Menu
 > レビュワー
 > なんのかんの さんの口コミ一覧
なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2336
性別

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作国 : 香港 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順123
投稿日付順123
変更日付順123
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  チャイニーズ・ゴースト・ストーリー2
みっちり上映時間中は見せ場で埋め切っていく姿勢。サービス精神。バケモンも主人公も、みな呪文で動けなくなってしまうなんてのもあった。手の印字が流れで解けるの。剣捌きとロープを使っての回収。止まってしまった馬を撫でる隊員たち。動くことと止まっていることとの違いに敏感。ワイヤーアクションが見どころなんだけど、そうなるとかえって「行列」が迫力があったりする。大僧正。あれが歩いてくるとこなんて、なんかフェリーニに通じるものを感じた。女官たちがふわっと裾を赤く光らせて飛んでいくのもきれいだった。大臣たちの抜け殻が並んでいるとこも壮観。東洋ならではの怖さがあればもっと良かったんだけど、モンスターはほとんどゾンビだったのが残念。
[映画館(字幕)] 8点(2014-02-19 09:29:47)
2.  客途秋恨 《ネタバレ》 
香港中国返還のころって、いい映画が多かった。故郷というものに敏感になってたんだろう。家族が離れ離れになったり、神経が研がれていた。まして監督は母が日本人で、さらに複雑になる。ふしだらでわがままで奔放な母と娘の物語、っていうジャンルがあるな。たとえば日本なら『香華』とか。やや黄色みを帯びたマカオ時代の回想が美しい。おじいちゃんのおなかでの昼寝。ゆっくりと後退していくカメラ。まるで子どもを起こしてしまわないように。そして南由布への旅。街全体が記憶の中に沈んでいるような美しさ。イギリスの大学院を卒業して、を会う人ごとに繰り返す母。鬱陶しい母であるが、母の別の面も次第に見えてくる。山口百恵のポスターのあるビリヤードでの和解。そしてハンコを作るのが泣ける。小さな楕円形の故郷、墓のようでもある。で香港に残り、テレビ局に勤めることになり、これで終わるかと思っていると、とっておきのラストシーンが待っていた。病気のおじいちゃんのとこへ行くの。青っぽい色調。詰めた息をゆっくり吐き出すようなフェイドアウトが繰り返される。もうおじいちゃんのおなかの上には乗れない。失われた良きものが凝縮している。しかしそれは失われねばならないものでもあるという認識があって、脚本が孝候賢チームの呉念真なんだ。ラストは橋、どこかとどこかをつないでいる一本の橋。マカオ、香港、台湾、日本と東アジア全体をつなぐように。
[映画館(字幕)] 8点(2013-05-05 09:38:42)
3.  プロジェクトA
酒場の喧嘩、訓練でのいびり、ホテルでの活劇、貯木場、女を連れての逃走から自転車、とリズムがいい。とにかく常にエネルギーが満ちている。手錠のままのポールのぼり、時計台での乱闘から落下と、見せ場を連ねていく。自転車の使い方に感心した。乗り物と同時に武器にもなる。「もの」を徹底して使いこなすこのあたりにアクション映画の魅力があるんじゃないか。英軍のえらいさんが誘拐され、裏取引をしようとする総督を非難し改心させる。ここらへんに英国に対する香港人の心の屈折を感じるところなんだろうか。合言葉をめぐるギャグも楽しい。戦友的なヒロイズムがあり、金持ちと一般人でもあって。顔に拳があたるとホコリが出る仕掛け。
[映画館(字幕)] 8点(2013-04-18 10:04:06)
4.  紅夢
