嬉しく思います。最近、仕事疲れで投稿がストップしていたのですが、当作品の再鑑賞で元気を取り戻しました。ありがとうA子!   さて、採点ですが…【男子向け】ではあるものの、まだデジタル技術を使っていない【手描きアニメ】で、これだけ元気溢れる力作は滅多に無いと思います。【ラピュタ:私は10点を献上】と双璧をなす【昭和末】に生み出された傑作の一つとして、西島克彦監督と森山ゆうじ作画監督をはじめとする、作り手の皆さん達への敬意を込め、10点を献上します。   備考:若い人達が観ると、良くも悪くも【オタク志向の作品】と思われることでしょう。しかし当作品が公開当時(私がTV放送で観た当時も含む)は、まだオタクという言葉は一般化しておらず、敢えて言うなら【アニメファン/アニメマニア】という呼称が該当するかと思います。【オタク】が浸透したのは、その後に別のMによる【事件】があってからです。そのため、個人的には【アニメファン(マニア)】という言葉と共に語ってほしい作品です。
[地上波(邦画)] 10点(2019-07-18 21:49:12)(良:1票)
17.  HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス 《ネタバレ》 
 某ローカルTV局の元日に1作目、そして翌日に当作品…と二夜連続で放送されたので、録画して鑑賞。  1作目に比べ、アクションもVFXも凝っており、前作では予算も時間も足りなくて心残りだったことを、存分に注ぎ込んだことが伺えます。「前作を“深夜のTV番組レベル”といった人達よ、この映画を観てみたまえ!どうだ!これで文句ないだろう!」という、福田監督や鈴木亮平さんをはじめとする、作り手の皆さんの自信たっぷりの声が聞こえてきそうです。   ただ、たとえスケールが小さくても、1作目について【冬場という過酷な状況で、身体を張ってロケを敢行したのでは?!:詳細は1作目のレビューをご参照ください】と想像して感激した自分としては…当作品は、撮影が夏場(鈴木亮平さん達は、皆、普段着は半袖姿です)のようなので、ある種、安心というか、ゆったりした気持ちで鑑賞しました。  勿論、寒くないからといっても、アクションには綿密な打ち合わせやリハーサルが必要でしょうし、VFXの撮影にあたっては、違った手間暇や苦労があったとは思いますが…   このようなわけで、1作目に比べると、とても短い文面となりましたが…当作品に対する、私の正直な思い入れは、これぐらいです。ただし1作目があってこその当作品であり、低評価にはしたくありません。そこで、1作目と【セット】として考えて8点を献上させていただきます。  いずれにせよ、新年早々、元気になれました。この2作品をお正月に放送した某ローカルTV局の英断に感謝します!。
[地上波(邦画)] 8点(2019-01-27 21:27:53)
18.  HK/変態仮面 《ネタバレ》 
 某ローカルTV局の元日に当作品、そして翌日に続編…と二夜連続で放送されたので、録画して鑑賞。  原作漫画(1992~1993年連載)は、タイムリーに読んでいました。ただし「ドラゴンボール」「幽遊白書」「ジョジョの奇妙な冒険」といった少年ジャンプの看板漫画の“ついで”ではありましたが…。当時の私の率直な感想は「たぶん“女子”には理解してもらえないだろうけど、これぞ少年ギャグ漫画だ!」と、小学生の“男子”に戻った気持ちで楽しんだものです。  映画化の話を耳にしたときは「20年ぶりの復活か~」と感無量ではあったものの、題材が題材だけに気恥ずかしくて劇場には足を運ばず…しかし大成功をおさめて続編も製作!…にもかかわらず、やはり観ずじまいでした…。  そんな不誠実な読者だったわけですが、今回のTV放送を観て感激しました!。以下、他のレビュアーさん達の肯定的なご意見と異口同音かもしれませんが、長々と述べさせていただきます。   まず私が感心したのは、漫画から抜け出たかのような変態仮面のフォルムは勿論ですが…ギャグ漫画が原作だからといって、けっしてドタバタな演出で終始しなかったことです。  確かに、脇役陣(主人公の両親、大金玉男 及び 第四までの刺客-真面目・爽やか・モーホー・細マッチョ仮面)については、ストレートにコミカルな演出がなされています。  一方、主軸であるストーリーラインは【平凡な主人公の紹介 → ヒーロー誕生 → 巷での活躍と共に深まる主人公の苦悩 → 強敵出現と初めての敗北 → 再起とクライマックス】というように、まさにヒーローものの王道。しかも学園ものとしての純情ラブストーリーも加味してあり…それらを、主役二人(鈴木亮平さんと清水富美加さん)が、真面目に演じています。瀬川英史さんによる音楽も、この二人の場面では、原則、真面目な曲調で、ときとして「シリアスすぎでは?」と感じるほど。そして真面目に演じれば演じるほど、シチュエーションや台詞とのギャップから、観る者の笑いを誘う…これは福田監督の演出上の戦略かな…と思いましたし、私は好感を持ちました。   さらに、私が個人的に熱くなったのは、映画の後半に差しかかる【偽変態仮面との最初の対決から敗北に至る場面】です。