普通シンメトリーの構図ってのは、ここぞというところでバンと置くと効くので、あんまり使いすぎちゃいけないものなんだけど、この作品はそれがテーマだからね。シンメトリーの安定した重苦しさ、人を発狂させるほどの、整然とした堅苦しさ。シンメトリーの息苦しさをここまで徹底して追求した映画も珍しい。あとは音の響き。作者によって選択された音しか響かない。それも幽界に響くような雰囲気で、嫉妬によって残響を与えられ心にエコーを掛けられているというか、灯篭を消す竹吹きのブボッという音も腹に響く。遠くから聞こえる第三夫人の歌声、若主人の笛。きっちりした画面に選ばれた音のみがキラッキラッと閃く感じが実にスリリング。昔の中国映画だったら、もっと目覚めたヒロインが反抗する設定になったんだろうが、もうそうはならない、プロレタリアートの部屋にまでレッドランタンは侵入してしまっているのだ。画面に現われているのは「八方ふさがり」の嫉妬渦巻く世界なのだけど、ネチネチという感じはあまりなく、荒涼の風が「八方吹き抜け」ていたのではないか。白・黒・赤の物狂いの世界が魅力的。
[映画館(字幕)] 8点(2012-10-13 09:56:42)
5.  北京好日 《ネタバレ》 
前半ネオレアレズモ、後半落語の「笠碁」。いい映画だ。愛すべき気難し屋が活写されていく。所在無さを綴っていく前半から楽しいが、本題は京劇趣味の老人たちに公園で出くわしてから。最初からしゃしゃり出はしない。一歩離れてて、しかしアドバイスを乞われると嬉々として、いちいちコワイロやったりする。で劇団結成。遅刻したら歌わせない、などの規律を定め、愛すべきファシストとして君臨する。みんなはただ歌うのが楽しみなのだが、「芸術家」として統制したがる。風刺や皮肉があるのではない。ただオカシミとして捉えている。老人だと我を張ってもどこか社会に通じてないせいか深刻にならず、遊戯の気分で喧嘩が出来る。お祭りの公演。審査の発表を省略してシュンとした帰り道につながる妙。メイクのまま夜道を歩かせている。ここらへんのブツブツが絡んでいくあたり、混乱の盛り上げ方がとてもうまい。あっちでもこっちでも湧き返ってくるおかしみ。歌うのが楽しいのと世話するのが楽しいのと、なんかこの喧嘩のほうがお祭りみたいで、テーマは「老人の生きがい」なんていうと大袈裟になってしまうな、「人生の手ごたえ」と言ったらいいか、人生ってのはこういうふうにいいもんだ、と思わされた。苦みも陰りもない。中国映画には珍しい澄明感がある。死んだ奥さんの写真は若かった。長い一人暮らしだったんだな。
[映画館(字幕)] 8点(2011-05-03 12:21:01)
6.  さらば、わが愛/覇王別姫
最初のうちは、監督初めての失敗作かと思った。向いてないことをやってんじゃないか、とか。でも中華人民共和国成立以後の部分はピリピリと締まってて、振り返ってみてやはり傑作の部類に入る作品だろうと思った。惨憺たる中国の近代史。その惨憺たるさまを惨憺たるままに描いて、一片の希望だに見せず、ひたすら滅亡の歌を奏でていく 。京劇の滅びに、古代の覇王の滅び、さらに現代における人が人らしく生きる環境の滅びを重ねて、崇高でさえある。主人公の人生は少年時代の訓練から陰惨さを反復する。強制的に男であることを忘れさせられ、錯覚の中に生きていくことを強いられる。競って愛国者を演ずることになる20世紀中国の群衆と、女形を演じ続ける彼との対称。陰惨である。その陰惨は文革の人民裁判にまで持続していく。この監督にそもそも悲劇志向があるのか、それとも中国の伝統なのか。陰惨だけれども極彩色の壮麗な悲劇に仕上がった。
[映画館(字幕)] 8点(2011-04-11 09:57:08)
7.  ラヴソング