これらは寒空のもとでロケ撮影されたことがわかります。随分前のことですが、私は某TVドラマのロケ現場に偶然、出くわしたことがあり「10数秒程度のワンカットを撮るだけでも、準備や打合せ等で、相当の時間がかかるんだな…」と知りました。そのため「路上での対決では強い風が吹いているし、その後のビルの屋上の場面は夜間。待機中は防寒に配慮したとは思うけど、撮影本番は、どんどん体温が奪われ、さぞかし寒かったろう…アスファルトや屋上の床に横たわるのは、さぞかし冷たかったろう…」と、観ている間、過酷な撮影現場を想像してゾクゾクしました。特に、偽変態仮面を演じる安田顕さんが、変態哲学を語り「そんな屈辱にエクスタシー!」と絶叫する鬼気迫る姿は、【寒さに耐える】を突き抜けたからこその境地から生み出されたのでは!…と感じました。もちろん、私が寒い季節に観たことも影響していたとは思いますが、おかげさまで、中だるみせずにラストまで集中して鑑賞できました。   さて、採点ですが…上記のように安田顕さんについては言うに及ばず、見事なボディーを作り上げた鈴木亮平さん、そして福田監督をはじめとするスタッフの皆さんが、真剣に情熱を込めて創りあげたことが伝わってきて、新年早々、元気になれました!。当レビューに投稿するにあたり、DVDをレンタルしてノーカット版も観ましたが、感想は変わりません!率直には10点にしたいところですが…万人受けは難しいでしょうから、当サイトの採点基準である【見た後、率直に面白かったぁ…って言える作品】として8点を献上します。  ところで、今や鈴木亮平さんは【西郷どん:2018年】で、一躍、大河ドラマ俳優になってしまいましたが…できれば、当作品を黒歴史化せずに、今後も代表作の一つとして誇ってほしいものです。また、男の子向けの作品ではありますが、某TV局のバラエティー番組【ダマされた大賞】の“変態おじさん”を楽しめる(というより、笑って許してくれる?)女性の方々なら、観ていただけるかも…と思ったりしています。
[地上波(邦画)] 8点(2019-01-27 21:25:12)(良:1票)
19.  フィッシュストーリー 《ネタバレ》 
 初観賞は、5年前-平成25(2013)年5月の日曜日の夜。「何か面白い番組はないかな…」と何となくTVのチャンネルボタンを押していたときに、某ローカル局で放送されていたのが当作品でした。TVの番組表での紹介は「全く売れなかったバンドの曲が、巡り巡って世界を救う」という趣旨の文面だったと思います。  観始めた場面は、若者達が車内でフィッシュストーリーを“呪いのレコード”扱いしているシーンでしたが、その後、各場面で以下のように感情移入していました。  ①気弱な青年に対しては、本人が悔しがるように「そうだ!立ち向かえ!。あんな人を人とも思わずに恫喝するような奴は、絶対に世界を救う男なんかじゃないぞ!」と応援し…  ②シージャックの場面では「この正義の味方の父親って、あの青年では?そして死ぬな!フルーツタルトとアップルパイで、あの女学生さんやお爺さん・お婆さんと祝杯をあげてほしい」と願い…  ③レコード会社の岡崎氏の登場場面では「扮装(メイク)は変えているけど、レコード屋のご主人と同じ俳優さんだよね?。ご主人の父親ってこと?だとしたら、父親が製作に携わったレコードを大切に保管していたのかな?」と想像し…  ④フィッシュストーリーの【無音の1分間】の真実が明るみになる場面では「こんなにピュアで真摯なメッセージが込められていたとは…そうだ、届け!少なくとも、俺には届いたぞ!」と身を乗り出し…  ⑤居酒屋で、元ネタの本が岡崎氏の手に渡った経緯が説明される場面では「ハーフと勘違いされた男や、おばさんがいなければ、この名(迷)曲は誕生しなかったんだ…」と偶然の不思議さを感じ…というように、結構、はまっていました。  そのため、全てのエピソードが繋がるラストシーンは、上述の①②③④⑤の感情が一気に繋がり「たとえ、その場では失敗のようであっても、また、埋もれるような結果で終わっても、何気ない偶然が繋がって大きな意味を創り上げていく。これが世の中なんだ!我々一人一人が生きている意味があるんだ!」と【熱い思い】が残りました。日誌にも書き留めていたので、冒頭のように鑑賞時期を明記できたのです。   そして、このたび-平成30(2018)年9月の日曜日の夜。再び、同じ某ローカル局で放送されるとわかり、今度は最初から鑑賞し録画もしました。さらにTV放送は短縮版だったので、レンタル店でDVDもかりて観直しました。あらかじめ内容がわかっていると、一層、感情移入しやすかったです。特にゴローの【無音の1分間】の台詞回しには、初観賞時以上に味わい深さを感じましたし、【元ネタ本の経緯説明の場面】でも、岡崎氏のおばさんが短命だったことに思いを巡らせながら、しみじみと耳を傾けることが出来ました。また各エピソードは【岡崎父子/気弱な若者とその息子】という二組の親子の物語が重なり合いながら派生し、繋がっているんだな…といったことも、ふと思ったりもしました。  