大メロドラマの醍醐味。まず、このころの香港情勢があって、大陸から香港へ、香港からアメリカへ、という中国人の流れがあった。戦争などと比べれば穏やかなものだが、やはり一種の激動期、メロドラマの背景にふさわしい。そこにもう一つ、テレサ・テンの文化圏としての香港と、ウィリアム・ホールデンの『慕情』の文化圏としての香港との拮抗が重なる。そういう混淆の物語は、ラストでテレサ・テンの歌がニューヨークに流れて決まりをつけるわけだ。この二人はどちらも大陸から来て香港に根を下ろそうとしていて、いわば戦友のような感情で結びついている、それがいいなずけには乗り越えられないものだった。友だちよ、友だちなのよ、と釘を刺しつつ愛が深まっていくあたりがいいの。だんだんと沈黙が濃くなり、寒いからと重ね着させてボタンをかけ…、なんてあたり。すれ違いもちゃんとあり、これはかなり堪能できたメロドラマだった。
[映画館(字幕)] 8点(2009-03-11 12:13:10)(良:2票)
8.  花様年華
メロドラマとしての格調の高さは大したものだ。狭さを意識した画面、その息をひそめている感じがいい。新聞社の無表情な大時計、赤いカーテンの揺れる廊下、と舞台もふさわしい。下の屋台へポットを持っての往復で、ちらちらと意識しあう男女。そのかすかな空気の揺れのようなものがメロドラマの味わい。ここぞというときに入ってくる憂鬱なワルツ、あるいはキサス・キサス・キサス。連れ合いが不倫をしている二人は、意地でも関係を結ばない。それが全編に緊張をはらませている。時代や社会やあるいは女の生き方についての思索など、余計なものを排除して純粋な織物を織りあげたって感じ。だからこそラストのカンボジアが引っかかる。あの時代の新聞社を舞台にしながらベトナム戦争に触れずに綴ってきて、ラストで竹の文化圏から石の文化圏のカンボジアに跳ぶあの画面の質感の急変、分からないからこそ、すごく引っかかる。
[映画館(字幕)] 8点(2008-08-12 10:52:15)(良:1票)
9.  PTU 《ネタバレ》 
この寡黙さはもう映画の鑑ですな。冒頭の事件からして、空調から垂れる水滴、間を置いて鳴るケータイ、そして不意の凶行、と無駄な声が一切なく、演出も、アクションとしてもコメディとしても、押すところと外すところのリズム感がいい。ゆったりと自転車小僧が現われてくるあたりの外しかたのうまさね。二つのヤクザの対立に、そそっかしい刑事が絡むってだけがこの映画の基本設定で、いちおう捜査側にもそれぞれ欠点を与えたりはしているが、別に人間に深入りはしない。その分、主役は香港の夜そのものになった。けっきょくこの映画では、ずっと夜を味わっていたような気がする。一晩の物語ならたいていラストは朝と決まっているのに、そうしない。朝が来るのがもったいないような夜だったからだろう。これであと音楽がもうちょっと寡黙にしてくれてたら申し分ない。
[DVD(字幕)] 8点(2008-02-28 12:23:37)
10.  無言歌 《ネタバレ》 
仲間が吐いたゲロを摘まんで食べるシーンで、ヤバイと思った。ドキュメンタリー出身の監督なら絶対に撮らないクソリアリズム映画なのか、と心配になった。でもそこらへんは、まだ劇映画に慣れてなくて試行錯誤していたときに撮った部分だったのかもしれない。次第に立ち直り、ドンさんの妻が来てからは、ドキュメンタリーの手法が生きた劇映画になった。いつも隙間から外光が漏れている室内(というより坑内)、そういう光は映画ではだいたい「外への希望」を象徴させるものだった。だけど、この坑内に入ってくる光はそうではない。夫の死を知らされて悩乱した妻が外の光に導かれるように出て行く。しかし外に広がっているのは風吹きすさぶ荒野なのだ。希望さえ吹き飛ばされてしまうような黄砂の世界。このだだっ広い閉塞感こそ、中国反右派闘争時代の犠牲者が味わった絶望の映像化だろう。「これからは百家争鳴だ」と言われて発言したところ反動分子と決められ、「思想改良」のために荒野に送られた人々の絶望。もうこれからは絶対喋るまいと決めた人々の、無言の歌が吹き荒れている。ここに埋められたくない、という最期の願いも無視され、柔らかい尻の肉を食われたあと荒野の塚になっている人々。圧迫してくる広さの力が圧倒的で、ドキュメンタリーでつちかわれた腕が十分に発揮されていた。王兵ワンビン監督。
[DVD(字幕)] 7点(2013-05-07 09:59:02)
11.  チャイニーズ・ゴースト・ストーリー3
このシリーズけっこう好きなんですよね。香港映画の臭みが青い夜で薄められてるせいか。今回の青年僧は『非情城市』のトニー・レオン。アンデルセン的な異界の恋の哀感もある。赤い櫛が落ちて、坊さんの想いをジョイ・ウォンが知るあたりとか。ワイヤー・アクションてのは、本来舞台でやってたものだったんでしょ。映画の世界では特殊撮影でいくらでも飛行が出来ていた。そういうなかでワイヤーで本当に飛ばすところをカメラで追う面白さを、香港映画は発見したんだ。言ってみればドキュメンタリーの精神。これ大事だと思うんです。このナマの発見。低空飛行する老僧なんかいい。男の声と女の声と入れ替わり続ける妖怪ロウロウ。キメのシーンは勢いである。なんとなく前衛舞踏集団みたいのが出てくるのも同じ。衣装なんかぜんぜん時代考証してないのもサワヤカ。そもそも何の時代か設定してあったのか。最後の妖怪はちょっと弱かったな。
[映画館(字幕)] 7点(2012-07-05 12:14:09)
12.  秋菊の物語
今まで家に閉じこもっていた田舎の普通の主婦が、訴訟を起こしたことで世界の手応えを知って生き生きする話。村落共同体のなかでナアナアで済ませていたことから、自己の確立を打ち立てる、という前向きなストーリー、とまずとれる。でも別に、互いの顔を識別し合っていられた村の中に、国家の法の論理が侵入してきて共同体内の「いい感じ」が次第に壊れていく物語、ともとれる。裁判中毒になった主婦によって村が破壊されていく。おそらくこの映画の面白さは、その二面が描かれていることにあるわけで、近代が入り込んできた村社会の問題は、現代にまで続いているんだろう(高速鉄道の事故でも、もう中国人はナアナアでは黙っていなくなった)。村の共同体の拘束からの自由と、その外側に広がって待ち構えているもっと大きなものの気配。最初は「一言謝ってほしい」だったものが、だんだんと拡大していく展開に、どことなく民話の味わいがある。巡査が自分で買った土産を持って収めようとするのがおかしい。
[映画館(字幕)] 7点(2011-09-24 10:01:26)
13.  冷たい雨に撃て、約束の銃弾を 《ネタバレ》 
東洋人と西洋人が映画の中で絡むと不協和音が生まれがちなので心配していたが、ラテン系だとそうでもない。というか、本作では異邦人ということが、記憶が薄れていくことと重なってイキている。すべての人間社会にとっても異邦人になっていきつつあるということ。ラストシーンがテーブルでニコニコしている主人公なのにはちょっと肩透かし感があったが、あれはつまり孫の記憶が完全に消え去って、その代わりに孫のような子どもたちと団欒をしている映像が入り込んできた、って感じなのだろう。ジョニー・トーらしい丁寧さが出たのは、銃撃戦よりもスパゲッティ食べながらの銃を巡るやりとりのとこ。しだいに男がただものではないと分かってくるあたり。サッと投げられる皿の気合い。その皿の行方にただのシェフでない証明があり、その皿は後のシーンのリング状のフリスビーにつながっていく。そしてゴミ捨て場での銃の試し撃ち、自転車がカラカラと動いていくとこ。記憶が消えていく男との約束をボスとの契約より優先するって「男の美学」は分かるんだけど、ちょっと命を粗末にしすぎてないか。ゴミの野での銃撃戦にもう一工夫ほしかった。ボスの卑劣さを観客に得心させる描写にも。
[DVD(字幕)] 7点(2011-06-20 10:25:50)(良:1票)
14.  天使の眼、野獣の街 《ネタバレ》 