さらに、原作も読みました。すると…初観賞時に感情移入した上述の①②③⑤(つまり④以外)をはじめ、私が感心した要素の大半は、映画独自の脚色に基づいているものとわかりました。監督の中村義洋氏や脚本の林民夫氏の術中に、すっかりはまっていたわけですが、だからこそ、ますますこの映画が好きになりました。  なお、私は本来、性暴力(未遂で終わりますが…)や銃の発砲シーンなど暴力的な描写がある現代劇は苦手です。ましてやロックには疎く、本来なら敬遠する作品のはずですが、それらを凌駕する【奇跡の作品】となりました。何がこれほどまでに私を引きつけたのか…それは初観賞時に沸き上がった上述の【熱い思い】が残ったからでしょう。この【熱い思い】は、私なりに見出した当作品の主題とも言い換えられるかもしれません。他の皆さんのレビューを拝読しても、当作品に好意的なご意見の多くは、言葉の表現や解釈に違いはあっても、主題を好意的に受けとめておられることが大前提になっているように、私は感じています。   さて、採点ですが…【脚色】だけに焦点を当てるなら、個人的には10点です。ただ、時系列でロジカルにストーリーが展開する作風ではないため、人によってはわかり難く、好き嫌いがハッキリ分かれそうです。そのあたりは差し引き、“はまりさえすれば”という条件付きで、当サイトの採点基準である【見た後、率直に面白かったぁ…って言える作品】として8点を献上します。  最後に…私が当作品を観たことで、遠い将来、ささやかでいいので、どこかで何かしらの【奇跡】が起こったらいいな~と願いつつ、さてと、明日も地道に(いや地味に)頑張ろう…
[地上波(邦画)] 8点(2018-10-18 21:58:04)
20.  斉木楠雄のΨ難 《ネタバレ》 
TV放送されたので鑑賞。漫画の実写映画化は当作品だけに限りませんが、かつて私は原作漫画をタイムリーに(連載の途中までですが…)読んでいたので、観てみました。因みにアニメ版は観たことはありません。   今回の映画版を観て意外だったのは【照橋さん】のエピソードが物語の軸になっていたことです。何故なら【照橋さん】は、チヤホヤされ続けた女性に“あり得るかもしれない”ダークな内面(ちょっと極端すぎますが…)を戯画化したキャラクター。そのため「生身の女優さんが演じると、観客からは、役柄を越えて女優さん自体への反感へとつながり、女優のキャリアにとってマイナスになりはしないか。そうしたリスクを踏まえ、【照橋さん】のエピソードは周辺的なものに留まるのでは…」と予想していたからです。  その意味で、橋本環奈さんは、変顔を一生懸命につくりながら三枚目風で大袈裟に【照橋さん】を熱演?しており、上記のリスクを回避できた…のかもしれません。もっとも、↓の【あばれて万歳さん】もおっしゃっていますが、彼女のような“ハスキーボイス”は、外国と違い日本では“可愛い”の要素から外れているようなので、三枚目的な脚色をするにはちょうど良いキャスティングだったのかも…。   なお、私が漫画で好きだったキャラクターは、見た目は怖いが『実は、欲深なところが無く純真。友達や母親思いで、動物にも優しい』という【燃堂くん】であり、心温まるエピソード(大抵の場合、ギャグもセットでしたけど…)が漫画にはたくさんありました。打算の塊のような【照橋さん】とは対照的なキャラクターで、個人的には漫画の長期連載を支えていた魅力の一要素になっていると思ってきました。新井浩文さん扮する【燃堂くん】は、外観に加え、飄々とした雰囲気は、漫画を上手に再現していたと思います。ただ、上述の心優しい面が(映画の脚本で)削ぎ落とされていたのが、ちょっと寂しかったです。   さて、採点ですが…【モノローグ主体】という漫画と同じ構成は、映画のような長丁場でずっと聞き続けると疲れてしまうかもしれませんが、TV放送だとCMが休憩タイムとなり観やすくなっていたと思います。その意味でTV放送向きの作品かもしれません。そこで「TVでの鑑賞を前提に、ごく軽い気持ちで観るぶんには、可もなく不可もなし」の5点とさせていただきます。ただ、もし【燃堂くん】を軸にした人情物語にしていたら、もう少し点数が高かったかもしれませんが…。パート2があるなら(多分、無いでしょうけど…)、是非【燃堂編】を!  *平成30(2018)年10月15日(月) 追記 : 【あばれて万歳】さんが、私の拙文を読んでくださっていたとわかり恐れ多いです…。もし、私もアニメ版を観ていたら【照橋さん】及びこの映画の印象も違っていたかもしれませんね。詳しい返信(説明)文を追記していただき、ありがとうございました。説明文を拝読すると、上述の私の【引用】による解釈はピント外れだったようです…。いっそ修正しようかと思いましたが、今後、他のレビュアーさんが読んでくださったときに、追記との関連性がわかりやすいかな…と思い直し、恥ずかしいですが、そのままにしておきます…。
[地上波(邦画)] 5点(2018-10-14 21:49:01)
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