あんまり伏線がカッチリ組まれていると息苦しくなるものだが、場当たり的なシナリオの映画が続いた後に観ると、その息苦しさのほうが嬉しい。オーソドックスな歩く刑事の捜査もので、これまたオーソドックスに師弟もの。シナリオもオーソドックスに伏線で組み上げられている。追跡中に路上で殴られている男を放置したことが心に引っかかっていた新米は、後段で負傷した警官を介護し追跡を放棄する。冒頭の犬頭のテストが、レオン・カーファイによって反復されていく(一番ドキドキするとこ、「子豚」の普通の女の子っぽい表情が、想像される彼女の内心と擦り合わされて、緊張を生む)。犬頭の小話。頚動脈の因果応報。などなどが作品を支える網の目になっていて、その網の目の細かさがうるさく感じられるギリギリのところ。殴られていた男の再登場は、ちょっと話をゴチャゴチャさせ過ぎている気がするが、偶然と必然が渾沌としているような街だから、まあいいだろう。雨が上がるとこ。傘がたたまれ視界が開け、追跡が再開され、音声では犬頭の小話が続き…、ここらへんのオーソドックスぶりに、一作目はとにかく基本に徹してみよう、という監督の姿勢が感じられ、嬉しい。
[DVD(字幕)] 7点(2010-12-24 12:14:28)
15.  哀戀花火
ちょっとの火も危険と靴を履き替えさせられる花火工場、なるほど、ここぐらいメロドラマの舞台にふさわしいスリリングなところはあるまい。女主人は視線をそらして絵描きに話しかける。愛の火花が散っては危険だからだ。でも番頭との間には摩擦熱も生まれつつ、あぶないあぶない。恋愛映画はスリリングなのである。恋の発生の危険が現実の発火の危険と重ねられる舞台設定が秀逸。しばしばメロドラマが戦争を舞台にするのも、危険が満ちているからだろう。でも無粋な爆弾工場より花火工場のほうがロマンチックである。ちょっと役者(とりわけ男のほう)が物足りなかったか。黄河の両岸からの花火合戦よりも、そのあとの煙のたゆたいが美しかった。
[映画館(字幕)] 7点(2010-06-30 11:57:25)
16.  エグザイル/絆 《ネタバレ》 
冒頭、男たちが黙って適度に配置されていくあたりが、もうこの監督の味。ドンパチよりも、そこに至る静けさの緊張が楽しい。レストランの場もそうだが、ここでは冒頭と違って広さが別の趣向となる。ヤミ医者のとこでのドンパチは滑稽味を加え、その後の悲痛と対照させている。金塊強奪の場に遭遇してのドンパチでは、ただ直立して撃つスタイル、ここも狭いヤミ医者の場の次ということで広さが対比される。繰り返されるドンパチでもいろいろ変化を持たせているわけだ。ここで絶対にドンパチが起こるぞ、と最初に映った段階で見ている者に確信させる吹き抜けのあるホテルで、ちゃんとラストでドンパチになる。ここも実際のドンパチより、その開始を告げる空缶のキックパスがいいわけで、『ザ・ミッション/非情の掟』の紙屑を思い出さずにはいられない。男たちの連帯。これをやるのならその前のちょっとクサい酒びんを渡しあうシーンは必要なかった。香港の密度と比べてマカオはいくぶん空気が拡散的で、話も中盤まとまりがほどけかけたような気がする。そのかわりポルトガルを経由してか中南米的なトーンが入ったのは、新味。ストーリーもややヒロイック度が過ぎてしまったようで、微妙に湿度が高めだ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-09-05 11:55:46)(良:1票)
17.  ファイナル・プロジェクト 《ネタバレ》 
クールで泰然自若としたアクションスターの系譜もあるが、ジャッキー・チェンは、オロオロしながらコトを為していくキートンやロイドの喜劇の系譜の人で、水中カンフーなどどうしたってキレがなくなるのを、逆手にとってギャグにしてしまうのが偉い。サメはじっとしていると襲わない、というネタで、闘っていた二人がサメが近寄ってくるとそのままジッと停止するおかしさ。あるいは血の匂いを出さないために、傷を受けた指を口にくわえる、その合い間には酸素ボンベの口を取り合ったりと無駄がない。ほかにも、タケウマをしたままのケリを何度かやって、はずした後も長いつもりでケリを空振りする、とか。このころは年齢的にアクションは厳しくなってきているのに、それをカバーしようという工夫が随所に見られて、けっこう感動的だった。白装束白マントの悪漢どもがスキーで追いかけてくるあたり、ああ悪漢とはやはりこうでなくちゃならない、と懐かしい興奮が胸に満ちたものだった。
[映画館(字幕)] 7点(2009-06-10 12:07:38)(良:2票)
18.  太陽の少年
年上の女性への憧れを軸にした、少年の成長ものの定番みたいな映画だが、エピソードの一つ一つがみずみずしい。望遠鏡で覗き、また反対側からも覗いてみたりして、世界が近づいたり遠のいたりする。世界との距離感の不安定な思春期。屋根の上をさすらうシーンも印象的だった。これの興味の一つは中国の文化大革命時代の悪童ものというところで、大人にとって悪い時代ほど子どもにとっては自由だったりする。世の中を批評する暇も惜しむほど、悪ガキどもはいそがしかったのだ。リービ英雄の小説「北京越境記」に文革の“黄金時代”を懐かしむ若夫婦が出てきて、子どもにとっては上の世代を罵倒できたりして“ハレ”の気分で過ごせる祭りの日々だったんだなあ、と思ったものだが、でもこの映画のガキどもは、エリート軍人の子どもということで、日本の“太陽族”にも通じる「いい気なもの」って感じもちょっとある。つまりあの時代の中国の子どもと言っても、みんながみんな毛沢東語録持って興奮して紅衛兵やってたわけではなく、その興奮の隙間で純粋にグレていられた恵まれた子どもたちもいたということだ。 
[映画館(字幕)] 7点(2009-05-07 12:05:56)
19.  ラスト、コーション 《ネタバレ》 
さすがに上海の賑わいの再現は金がかかっており、『スパイ・ゾルゲ』とは雲泥の差、こういうところでケチると、映画の空気全体がその時代になりきれない、悔しいけど負けている。ヒロインの上目づかいが印象的。はにかんでいるようで、警戒しているようで、親日政権に取り入り麻雀に閉じ籠もっている上流階級をじっと観察している目でもある。けっきょく映画のサスペンスは、彼女の内心がどうなっているのかに絞られていく。この映画はレジスタンス映画なのか、メロドラマなのか、それはただただ彼女の内心にかかっている。それを観客に読み取らせまいとしている目つきのようでもある。「みな私を恐れている、あなただけが恐れない」と男に思わせる目つき、先の見込みのなくなりつつある状況で男が溺れていく隠れ家のようなヒロイン、その両者のドン詰まり感・切迫感が、首を締め上げたかと思うと一つの肉塊になったりする、すさまじいベッドシーンに凝縮する。ヒロインは、自分を徹底的に道具とし、レジスタンスに忠誠を誓ったつもりでいて、最後の土壇場で道具ではない声を発してしまった。だから情に脆い女は闘士になれぬ、ということになるのだろうか、道具に徹し切れなかったことは弱さなのだろうか。男はとりあえず救われたが、殺されるより深いダメージに傷ついただろう、しかも政権の崩壊はすぐそこに迫っている。レジスタンス映画とメロドラマが一つの肉塊のように絡み合って、完全に一体となっている。
[DVD(字幕)] 7点(2008-12-29 12:21:06)(良:2票)
20.  プラットホーム
おそらく二度目により感動するたぐいの映画だろう、と日記に記しているが、まだ二度目は果たしていない。青春の自由と自由ゆえの頼りなさみたいなものが、あわあわと描かれていた。炭坑で働く人々の描写が向こうでは当局のチェックにあったとか聞いたけど、社会問題を提示するというより、青年たちがこれから出て行かねばならぬ社会の苛酷さにおびえためらう要素として置かれていたよう。汽車のモチーフが全編を貫いた。汽車を見たことのない彼らが、バスの中で警笛を真似て始まり、最後は村に戻って家庭にはいった一人の部屋でケトルが警笛のように鳴って終わる。その部屋からは、若いときにタムロしていた城門が見えている。日本にもあるサークル青春ものの中国拡大版だ。日本の青春ものの過剰ななれなれしさがない。外から聞こえてくる町の音、半野喜弘のヴァイオリンとチェロの音楽が、断片的に入る。
[映画館(字幕)] 7点(2008-07-04 11:22:36)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS